遺留分の計算方法を弁護士がわかりやすく解説!

遺留分侵害額を請求するときには、遺留分が「どのくらいの金額」になるのか正しく計算しなければなりません。

今回は遺留分の計算方法をわかりやすくお伝えしますので、ぜひ参考にしてみてください。

1.遺留分の計算式

遺留分侵害額は以下の計算式によって算出できます。

遺留分侵害額=遺留分の基礎となる財産総額×遺留分の割合

以下で「遺留分の基礎となる財産総額」と「遺留分の割合」それぞれの求め方を解説します。

2.遺留分の基礎となる財産総額を計算する

遺留分の基礎となる財産は、以下の手順で計算します。

「相続開始時の財産」に「生前贈与された財産」を加える

まずは「相続開始時に存在した財産」に「遺留分の対象となる生前贈与」を加えます。

「遺留分の対象となる生前贈与」は以下のようなものです。

  • 相続開始前1年以内に行われた生前贈与
  • 遺留分を侵害すると知って行われた生前贈与(期間制限なし)
  • 相続人に対して行われた相続開始前10年以内の生前贈与


相続開始時の財産を評価する

相続開始時の財産に遺留分の対象となる生前贈与を加えるときには、遺産や生前贈与された財産の「評価」をしなければなりません。

相続開始時の財産については、相続開始時点を基準時として評価します(最高裁昭和51年3月18日)。たとえば不動産や株式などの価値が変動する資産については「被相続人の死亡日」における価値を測らねばなりません。

また不動産には路線価や固定資産評価、時価などいくつかの評価基準がありますが、遺留分算定の場合には「時価」で評価しましょう。


●生前贈与の評価基準時

生前贈与が行われた場合には、いつの時点を基準として評価すればよいのでしょうか?

これについても「相続開始時」を基準とすべきと考えられています。

贈与された後で価値が変動した場合、相続開始時の時価を調べなければなりません。

贈与時期が古く、その後に大きな物価変動が生じた場合、消費者物価指数などを参考に引き直し計算しなければならないケースもあります。

負債を引く

次に「負債」を引き算します。

差し引きできるのは被相続人が生前に負っていた負債であり、以下のようなものが典型例です。

  • カードローンやクレジットカード、サラ金などの借金
  • 事業用の残ローン
  • 未払い家賃
  • 未払いの税金、保険料
  • 未払いの買掛金、リース代
  • 未払いの通信料、スマホ代
  • 未払いの損害賠償債務


●葬儀費用は差し引けない

遺留分計算の際、「葬儀費用」は差し引きできません。

遺産分割の際には葬儀費用を差し引くのが通常ですが、遺留分計算の際には取り扱いが異なるので注意しましょう。

3.遺留分の割合を当てはめる

遺留分の基礎となる財産総額を計算したら、次に遺留分の割合をあてはめましょう。

遺留分の割合の求め方

遺留分の割合は以下のようにして求めます。

  • 直系尊属のみが遺留分権利者の場合…3分の1
  • それ以外の遺留分権利者が含まれる場合…2分の1

上記の割合を法定相続人が法定相続分に応じて分配します。

たとえば配偶者と1人の子どもが法定相続人になる場合、配偶者の法定相続分は2分の1、子どもの法定相続分も2分の1です。

配偶者と子どもの遺留分割合は、2分の1×2分の1=4分の1ずつとなります。

遺留分割合の表

  配偶者 子ども
配偶者のみ 2分の1    
1人の子ども   2分の1  
2人の子ども   4分の1ずつ  
配偶者と1人の子ども 4分の1 4分の1  
配偶者と2人の子ども 4分の1 8分の1ずつ  
配偶者と3人の子ども 4分の1 12分の1ずつ  
父又は母     3分の1
両親     6分の1ずつ
配偶者と父又は母 3分の1   6分の1
配偶者と両親 3分の1   12分の1ずつ
配偶者と兄弟姉妹 2分の1    


4.遺留分侵害額計算の具体例

以下で実際に遺留分を計算してみましょう。

ケース1

夫(父親)が死亡して相続開始時の遺産額が3000万円、長男への生前贈与が500万円、負債が300万円、妻と2人の子どもが相続人。遺産は全額長男に遺贈された。

この場合、遺留分の基礎となる財産額は「相続開始時の遺産額3000万円+生前贈与500万円-300万円=3200万円」です。

妻の遺留分割合は4分の1、子どもたちの遺留分はそれぞれ8分の1ずつです。

そこで配偶者は長男へ3200万円×4分の1=800万円の遺留分侵害額請求ができます。

次男は長男へ3200万円×8分の1=400万円の遺留分侵害額請求が可能です。

ケース2

息子が死亡して相続開始時の遺産額が4000万円、生前贈与はなし、負債が400万円、両親が相続人となったが愛人へ遺産が全額遺贈された。

この場合、遺留分の基礎となる財産額は4000万円-400万円=3600万円です。

両親が相続人なのでそれぞれの遺留分割合は6分の1ずつとなります。

よって両親は愛人に対し、それぞれ3600万円×6分の1=600万円の遺留分侵害額を請求できます。

京都・滋賀・大阪・兵庫で遺留分侵害額請求するときには弁護士までご相談ください

遺留分侵害額を計算するとき、まずは遺産を適正な方法で評価して相続財産の総額を求めなければなりません。

その後正しい遺留分割合をあてはめて実際の侵害額を計算する必要があります。ご自身で対応すると間違ってしまうケースも多いので注意が必要です。

スムーズに遺留分侵害額の請求を進めて確実に回収するため、弁護士までご相談ください。

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