遺言書を作成すべき9つの状況を弁護士が解説

「私の場合、遺言書を作成しておくべきでしょうか?」というご相談を受けるケースがよくあります。

この記事では「必ず遺言書を作成すべき9つの状況」を弁護士が今までの経験談からご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

1.内縁の夫婦

婚姻届を提出しておらず内縁関係のご夫婦は、必ず遺言書を作成しましょう。

遺言書がないと配偶者には遺産相続権が認められません。前妻や前夫の子どもがいる場合には遺言書がないと子どもが全財産を相続することになります。

遺言書により、相手に不動産や預貯金などの財産を遺贈しておけば、死後の配偶者の生活が守られて安心です。ただし前婚の子どもがいる場合には遺留分にも配慮しましょう。

2.子どもがいない

子どものいないご夫婦も、遺言書を作成するよう強くお勧めします。

子どもがいない場合、配偶者と「(死亡した人の)親または兄弟姉妹」が相続人となります。

遺言書がなかったら、配偶者と義理の両親や義理の兄弟姉妹が一緒に遺産分割協議を行い遺産の分け方を決めなければなりません。意見が合わずにトラブルになるリスクが高くなってしまいます。

遺言書によって配偶者に多めの遺産を相続させるよう指定しておけば、トラブルを防いで配偶者の生活を守れるでしょう。

なお親には遺留分がありますが、兄弟姉妹には遺留分がありません。親がすでに死亡しているなら、配偶者に全部の遺産を遺しても問題ないでしょう。

3.前婚の子どもがいる

再婚して前婚の際の子どもがいらっしゃる方も要注意です。前婚の子どもにも今の家族の子どもと同じだけの相続分が認められます。遺言書がなかったら、前婚の子どもと今の家族が共同で遺産分割協議をしなければなりません。お互いの立場や考え方が異なり、トラブルに発展しやすい状況となるでしょう。

遺言書により、今の家族に多めの遺産を遺しておけばトラブルを防いで家族の生活も守れます。なお前婚の子どもには遺留分があるので、遺留分相当額は相続させるのがよいでしょう。

4.婚外子がいる

婚外子がいる方にも遺言書の作成をお勧めします。

認知している場合、認知された子どもにも遺産相続権が認められるので、今の家族と一緒に遺産分割協議をしなければなりません。遺言により、遺産の分け方を指定しておきましょう。

認知していない場合でも、死後に子どもの方から認知請求を行ってトラブルになる可能性があります。遺言で認知をしておけばそういった問題は起こりません。その上で遺産分割方法を指定しておきましょう。

5.遺産に不動産が含まれている

遺産に不動産が含まれていたら、相続トラブルが生じやすい傾向があります。売却するのか誰かが引き継ぐのか、評価方法をどうするのかなどで意見が合致しにくいためです。

誰にどのような方法で遺産を取得させるべきか、遺言で指定しておきましょう。

6.遺産が実家しかない

「遺産は実家の不動産しかない」といったケースでは、必ず遺言書を作成しましょう。

実家の不動産しかない場合、誰が不動産を相続するかでもめてしまう可能性が非常に高いからです。

1人の相続人が実家を相続したら他の相続人を納得させるために代償金を払わねばなりませんが、資力がなくて支払えない場合が少なくありません。遺言書がないと、最終的には実家を売却して現金で分けざるを得なくなる可能性が高くなります。

家を取得させたい相続人がいるなら、遺言によってその人へ家を取得させましょう。代償分割や換価分割を遺言によって指定することも可能です。

7.特別受益を受けた相続人がいる

高額な生前贈与を行い、「特別受益」を得た相続人がいる場合にも必ず遺言書を作成するようお勧めします。遺言書により「特別受益の持ち戻し免除」をしておけば、特別受益の持戻計算ができなくなるので遺産分割協議の際にトラブルにつながりにくくなるからです。

なお20年以上連れ添った配偶者への居住用不動産贈与の場合には、遺言書を作成しなくても持ち戻し免除の意思表示があったものと推定されます。

8.寄与分を主張しそうな相続人がいる

献身的に介護してくれた相続人、事業の手伝いをしてくれた相続人など「寄与分」を主張しそうな相続人がいる場合にも、遺言書を作成するようお勧めします。ある相続人が寄与分を主張すると、他の相続人が反感を抱いてトラブルになりやすいからです。

遺言により、あらかじめそれぞれの相続人の遺産取得方法を指定しておきましょう。

9.事業経営者

事業経営されているなら、必ず遺言書を作成すべきです。遺言書がないと、株式や事業用の資産が法定相続人に分散されてしまい、後継者による経営の引継ぎが困難となってしまう可能性が高くなってしまいます。

ただし子どもには遺留分が認められるので、遺留分を主張されないように対処しましょう。

株式や事業用資産以外の預貯金等を引き継がせる方法もありますし、一定の場合には生前に遺留分の除外合意なども可能です。

事業経営者の遺産相続では一般家庭とは異なる注意点が多々ありますので、弁護士に相談してアドバイスを受けながら進めるようお勧めします。

当事務所では遺言書の作成方法やご家庭の状況に応じた遺言内容についてアドバイスをさせていただいております。これから遺言書を作成したい方はお気軽にご相談ください。

keyboard_arrow_up

0752555205 問い合わせバナー 無料法律相談について