株式や株券の名義変更方法をパターン別に解説

遺産の中に株式が含まれていたら、どのようにして相続手続きを進めればよいのでしょうか?

上場株式か非上場株式かで具体的な方法が異なります。

今回は株式の相続手続きをパターン別に解説します。

1.株式の名義変更をしないリスク

株式を相続したら早めに名義変更などの相続手続きを進めるべきです。

法的な「期限」はありませんが、放置すると以下のようなリスクが発生します。

1-1.配当金を受け取れない

株式の名義が亡くなった被相続人のままになっていると、株式発行会社にとっては「配当金を受け取る権利者が誰なのか」確定できません。相続人であっても配当金を受け取れないままになってしまう可能性があります。

1-2.議決権行使できない

株主不明の状態では、株主総会招集通知や議決権行使書類も届けられません。株式を相続したにもかかわらず議決権を行使できないリスクが発生します。

1-3.権利が失われる

株式発行会社は、株主が5年以上所在不明の場合(継続して5年間配当金を受け取らなかった場合)、株式を「競売」にかける権利が認められます。会社自身が買い取ってもかまいません。

つまりせっかく株式を相続しても長年放置していると、配当金も受け取れず最終的に権利が失われてしまうリスクが高まります。早めの対処が重要といえるでしょう。

2.上場株式の相続手続き

株式の相続手続き方法は、上場株式か非上場株式かで異なります。

上場株式の場合には、以下の手順で名義変更しましょう。

2-1.相続人名義の証券口座を用意する

まずは相続人名義の証券口座を用意しなければなりません。株式の場合、預貯金口座と違って「被相続人の証券口座そのものの名義変更」はできないので注意しましょう。

すでに相続人が証券口座をお持ちの場合には、その口座を使えます。ない場合、被相続人と同じ証券会社または別の気に入った証券会社で口座を新しく開きましょう。

2-2.株式の振替を申請する

次に被相続人の取引先証券会社へ株式の振替を申請します。

一般的には以下のような書類が必要です。

  • 口座振替の申請書(証券会社ごとに書式があります)
  • 被相続人の死亡を確認できる書類(戸籍謄本や除籍謄本)
  • 被相続人の生まれてから死亡するまでのすべての戸籍謄本類(あるいは法定相続情報証明書)
  • 相続人の本人確認書類(運転免許証や健康保険証、パスポートなど)
  • 遺産分割協議書や遺言書(法務局に預けられていない自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合、検認済のもの)
  • 相続関係説明図

証券会社における処理が済むと、被相続人名義の株式が相続人名義に変わり、相続人が自分名義の証券口座内で株式を管理運用できる状態になります。

配当金も相続人が受け取れますし、株主総会招集通知や配当金についての案内書も届き、売却処分も可能です。

3.非上場株式の相続手続き

非上場株式の場合には、株式発行会社によって対応が異なる可能性があります。

一般的には以下のように手続きを進めましょう。

3-1.株式発行会社へ相続を報告する

まずは株式発行会社へ相続が発生したことと、自分が相続人になったことを知らせましょう。その上でどのように相続手続き(株式の名義変更)をすればよいか確認します。

3-2.必要書類を確認し、用意して提出する

会社から名義変更のための必要書類を聞いて用意しましょう。

一般的には以下のような書類が必要となります。

  • 被相続人の死亡を確認できる書類
  • 本人確認書類
  • 遺産分割協議書や遺言書

ただし株式発行会社がきちんと株主名簿を作成していないなどの事情で混乱が生じると、名義変更を受け付けてもらえずトラブルになる可能性もあります。困ったときには弁護士へご相談ください。

4.株式を売却する方法

相続した株式は売却もできます。

以下で売却する2つの方法をお知らせします。

4-1.相続した相続人が個別に売却

遺産分割や遺言書などによって特定の相続人が株式を相続したら、その相続人単独の判断で株式を自由に売却できます。他の相続人への報告や同意は要りません。

同様に投資信託などについても解約手続きを行って現金化できます。

証券会社の担当者へ電話で売却希望を伝えるか、ネット上から操作して好きなタイミングで売却するとよいでしょう。

4-2.相続人が全員で売却

遺産分割前であっても、相続人全員が合意すれば株式の売却が可能です。


●相続人の代表者を決める

遺産分割前に売却する場合、まずは「相続人の代表者」を1人選定しなければなりません。相続人全員が話し合い、合意の上で代表者を選定しましょう。

代表者が選出されたら、他の相続人は代表者へ株式の売却を委任する旨の委任状を作成します。


代表相続人が口座を開設

代表相続人が被相続人の取引先の証券会社で、代表者名義の証券口座を開設します。


●株式を移管

被相続人の証券口座から代表相続人の証券口座へと株式を移管します。


●売却

代表相続人が株式を売却します。


●現金を分配

売却によって得られた現金は、相続人が法定相続分に応じて分配します。


株式の相続手続きは複雑で、状況によりとるべき対処方法が異なります。放置すると大きなトラブルにつながってしまう可能性もあるので、早めに手続きを済ませましょう。手間を省きたい方、具体的なやり方がわからない方はお早めに弁護士までご相談ください。

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