遺産分割手続きの種類~遺産分割協議、調停、審判~

遺産分割の手続きには複数の種類があります。それぞれの方法にどういった特徴があるのか、手続きを進めるための手順や流れも把握しておきましょう。

今回は遺産分割手続きの種類や遺産分割の流れをご紹介します。

遺産分割手続きの種類

遺産分割とは、相続人が全員関与して遺産の分け方を決めることで、以下の3つの方法があります。

  • 遺産分割協議
  • 遺産分割調停
  • 遺産分割審判

それぞれどういった手続きなのか、みていきましょう。

1.遺産分割協議

遺産分割協議は、相続人が全員参加して話し合い、遺産分割方法を決める手続きです。

話し合いの方法は限定されておらず、都合の良い方法で進められます。実家などの場所に一同に会しても良いですし、郵送、ZOOMなどのオンライン会議や電話、メールやLINEなどを利用してもかまいません。

遺産分割協議が成立したら自分たちで「遺産分割協議書」を作成する必要があります。

メリット

  • 手間がかからない
  • スピーディに話し合いを進められる
  • 柔軟に解決できる

デメリット

  • もめてしまったときに解決できない
  • 連絡がとれない相続人がいると進められない
  • 協議を申し入れても無視される可能性がある
  • 一定の相続人が不利益を受けるような、不当、不平等な解決内容になるケースもよくある

2.遺産分割調停

遺産分割調停は、家庭裁判所へ申立を行い、相続人全員が関与して調停委員を介して話し合う手続きです。手続き内で全員が合意できれば調停が成立し、遺産分割できます。

調停では調停委員が説得してくれたり調停案を提示してくれたりするので、自分たちだけで話し合うよりも話がまとまりやすくなるメリットもあります。自分で連絡しても無視する相続人がいる場合でも、裁判所から呼び出しがあれば対応するケースが珍しくありません。

遺産分割協議に比べて、お互いに感情的になりにくいので、冷静に話を進めやすい点もメリットといえるでしょう。

メリット

  • 調停委員が間に入ってくれるので冷静に話を進められる
  • 調停案を提示してもらえるので解決しやすい
  • 裁判所が間に入るので、不当な結論になるケースは少ない
  • 無視する相続人がいても話に参加させやすい
  • 相手と直接話さなくて良いのでストレスを感じにくい

デメリット

  • 手間がかかる
  • 時間がかかる
  • 全員が合意しなければならないので、必ず解決できるとは限らない
  • 調停委員が相手の肩を持つと、妥協を迫られるケースがある

3.遺産分割審判

遺産分割審判は、裁判所の審判官が遺産分割の方法を指定する手続きです。一般的には、遺産分割調停が不成立になったときに審判に移行し、審理を経て裁判官が遺産分割方法を決定します。

審判は話し合いではないので、当事者が納得しなくても決定が出てしまいます。予想外に不利な審判が出るケースも珍しくありません。

訴訟に近い手続きなので、必ず弁護士に依頼するようお勧めします。

なお遺産分割審判の結果に不服があれば、高等裁判所宛に「即時抗告」という異議申し立てができます。

メリット

  • 当事者が合意できなくても遺産分割方法が決まる
  • 共同相続人が無茶な主張をして話し合いでは解決できないケースでも遺産分割ができる

デメリット

  • 望まない内容や不利な審判が出る可能性がある
  • 難しい手続きなので自分で対応すると不利になる可能性があり、弁護士に依頼する必要性が極めて高い

4.遺産分割の流れ

遺産分割は、以下の手順で進めましょう。

4-1.相続人調査と相続財産調査を行う

まずはどのような相続人がいてどういった内容の遺産があるのか、調査しましょう。

相続人に漏れがあると遺産分割協議を行っても無効になってしまいます。

また相続財産が確定しないと遺産分割ができません。

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4-2.遺産分割協議を行う

次に相続人全員が参加して遺産分割協議を行いましょう。連絡方法や話し合いの方法に限定はありません。郵送や電話、メールなど都合の良い方法で進めましょう。

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4-3.遺産分割協議書を作成する

遺産分割協議で合意ができたら、必ず遺産分割協議書を作成してください。

遺産分割協議書には相続人全員が実印で押印する必要があります。

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4-4.遺産分割調停を申し立てる

合意ができなければ、家庭裁判所で遺産分割調停を申し立てましょう。

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4-5.遺産分割審判で決定される

調停でも合意ができなければ手続きが審判に移行します。審判手続きの最中であっても全員が合意できれば、話し合いで解決できる可能性もあります。

どうしても合意できない場合、裁判官が審判により遺産分割方法を指定します。

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4-6.相続手続きを行う

遺産分割協議や調停、審判によって遺産分割の方法が決まったら、各種の相続手続きを行いましょう。

  • 不動産の名義変更
  • 預貯金の払い戻し、名義変更
  • 株式や金融商品の引継ぎ
  • 車の名義変更や売却、廃車の手続き

相続手続きの際には、以下のような「遺産分割の結果を示す書類」が必要です。

  • 遺産分割協議書
  • 遺産分割調停の調停調書
  • 遺産分割審判の審判書と確定証明書

なお即時抗告されたら審判は確定しないので、即時抗告審が終了してから相続手続きを進めます。

遺産分割に関して不明な点がある方、他の相続人ともめたり無視されたりしてお困りの方がおられましたら、お気軽にご相談ください。

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