不動産の名義変更(相続登記)は義務?期限も解説

土地や建物などの不動産を相続したら「名義変更(相続登記)」をしなければなりません。

相続登記をせずに放置していると所有名義が被相続人名義のままになってしまい、誰が本当の所有者かわからなくなって混乱が生じます。

また不動産登記法の改正により、近い将来相続登記は義務化されることが決定しています。

今回は不動産の名義変更の必要性や期限について解説しますので、土地建物を相続された方はぜひ参考にしてみてください。

1.名義変更の相続登記とは

不動産の名義変更(相続登記)とは、不動産の所有名義を被相続人から相続人へ移す手続きです。

不動産の所有者情報は「登記」によって公示されており、誰でも閲覧できる状態です。ただし名義人となっている所有者が死亡しても自然に所有名義が変わるわけではありません。

相続によって所有者が変わったら、相続人が自分で法務局に申請して自分の名義に変えなければならないのです。この手続きを「名義変更(相続登記)」といいます。

2.相続登記の種類

相続登記には以下のような種類があります。

2-1.遺産分割協議(調停、審判)による相続登記

相続人が全員で話し合い、誰が不動産を相続するか決めたらその相続人が相続登記を行います。この場合「遺産分割協議書」が必要です。

家庭裁判所の調停で相続人が決まったら「調停調書」、審判で決まったら「審判書」と「確定証明書」を用いて相続登記します。

2-2.遺言による相続登記

遺言によって不動産の相続人が指定された場合、指定された相続人が名義変更を行います。遺言書が必要となり、法務局に預けられていない自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合には事前に検認を受けておかねばなりません。

2-3.共有の登記

遺言書がなくすぐには遺産分割ができない場合、相続人全員で共有名義の登記ができます。

この場合、遺産分割協議書や遺言書などは不要です。

3.相続登記しなければならない理由

不動産を相続しても、現時点(2021年8月)では相続登記は義務ではありません。

しかし名義変更せずに放置していると以下のようなリスクが発生します。

3-1.勝手に共有登記されてしまう

遺産分割協議や遺言書によって単独で不動産を相続しても、相続登記しなければ他の相続人が先に「共有登記」をしてしまう可能性があります。

そうなると、他の相続人が「自分の表見的な持分」を他人に売却してしまうかもしれません。

購入した第三者が先に登記をしたら、第三者に優先されて売却された持分を失ってしまうリスクが発生します。

3-2.次の相続が起こって混乱する

相続登記をしないで放置していると、所有者が死亡してしまう可能性もあります。

すると所有者の相続人は「祖父母の代の相続登記」と「親の代の相続登記」の2つの登記手続きをしなければなりません。ただでさえ手間のかかる相続登記が2つになれば、子ども世代に多大な負担をかけてしまうでしょう。

また祖父母の代の相続登記に必要な書類を揃えるのが難しいケースもあります。

子ども世代も相続登記をせず祖父母の代の名義のまま放置され「所有者不明の不動産」になってしまうリスクが発生してしまいます。

3-3.売却や活用が困難

不動産の名義人が死亡した人のままになっていると、売却や抵当権設定などの活用ができません。

せっかく物件に関心を持つ人が見つかっても登記手続きに時間がかかる「訳あり物件」と思われると敬遠される可能性がありますし、他のスムーズに購入できる物件に乗り換えられる可能性も高くなるでしょう。

不動産を有効活用するためにも、早期に相続登記すべきといえます。

4.法改正による相続登記の期限

本記事執筆時点では相続登記は義務ではありませんが、令和6年4月1日から不動産登記法の改正によって相続登記の義務化が決定しています。

法改正後は、不動産を相続した人は「自分のために相続が開始して所有権を取得したことを知った日から3年以内」に相続登記しなければなりません。

正当な理由なく期限内に相続登記をしなかった場合、10万円以下の過料の制裁が科される可能性があります。

4-1.相続人申告登記制度の新設

ただしすぐに相続登記できない場合、「相続人であること」を法務局に申告すれば相続登記の義務は免除されます。これを「相続人申告登記」といいます。

4-2.名義や住所変更登記の義務化

相続登記を行った後も、氏名や住所が変わったら「2年以内」に変更登記をしなければなりません。登記を怠ると5万円以下の過料の制裁が科されます。

相続登記を義務化する改正不動産登記法は、令和6年4月1日から施行予定です。

施行前の現段階であっても早めに相続登記を終えておくようお勧めします。

5.相続手続きは弁護士までご相談ください

不動産登記の際には遺産分割協議書や検認を終えた遺言書などの書類が必要です。

被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本類も集めなければならず、大変な手間となるでしょう。

当事務所では相続人調査(戸籍収集)や遺産分割協議、調停などの相続手続きを全面的にサポートしております。司法書士とも提携して相続登記にも対応できますので、困ったときにはお気軽にご相談ください。

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