銀行預金の相続手続き~凍結の解除方法、仮払い制度について~

被相続人が預金を遺して死亡したら、銀行預金はどうなるのでしょうか?

名義人の死亡が確認されると金融機関で預金が凍結されるので、一切の入出金や振り込みができなくなってしまいます。葬儀費用等を支出するためには、凍結を解除してもらわねばなりません。

今回は銀行口座の凍結を解除する方法や相続手続きについて解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。

1.名義人が死亡すると銀行口座は凍結される

人が死亡すると、その人が名義人となっている銀行口座は凍結されます。

たとえ相続人であっても出金や振り込みはできませんし、クレジットカードや光熱費等の引き落としも止まってしまいます。

それまで被相続人の預金によって生活していた方がおられたら、生活に困窮してしまう可能性があります。葬儀費用が必要な場合にも出金できず、相続人が立て替えなければなりません。

それではどうすれば銀行預金の凍結を解除できるのでしょうか?

以下で具体的な解除の方法をみていきましょう。

2.相続人が銀行預金を受け取れる仮払い制度とは

近年の相続法改正により、相続人が早めに被相続人名義の銀行預金を一部、払い戻せる制度が設けられました。これを「預貯金の仮払い制度」といいます。

仮払い制度を適用すると、遺産分割前であっても各相続人が一定限度まで預金を引き出せます。

それぞれの金融機関から出金できる限度額は以下のいずれかの低い方の金額です。

  • 法定相続分の3分の1
  • 150万円

上記の限度額は「銀行ごと」に計算されるので、複数の銀行口座があれば150万円より多くのお金を引き出せる可能性もあります。

また「相続人1人」についてカウントするので、複数の相続人が協力すれば上記よりも多額の預金を引き出せます。

仮払い制度で預金を引き出せる金額の具体例

A銀行に300万円、B銀行に1000万円、C銀行に150万円の預金があり、妻と2人の子どもが相続するケース。

妻の法定相続分は2分の1、子どもたちそれぞれの法定相続分は4分の1ずつです。

この場合、妻と子どもがそれぞれ出金できる金額を計算すると、以下の通りとなります。


●妻が出金できる金額

A銀行で50万円、B銀行で150万円、C銀行で25万円、合計225万円。


●1人の子どもが出金できる金額

A銀行で25万円、B銀行で833333円、C銀行で125000円、合計1208333円。


3.法定相続分まで預金を受け取る方法

預貯金の仮払い制度を適用しても「全額」の出金はできません。

より多くのお金が必要な場合、どのようにして凍結を解除すればよいのでしょうか?

この場合、家庭裁判所へ「仮処分」を申し立てて預金の仮分割をしてもらう方法が有効です。

仮処分が認められると家庭裁判所が仮払いを可能とする審判を出してくれるので、金融機関で預金の払い戻しができるようになります。

このときに支払いを受けられるのは「法定相続分まで」です。

たとえば妻と2人の子どもが相続人になるケースにおいて銀行預金が1000万円ある場合、妻は法定相続分である500万円の払い戻しができます。子どもたちはそれぞれ250万円ずつ出金できます。

相続法改正により仮処分の要件が緩和

家庭裁判所の仮分割の仮処分については、相続法改正によって要件が緩和されて使いやすくなっています。

従来は「急迫の危険を防止する必要性があるとき」に限定されていましたが、現在は「仮払いの必要性」があれば審判を出してもらえます。

ただ仮処分の申請手続きそのものは複雑で専門性を要しますし、出金の「必要性」を裁判所へ説明しなければなりません。専門家に依頼した方がスムーズに進みますので、預金口座を凍結されて早急にお金が必要な場合には、弁護士までご相談ください。

4.遺産分割を行う

仮処分を行わずに預金全額の凍結を解除するには、「遺産分割」を完了させなければなりません。

遺産分割によって預金の相続人が決まったら、金融機関は凍結を解除して相続人への払い戻しに応じますし、口座名義を相続人へ移転することも可能です。

遺産分割協議が成立した場合には「遺産分割協議書」を用意しましょう。相続人全員が署名押印した有効な遺産分割協議書を金融機関へ持参すると、預金を引き継ぐことに決まった相続人が自分の名義に変更したり解約払い戻しを受けたりできます。

家庭裁判所の遺産分割調停で合意した場合には「調停調書」を持参すれば凍結を解除してもらえます。

遺産分割審判になった場合、審判書と確定証明書が必要です。確定証明書は審判書が相続人に届いてから2週間が経過すると申請できるようになるので、家庭裁判所へ申請をしましょう。

5.預貯金の仮払い、仮処分は弁護士へご相談を

預貯金口座が凍結されてすぐにでもお金が必要な場合、まずは預貯金の仮払い制度を利用しましょう。法定相続分までの払い戻しを受けたい場合には仮処分を申し立てる必要があります。仮処分が認められない場合には遺産分割を進めなければ預貯金を受け取れません。

スムーズに遺産分割協議や調停を成立させて預金を払い戻すには、弁護士によるサポートを受けるようおすすめいたします。弁護士であれば仮処分の申立てや遺産分割協議、調停、審判の代理人もつとめられますし、状況に応じたアドバイスもさせていただきます。

預金が凍結されてお困りの方がおられましたらお気軽にご相談ください。

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