遺言書作成

遺言書と矛盾する行為をした場合にも、遺言書は有効なの?

2023-06-09

一度作成した遺言書は、その内容を書き直したり、破棄しない限り、必ず効力を有するのでしょうか?

例えば、ある不動産を相続人の一人に相続させるとの遺言書を作成した方が、その後その不動産の違う人に贈与した場合にも、その遺言書は有効なのでしょうか。

今回は、遺言内容が、遺言書作成後の遺言者の行為と矛盾する場合の、遺言書の効力などについて解説します。被相続人の作成した遺言書の効力について知りたい方や、遺言書を書き直した方が良いか迷っている方にお役に立つ内容ですので、是非参考にされて下さい。

1.遺言書の撤回、取消のルールについて

まず、前提として、遺言書を作成しても、遺言書の撤回や取消は、自由にできます

これは、遺言書を作成する方の、最終意思を尊重すべきであるとの考えがあるためです。

一旦、遺言書を作成しても、その後、気が変わったり、事情が変わることもあるかと思います。その場合には、遺言書を作り直して頂く形で構いません。

この辺りの話は、「作り直された遺言書の効力~遺言書の撤回と取消について~」で詳しく解説していますので、気になった方は、こちらをご確認ください。

2.遺言者が遺言内容と矛盾する行為をした場合

それでは、遺言書作成後に、遺言者が遺言内容と矛盾する行為をしても、その遺言書は必ず有効なのでしょうか。

民法では、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合には、その抵触する部分については、前の遺言を撤回したものとみなすと規定されています(民法第1023条2項)。要は遺言書作成後に、遺言者が遺言内容と「抵触」する行為をした際には、その遺言書の「抵触」する部分が撤回されたものとしますという規定です。

この規定は、遺言の法律上の撤回を認めることにより、遺言者の最終意思を重視することを目的にしたものです。

ここで、遺言書と「抵触」という意味が問題になりますが、最高裁判決において、「抵触とは、単に、後の生前処分を実現しようとするときには前の遺言の執行が客観的に不能となるような場合にのみとどまらず、諸般の事情より観察して後の生前処分が前の遺言と両立せしめない趣旨のもとにされたことが明らかである場合をも包含する」とされています。

分かりづらいので、かみ砕いて説明します

上記判決は、遺言内容と後の行為が同時に実現するのが絶対に不可能な場合だけじゃなくて、さまざまな事情から観察して、後の行為が、前の遺言と両立させない趣旨のもとにされたことが明らかな場合にも「抵触」するとしています。

まだ少し、わかりづらいので、具体例を用いて、ご説明します。

■具体例

具体例①

例えば、ある不動産を相続人の一人に相続させるとの遺言書を作成した方が、その後その不動産の違う人に贈与したとします。

この場合には、遺言内容(ある不動産を相続人の一人に相続させる)と、後の行為(その不動産を違う人に贈与)を同時に実現するのが絶対に不可能です。亡くなる前に、違う人に不動産をあげているのですから、遺言によって、その不動産を相続人の一人に渡すことはできません。

なので、遺言内容が、後の行為と「抵触」することになるので、遺言書が撤回したものとみなされます。

具体例②

これは、先ほどの最高裁判決で、問題になったケースです。

その事案では、遺言者に、子どもがいなかったため、Aさんから一生面倒をみてもらうことを前提に、遺言者がAさんと養子縁組をした上で、保有する不動産をAさんに相続させるとの遺言書を作成していました。そして、遺言者が、Aさんと同居して共同生活を送っていました。

しかし、その後、遺言者とAさんが仲違いをして、同居を解消した上で、養子縁組の解消も行い、Aさんが遺言者の面倒をみなくなりました

但し、遺言書を書き直したり、破棄したりはされておらず、その遺言書は残されたままになっています。

最高裁判決は、このような場合にも、遺言書が有効なのかが争われた事案でした。

このケースでは、遺言書で対象とされた不動産を他者に贈与したというわけではないので、遺言書の内容と、後の行為(養子縁組の解消や同居の解消など)を同時に実現するのが絶対に不可能というわけではありません。

なぜなら、養子縁組の解消や同居の解消を行っても、その不動産をAさんに相続させるのは、理屈上は可能だからです。

しかし、このようなケースだと、遺言者は、養子縁組の解消や同居の解消などをした時点で、既に自己が保有する不動産をAさんに相続させる気はなかったと考えられます。

そのため、上記判決においては、これらの事情を考慮して、養子縁組の解消や同居の解消などが、前の遺言書と両立させない趣旨の行為であることが明らかであるとして、遺言書が撤回されていると判断しました。

このように、遺言書と、遺言書作成後の行為が「抵触」するとして、遺言書の撤回をみとめた事例はありますが、これはかなり珍しい事例と評価できるかと思います。

なぜなら、このような遺言書の撤回は、相続人などの法律上の地位に重大な影響を及ぼすものですし、遺言者本人が撤回や取消しの意思表示をしたわけでもないのに、遺言書を撤回したとみなすのは、慎重に判断すべきとされやすいためです。

3.遺言書作成上の注意点

上記のように、遺言書作成時と異なる事態が生じた場合、その遺言書が撤回したとみなされるのか否か、その遺言書をどのように解釈すべきなのか等の争いが生じやすいです。

せっかく、争いが生じないように遺言書を作成しているのに、その遺言書が原因で争いが生じてしまっては本末転倒です。

そのため、遺言書作成時と異なる事態が生じた場合には、遺言書を書き直したり、又は当初の作成時から、後にいかなる事態が生じてもその遺言書の効力に疑義が生じない形で作成しておくのが望ましいといえます。

4.最後に

益川総合法律事務所では、遺言書作成に関するサポートや遺言書の効力を争う事案に積極的に取り組んでいます。

この2つの内容については、一見矛盾するように見えるかもしれません。しかし、遺言書の効力を争う事案に取り組んでいるからこそ、そのような紛争が生じにくい形での遺言書作成のサポートができると考えております。

お困りの方は、当事務所までお気軽にご相談頂ければ幸いです。

家族信託を途中で解除する(やめること)ができるのか?

2023-04-04

いったんは家族信託を利用しても、さまざまな事情で解除したいと考えるケースが少なくありません。家族信託の契約は途中解除できるのでしょうか?

当事者同士で合意解除すれば簡単に途中終了できますが、それ以外の場合には解除できない場合もあります。

この記事では家族信託の契約を途中で解除できるのはどういったケースなのか、解除のトラブルを防ぐにはどうすれば良いのかを弁護士が解説します。家族信託を利用してみたい方は、是非参考にしてみてください。

1.家族信託を解除できるケースとは

家族信託の契約は、途中でも終了させることが可能です。

家族信託を途中で解除できるのは以下の2つのケースです。

  • 委託者と受託者の間で解約の合意をした場合
  • 信託行為で定めた終了事由が発生した場合

以下でそれぞれのケースについて、詳しく確認しましょう。

1-1.委託者と受託者の間で解約の合意をした場合

家族信託の契約は、委託者と受託者との間の信託契約です。

委託者と受託者の双方が合意すれば、合意によって解約が可能です

家族信託の契約を終わらせたければ、契約の相手方へ解約の打診をしてみると良いでしょう。

ただし、解約するには双方の合意が必要なので、相手方が拒否した場合には合意による解約はできません。また、委託者が高齢者で認知症が進んでしまった場合にも有効な意思表示ができないために解約できない可能性があります。

1-2.信託契約で定めた終了事由が発生した場合

委託者と受託者の双方が合意できず家族信託契約を解約できない場合でも、信託契約であらかじめ定めておいた契約の終了事由に該当すれば契約を解約できます。

たとえば、「受託者が死亡したとき」「○年○月○日」などの具体的な終了事由を定めておくと良いでしょう。

1-3.信託契約を終了させるべき主な事情

家族信託の契約を終了させるべき主な事情として、以下のようなものがあります

  • 信託の目的を達成したとき、又は信託の目的を達成することができなくなったとき
  • 受託者が受益権の全部を固有財産で有する状態が1年間継続したとき
  • 受託者が欠けた場合であって、新受託者が就任しない状態が1年間継続したとき
  • 受託者が費用等の償還又は費用の前払を受けることができず、信託を終了させたとき
  • 信託の併合がされたとき
  • 信託の終了を命ずる裁判があったとき
  • 信託財産についての破産手続開始の決定があったとき
  • 委託者が破産手続開始の決定、再生手続開始の決定又は更生手続開始の決定を受けた場合において、信託契約の解除がされたとき
  • 信託行為において定めた終了事由が生じたとき

1-4.裁判が必要になるケースもある

家族信託の終了事由を契約で定めていなかった場合、契約を途中終了させるには訴訟を起こす必要があります。家族信託契約を終了させる合理的な事情があれば、裁判所が家族信託契約の終了を命じます。

2.家族信託終了後の財産帰属について

家族信託の契約では、委託者や受託者の死亡を終了事由と定めるケースも少なくありません。契約が終了すると、信託財産は誰のものになるのでしょうか?

2-1.残余財産の帰属先

家族信託が終了したときに残っている財産を「残余財産」といいます。

家族信託が終了した場合の残余財産の帰属方法については、信託契約で定めることが可能です。よって信託契約書に「残余財産の帰属先指定」が行われていれば、その内容に従って財産の帰属先が決まります

一方、信託契約書で残余財産帰属先の指定がない場合や、帰属先に指定された人が権利を放棄した場合委託者に権利が戻ります。委託者が死亡していればその相続人が帰属権利者となります

委託者も委託者の相続人もいない場合、残余財産は「清算受託者」のものとなります。

2-2.受益者が財産をもらえるわけではない

家族信託で利益を受ける権利者は受益者です。ただ家族信託の契約が終了したとき、受益者が財産を受け取れるわけではありません。受益者が相続人でもない場合には一切の権利を受け取れない可能性もあります。

受益者に財産を帰属させたい場合には、契約書にその旨記載しておくべきといえるでしょう。

2-3.残余財産の帰属先は契約で決められる

家族信託の残余財産については、帰属先を予め契約で定められます

委託者や受託者の死亡などによって家族信託が意図せず終了してしまった場合に備え、契約において帰属先の指定を行っておきましょう。

3.家族信託の設定や解除は弁護士へ相談を

家族信託契約を設定する際にはトラブルを防ぐため、契約の終了事由まで見据えて内容を決定しておくべきです。

また、どのようなスキームで家族信託契約を設定するかも非常に重要です。法律の専門知識がないと、適切な対応は困難となるでしょう。家族信託を利用したいときには、弁護士へ相談するようおすすめします。

京都の益川総合法律事務所では、遺産相続関係の案件に力を入れて取り組んでいます。家族信託を利用してみたい方や方法がわからない方などは、お気軽にご相談ください。

遺言執行者に関する相続法改正の内容

2023-03-20

2019年7月1日より、民法が改正されて遺言執行者に関する規定にも変更が加えられました。

これまで不明確だった遺言執行者の立場がより明確になり、業務を進めやすくなっています。

これから遺言書を作成するなら、遺言執行者をつけておくメリットが大きくなったといえるでしょう。

この記事では遺言執行者に関する相続法改正内容をお伝えします。

遺言書作成をご検討されている方は、ぜひ参考にしてみてください。

1.遺言執行者とは

遺言執行者とは、遺言内容を実現する職務を行う人です。

たとえば以下のようなことを行います。

  • 具体的な相続手続き(預金払戻しや相続人への分配、登記名義の変更など)
  • 遺贈
  • 寄付
  • 子どもの認知
  • 相続人の廃除や取消し
  • 保険金受取人の変更 

遺言執行者を指定しておくと、遺言内容が実現されやすくなります。また相続人が相続手続きをしなくて良いので、負担を軽減させる効果も期待できます。

遺言によって遺言執行者を指定できるので、信頼できる人を遺言執行者にしておくと良いでしょう。今すぐに遺言執行者を決められない場合、遺言執行者を指定すべき人を決めておくことも可能です。

2.改正法における遺言執行者に関する変更点

2019年7月の民法改正により、遺言執行者の立場が明確化されて業務の範囲も広がりました。以下では改正民法で遺言執行者にどういった変更があったのか、みていきましょう。

3.遺言執行者の立場や権限の明確化

改正前の民法では、遺言執行者は相続人の「代理人」とみなされていました。

しかし遺言執行者は、必ずしも相続人の利益のために動くとは限りません。

すると相続人から「代理人なのになぜ意思に反することをするのか」と責められ、トラブルになるケースがみられました。

そこで、改正法では、「相続人の代理人とみなす」のではなく、「遺言執行者としての独立した立場」を与えました。同時に遺言執行者の行為には相続人へ直接効力が発生することも明記されました。

このように、遺言執行者の立場や権限が明確化されたのが、1つ目の大きな改正点といえます。

民法第1012条(遺言執行者の権利義務)

遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。

民法第1015条(遺言執行者の行為の効果)

遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は、相続人に対して直接にその効力を生ずる。

4.遺言執行者の任務開始の通知義務

2つ目は、遺言執行者に相続人への通知義務が課されたことです。

法改正前は、遺言執行者が就任して任務を開始しても、相続人に通知する必要がありませんでした。それでは相続人としては不安定な立場に立たされてしまいます。相続人の知らないうちに遺言執行が進められるケースもありました。

そこで、改正法では、遺言執行者として指定された人が遺言執行を開始した場合、遅滞なく遺言内容を相続人に通知しなければならないことになったのです。

民法第1007条(遺言執行者の任務の開始)

遺言執行者が就職を承諾したときは、直ちにその任務を行わなければならない。

2 遺言執行者は、その任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならない。

5.遺言執行者による相続登記の申請

民法改正により「特定財産承継遺言」に関する取り扱いも変わります。

特定財産承継遺言とは、ある特定の不動産のような特定財産を承継させる旨の遺言です。

特定財産承継遺言の例

「A不動産を子どもXに相続させる」

これまで特定不動産を相続人へ相続させる旨の遺言が遺されていた場合、遺言執行者は単独では登記申請ができませんでした。相続人と一緒に相続登記申請しなければならないので、手間がかかっていたのです。

改正法では、遺言執行者が単独で相続登記の申請をできるようになっています。

6.遺言執行者の預貯金解約や払戻し

これまでの法律下でも、遺言執行者は、預金の払い戻し権限は解釈上、認められていました。

ただし、明文上では規定されていなかったのです。

そこで改正民法下では、遺言によって預貯金の承継が指定されている場合、遺言執行者が預金の解約や払戻しをできることが明記されました。

なお解約できる範囲は、「預貯金債権の全部が特定財産承継遺言の目的である場合」に限られ、一部のみの承継が指定されている場合には払い戻しなどができません。

たとえば「1000万円のA銀行における預金のうち300万円のみを子どもBに相続させる」という遺言がある場合、遺言執行者は300万円分のみの預金の解約払い戻しができないので注意が必要です。

民法第1014条3項

前項の財産が預貯金債権である場合には、遺言執行者は、同項に規定する行為のほか、その預金又は貯金の払戻しの請求及びその預金又は貯金に係る契約の解約の申入れをすることができる。ただし、解約の申入れについては、その預貯金債権の全部が特定財産承継遺言の目的である場合に限る。

7.復任権

改正民法では、遺言執行者の復任権も明確に認められました。

復任権とは、業務を他人に任せられる権限をいいます。改正前の民法下では復任権については「やむをえない事由」がある場合しか認められませんでした。

改正法下では、遺言者によって復任が禁止されていない限り、遺言執行者は自分の判断で第三者に業務を任せられます。

民法第1016条(遺言執行者の復任権)

遺言執行者は、自己の責任で第三者にその任務を行わせることができる。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

まとめ

改正相続法において、遺言執行者の権限が強められ、選任する意義が高まっているといえます。弁護士が遺言執行者へ就任することもできるので、京都でこれから遺言書を作成する方がおられましたらお気軽にご相談ください。

独身の「おひとりさま」が遺言書を書いた方がよい理由を弁護士が解説

2023-02-19

最近では、「おひとりさま」とよばれる独身の高齢者の方が増えています。

配偶者や子どもなどの親族がおらず、一人暮らしをされている方です。

おひとりさまの場合、死後の遺産の行方についてあまりしっかり考えることがないかもしれません。子どもや配偶者がいないので、「相続トラブルは起こらないだろう」と考える方もいるでしょう。

しかし、おひとりさまのケースでこそ、遺言書を作成しておく必要があります。

この記事では、独身のおひとりさまが遺言書を作成しておくべき理由を弁護士がお伝えします。

1.おひとりさまが遺言書を作成した方が良い理由

おひとりさまの場合に遺言書を作成した方が良い理由は以下のとおりです。

1-1.相続手続きがややこしくなる

おひとりさまであっても「相続人がいない」とは限りません。

親や兄弟姉妹がいたら、そういった方々が相続人となります。

親がおらず兄弟姉妹がおひとりさまご本人より先に亡くなっている場合には、兄弟姉妹の子どもである「甥や姪」が相続人になります。

ただ、兄弟姉妹や甥姪が相続する場合、相続手続きが非常に煩雑になります。

集めなければならない戸籍謄本類が大量になるからです。

死亡した方の、生まれてから死亡するまでの戸籍謄本類をすべて集めるだけではなく、親の戸籍謄本や兄弟姉妹の戸籍謄本類まで必要になってしまいます。

集めるべき戸籍類だけで40点以上になってしまうケースもあります。遺言書を作成しておかないと、兄弟姉妹や甥姪といった相続人に多大な負担をかけてしまうのです。

遺言書で誰に何を相続させるか決めておけば、法定相続人が戸籍類を集める必要はありません。

1-2.遺産分割協議が難しくなりやすい

おひとりさまが死亡して兄弟姉妹や甥姪が相続人となった場合、相続人同士で遺産分割協議を行って遺産分け方を決めなければなりません。

ただ、特に甥姪が相続人になると「お互いに疎遠でほとんど会ったこともない」というケースもあります。遺産分割協議を進めようにもお互いのコミュニケーションが難しく、遺産分けをしにくくなってしまうのです。

遺言書があれば相続人たちが遺産分割協議を行う必要がないので、相続人同士が疎遠でも問題になりません。

1-3.望む人に遺産を受け継がせられない

おひとりさまであっても、死後の財産は自分の望むように処分したい方が多いでしょう。

たとえば、慈善団体などに寄付する方法もありますし、お世話になった方へ残す方法もあります。

ところが、遺言書がないと、遺産はあまりかかわりのなかった甥姪に相続されてしまう可能性もあります。また、兄弟姉妹すらいない本当の意味での「天涯孤独」な方の場合、遺産は最終的に国のものとなってしまいます。

遺言書がないと、望む人や団体へ遺産を残せません。このこともおひとりさまが遺言書を作成すべき理由の1つとなるでしょう。

2.おひとりさまが遺言書を作成すべき状況

独身のおひとりさまが以下のような状況であれば、遺言書を作成するよう強くおすすめします。

  • 親が死亡して相続人は兄弟姉妹のみ
  • 兄弟姉妹の中に亡くなっている人がいる
  • 法定相続人以外の人へ遺産を遺したい
  • 天涯孤独で相続人となる親族が誰もいない
  • お世話になった人など、遺産を残したい相手がいる
  • 遺産を国に帰属させるのに抵抗があり、自分の財産の行方は自分で決めたい

3.遺言書の作成方法

遺言書の作成方法には、以下の3種類があります。

3-1.自筆証書遺言

自筆証書遺言とは、遺言者が全文を自筆しなければならない遺言書です。自宅で手軽に作成できますが、要式違反で無効になりやすく、死後に発見されにくい、破棄隠匿されやすいなどのリスクもあります。

3-2.公正証書遺言

公正証書遺言は、公証人に公文書として作成してもらう遺言書です。

公文書なので信用性が高く、無効になるリスクは非常に低くなっています。

作成するためには公証役場へ申込み、費用を払う必要があります。

3-3.秘密証書遺言

秘密証書遺言は内容を秘密にしておける遺言書です。公証人に認証してもらいますが、公証人にも中身をみられることはありません。作成には費用がかかり、保管は自分で行う必要があります。

3つの遺言方式の中でもっともおすすめするのは公正証書遺言です。

自筆証書遺言の場合、以下のようなデメリットが大きいためです。

【自筆証書遺言のデメリット】

  • 要式違反で無効になりやすい
  • 発見されないリスクがある(自宅保管の場合)
  • 破棄や隠匿のリスクがある(自宅保管の場合)
  • 発見した相続人は検認を受けなければならない(自宅保管の場合)

おひとりさまが相続に備えるなら、公正証書遺言を作成しておきましょう。

4.おひとりさまの相続で弁護士に依頼するメリット

おひとりさまが弁護士に遺言書作成を相談すると、弁護士が適切な遺言書作成方法をアドバイスします。遺言内容が定まっていない場合、遺言内容についてのご提案も可能です。

公正証書遺言の作成方法についてもアドバイスやサポートしますので、初めてでも安心して手続きを進めて頂けるかと思います。

京都の益川総合法律事務所では遺言書作成や遺産相続案件に力を入れて取り組んでいます。おひとりさまの相続対策は、お気軽にご相談ください。

独身の方(おひとり様)の遺産相続や対策方法を弁護士が解説

2023-01-20

独身の方がお亡くなりになると、誰が遺産相続するかご存知でしょうか?将来の相続に備えて、法定相続人や法定相続人がいない場合の相続方法についても知っておきましょう。

この記事では独身の「おひとり様」の場合にどのように遺産相続が行われるのか、弁護士が解説します。独身の方はぜひ参考にしてみてください。

1.独身の方の法定相続人

独身のおひとりさまであっても、法定相続人がいれば法定相続人が遺産を相続します。

法定相続人とは、民法の定める相続人です。

独身者の法定相続人は以下のとおりです。

1-1.第1順位は子どもや孫など

独身者であっても子どもがいるケースがあります。その場合、第1順位として子どもが優先的に相続人になります。

子どもがご本人より先に死亡していて孫がいたら、孫が代襲相続によって相続人になります。孫も先に死亡していてひ孫がいたら、ひ孫が相続人になります。このように直系卑属の代襲相続は、延々と続いていきます。

1-2.第2順位は親や祖父母など

独身の方に子どもや孫などの直系卑属がいない場合には、親が第2順位の法定相続人として遺産を相続します。親が先に死亡していて祖父母が生きていたら、祖父母が相続します。

1-3.第3順位は兄弟姉妹か甥姪

お亡くなりになった方に子どもなどの直系卑属も親などの直系尊属もいない場合には、第3順位である兄弟姉妹が相続人になります。兄弟姉妹ご本人より先に死亡していて甥や姪がいたら甥姪が代襲相続人として相続します。甥姪がご本人より先に死亡していても、甥姪の子どもは相続人になりません。

2.独身の方に法定相続人がいない場合の相続方法

独身のおひとり様の場合、近親者がまったくいないケースもあるでしょう。その場合「相続財産管理人」により、以下のような順番で遺産が配分されます。相続財産管理人とは、遺産を管理する職務を担う人です。利害関係人などによって家庭裁判所で選任されます。

以下でどういった人に遺産が配分されるのか、みてみましょう。

2-1.債権者

死亡した方に支払うべき債務がある場合、まずは遺産の中から債権者への支払いが行われます。たとえば以下のような負債がある場合です。

  • 借金していた
  • 家賃を払っていなかった
  • 税金を払っていなかった
  • 水道光熱費やスマホ代を払っていなかった

2-2.特定受遺者

特定受遺者とは、遺言によって遺産のうち特定の財産を受け取る人です。遺言が遺されていて、ある人に特定の財産を受け継がせるよう指定されている場合には、遺言とおりに遺産が受遺者に受け継がれます。

独身のおひとりさまの場合、お世話になった人などに遺産を遺したい場合もあるでしょう。そういったケースでは遺言書を作成して遺贈しておくようおすすめします。

2-3.特別縁故者

特別縁故者とは、被相続人と特別に親しい関係にあった人です。債権者や受遺者への支払をしても遺産にあまりがある場合には、特別縁故者への財産分与が行われます。特別縁故者に該当するのは、以下のような人です。

  • 被相続人を療養看護していた人
  • 被相続人と生計を同一にしていた内縁の夫や妻
  • 事実上の養子養親など

ただし、特別縁故者が財産を受け取るには、指定された期間内に家庭裁判所へ「特別縁故者への財産分与の申立て」をしなければならず、手間がかかります。お世話になった人などへ財産を譲りたい場合には、生前贈与するか遺言書を作成しておく方が良いでしょう。

2-4.財産の共有者

不動産などの財産については、他人と共有しているケースが珍しくありません。共有物件の場合、債権者も受遺者も特別縁故者もいなければ、他の共有者へ権利が引き継がれます。

2-5.国庫に帰属

財産を引き継ぐべき債権者も受遺者も特別縁故者もいない場合、最終的に財産は国のものとなります。

3.おひとりさまの相続対策

以上のように、おひとりさまが遺産相続について何の対応もしていなかった場合、最終的には遺産は国のものとなってしまいます。そういった事態を避けたい場合、遺言書を作成しておきましょう。

遺言書を作成すると、遺言書で指定したとおりに遺産を受け継がせることができるので、死後も自分の意思を実現できます。特別縁故者がいる場合でも、はじめから遺言書で近しい人を相続財産全部の「受遺者」として指定しておいたら、わざわざ相続財産管理人の選任や特別縁故者への財産分与の申立てをさせずに済みます。

3-1.法定相続人がいても遺言書は必要

法定相続人がいる場合でも、遺言書を作成しておく必要性は高いといえます。独身の方に子どもも親もいない場合、兄弟姉妹やその子どもである甥姪に遺産が引き継がれるためです。普段かかわりのない遠縁の親族に遺産が引き継がれるのを望まないなら、遺言によって近しい人へ遺産を遺しましょう。

3-2.遺言執行者を指定する

お一人様が遺言書を作成する際には、必ず遺言執行者をつけておくようおすすめします。遺言執行者がいないと遺言内容を実現する人がおらず、手続きが滞ってしまう可能性が高いからです。遺言書によって信頼できる人を指定しておきましょう。

4.相続対策は弁護士までご相談ください

京都の益川総合法律事務所では相続対策に力を入れて取り組んでいます。遺言書の作成や遺言執行者の就任も積極的にお引き受けいたします。独身の方で相続が気になっている場合、お気軽にご相談ください。

内縁の妻や夫、連れ子、離婚した時の子どもに相続権はある?京都の弁護士が解説!

2022-09-02
  • 内縁の妻には相続権がないのでしょうか?遺産を受け取れないのですか?
  • 連れ子は親の遺産を相続できないのですか?相続するにはどうしたら良いでしょうか?
  • 離婚した場合、子どもは親の遺産を相続できますか?その場合どのような手続きをとれば良いのでしょうか?

こういったご相談を受けるケースがよくあります。

今回は内縁の夫や妻、連れ子や離婚前の子どもの相続権について、京都の弁護士が解説します。

相続権のない人に相続させる方法や、相続人に相続させたくない方法についてもご説明しますので、お悩みの方はぜひ参考にしてみてください。

1.内縁の夫や妻の相続権

まずは内縁の夫や妻に相続権が認められるのか、みていきましょう。

1-1.内縁関係とは

内縁関係とは、婚姻届を提出していない事実上の夫婦関係を意味します。

婚姻届を提出していないので、夫婦であっても名字も戸籍も異なります。

ただし婚姻して夫婦共同生活をする意思を持ち、実際に夫婦として生活している実態があるので、一定程度までは法律上の「夫婦」としての保護を受けます。

一方、相続に関しては、内縁の夫婦に権利が認められません。

内縁関係の場合、パートナーが死亡しても一切遺産相続ができないのです。たとえばパートナーに子どもがいると、遺産はすべて子どもに相続されてしまいます。

内縁の配偶者は家も預貯金も相続できず、家を退去しなければならない可能性もあります。

1-2.内縁の夫や妻へ相続させる方法

内縁のパートナーへ相続させるには、「遺言書」を作成しましょう。

遺言書があれば、相続権のない人への「遺贈」ができるからです。たとえば自宅不動産や預貯金などを内縁の夫や妻へ遺贈しておけば、他に相続人がいても内縁の配偶者へ一定の遺産を遺せます。

ただし、子どもなどの相続人には「遺留分」が認められます。

すべての遺産を内縁の配偶者へ遺贈すると、子どもから内縁の配偶者へ「遺留分侵害額請求」が行われてトラブルになってしまうリスクも生じます。

内縁のパートナーへ財産を遺言によって遺贈する場合、子どもなどの遺留分権利者にも一定の資産を相続させる内容にするのが良いでしょう。

2.連れ子の相続権

次に「連れ子」の相続権についてご説明します。連れ子とは、結婚相手の前の配偶者との間の子どもを意味します。

例えば、AさんがBさんと結婚するとき、Bさんが前の夫との子どもの親権者になっているとしましょう。この場合、AさんにとってBさんの子どもは連れ子です。

連れ子は自分と直接の血のつながりはないけれど、結婚相手が親権者となっているので一緒に暮らすようになり、自分の子どものように可愛がる方も多数います。

ただし、連れ子には基本的に相続権がありません。あくまで結婚相手の子どもであり、自分とは親子関係がないからです。何の対応もしなければ連れ子に遺産を受け継がせることができません。

結婚後に実子ができていれば、実子にすべての財産が引き継がれてしまい、連れ子が不公平と感じる可能性もあります。

連れ子へ相続させる方法

連れ子へ遺産を相続させる方法は以下の2つです。

■養子縁組をする

連れ子と養子縁組をすると、連れ子とも法律上の親子関係ができます。すると連れ子は「子ども」として第一順位の優先的な遺産相続権を取得します。

実子がいる場合でも実子と同様の遺産相続権を取得できるので、公平に遺産相続できるでしょう。

この場合、実子と養子が話し合って遺産分割の方法を決定する必要があります。

■遺言書を作成する

2つ目の方法は遺言です。たとえば実子がいる場合でも、連れ子と実子に同等の遺産を遺す内容の遺言をしておけば不満は生じにくいでしょう。

実子と連れ子の取得割合を指定したり、特定の遺産を遺贈したりもできます。

3.離婚前の子どもの相続権

ご相談の多い3パターン目として、離婚前の子どもの相続権についてもみておきましょう。

離婚前の子どもとは、前婚の配偶者との間の子どもです。

離婚して親権者にならなかった場合、子どもとは没交渉となるケースもあります。そんなときでも子どもには相続権が認められるのでしょうか?

法律的に、婚姻時に生まれた子どもには基本的に相続権が認められます。その後に親が離婚したとしても子どもは相続権を失いません。特別な手続きを経なくても、親が死亡したら子どもは相続人になります。

親権者にならなかった親が再婚していたら、離婚前の子どもは親の新しい家族(再婚相手や子どもなど)と遺産分割協議を行って遺産分割方法を決定しなければなりません。

■離婚前の子どもに相続させない方法

離婚前の子どもに相続させたくない場合、やはり遺言書が役立ちます。

遺言で「離婚前の子どもには相続させない」「遺産はすべて現在の家族へ相続させる」旨の内容を指定しておけば、離婚前の子どもは相続できません。

ただし、遺留分を侵害すると遺留分侵害額請求が起こる可能性もあるので、一定の遺産は相続させるのが良いでしょう。

4.最後に

京都の益川総合法律事務所では遺産相続のサポートに力を入れて取り組んでいます。お悩みごとがありましたら、お気軽にご相談ください。

結婚していない人や子どもがいない夫婦の相続について

2022-08-24

結婚していない方や子どもがいないご夫婦の場合、特に相続対策をしておく必要性が高くなります。

例えば、子どものいないご夫婦の場合、一方が死亡すると配偶者と親や兄弟姉妹が遺産分割トラブルに巻き込まれるケースが少なくありません。

今回は結婚していない方、子どものいないご夫婦の相続対策方法について、京都の弁護士が解説します。ぜひ参考にしてみてください。

1.結婚していない人の相続

まずは、結婚しておらず子どもがいない方の相続についてみていきましょう。

1-1.結婚していない人の相続人

一度も結婚したことがなく子どものいない方の場合、以下の人が優先的に遺産を相続します。

①親や祖父母などの直系尊属

法律上、第1順位の相続人は子どもですが、子どもがいないので第2順位の親が相続人となります。親が死亡していて祖父母が存命の場合には祖父母が相続します。祖父母も死亡していて曽祖父母がいれば曽祖父母が相続人になります。

このように、親や祖父母などの「直接、上に遡っていく親族」を「直系尊属」と言います。

②兄弟姉妹または甥姪

親や祖父母などの直系尊属がいない場合、第3順位の兄弟姉妹が相続人になります。

兄弟姉妹が先に死亡していて、その子どもである甥姪がいる場合には、甥姪が代襲相続人として相続します。

なお、甥姪の子どもには相続権がありません。

③親も兄弟姉妹もいない場合には国庫に帰属

親も兄弟姉妹もおらず「相続人がいない」ケースでは、遺産は最終的に国のものとなります。

1-2.結婚していない人の相続対策

①遺言書を作成する

結婚していない方が相続に備えるには、遺言書が必須です。遺言書がないと、ほとんど交流のなかった甥姪などに相続されてしまうケースが少なくありません。

遺言書を作成すれば、自分の希望通りに遺産分割方法を指定できますし、相続権のない人にも遺贈できます。希望を叶えやすく遺産分割トラブルも防止できるメリットがあります。

②任意後見契約を利用する

子どものいない方の場合、老後に認知症になったときの財産管理も心配でしょう。

この点については、信頼できる専門家と任意後見契約を締結されるようおすすめします。

任意後見契約を締結しておけば、自分で財産管理できなくなったときに後見人が適切に管理してくれるので安心です。

当事務所の弁護士も任意後見人への就任を承っていますので、お気軽にご相談ください。

2.子どものいないご夫婦の相続

次に子どものいないご夫婦の場合の相続についてみていきましょう。

2-1.相続人になる人

①配偶者は常に相続人になる

配偶者は常に相続人になります。親族が配偶者しかいなければ、配偶者が全部の遺産を相続できます。

一方、親や兄弟姉妹が生きていれば、配偶者と親や兄弟姉妹の共同相続となります。この場合、遺産分割トラブルが起こりやすいので対応に注意が必要です。

②親などの直系尊属

死亡した人の親や祖父母などの直系尊属が生きていれば配偶者と親や祖父母などが共同相続人となります。この場合の法定相続分は、配偶者が3分の2、親や祖父母などが3分の1です。

③兄弟姉妹と甥姪

親や祖父母などの直系尊属はいないけれども兄弟姉妹や甥姪がいる場合、配偶者と兄弟姉妹(甥姪)が共同相続人となります。

この場合の法定相続分は、配偶者が4分の3、兄弟姉妹や甥姪が4分の1となります。

2-2.子どものいないご夫婦の相続では遺産分割トラブルが多い

子どものいないご夫婦の相続では、「配偶者と親」「配偶者と兄弟姉妹」が共同相続人となるケースが多々あります。

この場合、配偶者と親や兄弟姉妹が遺産分割協議を進めなければなりません。両者の仲が良くなければ意見が合わず、トラブルになる可能性があります。

子どもがいないご夫婦の場合にも、遺言書によって相続対策しておく必要性が極めて高いといえるでしょう。

たとえば、配偶者にすべての遺産を相続させる内容の遺言書があれば、配偶者は親や兄弟姉妹と遺産分割協議をする必要がありません。相続トラブルの防止に役立ちます。

ただし、親や祖父母などの直系尊属には「遺留分」が認められます。遺言や贈与によって遺留分を侵害すると遺留分侵害額請求が起こってかえってトラブルのもとになるケースが少なくありません。

親や祖父母のいる方の場合、そういった相続人へ遺留分相当額を相続させる内容の遺言書にしておくのが得策です。

なお、兄弟姉妹や甥姪には遺留分がありません。配偶者と兄弟姉妹が法定相続人になるケースでは、すべての遺産を配偶者へ遺しても大きな問題はないでしょう。

3.相続人の立場になったら弁護士までご相談を

結婚していないおひとりさまであっても法定相続人がいるケースが少なくありません。

子どものいないご夫婦の場合、パートナーが死亡して突然義理の親や義理の兄弟姉妹と遺産分割協議を行わねばならなくなってトラブルに巻き込まれるケースが多々あります。

相続人になって困ったときには、弁護士までご相談ください。親身になってアドバイスさせていただきますし、遺産分割協議の代理人なども努めさせていただきます。

京都の益川総合法律事務所では遺産相続に力を入れていますので、まずはお気軽にご相談ください。

中小企業の経営を引き継がせる際に注意すべき7つのポイント

2022-08-03

中小企業の経営を後継者へ引き継がせる際には、注意深く進めないと失敗する可能性が高くなります。

  • 後継者へ必要な会社株式を承継させられず他の親族へ分散してしまった
  • 後継者以外の相続人が遺留分侵害額請求をした
  • 高額な相続税がかかって後継者の負担となった
  • 経営の資質のない後継者を選んでしまった
  • 事業承継が間に合わず、後継者が育つ前に先代が倒れてしまった

上記のような事態が発生しないため、正しい対処方法を知っておきましょう。

今回は事業承継を円滑に進めるためのポイントを7つ、京都の弁護士がお伝えします。

1.後継者へ必要な資産を承継させる

事業承継を成功させるには、後継者へ経営に必要な資産を確実に引き継がせなければなりません。

具体的には「会社株式」と「事業用の資産」が重要です。

会社株式が他の相続人に分散してしまうと、経営に口出しをされて後継者による事業運営が難しくなってしまうケースも多々あります。

後継者へ資産を集中させるには、生前贈与と遺言が効果的です。

贈与税の控除や減額制度を用いて資産を承継させるとともに、後継者へ必要な遺産を相続させる遺言書を作成しておきましょう。

2.公正証書遺言を作成する

事業承継対策で遺言書を作成する際には、公正証書遺言を利用しましょう。

自己判断で自筆証書遺言を作成すると、無効になったり発見されなかったりするリスクが高くなるためです。

法務局に預ける制度を利用しても、遺言書の要式不備があるかどうかまで確認してもらえるわけではありません。無効になるリスクが高いままです。

確実に遺言書の効果を発生させて後継者へ遺産を受け継がせるため、公正証書遺言を作成しましょう。弁護士に遺言書作成手続きを委任するとより安心です。

3.遺留分対策をする

事業経営者の相続では、遺留分対策も必須です。

遺留分とは、子どもなどの法定相続人に認められる最低限の遺産取得割合をいいます。

遺言や生前贈与で後継者以外の相続人の遺留分を侵害したら、権利者が後継者へ遺留分侵害額請求を行ってトラブルになる可能性があります。

遺留分対策としては、生前に推定相続人と合意することで請求を封じられるケースもありますし、遺言や生前贈与の際に遺留分を侵害しないよう配慮する方法も効果的です。

状況に応じた対策方法をとるため、弁護士までご相談ください。

4.相続税の節税対策

事業承継では、高額な相続税が発生するケースが多々あります。

特に中小企業の株式を評価すると、ご本人たちが考えている以上に高額になる事例が多いので注意しなければなりません。

先代の生前に現預金を不動産に替える、所有している不動産を賃貸に出す、孫養子をとる、後継者へ生前贈与するなどさまざまな節税方法があるので、状況に合った方法を利用しましょう。

5.納税資金の準備

後継者が相続税を払えるように、納税資金を準備する必要もあります。

特に株式や事業用財産など換金しにくい資産を引き継がせた場合、相続税は高額なのに現金がなくて相続税を払えない事態が生じるリスクが発生しやすく注意が必要です。

納税資金準備方法として役に立つのが生命保険です。相続発生時に後継者へ高額な保険金を受け取らせれば、納税資金に使えます。

生命保険は通常遺産の範囲に入らないので、後継者へ受け取らせても基本的に遺産分割や遺留分の問題を生じません。

相続税の課税対象にはなりますが、「500万円×法定相続人数分」の控除も適用されます。

6.民事信託を利用する

事業承継において、民事信託を活用する方法もあります。民事信託とは、信頼できる親族などへ財産を預けて管理してもらう信託契約です。

具体的には、後継者へ会社株式を信託し、委託者(先代経営者)のために管理してもらいましょう。民事信託では、先代に「指図権」を残せるので株式を信託しても議決権行使は先代が行えます。

また、後継者に経営の資質がない場合には、信託契約を解約して別の後継者を探すことも可能です。

事業承継に民事信託を導入するといわば「お試し」で事業承継できる点が大きなメリットとなるでしょう。

なお、民事信託を設定する際には複雑な契約書作成や信託用口座の開設、登記などが必要となるため、一般的に弁護士や司法書士などの専門家によるサポートが必要です。

関心がありましたらお気軽にご相談ください。

7.事業承継には早めに取り掛かる

事業承継に失敗するパターンとして、時間不足が挙げられます。

承継が完了するまでの間に先代が倒れてしまい、混乱が生じたり承継できなくなったりするのです。

一般的に、「経営経験のない子どもへ事業承継させるには10年程度かかる」ともいわれています。

スムーズに事業承継を行うため、「まだ元気だから自分でできる」と考えるのではなく早めに計画を立て、実現へ向けて進めましょう。

8.最後に

京都の益川総合法律事務所では、相続や事業承継対策に力を入れて取り組んでいます。これまで多くの業種、規模の中小企業経営者の方へ事業承継の助言やサポートを行ってきました。

京都、滋賀、大阪、兵庫で事業承継をご検討の経営者様がおられましたら、お気軽にご相談ください。

会社経営者が遺言書を作成する際に注意すべきポイント

2022-06-22

会社経営者は、一般の方以上に「遺言書」を作成する必要性の高い立場です。

遺言書がないと、死後に大きなトラブルが発生し、後継者による会社経営に困難が生じてしまう危険があります。

この記事では、会社経営者が遺言書を作成すべき理由、作成の際のポイントについて、京都の弁護士が解説します。

今後、事業承継をお考えの経営者さまは、ぜひ参考にしてみてください。

1.会社経営者に遺言書が必要な理由

会社経営者が遺言書を遺すべき理由は、以下のとおりです。

1-1.後継者へ株式や事業用資産を引き継がせるため

遺言書は、後継者へ確実に会社株式や経営に必要な事業用資産を承継させるために必要です。

遺言書を遺さなければ、相続人たちは自分たちで話し合って遺産を分割しなければなりません。その際には、基本的に「法定相続分」に応じて分割されてしまいます。

法定相続分は、後継者だからといって特に多めに認められるものではありません。

後継者が会社株式や事業用資産を取得したいと希望しても、他の相続人が納得しなければ取得できない可能性があり、後継者による会社経営が困難となってしまうでしょう。

遺言書があれば、会社経営に必要な株式や事業用資産を後継者へ集中させられます。スムーズな事業承継を実現するには、遺言書が必須といえるでしょう。

1-2.相続争いを防止するため

遺言書がないと、相続人たちの間で相続争いが発生するリスクが高まります。

後継者が多めの遺産取得を希望しても、他の相続人が納得しないケースが多いですし、遺産の分け方で意見が合わない可能性もあります。

最終的には、評価額の高い不動産などを売却して分けざるを得なくなり、資産が失われるケースも少なくありません。

相続争いが後継者にとって負担となり、経営の足かせになるのも問題です。

相続争いを防止するためにも、遺言書を作成しましょう。

2.会社経営者の遺言におけるポイント

会社経営者が遺言書を作成する際には、以下の点に注意しましょう。

2-1.財産内容を整理する

まずは、財産内容を整理して、わかりやすく一覧表にまとめましょう。

会社経営者の資産内容は複雑で、高額になるケースが多数です。目録がないと、相続人たちにはどのような遺産があるのか伝わりません。

遺言書を作成するなら、資産内容の洗い出しからはじめてみてください。

2-2.後継者へ必要な資産を承継させる

次に重要なのは、後継者へ必要な資産を承継させることです。会社株式と事業用資産を相続させないと、経営の引き継ぎが困難となります。

後継者へ必要な資産を承継させる遺言内容にしましょう。

2-3.事業承継計画との同時進行

遺言書を作成するのと同時進行で、事業承継計画を立てて実行するのが良いです。

未経験の子どもに経営を引き継がせる場合、おおむね10年かかるといわれています。

事業承継を検討しているなら、早めに取り組みを開始しましょう。

2-4.遺留分に配慮する

後継者以外の相続人の遺留分にも、配慮しなければなりません。

遺留分とは、子どもや配偶者などの相続人に認められる最低限の遺産取得割合です。

後継者以外の子どもたちの遺留分を侵害すると、死後に後継者に対する「遺留分侵害額請求」が起こって、後継者に金銭的な負担が発生するリスクが発生します。

できれば、遺留分権利者には遺留分に相当する預金などの遺産を遺すと良いのですが、難しい場合には別の方法で遺留分対策をしましょう。

■遺留分に関する民法特例を適用

事業承継の事案では、遺留分に関する民法の特例を適用できる可能性があります。特例を利用すると、生前に推定相続人と合意して会社株式や事業用財産を遺留分の対象から外せます。

ただし、特定を適用するには一定要件を満たさねばなりません。経済産業大臣による確認を受けた後、家庭裁判所へ許可を求めなければならないなど、手続きも複雑です。

利用したいときには、弁護士へ相談してサポートを受ける方が確実でしょう。

2-5.遺言書が無効にならないように注意

せっかく遺言書を作成しても、無効になったり発見されなかったりしては意味がありません。

例えば、自己判断で自筆証書遺言を作成すると、要式不備で無効になるケースが多々あります。自宅で保管していると、発見されなかったり発見した相続人によって破棄されたり隠されたりするリスクも発生します。

また、認知症が進行してから遺言書を作成すると、やはり無効になってしまいますリスクが高まります。

遺言書を作成するなら、適切な方法で作成・保管して確実に効果を発揮できるようにしましょう。

3.遺言書を作成する方法

主に利用される遺言書には、自筆証書遺言と公正証書遺言があります。

自筆証書遺言を自分1人で作成すると無効になりやすいので、必ず弁護士へ相談し、できあがったものは法務局に預けるようお勧めします。

より確実性が高いのは、公正証書遺言です。こちらについても、遺言内容について、弁護士のアドバイスを受けておくと、後々のトラブルを防いでスムーズに事業承継を進めやすくなります。

4.最後に

益川総合法律事務所は京都の老舗法律事務所として、事業承継や相続案件に力を入れております。

多くの企業経営者の承継を成功に導いてきた実績がございますので、事業承継をお考えの方はぜひとも1度、ご相談ください。

遺言書の効力、無効になる場合をパターンごとに弁護士が解説

2022-06-14

「遺言書にはどのような効力が認められるのでしょうか?」

といったご相談を受けるケースがよくあります。

遺言書を作成すると相続分の指定や相続人以外の人への遺贈など、さまざまな事項を指定できます。相続トラブルを防ぐ効力もあります。

ただし認知症の方が遺言書を作成すると無効になってしまうリスクがあるので、遺言書を作成されるのであれば、元気なうちに早めに作成される方がよいです。

今回は遺言書の効力、無効になるケースや有効な遺言書を作成する方法について、京都の弁護士が解説します。

1.遺言書で指定できること

遺言書にはさまざまな効力があります。

まずは遺言によって何を指定できるのか、代表的な事項をお伝えします。

  • 相続分の指定
  • 遺産分割方法の指定
  • 一定期間における遺産分割の禁止
  • 遺贈
  • 寄付
  • 子どもの認知
  • 相続人の廃除や取消し
  • 遺言執行者の指定
  • 特別受益持戻し計算の免除
  • 生命保険受取人の指定や変更

遺言書には相続トラブル予防の効力がある

遺言書には相続トラブルを予防する効力も期待できます。

例えば、遺産分割方法を指定しておけば、相続人が遺産分割協議を行う必要がありません。意見が合わなくて対立してしまうトラブルを防げるでしょう。

遺言執行者を指定しておけばスムーズに遺言内容を実現できるので、遺言書が無視されたり放置されたりするトラブルを防げます。

死後にトラブルを防いでご希望を実現したいなら、遺言書の作成を検討しましょう。

2.遺言書が要式違反で無効になるパターン

遺言書に効力が認められない1つ目のパターンは「要式違反」です。

自筆証書遺言の場合、自分で要式を守った遺言書を作成しなければなりません。

要式を守らない遺言書は無効です。

よくある間違いをみてみましょう。

2-1.自筆していない部分がある

自筆証書遺言は、遺産目録の部分以外すべて自筆しなければなりません。

一部でもパソコンを使ったり代筆をお願いしたりすると無効になります。


2-2.日付を入れない

日付を入れ忘れると無効です。「○月吉日」など、日付を特定しない場合も無効になるので必ず年月日まで記入しましょう。


2-3.署名押印を忘れる

署名押印を忘れると遺言書に効力が認められません。


2-4.加除訂正方法を間違える

遺言書を書き間違えたときの加除訂正方法については、法律によって細かいルールが定められています。
きちんと従わないと無効になってしまうので正しい知識をもって対応しましょう。

3.遺言能力がなくて遺言書が無効になるパターン

遺言書の要式を守っていても「遺言能力が失われた状態で作成した」場合、無効になります。

3-1.遺言能力とは

遺言能力とは、遺言書を作成する意味を理解し、死後に遺言書によってどういった効果が発生するのかわかる能力です。

有効に遺言書を作成するには、遺言能力が必要です。

基本的には15歳以上の人に遺言能力が認められますが(民法961条)、認知症が進行して事理弁識能力が低下すると「遺言能力がない」と判断される可能性があります。

遺言能力のない人が作成した遺言書は無効であり、重度な認知症の方が遺言書を作成しても、効力が認められない可能性が高くなります。

3-2.遺言能力があるかどうかの判断基準

遺言能力があるかどうかについては、以下のような要素によって判断されます。

■医学的な診断、医師の意見

まずは医学的な診断や検査結果が重要な考慮要素となります。

例えば、以下のようなものは判断の指標として重要視されるでしょう。

  • 遺言書を作成した当時の診断書、カルテ
  • 要介護認定の有無や程度
  • 要介護認定時に提出された資料
  • 介護施設での記録
  • 介護日誌
  • 長谷川式スケールの点数

■当時の本人の言動

遺言者本人が作成当時、どういった言動をとっていたかも考慮されます。

例えば、日常的に徘徊や妄想など、異常な行動や言動があれば遺言能力がなかったと判断される可能性が高まります。

判断能力が十分だった頃の行動や言動と、実際の遺言内容との間に大きな剥離がある場合にも、遺言能力が怪しまれる可能性があります。

■遺言書の内容や表現

遺言書の内容や表現そのものも遺言能力の判断の指標になります。

例えば、複数の収益不動産や株式の遺産分割方法を指定するなど、複雑な遺言内容であれば高度な判断能力が必要です。難しい、遺言内容であるにもかかわらず本人の能力に不安があれば、遺言能力がないとされる可能性が高まります。

反対に、少額の預金を特定の相続人に残すだけ、全財産を配偶者に残すだけなどの簡単な内容であれば、遺言能力が認められやすいでしょう。

4.遺言書の効力に疑問がある場合には

「遺言書が無効なのではないか」と考えられる場合、まずは他の相続人や受遺者と話し合って遺言書に従うべきかどうか検討されることになります。全員が納得すれば、遺言書を無視して、遺産分割協議で遺産を分けることも可能となります。

話し合っても合意できないなら、家庭裁判所で遺言無効確認調停を申し立てられることになります。

それでも合意が難しければ、最終的に地方裁判所で遺言無効確認訴訟が提起されます。

5.最後に

遺言書を作成するのであれば、適切な方法で作成する必要があります。

遺言書の有効性を巡ってトラブルが発生すると、熾烈な争いに発展して紛争が長期化するケースも多々あります。

いずれの場合でも、弁護士によるサポートが必要になるので、困ったときには京都の益川総合法律事務所までご相談ください。

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