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家督相続を相続人たる長男から主張された時の対処法

2023-10-01

日本でも、生前は家督相続が採用されていました。

そして、現在でも、長男から他の相続人に対して、「自分が家督を継ぐから、相続財産を全て取得するべきである」旨の話をされることがあります。

そこで、今回は、相続人である長男から家督相続を主張された場合の対処法について、京都の弁護士が解説いたします。同じ状況の方は、是非参考になさってください。

1.家督相続とは

家督相続とは、戦前の日本で採用されていた遺産相続の方法で、家督である長男が相続財産を全て取得する相続方法です。

当時の日本では、家制度が確立されており、家のトップである戸主(長男)が全ての財産を取得していたのです。

この家督相続は、昭和22(1947)年5月2日まで施行されていましたが、戦後において重視された法の下の平等の理念等に反するため、戦後すぐに廃止されました。

しかし、現在でも、長男から、家督相続を主張されることは比較的多くのケースでみられます。

2.遺言書がある場合

長男が家督相続を主張するケースでは、「長男にすべての財産を相続させる」旨の遺言書が作成されていることも多いです。

このような場合には、下記の通り、他の相続人は長男に対して、遺言書が無効である旨を主張するか、又は遺留分の請求を行うことになります。

2-1.遺言書が無効である旨主張する

遺言書が無効である理由としては、①遺言書が偽造である②遺言書作成当時、被相続人が認知症であり遺言能力がないとの2つの主張がされることが多いです。

①の遺言書が偽造である旨の主張は、遺言書が公証役場で作成されたものでなく、自筆証書遺言である時に、主張されることが多いです。

この場合には、被相続人の筆跡との同一性、遺言書の体裁等、被相続人に遺言書作成の動機があるかや、遺言書作成に至る経緯、遺言書の保管状況や発見状況等をもとに、その遺言書が偽造であるか否かが判断されることになります。

この辺りは、「遺言書の偽造が疑われる場合の判断要素は何?」という記事で詳しく解説していますので、興味がある方は参考になさってください。

②の被相続人には遺言能力がない旨の主張は、遺言書作成当時、被相続人が認知症を患っている時に主張されることが多いです。

この場合には、認知症の程度、遺言書の内容の複雑性、被相続人に遺言書作成の動機があるかや、遺言書作成に至る経緯、年齢などをもとに、被相続人に遺言能力が認められるか否かが判断されることになります。

この辺りは、「遺言能力とは?認知症の高齢者が作成した遺言書は有効なのか。」という記事で詳しく解説していますので、興味がある方は参考になさってください。

2-2.遺留分侵害額請求を行う

もし、「長男に全財産を相続させる」との遺言書が有効であったとしても他の相続人は長男に対して、遺留分侵害額請求を行うことができます

遺留分とは、被相続人の兄弟姉妹以外の法定相続人に認められる、最低限度の遺産取得割合をいいます。

配偶者や子どものみが法定相続人になる場合には、遺留分の割合は2分の1となります。その割合を、各法定相続人が法定相続分に応じて取得します。

例えば、6,000万円の遺産があって、相続人が長男、長女、次男であるとします

この場合、長女や次男にも6分の1ずつの遺留分が認められます。そのため、長女や次男は、長男に対して、1,000万円ずつの遺留分の請求が可能となるのです。

但し、遺留分侵害額請求には時効があるので、気を付けましょう。

相続開始と遺留分侵害の両方の事実を知ってから、1年以内に請求しないと権利が失われてしまいます。

遺留分については、「遺留分侵害額請求をしたい方へ」との記事で詳しく解説していますので、是非参考になさってください。

3.遺言書がない場合

遺言書がない場合には、長男がいくら家督相続を主張しようが、相続人は法定相続分に応じて、遺産を取得します

長男であろうが、他の子どもであろうが、法定相続分は変わりません

そのため、他の相続人は長男に対して、まずは法定相続分が長男と他の相続人で変わらないことを説明することになります。

それで、長男が納得すれば、法定相続分に応じて、相続人が平等に遺産を取得すれば良いです。

他方、説明してもなお長男が納得しなければ、弁護士に依頼頂くのが良いと思います。弁護士がおらず、兄妹だけの話合いであれば、長男も他の兄妹を押し切れると考えがちですが、弁護士が入ると諦めることが多いからです。

もちろん、弁護士に依頼頂いたからといって、弁護士がご依頼者の意向を無視して対応することはありません、もし、ご依頼者に、全部は嫌だけど少しだけ長男に多く遺産を渡したい等のご意向があれば、そのご意向を踏まえて対応を行っていくことになります。

4.最後に

今回は、相続人である長男から家督相続を主張された場合の対処法を解説いたしました。

戦後すぐに家督相続という制度は廃止されていますが、今でも長男から家督相続の主張がされることは少なくありません。

益川総合法律事務所では、遺産相続案件に注力しています。長男から家督相続の主張をうけた方などは、是非お気軽にご相談ください。

遺産相続問題は弁護士にいつ相談すればよいの?

2023-09-24

こんにちは。

弁護士の益川教親です。

「遺産相続の問題っていつ弁護士に相談すれば良いの?」というご相談を頂くことがあります。

そこで今回は、そんな方に向けて、遺産相続問題をいつ弁護士に相談すべきかについて、お話しさせて頂きます。

その方が相続人の立場なのか、遺産を譲り渡す被相続人の立場なのかによって、弁護士に相談すべきタイミングは変わってきます。そこで、以下では、場合を分けてお話しさせて頂きます。

1.相続人の立場の方

1-1.被相続人の生前について

実は、被相続人の生前に、相続人の立場の方から、ご相談頂くことも多いです。

よくあるご相談が、「両親の相続の際に兄弟と揉めそうなんですけど、どうすればよいですか?」といったご相談になります。

ご両親とご相談頂く相続人の方の関係性から、ご両親がその相続人の方のお願いを聞いてくれそうなら、ご両親にこのような遺言書を書いて欲しいとお願いするのが良いかと思います。

それが難しそうなのであれば、弁護士に生前にご相談頂いても、中々打つべき対策がないというのが実情です。

但し、ご相談を受ける中で、私の方から、①これは事前にやっておいた方が良いですよ、とのお話しができたり、②相続が発生した際の流れ等はお伝えすることはできます。

そうすると、そのご相談者の方から、「具体的な流れも分かって、だいぶ気が楽になりました」であったり、「相続が発生した際に、依頼したい弁護士さんが見つかって良かったです」などのお言葉を頂戴することもあります。

なので、被相続人の生前であっても、相続のことが気になっている方は、その時点ですぐにご相談を頂いてもよいのかもしれません。

1-2.被相続人が亡くなった後について

この場合は、可能な限り早いタイミングで、ご相談頂くことを頂くことをお勧めいたします。早めにご相談頂くことで、今後すべきことや、打つべき対策についてお話しできるためです。

被相続人が亡くなってから、ある程度期間を空けてから、弁護士に相談した方がいいんじゃないの?」と思われる方もいらっしゃいますが、ご相談自体は、特に期間を空けて頂く必要はございません

但し、当事務所にご依頼頂いた後に、緊急の必要がない限り、四十九日法要が終わるまでは、他の相続人に書面を送付するのは控え、それ以外の準備をさせて頂くことも多いです。

これは、他の相続人に対する書面送付が早すぎて、余計な争いを生むのを防止するためです。

もちろん、ご依頼者の方が早く書面を送ってほしいというご意向があれば、そのご意向通りに対応させて頂きます。

なので、他の相続人への書面送付時期についても、ご依頼者の方との、話合いをもとに、進めていくことになります。

なお、当然ですが、当事務所の弁護士は、ご依頼者に対する守秘義務を負っています。そのため、弁護士にご相談頂いた時期やご依頼頂いた時期が、他の相続人に漏れることはありません。

そのため、弁護士へのご相談やご依頼のタイミングが、お亡くなりになってからすぐでも、特に問題ありませんし、当職の経験上も、ご相談やご依頼のタイミングが早いことを理由に、他の相続人とトラブルになったことはありません。

2.被相続人の立場の方

ご自身が遺産を譲り渡す被相続人の立場の方は、可能な限り、早めに弁護士にご相談頂くことをお勧めいたします

なぜなら、あまり考えたくないことなのですが、遺言書作成の準備中などに、お亡くなりになる可能性もあり、その結果、相続人同士が揉めてしまう等の事態も生じ得るからです。

基本的に、被相続人の立場の方が、弁護士に御相談頂く場合には、一緒に遺言書を作成させて頂くことが多いです。

その中で、その方の望みとして、①相続人同士が揉めてほしくないのか、それとも、②ある相続人に遺産を全部渡したいのか、等を確認していくことになります。

①の相続人同士が揉めて欲しくないのであれば、他の相続人の「遺留分」という法律上最低限保障されている遺産取得割合にも配慮して、遺言書を作成する必要があります。

そして、「遺留分」に配慮するためには、その方の遺産がいくらぐらいなのか等を判断する必要がありますし、その上で弁護士とご依頼者が一緒に遺言書の内容を考えていくことになります。

②のある相続人に遺産を全部渡したいとお考えなのであれば、遺産を全て把握した上で、その遺産全てを特定の相続人に相続させる旨の遺言書を作成していくことになります。

このように、被相続人の方からしても、遺言書作成によって、叶えたい望みがあるかと思います。

しかし、万一、遺言書作成前にお亡くなりになってしまえば、その望みは一切叶えられなくなってしまいます

なので、被相続人の立場の方については、可能な限り、早く、弁護士にご相談頂きたいと考えています。

時々、「誰にどれだけ遺産をあげるか決まっていないんだけど、弁護士に相談しても良いの?」と仰る方もいますが、全く問題ありません。

そんな方も、弁護士と話をしていく中で頭が整理されて、誰にどれだけ遺産をあげるか決めていかれますので、何も決まっていなくても、ご相談ください。

但し、「誰にどれだけ遺産をあげるか」を決めて頂くのはご自身です。

これはご自身の人生の集大成の決断であり、弁護士が決められる内容ではありません。

そのため、弁護士との話の中で、最終的にはご自身でご決断頂く必要はあります。

3.最後に

今回は、「遺産相続問題は弁護士にいつ相談すればよいの?」というテーマで、お話しさせて頂きました。

基本的には、気になったタイミングですぐに弁護士にご相談頂ければと思います。

まさに「思い立ったが吉日」です。

もしかしたら、弁護士に相談をすることは、あまり気がすすまないかもしれませんが、それが大きな1歩になると信じています。

少しでも、コラムを見て頂いた方の背中を押せたのであれば、嬉しいです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

相続登記の義務化とは?令和6年4月1日から施行

2023-09-16

これまで相続登記の申請は義務ではなかったのですが、令和6年4月1日から、相続登記の申請が義務化されることになります。

そこで、今回は、そもそも相続登記とは何かや、相続登記の義務化の内容について、京都の弁護士が解説します。相続によって不動産を取得する方は、是非参考になさってください。

1.相続登記とは

相続登記とは、相続した不動産について、不動産登記簿の権利者の名義を相続人に変更することを言います。

この名義変更を行うためには、法務局に申請をする必要があります。

この相続登記を行うことによって初めて、登記簿上からも、相続によって不動産の所有権が相続人に移転したことが分かることになります。

不動産の所有者を調べるときは、一般的にこの不動産登記簿を確認します。そのため、相続登記を行うことによって、第三者からも相続不動産の所有者が当該相続人であることが分かるのです。

2.相続登記の義務化の内容

今回の相続登記の義務化によって、

①相続人は、不動産(土地・建物)を相続で取得したことを知った日から3年以内に、相続登記の申請をすることが義務となりました。

②正当な理由がないのに、相続登記をしない場合には、10万円以下の過料が科せられる可能性があります。

③この相続登記の義務化の施行(開始)時期は、令和6年(2024年)4月1日です。

以下では、それぞれの内容について解説していきます。

2-1.3年以内に相続登記の申請を行う必要がある

相続人は、相続により不動産(土地・建物)を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記の申請を行うことが義務となりました。

それでは、もし3年以内に遺産分割が成立しない場合などは、どのようにすればよいのでしょうか。以下では、実際のケース毎に、登記申請の内容を解説していきます。

■実際のケース毎に登記申請の内容を解説

①3年以内に遺産分割が成立しなかった場合

相続登記の義務化に伴って、早期の遺産分割が難しい場合などのために、「相続人申告登記」という新たな登記が設けられました。これは、戸籍などを提出して自分が相続人であることを申告する登記であり、簡易な手続きで行うことができます。

そのため、遺産分割が成立しない場合には、まずは、3年以内に相続人申告登記を行うことになります。

その後、実際に遺産分割が完了した場合には、その遺産分割が成立した日から3年以内にその内容を踏まえた相続登記を行うことになります。

②3年以内に遺産分割が成立した場合

3年以内に遺産分割が成立した場合には、その遺産分割の内容を踏まえた相続登記を行うことになります。

但し、実際に遺産分割が完了したのが3年ギリギリのところで、3年以内に相続登記を行うのが難しいなどの場合には、3年以内に相続人申告登記を行った上で、後は遺産分割が成立した日から3年以内に、遺産分割の内容を踏まえた相続登記を行うことになります。

③遺言書がある場合

遺言書がある場合には、その遺言書によって不動産の所有権を取得した人が、取得を知った日から3年以内に、登記の申請を行うことになります。法務省の資料によると、この登記の申請は、相続登記ではなく、相続人申告登記でもよいとされています。

2-2.相続登記をしない場合に過料が科せられる

正当な理由がないのに、上記の相続登記をしない場合には、10万円以下の過料が科せられる可能性があります。

「正当な理由」とは、①数次相続が発生して相続人が極めて多数になり、かつ、戸籍関係書類等の収集や他の相続人の把握等に多くの時間を要する場合、②遺言の有効性等が争われている場合、③重病等である場合、④DV被害者等である場合、⑤経済的に困窮している場合をいうとされています。

法務省の資料によれば、登記義務に違反しても、登記官がいきなり裁判所への過料通知(裁判所に過料を科す裁判を求める通知)を行うわけではないようです。登記官が、あらかじめ登記申請の義務を負う者に催告をして、それでも催告を受けた人が登記申請を行わなかった時にはじめて、裁判所への過料通知を行うようです。

2-3.令和6年4月1日から開始

相続登記の義務化は、令和6年(2024年)4月1日から開始されます。

そして、注意が必要なのは、この相続登記の義務化は、令和6年4月1日よりも前に相続が発生していたケースでも、登記義務が課せられることです。要は、相続が発生した時期を問わず、全てのケースで相続登記が要求されるため、過去に相続によって不動産を取得しているのに、相続登記をしていなかった人も登記義務を負うことになります。

令和6年4月1日よりも前に相続した不動産については、令和9年3月31日までに相続登記申請を行うことが必要になります。令和9年3月31日というのは、相続登記の義務化の開始日である令和6年4月1日から3年間猶予が与えられていることになります。

3.相続登記が義務化された背景

これまで相続登記の申請が義務ではなく、相続登記をしない人が一定数存在しました。これにより、登記簿を見ても所有者が分からない「所有者不明土地」が全国で増加しました。

このような「所有者不明土地」は、不動産がしっかり管理されないことも多く、隣接する土地への悪影響が発生していました。また、所有者が分からない場合には、公共事業や復旧・復興事業が円滑に進まず、民間取引も阻害されることになってしまっていました。

このような問題解決のために、法律が改正され、相続登記が義務化されたのです。

4.最後に

今回は、相続登記の義務化について解説しました。

今回の改正により、3年以内に遺産分割を完了しないと、相続人申告登記と相続登記という2回の登記が必要になるので、早期に遺産分割協議を始めることが必要になったといえます。

もし相続人同士で話し合っても、中々合意できない場合には、弁護士にご相談頂ければと思います。弁護士が入ることにより、遺産分割が速やかに解決できることもありますので。

京都の益川総合法律事務所では、遺産相続案件に力を入れて取り組んでいます。遺産分割がなかなか進まず困っている方がおられましたら、お気軽にご相談ください。

【参考資料】

令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント(法務省民事局)

https://www.moj.go.jp/content/001401146.pdf

遺産分割協議の期限は10年間?京都の弁護士が解説

2023-09-10

「相続法改正によって、遺産分割協議の期限が10年になったと聞いたのですが、本当ですか?」といった趣旨のご質問をお受けすることがあります。

そこで、今回は、令和3年の相続法改正によって、遺産分割協議の期限が10年になったと言われる理由について、京都の弁護士が解説いたします。気になった方は是非参考になさって下さい。

1.遺産分割協議に期間制限はない

まず、前提として、相続法改正によっても、遺産分割協議に期間制限は設けられていません

なので、相続開始から10年が経過したとしても、相続人が遺産の分け方について協議し、遺産分割を行うことは可能です。

2.特別受益や寄与分の主張が10年に制限された

それでは、なぜ、相続法改正によって、遺産分割協議を10年以内にしなければならないとの誤解が生じたのでしょうか。

それは、相続法改正によって、相続開始から10年以内の遺産分割でなければ、特別受益や寄与分の主張が出来ないとされたためです。

特別受益とは、特定の相続人が生前贈与や遺贈などによって受けた利益のことを言います。また、寄与分とは、被相続人の財産の形成や維持に特別な貢献をした相続人に認められる、上乗せの相続分を意味します。

この特別受益については「遺産分割と生前贈与の関係について」という記事で、また、寄与分については「寄与分とは」という記事で詳細に解説しています。特別受益や、寄与分について興味がある方は、そちらの記事を参照なさってください。

上記のように、特別受益や寄与分の主張が出来なくなると、遺産分割においては、生前贈与や特定の相続人の貢献を無視して、法定相続分によって画一的に遺産分割を処理することになります。

特別受益や寄与分の主張に期間制限が設けられた理由は、主に2つあります。

1点目は、遺産分割がされないまま、長期間放置されると、相続人が亡くなり更に相続が発生するなど、相続が繰り返され、遺産の管理・処分が困難になるので、長期間放置されるケースを解消するためです。

2点目は、相続開始から長期間が経過するうちに、特別受益や寄与分に関する具体的な証拠等も無くなってしまい、これらを考慮するのが難しくなるためです。

■特別受益や寄与分を考慮したい場合

上記のように、相続開始から10年経過すると、特別受益や寄与分の主張ができなくなるため、10年以内に遺産分割を行う必要があります。

もし、相続開始からもうすぐ10年が経ちそうだけれど、中々遺産分割協議がまとまる気配がない場合には、家庭裁判所に、遺産分割調停や審判を申し立てるのをオススメします。10年以内に、これらの処理をしておけば、実際に遺産分割がまとまるのが、10年を経過していたとしても、特別受益や寄与分の主張を行うことができ、これらを考慮することができるようになります。

なお、家庭裁判所への調停等の処理を行わず、相続開始から10年が経過したとしても、相続人全員が合意すれば、特別受益や寄与分が考慮することはできます。但し、通常は不利益を受ける相続人が同意しないと考えられます。

3.いつから新しいルールが適用されるか

先ほどの、特別受益や寄与分の期間制限のルールについては、令和5年4月1日から適用されています。そして、この新しいルールについては、令和5年4月1日よりも前に発生している相続についても全て適用されることになります。

但し、一定の猶予期間は認められ、令和5年4月1日時点で相続開始から10年間が経っていたとしても、令和10年3月31日までの間は、特別受益や寄与分の主張ができることとなります。

4.遺産分割後に相続登記をしなければならない

令和6年4月1日から、相続登記の申請が義務化されます。

これにより、遺産分割によって不動産を取得した相続人は、遺産分割をした日から3年以内に、相続登記の申請をしなければならなくなります。

また、早期に遺産分割をすることが困難な場合には、法定相続分による相続登記申請を行うか、又は「相続人申告登記」という手続きを法務局にとる必要が出てきます。これらの相続登記との関係でも、早めに遺産分割を行った方がよいです。

5.最後に

今回は、相続法改正によって規定された、特別受益や寄与分の主張の期間制限について、解説しました。相続開始から長期間放置された場合、特別受益や寄与分の主張が出来なくなりますし、場合によっては相続人が亡くなってしまい、関係者が増え協議がまとまりづらくなります。

もし相続人同士で話し合っても、早めに遺産分割するのが難しければ、弁護士に相談してください。弁護士が間に入れば、相続人同士で直接話さなくて良いので、お互いに感情を抑えて話し合いができます。

京都の益川総合法律事務所では、遺産分割案件に力を入れて取り組んでいます。遺産分割がなかなか進まず困っている方がおられましたら、お気軽にご相談ください。

異父兄弟や異母兄弟に相続権が認められるの?

2023-09-03

異父兄弟や異母兄弟も遺産相続をすることができるのでしょうか?

といったご相談を頂くことがあります。

そこで、今回は、異父兄弟や異母兄弟に相続権が認められるかについて、京都の弁護士が解説します。気になっておられる方は、是非参考になさってください。

1.異父兄妹や異母兄妹とは?

異父兄弟とは、母親が同じで父親が異なる兄妹を言います。

例えば、母親が離婚して、その母親が再婚した場合、前の夫との子どもと、現在の夫との子どもがいることがあります。このような場合には、子ども達は異父兄弟となります。

反対に、父親が離婚して、その父親が再婚した場合、前妻との子どもと、現在の妻との子どもがいることがあり、このような場合には、子ども達は異母兄弟となります。

また、父親が離婚していなくても、父親が認知した子どもがいる場合、妻との子どもと認知した子どもの関係は、父親を共にする異母兄弟となります。

以下では、記載の便宜上、異父兄弟と異母兄弟をともに「異母兄弟」として、記載しますが、異父兄弟にも通じる内容になっております。

それでは、異母兄弟に相続権が認められるのでしょうか?以下では、亡くなった方を分けて記載します。

2.父親(母親)が亡くなった場合

異母兄弟において、父親が亡くなった場合、異母兄弟達にとっては、それぞれ自分の血のつながった父親が亡くなったことになります。

そして、父親が離婚して、前妻との子どもの親権者にならなかったとしても、その前妻との子どもである異母兄弟も、父親の相続人になります

仮に、離婚して以降、父親が前妻との子どもと会っていなかったとしても、その子どもには相続権が認められますし、相続権を取得するために、何か特別な手続きが必要なわけでもありません。

なぜなら、子どもが常に第1順位の相続人であり、これは離婚しようが親権者でなかろうが関係ないためです。

3.異母兄弟姉妹や異父兄弟姉妹が亡くなった場合

それでは、異母兄弟姉妹が亡くなった場合はどうでしょうか。例えば、現在の妻との子どもが亡くなり、前妻との子どもは相続権を取得するのでしょうか。

法律的には、異母兄弟姉妹も相続権を取得しうることになります。

具体的には、亡くなった方に子どもがおらず、両親も既に亡くなっていた場合には、異母兄弟姉妹にも相続権が発生することになります。

そもそも、法律上、配偶者は常に相続人になり、残りの相続について第1順位の相続人は子ども、第2順位の相続人は直系尊属(両親)、第3順位の相続人は兄妹姉妹になります。そして、異母兄弟姉妹もこの第3順位の兄妹姉妹に含まれるのです。

但し、異母兄弟姉妹の相続割合は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続割合の半分とされています。

例えば、父親には前妻との子どもが1人おり、その後再婚して子どもが2人できたとします。そして、再婚して出来た子どものうち、1人が亡くなり、その子には配偶者や子どもがおらず、両親も既に亡くなっていたとします。この場合、前妻との子どもと、再婚後の子どもが兄妹姉妹として相続人になります。但し、前妻との子どもについては、再婚後の子どもの相続割合の半分になります。そのため、前妻との子どもが3分の1再婚後の子どもが3分の2の遺産を取得することになります。

■異母兄弟姉妹や異父兄弟姉妹に相続をさせない方法

異母兄弟姉妹同士は、前妻の子どもと現在の妻の子どもという関係にあるため、会ったことさえないこともあります。そのため、異母兄弟姉妹に、自身の遺産を相続させたくないとの考えに至ることもあるかと思います。

異母兄弟姉妹に相続をさせない方法としては、「遺言書を作成する」方法があります。遺言書において、異母兄弟姉妹とは異なる人に財産を渡す旨記載しておけば、異母兄弟姉妹に遺産が渡ることを防ぐことができます。

亡くなった方の兄弟姉妹には、遺留分という法律上最低限保証されている権利もありませんので、遺言書を作成すれば、異母兄弟姉妹に遺産がいくことは一切ありません。

4.最後に

今回は、異父兄弟や異母兄弟に相続権が認められるのかについて、解説しました。

結論としては、異父兄弟や異母兄弟にも、相続権が認められることになります。

異父兄弟や異母兄弟がいらっしゃる場合には、相続で揉めやすいため、事前に遺言書を作成しておくのが無難です。また、両親が亡くなったが、遺言書が無く、揉めそうと思われた場合などは、早めに弁護士に相談された方がよいです。

京都の益川総合法律事務所では遺産相続のサポートに力を入れて取り組んでいます。お悩みごとがありましたら、お気軽にご相談ください。

遺産分割において弁護士が関与する割合はどれくらい?

2023-08-28

こんにちは。

弁護士の益川教親です。

被相続人がお亡くなりになった後、遺言書がなければ、遺産分割を行うことになりますが、相続人同士では中々話がまとまらないこともあります。

このように中々話がまとまらない遺産分割事件において、弁護士が関与する割合はどのぐらいでしょうか?

私自身が弁護士であるためか、弁護士が関与しない遺産分割事件というのを中々見る機会がなく、その割合を正直よく分かっていません。

そこで、今回は、最新のデータを調べてみましたので、もし良かったら参考になさって下さい。

1.遺産分割調停(審判)事件における弁護士の関与割合

まず、前提として、今回参照したデータは、令和3年に終結した遺産分割事件(遺産分割調停が成立した事件と審判が認容された事件)について、弁護士が関与していた割合となります。

そして、令和3年に終結した遺産分割事件の総数は、6996件となっています。

これらの案件は、相続人間で話し合っても決着がつかずに、家庭裁判所に持ち込まれた案件なので、相続人同士で話がまとまらなかった遺産分割と言ってよいと思います。

それでは、これらの案件について、弁護士が関与している割合はどうなっているでしょうか?

■代理人弁護士の関与の有無(総数6996件)

有り    5939件

無し    1057件

関与割合  84.89%(約85%)

上記のように、約85%の遺産分割事件については、代理人として弁護士が関与しているようです。

逆に言えば、約15%の遺産分割事件については、代理人弁護士が関与せずに、当事者のみで調停や審判が進められているようです。

但し、私もそうですが、遺産分割調停や審判をご自身で行っている方からご相談を受けることもあります。そのため、おそらく代理人弁護士が関与していない案件についても、適宜、弁護士に相談はしているのだと思います。

2.遺産の価格別の弁護士の関与割合

次に、遺産の総額と弁護士の関与割合が関係するのかも調べてみました。

遺産の総額が高ければ、弁護士の関与割合も高い結果になっているのでしょうか?

遺産の価格別(総額別)の代理人弁護士の関与割合については、下記のようになっています。

■1000万円以下(総数2310件)

有り   1807件

無し    503件

関与割合 78.22%(約78%)

■5000万円以下(総数3052件)

有り   2622件

無し    430件

関与割合 85.91%(約86%)

■1億円以下(総数866件)

有り   795件

無し    71件

関与割合 91.80%(約92%)

■1億円を超える(総数521件)

有り   496件

無し    25件

関与割合 95.20%(約95%)

上記をみると、遺産の総額が1000万円以下の案件では、代理人弁護士の関与割合が約78%と一番低くなっています。

そして、そこから遺産の総額が上がるにつれて、代理人弁護士の関与割合も上がっていく傾向が見て取れました。

遺産の総額1000万円以下が、圧倒的に代理人弁護士の関与割合が低い結果となっていますが、おそらくこれは、遺産の価格が1000万円以下の中でも、遺産の価格がかなり低い方が、代理人弁護士を関与させないためだと思います。

例えば、遺産の価格が300万円以下だと、相続人が2人でも、単純計算すれば一人150万円ほどしか取得できず、その状況で弁護士を入れてしまうと、取得できる遺産に比して弁護士費用が高くついてしまうので、中々弁護士を入れる状況になりません。

逆に言えば、遺産の価格が1000万円近い案件については、弁護士の関与割合が82%、83%辺りまではいっているのでないかと推測します。

3.最後に

今回は、遺産分割事件において弁護士が関与する割合はどれぐらいかについて、解説しました。

全体として85%というのは、どのように感じられたでしょうか。

私としては、90%ぐらいかと思っていたので、想像より低いなという印象でした。

これも、我々弁護士が、弁護士にご依頼頂いた際のメリットを上手く伝えられていないのが、原因かもしれませんし、反省しないといけないですね。

当事務所は、遺産相続案件に注力していますので、もしご相談等があれば、お気軽にご相談ください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

また、次回のコラムでお会いしましょう。

■参考

令和3年 司法統計年報 3家事編

012597.pdf (courts.go.jp)

遺産が少ないと相続人が本当に揉めないの?

2023-08-19

こんにちは。弁護士の益川教親です。

私は遺産相続案件に注力しているのですが、それを知っている方から、プライベートの時に、「うちは遺産が少ないから子どもたちは揉めないわ」と言われることがあります。

「遺産が少ないと相続人が揉めない」というのは本当なのでしょうか?

一応肌感覚として、私自身も答えをもっているのですが、実際にはどうなのかが気になったので、データを調べてみました。

最新(令和3年)のデータをもとに解説しますので、良かったら参考にしてみてください。

1.遺産分割調停(審判)事件の遺産の価格について

まず、令和3年に終結した遺産分割事件のうち、調停が成立した案件と審判が認容された案件の総数は、6996件となっています。

これらの案件については、相続人間で話し合っても決着がつかずに、家庭裁判所に持ち込まれた案件なので、揉めた案件といってよいと思います。

それでは、これらの案件の中に、遺産が少ない案件はないのでしょうか?

遺産の価格については、下記のようになっています。

■遺産の価格(総数6996件)

1000万円以下  2310件(2位)

5000万円以下  3052件(1位)

1億円以下      866件(3位)

5億円以下      493件

5億円を超える     28件

算定不能・不詳    247件


上記のように、1000万円以下の案件が2310件の2位で、全体の約3分の1となっています。

もちろん1000万円以下の中には、遺産が100万円以下の案件から、1000万円近い案件も含まれており、遺産が1000万円近い案件についても、遺産が少ないと言っていいかは評価が分かれるところかもしれません。

ですが、遺産が1000万円以下の案件が、家庭裁判所に持ち込まれた遺産分割事件の、全体の約3分の1になっていることは、知っておいた方が良いかと思います。

私の経験上、遺産が100万円以下で、相続人同士が揉めている案件を見たことがあります。なので、必ずしも、遺産が少なければ揉めないわけではありません。

遺産相続案件は、家族間のこれまでのいきさつ、いわば家族の歴史が丸ごと問題になることも多いため、揉めるときは遺産の価格に関わらず、揉める印象です

2.遺産が少なければ審理期間は短いのか?

次に、遺産が少なければ、遺産分割調停や遺産分割審判が早く終わるのかについて、解説します。

遺産の価格ごとの審理期間については、下記のようになっています。


■1000万円以下(総数2310件)

1月以内    27件

3月以内   252件

6月以内   493件(3位)

1年以内   744件(1位)

2年以内   580件(2位)

3年以内   163件

3年を超える  51件


■5000万円以下(総数3052件)

1月以内      4件

3月以内    170件

6月以内    484件(3位)

1年以内    928件(2位)

2年以内   1052件(1位)

3年以内    304件

3年を超える  110件


■1億円以下(総数866件)

1月以内      6件

3月以内     21件

6月以内     87件

1年以内    207件(2位)

2年以内    315件(1位)

3年以内    151件(3位)

3年を超える   79件


■1億円を超える(総数521件)

1月以内      2件

3月以内     18件

6月以内     40件

1年以内     97件(3位)

2年以内    166件(1位)

3年以内    110件(2位)

3年を超える   88件


上記のように、遺産の価格が1000万円以下の案件でも、総数2310件のうち、審理期間が1年を超えている案件は794件もあり、全体の3分の1以上は、審理期間が1年を超えています

また、3年を超えている案件も51件あり、遺産の価格が1000万円以下の案件でも、審理が長期化している案件もあります。

そのため、遺産の価格が少なければ、審理期間が短いとは必ずしもいえなさそうです。

但し、遺産の価格が、1000万以下は1位が1年以内であるのに対して、1000万円を超える価格は全て1位が2年以内となっています。

なので、遺産の価格が少ないと、審理期間が少し短くなるとはいえそうです。

3.最後に

今回は、遺産が少ないと相続人が揉めないのかについて、解説しました。

結論としては、遺産が少なくても揉める時は揉めます。

これは、遺産相続案件の場合、単純に金銭だけではなく、これまでの家族の関係性や歴史が問題になるためだと思います。

当事務所は、遺産相続案件に注力していますので、もしご相談等があれば、お気軽にご相談頂ければ幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

また、次回のコラムでお会いしましょう。

■参考

令和3年 司法統計年報 3家事編

012597.pdf (courts.go.jp)

撤回された遺言書の効力が復活する場合とは?

2023-08-11

遺言書を一度作成しても、その後気が変われば、遺言書を自由に撤回することができます。これは、遺言者の最終的な意思を尊重すべきだからです。

それでは、遺言書を一度撤回してしまうと、その遺言書の効力が復活することはないのでしょうか。

今回は、京都の弁護士が、撤回された遺言書の効力が復活する場合について、解説します。遺言書の撤回が問題になっている方などは、是非参考にしてみてください。

1.撤回された遺言書の効力は復活しない(原則)

一度、遺言書の撤回をしてしまうと、その後気が変わって、「撤回の撤回」をしようとしても原則できません。

なぜなら、撤回の撤回を簡単に認めると、法律関係がややこしくなり争いが生じやすくなりますし、これを認めなくても、元の遺言書と同じ内容の遺言書を作成すれば、撤回の撤回と同じ状況を作り出せるためです。

2.撤回された遺言書の効力が復活する場面(例外)

それでは、撤回された遺言書の効力が復活する場面はないのでしょうか?

この場合について、民法第1025条が規定しています。

第1025条 前三条の規定により撤回された遺言は、その撤回の行為が、撤回され、取り消され、又は効力を生じなくなるに至ったときであっても、その効力を回復しない。ただし、その行為が錯誤、詐欺又は強迫による場合は、この限りでない。

民法の規定上、錯誤や詐欺、強迫によって遺言書を撤回してしまった場合にのみ、撤回の撤回によって、元の遺言書の効力が復活することになります。

それでは、錯誤や詐欺、強迫によって遺言書を撤回してしまった場合以外は、元の遺言書の効力が復活することはないのでしょうか?

これが問題になったのが、最高裁平成9年11月13日判決です。

■最高裁平成9年11月13日判決

この裁判では、第1遺言が第2遺言によって撤回され、そして第3遺言には、「第2遺言を無効とし、第1遺言を有効とする」との記載がされていました。

先ほどの民法の規定を前提にすると、遺言者は、錯誤や詐欺、強迫によって第1遺言を撤回したわけではないので、第3遺言によって、第1遺言の効力を復活させることはできないはずです。

もっとも、遺言者の最終的な意思は、第1遺言を有効にしたいとの内容であることが第3遺言から明らかでした。それなのに、第1遺言の復活を認めないのでよいのかという点が問題意識になります。

裁判所は、「遺言書の記載に照らし、遺言者の意思が原遺言の復活を希望するものであることが明らかなときは、民法1025条ただし書の法意にかんがみ、遺言者の真意を尊重して原遺言の効力の復活を認めるのが相当と解する」と判示しました。

要は、遺言書の内容からして、遺言者が一度撤回した遺言書の復活を希望することが明らかな時は、元々の遺言書の効力を復活させるとの内容です。

そして、この裁判では、第3遺言の記載からして、第1遺言の復活を希望していることが明らかであるとして、第1遺言の復活を認めています。

なお、この裁判では、第1遺言の復活が認められましたが、仮に、第1遺言の復活を認めなければ、どうなるのでしょうか?この場合は、第3遺言によって、第2遺言も無効になっているので、遺言書がないケースと同様、法定相続分に応じて相続を行うことになります。

3最後に

今回は、撤回された遺言書の効力が復活する場合について、解説しました。

上でご説明した裁判の事例についても、そもそもちゃんと第3遺言を作っておけば、争いが生じない事例でした。

このように、遺言書の撤回方法を間違えると、相続人が揉めるのを防ぐために作成した遺言書が、かえって相続人が揉める原因にもなってしまいます。

この記事では、遺言書の撤回や取消の方法などについては、詳しく解説していませんが、こちらについては、「作り直された遺言書の効力~遺言書の撤回と取消について~」で解説しています。気になった方は、是非参考になさってください。

京都の益川総合法律事務所では、遺産相続案件に注力しています。

もし、お困りの方がおられましたら、お気軽にご相談下さい。

遺産分割調停・審判はどのくらい時間がかかるの?

2023-08-06

こんにちは。

弁護士の益川教親です。

当事務所は遺産相続案件に注力しておりますが、弁護士の友人から、遺産相続案件は、解決までに時間がかかりすぎると言われることも多いです。(だからこそ、その友人からは、遺産相続案件を取り扱いたくないというニュアンスで話がされます。)

しかし、私の肌感覚として、遺産相続案件が他の案件と比べて、必ずしも長く時間がかかるとは思いません。

そこで実際はどうなのかが気になったので、今回、

遺産分割事件(調停・審判)の審理期間がどのくらいで

実施される期日の回数が何回くらいか

を調べてみました。

現時点で発表されている最新(令和3年)のデータをもとに解説しますので、気になった方は是非参考にしてみてください。

1.審理期間(総数)

まず、令和3年に終結した遺産分割事件の総数は、1万3447件でした。

そして、審理期間は下記のようになっています。

■審理期間

1月以内   269件

3月以内  1161件

6月以内  2749件

1年以内  4136件

2年以内  3607件

3年以内  1074件

3年を超える 451件

上記のように、一番件数が多いのは6ヶ月を超えて1年以内の4136件、2番目に多いのが1年を超えて2年以内の3607件、3番目に多いのが3ヶ月を超えて6ヶ月以内の2749件でした。

私個人の感覚としても、遺産分割事件は、1年以内に終わることが多いと考えているため、このデータと一致していました。

但し、審理期間が1年を超える案件が、1万3447件のうち5132件もあり、約40%となっています。そのため、友人が言うように、他の案件に比べると、審理期間が長くなる傾向があるかと思います。

2.実施期日回数(総数)

それでは、遺産分割事件の実施期日回数は、どのようになっているでしょうか?

■実施期日回数

0回    1006件

1回    1706件

2回    1965件

3回    1745件

4回    1373件

5回    1133件

6~10回 3073件

11~15回 890件

16~20回 294件

21回以上  261件

上記をみると、1番多いのが6回から10回の3073件になっており、私の肌感覚とも合致しています。

なお、実施期日回数0回というのは、調停の取り下げがされた場合などで、裁判所において審理の必要がないと考えた場合を指すと思われます。

3.遺産分割調停が成立する場合

上記の数字は、遺産分割事件全体の数字になりますが、これには、取り下げがされた場合も含まれています。

それでは、調停成立の場合に絞ると、どのくらいの期間と回数になるのでしょうか?

令和3年の遺産分割調停の成立件数は5895件でした。

そして、審理期間や実施期日回数は、下記の通りとなっています。

■審理期間

1月以内    38件

3月以内   462件

6月以内  1063件

1年以内  1835件

2年以内  1774件

3年以内   527件

3年を超える 196件

■実施期日回数

0回       0件

1回     487件

2回     709件

3回     769件

4回     694件

5回     616件

6~10回 1799件

11~15回 517件

16~20回 182件

21回以上  122件

上記をみると、審理期間で1番多いのが1年以内、2番目に多いのが2年以内、3番目に多いのが6ヶ月以内となっています。

実施期日回数は、1番多いのが6回~10回となっており、2番目に多いのが3回、3番目に多いのが2回になっています。

2回や3回で調停が成立している事案については、調停期日のみならず、期日間においても双方で交渉を進めているケースが多いと思います。

4.遺産分割審判が認容される場合

それでは、遺産分割審判で認容される場合はどうしょうか?

審判認容の総数は1101件で、審理期間や実施回数は下記の通りとなっています。

■審理期間

1月以内     3件

3月以内    16件

6月以内    73件

1年以内   201件

2年以内   437件

3年以内   224件

3年を超える 147件

■実施期日回数

0回      32件

1回      73件

2回      56件

3回      83件

4回      77件

5回      88件

6~10回  371件

11~15回 164件

16~20回  66件

21回以上   91件

上記をみると、審理期間で1番多いのが2年以内、2番目が3年以内、3番目が1年以内となっています。

また、実施期日回数をみると、1番多いのが6回~10回の371件、2番目に多いのが11~15回の164件、3番目に多いのが21回以上の91件となっています。

遺産分割調停が決裂した場合に審判手続に進むことが多いため、調停の場合に比して、時間がかかっています。

5.最後に

今回は、遺産分割調停・審判がどのくらい時間がかかるのかについて、解説しました。

皆さんは、どのような印象を持たれたでしょうか?

今回調べたデータからすると、他の案件に比べて遺産相続案件が長期化する傾向にあるといえるかもしれません。

もっとも、私としては、ご依者の方が納得できない形で遺産相続案件を早く終了させるぐらいであれば、多少時間がかかってもご依頼者の方が納得できる形で案件を終了させる方がよいと考えています。

最後までお読みいただきありがとうございました。

■参考

令和3年 司法統計年報 3家事編

012597.pdf (courts.go.jp)

遺産分割調停は1年間で何件の申立てがあるの?

2023-07-30

こんにちは。

弁護士の益川教親です。

突然ですが、遺産分割調停が1年で何件、家庭裁判所に申し立てられているかご存じですか?

相続法務に注力している弁護士であるにもかかわらず、お恥ずかしながら、私もあまり意識したことはありませんでした。

そこで今回、現時点で発表されている最新(令和3年)のデータを調べてみたので、気になった方は参考になさって下さい。

1.全国総数

まず、厚生労働省のデータによると、令和3年にお亡くなりになった方は、143万9809人のようです。そのため、令和3年に日本全体で、143万9809件の相続が発生していることになります。

そして、令和3年の日本全体における、遺産分割調停の新規申立数は1万3565件です。

それゆえ、相続が発生して遺産分割調停の申立がされる割合は、おおよそ1%(厳密には0.942%)であり、おおよそ100件相続が発生すれば、1件遺産分割調停が申し立てられる計算となっています。

この数字を皆さんはどのようにお考えでしょうか?

私個人としては、思ったより割合が低いなというのが率直な感想です。

もちろん、相続人間で話がまとまらず弁護士が就いた案件でも、遺産分割調停までいかずに、当事者間の話合いで終わる案件が多くあるので、相続で争う割合が1%というわけではないでしょう。しかし、個人的には3%ぐらいはあると思っていたので、私の予想が結構外れていました。

なお、上記統計データには、遺留分侵害額請求という、不公平な遺言が作成された場合の争いは含まれておらず、こちらの調停件数を含まれれば、全体の2%ぐらいの割合になるのではないかと推測します。但し、遺留分調停の申立件数については、公表されていないので、正確には分かりません。

2.全国トップ3

それでは、遺産分割調停の新規申立数、全国トップ3はどこでしょうか?

結論としては、第1位が東京で1620件第2位が大阪で978件第3位が横浜(神奈川)で916件になります。

第4位と第5位も発表しておくと、第4位が名古屋で726件、第5位が埼玉で669件になります。

なお、第6位は神戸(兵庫)で627件、第7位は福岡で624件です。神戸と福岡については、件数がわずか3件差なので、おそらく年によっては、順位が入れ替わると思います。

一般的に京都は相続で揉めるイメージがあるかと思いますが、京都はトップ3どころかトップ7にさえ入っていません。

もちろん、人口数や死者数が違うので、単純に比較することはできませんが、意外と京都において遺産分割調停の申立がされている件数は多くないようです。

3.関西地方(京都、大阪、兵庫、滋賀、奈良、和歌山)

当事務所は京都にあり、遺産相続案件については、関西地方の方からご依頼を受けることが多いので、関西地方の件数についても紹介しておきます。

遺産分割調停の新規件数が多いところから紹介していくと、①大阪978件、②神戸(兵庫)627件、③京都281件、④奈良141件、⑤大津(滋賀)115件、⑥和歌山96件となっています。

関西地方全体の申立件数を足しても2238件ですので、第1位の東京の1620件という数字がどれだけ多いかお分かり頂けるかと思います。

上記の通り、京都の件数は281件で、2倍をしても627件の神戸(兵庫)より少ないですし、3倍しても978件の大阪より少ないです。

そうなると、京都って、一般的に言われている印象と違って、相続でそれほど揉めないのではないかという疑問が生まれます。

そこで、死亡者数との兼ね合いで見てみると、令和3年の京都府の死亡者数は2万8309人であり、遺産分割調停申立数は281件なので、調停申立ての割合が1%以下になっています。

そう考えると、京都は相続で揉めるというのは、あくまでイメージの問題で、実際には全国平均と大して変わらないのだろうと思います。

なお、京都の281件というのは、岡山の253件、那覇(沖縄)の262件よりは多いものの、仙台(岩手)の286件、広島の307件よりは少ない数字となっています。

4.最後に

今回は、令和3年の遺産分割調停の新規申立数について、解説しました。

個人的な感想としては、想像よりも遺産分割調停までいく相続の割合は低いなと思いましたし、京都も意外とイメージが先行しているだけだなと思いました。

皆さんは、どのような印象を持たれたでしょうか?

今回のような、統計を使ったコラムは調べていて面白かったので、また機会があれば行おうと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

■参考

令和3年 司法統計年報 3家事編

012597.pdf (courts.go.jp)

令和3年 人口動態統計月報年計(概数)の概況

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai21/dl/gaikyouR3.pdf

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