遺言書の効力、無効になる場合をパターンごとに弁護士が解説

「遺言書にはどのような効力が認められるのでしょうか?」

といったご相談を受けるケースがよくあります。

遺言書を作成すると相続分の指定や相続人以外の人への遺贈など、さまざまな事項を指定できます。相続トラブルを防ぐ効力もあります。

ただし認知症の方が遺言書を作成すると無効になってしまうリスクがあるので、遺言書を作成されるのであれば、元気なうちに早めに作成される方がよいです。

今回は遺言書の効力、無効になるケースや有効な遺言書を作成する方法について、京都の弁護士が解説します。

1.遺言書で指定できること

遺言書にはさまざまな効力があります。

まずは遺言によって何を指定できるのか、代表的な事項をお伝えします。

  • 相続分の指定
  • 遺産分割方法の指定
  • 一定期間における遺産分割の禁止
  • 遺贈
  • 寄付
  • 子どもの認知
  • 相続人の廃除や取消し
  • 遺言執行者の指定
  • 特別受益持戻し計算の免除
  • 生命保険受取人の指定や変更

遺言書には相続トラブル予防の効力がある

遺言書には相続トラブルを予防する効力も期待できます。

例えば、遺産分割方法を指定しておけば、相続人が遺産分割協議を行う必要がありません。意見が合わなくて対立してしまうトラブルを防げるでしょう。

遺言執行者を指定しておけばスムーズに遺言内容を実現できるので、遺言書が無視されたり放置されたりするトラブルを防げます。

死後にトラブルを防いでご希望を実現したいなら、遺言書の作成を検討しましょう。

2.遺言書が要式違反で無効になるパターン

遺言書に効力が認められない1つ目のパターンは「要式違反」です。

自筆証書遺言の場合、自分で要式を守った遺言書を作成しなければなりません。

要式を守らない遺言書は無効です。

よくある間違いをみてみましょう。

2-1.自筆していない部分がある

自筆証書遺言は、遺産目録の部分以外すべて自筆しなければなりません。

一部でもパソコンを使ったり代筆をお願いしたりすると無効になります。


2-2.日付を入れない

日付を入れ忘れると無効です。「○月吉日」など、日付を特定しない場合も無効になるので必ず年月日まで記入しましょう。


2-3.署名押印を忘れる

署名押印を忘れると遺言書に効力が認められません。


2-4.加除訂正方法を間違える

遺言書を書き間違えたときの加除訂正方法については、法律によって細かいルールが定められています。
きちんと従わないと無効になってしまうので正しい知識をもって対応しましょう。

3.遺言能力がなくて遺言書が無効になるパターン

遺言書の要式を守っていても「遺言能力が失われた状態で作成した」場合、無効になります。

3-1.遺言能力とは

遺言能力とは、遺言書を作成する意味を理解し、死後に遺言書によってどういった効果が発生するのかわかる能力です。

有効に遺言書を作成するには、遺言能力が必要です。

基本的には15歳以上の人に遺言能力が認められますが(民法961条)、認知症が進行して事理弁識能力が低下すると「遺言能力がない」と判断される可能性があります。

遺言能力のない人が作成した遺言書は無効であり、重度な認知症の方が遺言書を作成しても、効力が認められない可能性が高くなります。

3-2.遺言能力があるかどうかの判断基準

遺言能力があるかどうかについては、以下のような要素によって判断されます。

■医学的な診断、医師の意見

まずは医学的な診断や検査結果が重要な考慮要素となります。

例えば、以下のようなものは判断の指標として重要視されるでしょう。

  • 遺言書を作成した当時の診断書、カルテ
  • 要介護認定の有無や程度
  • 要介護認定時に提出された資料
  • 介護施設での記録
  • 介護日誌
  • 長谷川式スケールの点数

■当時の本人の言動

遺言者本人が作成当時、どういった言動をとっていたかも考慮されます。

例えば、日常的に徘徊や妄想など、異常な行動や言動があれば遺言能力がなかったと判断される可能性が高まります。

判断能力が十分だった頃の行動や言動と、実際の遺言内容との間に大きな剥離がある場合にも、遺言能力が怪しまれる可能性があります。

■遺言書の内容や表現

遺言書の内容や表現そのものも遺言能力の判断の指標になります。

例えば、複数の収益不動産や株式の遺産分割方法を指定するなど、複雑な遺言内容であれば高度な判断能力が必要です。難しい、遺言内容であるにもかかわらず本人の能力に不安があれば、遺言能力がないとされる可能性が高まります。

反対に、少額の預金を特定の相続人に残すだけ、全財産を配偶者に残すだけなどの簡単な内容であれば、遺言能力が認められやすいでしょう。

4.遺言書の効力に疑問がある場合には

「遺言書が無効なのではないか」と考えられる場合、まずは他の相続人や受遺者と話し合って遺言書に従うべきかどうか検討されることになります。全員が納得すれば、遺言書を無視して、遺産分割協議で遺産を分けることも可能となります。

話し合っても合意できないなら、家庭裁判所で遺言無効確認調停を申し立てられることになります。

それでも合意が難しければ、最終的に地方裁判所で遺言無効確認訴訟が提起されます。

5.最後に

遺言書を作成するのであれば、適切な方法で作成する必要があります。

遺言書の有効性を巡ってトラブルが発生すると、熾烈な争いに発展して紛争が長期化するケースも多々あります。

いずれの場合でも、弁護士によるサポートが必要になるので、困ったときには京都の益川総合法律事務所までご相談ください。

keyboard_arrow_up

0752555205 問い合わせバナー 無料法律相談について