相続放棄をすると、その人は「はじめから相続人ではなかった」ことになるので資産も負債も一切相続しません。
いったいどういった状況であれば「相続放棄すべき」といえるのでしょうか?
今回は「相続放棄すべきケース」を5つお伝えしますので、遺産を相続しようか迷われている方はぜひ参考にしてみてください。
このページの目次
1.明らかに債務超過
高額な借金があるなど、明らかに債務超過のケースでは相続放棄をお勧めします。相続放棄すると、負債を一切相続せずに済むからです。
債務超過のケースで単純承認してしまったら、遺産によって払いきれない負債を相続人が自分の資産で払わねばなりません。税金や保険料などの負債が遺されると、たとえ自己破産しても免責されないので大変な不利益が及びます。
債務超過かどうかわからない場合
債務超過かどうか判然としない場合には注意が必要です。
相続放棄すると資産も受け取れなくなるので、資産超過のケースで相続放棄すると経済的に損になってしまいます。
債務超過か資産超過かわからない場合には「限定承認」を検討しましょう。限定承認すると、資産と負債を差し引きしてプラスになれば相続できますし、マイナスになったら負債は相続しません。
負債が遺された場合の対処方法は遺産内容によっても異なりますので、迷ったときには弁護士までご相談ください。
2.特定の人に遺産を集中させたい
特定の人に遺産を集中させたい状況であれば、他の相続人が全員相続放棄する方法が有効です。特に資産と負債の両方を特定の相続人に集中させるには、他の相続人が全員相続放棄するしかありません。遺産分割協議で「相続分を放棄します」などと述べても、負債は法定相続分に従って分割承継されてしまうからです。
たとえば事業承継の事案では先代経営者が連帯保証などをしており負債が遺されるケースを考えてみましょう。他の相続人が相続分を放棄しただけでは、経営に関与しない相続人へ会社の連帯保証債務が引き継がれて大きな不利益が及んでしまいます。
保証債務を免れるには、他の相続人は相続放棄するのが得策です。
3.相続トラブルに関わりたくない
「遺産トラブルに関わりたくない方」にも相続放棄をお勧めします。
相続が発生したとき、複数の相続人がいたら遺産分割協議を行って相続財産の分け方を決めなければなりません。全員合意しないと遺産分割協議が成立しないので、1人でも反対する人がいたら遺産の分け方が決まりません。
家庭裁判所で遺産分割調停、審判となり、相続開始後数年以上が経過してもトラブルが続いてしまうケースもよくあります。
相続放棄したら相続人ではなかったことになるので、遺産分割協議や調停に参加する必要はありません。相続放棄によって代襲相続も起こらないので、子どもや孫に迷惑を掛ける心配も不要です。
4.遺産に関心がない
「遺産に関心がなく相続したくない方」にも相続放棄がお勧めです。
たとえば海外居住しているので日本の財産を相続する利益が小さい方、相続手続きが面倒な方、遺産が少額なので特に相続したい希望のない方など。
単純承認すると、どうしても遺産分割協議に参加したり不動産の相続登記などの手続きをしたりしなければなりません。関心がない遺産のために手間と時間、費用がかかります。
早めに相続放棄するとよいでしょう。
5.遺産を相続したくない
田舎の実家が遺されて相続すると管理が手間になるなど、「遺産相続したくない」場合にも相続放棄をお勧めします。
相続人になってしまったら、相続した財産は自分の責任で管理しなければなりません。活用しにくい田舎の家や山林を相続すると、管理費用や固定資産税がかかるだけで、デメリットしか感じられないケースも多々あります。
ただ相続放棄すると特定の資産だけではなくすべての遺産を相続できなくなります。
他に価値の高い資産があるときに相続放棄すると損になってしまう可能性があるので、事前にしっかり相続財産調査を行っておきましょう。
6.他に相続人がいない場合は要注意
相続放棄するとき、「他に相続人がいない状況」であれば注意しなければなりません。
次順位の相続人がいなければ、相続放棄した人が相続財産を管理し続けなければならないからです。管理義務を果たさなかったために他人に迷惑を掛けると、損害賠償義務が発生する可能性もあります。管理義務を免れるには、家庭裁判所で「相続財産管理人」を選任しなければなりません。そのために手間がかかりますし、高額な費用が発生するケースもよくあります。
特に不動産が遺産に含まれる場合、安易に相続放棄すると予想外に管理義務が及んで困惑されてしまう相続人の方が少なくありません。相続放棄する前に「相続放棄しても不利益がない状況」といえるのか、専門家に意見を聞いておくのがよいでしょう。
当事務所では遺産相続のサポートに力を入れて取り組んでいます。お悩みの方がおられましたらお気軽にご相談ください。