遺産相続の際「相続関係説明図」を作成すると便利に利用できます。
相続関係説明図とは、「被相続人(お亡くなりになった方)」と「相続人」の関係性を示す家系図のような図面です。
今回は相続関係説明図を作成すべきタイミングや作成方法、法定相続情報一覧図との違いなど解説します。
このページの目次
1.相続関係説明図とは
相続関係説明図とは「被相続人」を中心に相続関係を表示して「誰が相続人になるのか」を明らかにするための図面です。被相続人と相続人を「家系図」のように線でつないで表示します。
相続関係説明図を見れば、そのケースで誰が相続人になるのかが一見して把握できるので、口頭で説明するよりスムーズかつ正確に相続状況を伝えられます。
2.相続関係説明図を作成すべき場面
相続関係説明図は以下のような場面で役立ちます。
2-1.相続登記
不動産を相続したら、法務局へ申請して相続登記しなければなりません。このとき「相続関係説明図」があると、提出した戸籍謄本類を返還してもらえます。返してもらった戸籍謄本類は預金の払い戻しなどの別の手続きに使えます。
もしも相続関係説明図を提出しなければ、戸籍謄本類を再度取得し直さねばなりません。
労力や費用、時間を節約するため、相続関係説明図を作成して法務局へ提出しましょう。
2-2.金融機関における預貯金の払い戻しや解約
預貯金の払い戻しや解約手続きを行うとき、金融機関によっては相続関係説明図の提出を要求されます。また相続関係説明図を提出すると戸籍謄本類の原本を返還してもらえるのが一般的な取り扱いです。
返してもらった戸籍謄本類は他の手続きに流用できるので、あらためて取り直す手間や時間、費用を省けるメリットがあります。
2-3.証券会社における株式の名義変更
株式の名義変更を行う際にも相続関係説明図の提出を求められる証券会社が多数です。
また相続関係説明図を提出すると戸籍謄本類の返還を受けられるので、他の手続きに流用できます。
2-4.遺産分割調停の申立て
家庭裁判所で遺産分割調停を申し立てる際にも相続関係説明図を作成して提出しなければなりません。
2-5.専門家に相続の相談
弁護士や税理士などの専門家に相続の相談をするとき、簡単に相続関係説明図を作っておくと状況を正確に伝えやすいので、適切な回答を得やすくなるメリットがあります。
3.相続関係説明図の作成方法、書き方
相続関係説明図には定まった書式はありません。
一般的な方法として、次のように作成するとよいでしょう。
3-1.被相続人を表示
まずは「被相続人(亡くなった方)」を表示します。以下の情報を記載して特定しましょう。
- 氏名
- 最後の住所地
- 生年月日、死亡年月日
- 本籍地
氏名は□で囲い、住所地などは横に記載しましょう。
3-2.相続人を表示
次に「相続人」を表示します。以下の情報を記載して特定しましょう。
- 氏名
- 住所地
- 生年月日
- 被相続人との続柄
養子や離婚した配偶者との子ども、認知した子どもも相続人になります。
同じように氏名は□で囲って表示しましょう。
3-3.相続放棄者、被代襲者、相続欠格者、非廃除者を表示
相続放棄した人や被相続人より先に死亡した被代襲者、相続欠格となった人、相続廃除された人がいれば、以下のような情報とともに書き入れましょう。
- 氏名
- 住所地
- 被相続人との続柄
- 生年月日、死亡年月日、相続放棄した日
- 「相続放棄」「相続欠格」「相続廃除」「死亡」などの個別事情
これらの人は相続しないので、氏名を□で囲んだ上で「暗い灰色」などで色付けするようお勧めします。
3-4.線でつなぐ
登場人物を全員表示したら、家系図のようにそれぞれの関係性がわかるよう線でつなぎ、完成させます。
4.法定相続情報一覧図との違い
「相続関係説明図」と「法定相続情報一覧図」は似ていますが、異なる点があります。混乱しないよう、違いをご説明します。
4-1.法定相続情報一覧図とは
法定相続情報一覧図は、法務局で「法定相続情報証明書」を交付してもらうために作成しなければならない書類です。一般的な相続関係説明図とは異なり「法務局指定の書式」があるので、指示に従って作成しなければなりません。
http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000015.html
法定相続情報一覧図と戸籍謄本類をそろえて法務局に提出すると、申請した枚数の法定相続情報証明書を交付してもらえます。
4-2.法定相続情報証明書と相続関係説明図の違い
法定相続情報証明書があると、相続登記や預貯金払い戻しなどの際に戸籍謄本類を提出する必要がありません。
単なる相続関係説明図の場合には戸籍謄本類も一緒に提出して原本還付してもらう必要がありますが、法定相続情報証明書であればそれ1枚で足り戸籍謄本類の原本が不要です。
原本を提出して還付してもらう手間が省けるので、多数の機関で多数の相続手続きをしなければならない場合には法定相続情報証明書が役立つでしょう。
5.相続関係説明図の作成はお任せください
相続関係説明図の作成や法定相続情報証明制度の利用には手間がかかります。自分で対応するのはハードルが高いと感じる方が少なくありません。
当事務所では弁護士が相続人調査や相続関係説明図の作成、遺産分割協議のサポートを行っています。京都・滋賀・大阪・兵庫で相続手続きを行う方、相続手続きに行き詰まってしまった方や手間を省きたい方は、お気軽にご相談下さい。