相続手続きの流れは「遺言書がある場合」とない場合とで大きく異なります。
「遺言書の種類」や「保管方法」によっても対応方法が変わってくるので、正しい知識をもって手続きを進めましょう。
この記事では遺言書の種類に応じて、パターン別に相続手続きの進め方を解説します。
相続人になった方はぜひ参考にしてみてください。
このページの目次
STEP1 遺言書を探す
人が死亡して相続が開始したら、まずは遺言書を探しましょう。
遺言書があれば、基本的に遺言書の内容に従って遺産を相続する必要があります。
ただし相続人全員が合意すれば異なる分け方ができるケースもあります。
遺言書の種類によって探し方が異なるので、パターン別にみてみましょう。
自筆証書遺言の場合
自筆証書遺言は、遺言者が全文自筆で作成する遺言書です。
遺言者が自分で保管している場合と法務局に預けられている場合があります。
●自分で保管している場合の探し方
遺言者が自分で保管している場合、自宅内や金融機関の貸金庫内にあるケースが多いので、遺言者が使っていた机や棚、引き出しやタンスなどの中を探しましょう。
貸金庫を開くときには、できるだけ相続人全員に声をかけて全員がいる前で確認すると、トラブルにつながりにくくなります。
●法務局に預けられている場合の探し方
遺言者が自筆証書遺言を法務局に預かってもらえる制度を利用していた場合、死亡届を提出すると相続人へ通知が来る可能性があります。その場合、法務局で遺言書の内容を確かめる手続きをとりましょう。
通知が来ない場合でも、相続人が法務局へ申請すると遺言書が保管されているかどうか確認できます。お近くの法務局で「遺言書保管事実証明書」を請求しましょう。
遺言書が保管されているとわかったら、今度は「遺言書情報証明書」を請求すると内容を確認できます。
公正証書遺言の場合
公正証書遺言は、公証人に公文書として作成してもらう遺言書です。
相続人であれば、全国の公証役場で被相続人の公正証書が遺されていないか検索して探せます。
一度公証役場に出向いて、遺言検索システムの利用を申請してみましょう。
秘密証書遺言の場合
秘密証書遺言は、内容を秘密にできるタイプの遺言書です。遺言者が自分で保管する方法しかないので、自宅や貸金庫などを探してみましょう。
STEP2 遺言書の検認を受ける
発見された遺言書の種類によっては「検認」を受けなければなりません。
検認とは家庭裁判所で遺言書の状態や内容を確認し、保存するための手続きです。
遺言書が改ざんされたり破棄されたりするリスクを防ぐ目的で行います。
●検認が必要な遺言書と不要な遺言書
検認が必要な遺言書は、以下のものです。
- 法務局に預けられていなかった自筆証書遺言
- 秘密証書遺言
以下の遺言書は検認が不要です。
- 法務局に預けられていた自筆証書遺言
- 公正証書遺言
●検認の方法
検認は、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ申請します。
遺言者の生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍謄本類、相続人全員分の戸籍謄本など、多数の戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本類が必要です(集める範囲はケースによって異なります)。
検認を申し立てると、家庭裁判所で遺言書を開封する日が決まり、相続人へ呼出状が届きます。当日遺言書を開封して内容を確認したら「検認済証明書」を発行してもらえるようになります。
検認済証明書は相続手続きに必要なので、申請して取得しましょう。
なお検認を受けないまま法務局に預けられていない遺言書や秘密証書遺言を開封するのは違法行為となり、5万円以下の過料の制裁が適用されます。必ず検認を経て開封しましょう。
STEP3 遺言書の内容にしたがって相続手続きを進める
検認を受けた遺言書や法務局に預けられていた自筆証書遺言の遺言書情報証明書、公正証書遺言の謄本を入手して、相続手続きを進めましょう。
主な相続手続き
- 不動産の名義変更
- 預貯金の名義変更や払い戻し
- 株式や投資信託の名義変更や売却
- 車の名義変更や売却
- その他の権利の名義変更
- 現金や動産の取得
名義変更などの手続きをせずに放置していると、トラブルにつながりやすく権利が失われる可能性もあります。また不動産の相続登記は近い将来に義務化される予定ですので、いずれの手続きも早めに済ませましょう。
遺言執行者がいる場合
遺言書によって「遺言執行者」が指定されている場合には、相続手続きは遺言執行者が行います。近年、法改正によって遺言執行者の権限が強化されました。相続登記などの手続きも、以前よりスムーズに遺言執行者が進められるように変更されています。
遺言執行者が選任されている場合、スムーズに相続手続きが進みやすいでしょう。
遺言書の有効性を確認する方法
遺言書が発見されても、必ずしも有効とは限りません。
書き換えや偽造などの疑いがあれば、まずは遺言書の有効性を確認する必要があります。
当事者同士で話し合っても解決できないなら、裁判所で遺言無効確認調停や遺言無効確認訴訟を起こさねばなりません。
遺言書の有効性が確定してから相続手続きを進めることになります。
一方、遺言書が無効になれば遺言書がない場合と同様に法定相続人が遺産分割を行って遺産の分け方を決定しなければなりません。
遺言書の探し方や相続手続きの進め方がわからない場合、弁護士がアドバイスをいたしますのでお気軽にご相談ください。