いったんは家族信託を利用しても、さまざまな事情で解除したいと考えるケースが少なくありません。家族信託の契約は途中解除できるのでしょうか?
当事者同士で合意解除すれば簡単に途中終了できますが、それ以外の場合には解除できない場合もあります。
この記事では家族信託の契約を途中で解除できるのはどういったケースなのか、解除のトラブルを防ぐにはどうすれば良いのかを弁護士が解説します。家族信託を利用してみたい方は、是非参考にしてみてください。
このページの目次
1.家族信託を解除できるケースとは
家族信託の契約は、途中でも終了させることが可能です。
家族信託を途中で解除できるのは以下の2つのケースです。
- 委託者と受託者の間で解約の合意をした場合
- 信託行為で定めた終了事由が発生した場合
以下でそれぞれのケースについて、詳しく確認しましょう。
1-1.委託者と受託者の間で解約の合意をした場合
家族信託の契約は、委託者と受託者との間の信託契約です。
委託者と受託者の双方が合意すれば、合意によって解約が可能です。
家族信託の契約を終わらせたければ、契約の相手方へ解約の打診をしてみると良いでしょう。
ただし、解約するには双方の合意が必要なので、相手方が拒否した場合には合意による解約はできません。また、委託者が高齢者で認知症が進んでしまった場合にも有効な意思表示ができないために解約できない可能性があります。
1-2.信託契約で定めた終了事由が発生した場合
委託者と受託者の双方が合意できず家族信託契約を解約できない場合でも、信託契約であらかじめ定めておいた契約の終了事由に該当すれば契約を解約できます。
たとえば、「受託者が死亡したとき」「○年○月○日」などの具体的な終了事由を定めておくと良いでしょう。
1-3.信託契約を終了させるべき主な事情
家族信託の契約を終了させるべき主な事情として、以下のようなものがあります。
- 信託の目的を達成したとき、又は信託の目的を達成することができなくなったとき
- 受託者が受益権の全部を固有財産で有する状態が1年間継続したとき
- 受託者が欠けた場合であって、新受託者が就任しない状態が1年間継続したとき
- 受託者が費用等の償還又は費用の前払を受けることができず、信託を終了させたとき
- 信託の併合がされたとき
- 信託の終了を命ずる裁判があったとき
- 信託財産についての破産手続開始の決定があったとき
- 委託者が破産手続開始の決定、再生手続開始の決定又は更生手続開始の決定を受けた場合において、信託契約の解除がされたとき
- 信託行為において定めた終了事由が生じたとき
1-4.裁判が必要になるケースもある
家族信託の終了事由を契約で定めていなかった場合、契約を途中終了させるには訴訟を起こす必要があります。家族信託契約を終了させる合理的な事情があれば、裁判所が家族信託契約の終了を命じます。
2.家族信託終了後の財産帰属について
家族信託の契約では、委託者や受託者の死亡を終了事由と定めるケースも少なくありません。契約が終了すると、信託財産は誰のものになるのでしょうか?
2-1.残余財産の帰属先
家族信託が終了したときに残っている財産を「残余財産」といいます。
家族信託が終了した場合の残余財産の帰属方法については、信託契約で定めることが可能です。よって信託契約書に「残余財産の帰属先指定」が行われていれば、その内容に従って財産の帰属先が決まります。
一方、信託契約書で残余財産帰属先の指定がない場合や、帰属先に指定された人が権利を放棄した場合、委託者に権利が戻ります。委託者が死亡していればその相続人が帰属権利者となります。
委託者も委託者の相続人もいない場合、残余財産は「清算受託者」のものとなります。
2-2.受益者が財産をもらえるわけではない
家族信託で利益を受ける権利者は受益者です。ただ家族信託の契約が終了したとき、受益者が財産を受け取れるわけではありません。受益者が相続人でもない場合には一切の権利を受け取れない可能性もあります。
受益者に財産を帰属させたい場合には、契約書にその旨記載しておくべきといえるでしょう。
2-3.残余財産の帰属先は契約で決められる
家族信託の残余財産については、帰属先を予め契約で定められます。
委託者や受託者の死亡などによって家族信託が意図せず終了してしまった場合に備え、契約において帰属先の指定を行っておきましょう。
3.家族信託の設定や解除は弁護士へ相談を
家族信託契約を設定する際にはトラブルを防ぐため、契約の終了事由まで見据えて内容を決定しておくべきです。
また、どのようなスキームで家族信託契約を設定するかも非常に重要です。法律の専門知識がないと、適切な対応は困難となるでしょう。家族信託を利用したいときには、弁護士へ相談するようおすすめします。
京都の益川総合法律事務所では、遺産相続関係の案件に力を入れて取り組んでいます。家族信託を利用してみたい方や方法がわからない方などは、お気軽にご相談ください。
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