こんにちは。
弁護士の益川教親です。
被相続人がお亡くなりになった後、遺言書がなければ、遺産分割を行うことになりますが、相続人同士では中々話がまとまらないこともあります。
このように中々話がまとまらない遺産分割事件において、弁護士が関与する割合はどのぐらいでしょうか?
私自身が弁護士であるためか、弁護士が関与しない遺産分割事件というのを中々見る機会がなく、その割合を正直よく分かっていません。
そこで、今回は、最新のデータを調べてみましたので、もし良かったら参考になさって下さい。
このページの目次
1.遺産分割調停(審判)事件における弁護士の関与割合
まず、前提として、今回参照したデータは、令和3年に終結した遺産分割事件(遺産分割調停が成立した事件と審判が認容された事件)について、弁護士が関与していた割合となります。
そして、令和3年に終結した遺産分割事件の総数は、6996件となっています。
これらの案件は、相続人間で話し合っても決着がつかずに、家庭裁判所に持ち込まれた案件なので、相続人同士で話がまとまらなかった遺産分割と言ってよいと思います。
それでは、これらの案件について、弁護士が関与している割合はどうなっているでしょうか?
■代理人弁護士の関与の有無(総数6996件)
有り 5939件
無し 1057件
関与割合 84.89%(約85%)
上記のように、約85%の遺産分割事件については、代理人として弁護士が関与しているようです。
逆に言えば、約15%の遺産分割事件については、代理人弁護士が関与せずに、当事者のみで調停や審判が進められているようです。
但し、私もそうですが、遺産分割調停や審判をご自身で行っている方からご相談を受けることもあります。そのため、おそらく代理人弁護士が関与していない案件についても、適宜、弁護士に相談はしているのだと思います。
2.遺産の価格別の弁護士の関与割合
次に、遺産の総額と弁護士の関与割合が関係するのかも調べてみました。
遺産の総額が高ければ、弁護士の関与割合も高い結果になっているのでしょうか?
遺産の価格別(総額別)の代理人弁護士の関与割合については、下記のようになっています。
■1000万円以下(総数2310件)
有り 1807件
無し 503件
関与割合 78.22%(約78%)
■5000万円以下(総数3052件)
有り 2622件
無し 430件
関与割合 85.91%(約86%)
■1億円以下(総数866件)
有り 795件
無し 71件
関与割合 91.80%(約92%)
■1億円を超える(総数521件)
有り 496件
無し 25件
関与割合 95.20%(約95%)
上記をみると、遺産の総額が1000万円以下の案件では、代理人弁護士の関与割合が約78%と一番低くなっています。
そして、そこから遺産の総額が上がるにつれて、代理人弁護士の関与割合も上がっていく傾向が見て取れました。
遺産の総額1000万円以下が、圧倒的に代理人弁護士の関与割合が低い結果となっていますが、おそらくこれは、遺産の価格が1000万円以下の中でも、遺産の価格がかなり低い方が、代理人弁護士を関与させないためだと思います。
例えば、遺産の価格が300万円以下だと、相続人が2人でも、単純計算すれば一人150万円ほどしか取得できず、その状況で弁護士を入れてしまうと、取得できる遺産に比して弁護士費用が高くついてしまうので、中々弁護士を入れる状況になりません。
逆に言えば、遺産の価格が1000万円近い案件については、弁護士の関与割合が82%、83%辺りまではいっているのでないかと推測します。
3.最後に
今回は、遺産分割事件において弁護士が関与する割合はどれぐらいかについて、解説しました。
全体として85%というのは、どのように感じられたでしょうか。
私としては、90%ぐらいかと思っていたので、想像より低いなという印象でした。
これも、我々弁護士が、弁護士にご依頼頂いた際のメリットを上手く伝えられていないのが、原因かもしれませんし、反省しないといけないですね。
当事務所は、遺産相続案件に注力していますので、もしご相談等があれば、お気軽にご相談ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
また、次回のコラムでお会いしましょう。
■参考
令和3年 司法統計年報 3家事編
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遺産分割、遺留分侵害額請求、遺言書作成など、遺産相続案件に強い法律事務所であると自負しております。
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