遺産分割を弁護士に依頼すると解決が長引くの?

こんにちは。

弁護士の益川教親です。

時々、ご相談者の方から、「遺産分割を弁護士に依頼すると解決が長引きますか?」というご質問を頂くことがあります。

これに対して、私の方からは、「少なくとも私の場合には、これまでご依頼頂いたことによって、解決が長引いたという案件はない印象です」とお答えしています。

私としては、今まで相続人の間でまとまっていない話に、弁護士の立場として介入することで、話を前進させることになるため、結果的に弁護士(私)が入ることで解決が早くなっているのではないかと考えていました。

しかし、私も、実際のデータを調べたことがあるわけではありません。

そこで、今回は、「遺産分割を弁護士に依頼すると解決が長引くのか」について、関連するデータを調べてみました。是非参考になさって下さい。

1.遺産分割事件における弁護士の関与の有無ごとの審理期間

まず、前提として、今回参照したデータは、令和3年に終結した遺産分割事件(遺産分割調停が成立した事件と審判が認容された事件)における、審理期間別の代理人弁護士の関与の有無となります。

要は、終結した遺産分割事件について、審理期間の司法統計をとり、その審理期間別に、それぞれ代理人弁護士が付いていた案件が何件、付いていなかった案件が何件との司法統計をとったものとなります。

それでは、代理人弁護士が付いている案件は、事件が長期化する傾向があるのでしょうか。

まずは、代理人として弁護士が関与している事件の割合を示した後に、代理人弁護士の関与の有無ごとに審理期間のデータをお示しします。

■代理人弁護士の関与の有無(総数6996件)

有り    5939件

無し    1057件

関与割合  84.89%(約85%)

■代理人弁護士の関与が有る事件の審理期間(総数5939件)

1月以内    33件(約0.5%)

3月以内   320件(約5%)

6月以内   835件(約14%、第3位)

1年以内  1706件(約29%、第2位)

2年以内  2000件(約34%、第1位)

3年以内   716件(約12%)

3年を超える 329件(約6%)

■代理人弁護士の関与が無い事件の審理期間(総数1057件)

1月以内     8件(約0.8%)

3月以内   158件(約15%)

6月以内   301件(約28%、第2位)

1年以内   330件(約31%、第1位)

2年以内   211件(約20%、第3位)

3年以内    35件(約3%)

3年を超える  14件(約1%)

上記のように、代理人として弁護士が関与している事件の審理期間は、第1位が2年以内、第2位が1年以内、第3位が6ヶ月以内となっています。

一方、代理人弁護士の関与が無い事件の審理期間については、第1位が1年以内、第2位が6ヶ月以内、第3位が2年以内となっており、このデータだけを見た場合、弁護士が関与したことによって事件が長引いているように見受けられます

そこで、以下では、自己弁護も兼ねて(笑)、一体なぜデータ上、弁護士が関与した方が、事件が長引いているのかについて、考察します。

2.データ上弁護士が関与している事件の方が長引いている理由

2-1.ご自身で調停をやる事件はそこまで揉めていない

まず、一つ目に考えられる理由として、弁護士に依頼せずに、遺産分割事件を進める案件というのは、そもそも相続人間でそこまで揉めていないのではないかという点です。相続人間で少し話がまとまらない部分はあるけれども、概ねの方向性は合致しているようなケースが多く含まれていると思います。

その証拠に、代理人弁護士が関与していない遺産分割事件については、6ヶ月以内に終結している事件(1ヶ月以内と3ヶ月以内も含めている)が約44%もあります。

遺産分割調停を申し立てると、第1回期日が始まるまでに、おおよそ1ヶ月から2ヶ月ほどかかります。そして、その後、1ヶ月に1回程度のペースで期日が設定されて、話合いが進められることになります。

そうすると、1ヶ月で終結させようとすれば良くて期日が1回、3ヶ月で終結させようとすればおおよそ期日が2~3回、6ヶ月で終結させようとすればおおよそ期日が4回~5回ほどとなります。

ご自身で調停を行う場合には、弁護士が関与する場合と異なり、期日と期日の間で自己に有利になる証拠の提出や書面の提出をすることも少ないと思いますし、メインは期日で調停委員に話すという内容になるかと思います。

その形で、6ヶ月以内に集結する事件が約44%もある時点で、代理人弁護士が関与していない遺産分割事件については、あまり揉めていないのではないことが推察されます。

2-2.法的主張が多くなる

次に、考えられる理由として、弁護士に依頼すると法的主張が多くなるという点です。確かにこの点は、弁護士に依頼すると期間が長引くと言われる大きな理由だと思います。

一般的に、遺産分割調停などの場合、一方当事者が言いたいことを言っても、法的主張となっていない場合、すぐに切り捨てられてしまうので、時間はかかりません。

対して、弁護士にご依頼頂くと、ご依頼者の言いたいことを法的主張に変えて、裁判所を説得しますので、その法的主張を審理するために、時間がかかってしまうことになります。

私見としては、ご依頼者としても、ご自身の言いたいことをすぐに裁判所に切り捨てられてしまうより、しっかり審理して欲しいのではないかなとは思っておりますが、この点で、事件が長引いてしまうという側面はあると思います。

2-3.データの取り方の問題

次に、考えられる理由として、データの取り方の問題です。

今回のデータは、遺産分割調停や遺産分割審判という、裁判所を介在した手続きについての審理期間となります。

弁護士にご依頼頂かないケースだと、遺産分割調停や審判を申し立てるのは、申し立てる側にとってかなり負担となるものであり、極力、当事者同士で話合おうとされる傾向が強いように思われます。

そうすると、弁護士にご依頼頂かないケースの場合、裁判所を介在させる前に、ある程度当事者間で話をつめていることになり、実際に調停や審判になった際には、争いとなっている部分が明確で、そこを詰めればよいことになります。

また、弁護士にご依頼頂かないケースだと、だれも遺産分割調停や審判を申し立てずに、相続が発生してから数年間が経過しているという案件も、しばしば目にします。

今回のデータの取り方は、相続が発生してからの期間ではなく、あくまで裁判所が関与してからの審理期間となりますので、このようなしばらく放置されていた案件についても、6ヶ月以内に集結したら、6ヶ月以内とデータでは残ることになります。

相続が発生してからの期間という形でデータを取れば、弁護士が関与の有無で、期間にあまり差はつかないのではないかと推察いたします。但し、そのような統計をとっているデータは見当たりませんでした。

3.最後に

今回は、遺産分割を弁護士に依頼すると期間が長引くのかについて、解説しました。

途中で自己弁護も入れましたが(笑)、データ上は、弁護士に依頼すると裁判所の審理期間が長引く傾向にあるようです。

皆様は今回のデータをみて、どのように思われたでしょうか。

途中の自己弁護は、ある種私のポジショントークにすぎないかもしれませんので、話を差し引いて聞いて頂ければと思います。

ただ、私としては、これまでご依頼頂いたせいで、解決が長引いたという案件はない印象なので、最後の自己弁護として、お伝えさせて頂きます(笑)

当事務所は、遺産相続案件に注力していますので、もしご相談等があれば、お気軽にご相談ください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

また、次回のコラムでお会いしましょう。

■参考

令和3年 司法統計年報 3家事編

012597.pdf (courts.go.jp)

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