不動産を相続したら「評価」をしなければなりません。
現金や預金と異なり不動産の価値は日々変動するので、「いつの時点の価値」を基準とすべきかが問題になります。
また相続税を計算する際にも時価とは異なる特殊な計算方法が適用されるので、正しい評価方法を理解する必要があります。
今回は相続不動産の評価方法について、京都の弁護士が解説します。土地や建物、マンションなどの不動産を相続された方はぜひ参考にしてみてください。
このページの目次
1.不動産を評価する「タイミング(時点)」について
不動産の価値は日々変動するので、遺産分割や特別受益となる生前贈与があった場合などには「いつの時点の評価額を基準にすべきか」決めなければなりません。
法律実務では、以下の時点における評価額を採用すべきと考えられています。
- 遺産分割の場合は遺産分割時
- 特別受益の場合には相続開始時
- 遺留分侵害額請求の場合には相続開始時
また税制上、相続時精算課税制度が適用される場合には「贈与時」の評価額が適用されます。
それぞれについて、解説します。
2.遺産分割の場合は遺産分割時
遺産分割が行われる場合には、遺産分割時の「時価」を基準に不動産を評価します。
遺産分割時とは、相続人たちが実際に話し合いを行って遺産分割協議や調停をするタイミングです。そのときの「不動産の時価」を調べて不動産の価額とします。
時価は不動産会社へ無料の査定を申し込めば提示してもらえます。
また、法律実務では、固定資産評価額を基に不動産の時価を判断することも多いです。
具体的には、一般的に土地の固定資産評価額は時価の7割程度とされているため、土地については固定資産評価額に7分の10を掛けた金額を時価とします。対して、建物の時価は固定資産評価額を基準に判断することが多い印象です。
相続人間で意見が割れる場合には不動産鑑定士に依頼して鑑定をしなければならない可能性もあります。
3.特別受益の評価は相続開始時
特別受益がある場合にも不動産の評価が問題となります。
たとえば不動産が生前贈与された場合、贈与時なのか相続開始時なのか特別受益の持戻計算を適用する遺産分割時なのか、3パターンの評価時が考えられるでしょう。
法律実務では「相続開始時の時価」が採用されています。
つまり「被相続人が死亡した時点」における不動産の時価が特別受益で贈与された不動産の評価額となります。
遺産分割の対象となる他の不動産は「遺産分割時の時価」で評価されるので、贈与された財産とは評価時が異なります。
4.遺留分侵害額請求の評価時点は相続開始時
遺留分侵害額請求をするときにも不動産を評価しなければなりません。
遺留分侵害額請求とは、配偶者、子どもや親などの相続人が遺留分を侵害されたときに最低限の遺産保障分である遺留分を取り戻すための手続きです。
遺留分侵害額請求における遺産の評価基準時は「相続開始時」となります。
遺留分侵害額請求を行うタイミングではないので、混乱しないよう注意しましょう。
5.相続時精算課税制度における不動産評価基準時
相続時精算課税制度を適用する際にも不動産の評価方法が問題となります。
相続時精算課税制度とは、親や祖父母などの直系尊属が子どもや孫などの直系卑属へ資産を生前贈与するときに最大2500万円分が非課税となる制度です。
贈与された資産は相続発生時に相続財産に組み入れられてまとめて相続税の課税対象になります。そこで、贈与された不動産がいつのタイミングで評価されるのか、贈与時か相続発生時なのか定めなければなりません。
相続時精算課税制度を適用する場合、生前贈与された資産は「贈与時」のタイミングで評価するので、正しく把握しておきましょう。
6.相続税における不動産評価方法
相続税を計算する際には、時価とは異なる特殊な評価方法を適用します。
6-1.土地の場合
土地の場合には基本的に「相続税路線価」を使って評価します。相続時路線価とは、道路に面した宅地の1平方メートルあたりの単価をいいます。
路線価がわかれば、路線価に土地の面積を掛け算すると不動産の評価額を求められます。
相続税路線価の設定のない場所では、土地の固定資産評価額に一定の倍率を掛け算して評価額を求める「評価倍率」という方法を用います。
相続税路線価や評価倍率を適用すると、不動産の価額は時価の約80%程度になります。
各地の路線価や評価倍率は、下記の国税庁のサイトで公表されています。
https://www.rosenka.nta.go.jp/
6-2.建物の場合
建物の場合には「固定資産税評価額」を用いて評価します。
調べたいときには役所へ行って固定資産評価証明書を申請しましょう。
6-3.マンションの場合
マンションの場合にも土地や建物と基本的な考え方は同じです。
マンションの建物部分(専有部分)については「固定資産評価額」で評価し、敷地権の部分については「相続税路線価」で計算し、双方を合算します。
以上のとおり、現預金と不動産を比較すると、不動産の方が評価額は下がります。
この性質を利用し、生前に現預金を使って不動産を購入すると、遺産の評価額を下げて節税する方が多数おられます。
7.最後に
京都の益川総合法律事務所では遺産相続された方へのサポートに注力しています。
不動産の評価方法に迷われた方、遺産分割や遺留分侵害額請求を行う必要のある方はお気軽にご相談ください。
当事務所は、1983年創業の老舗法律事務所です。
遺産分割、遺留分侵害額請求、遺言書作成など、遺産相続案件に強い法律事務所であると自負しております。
お悩みの方は、是非お気軽にお問い合わせ下さい。