遺産分割しない、できない場合のデメリットと対処方法

「いつまでも遺産分割しなかった場合、どういった問題が生じるのでしょうか?」

といったご質問を受けるケースがあります。

遺産分割そのものには期限がありませんが、放置しておくと相続税の控除を受けられなくなったり、遺産の名義変更や活用ができなかったりする不利益が及ぶ可能性があります。

この記事では、遺産分割をしないデメリットやすぐに遺産分割できない場合の対処方法をお伝えしますので、これから遺産分割する方はぜひ参考にしてみてください。

1.遺産分割できない場合のデメリット

遺産分割ができないと、以下のようなデメリットが発生します。

  • 遺産の名義変更や活用ができない
  • 遺産が失われる可能性がある
  • 相続税の控除を受けられない
  • さらに相続が起こって混乱する

以下で、それぞれについてみてみましょう。

1-1.遺産の名義変更や活用ができない

遺産分割ができないと、遺産の名義変更や活用ができません。

不動産や株式などがいつまでも死亡した被相続人名義のままになってしまい、相続人たちが不動産を賃貸したり売却したりするのも難しくなります。

不動産などの遺産は相続人全員の共有になりますが、共有不動産の場合には共有者の同意がないと活用や処分ができないためです。

結果として、遺産が放置されてしまうケースも少なくありません。活用していなくても不動産であれば固定資産税などの負担は生じるので、デメリットばかりが強調されてしまうでしょう。

1-2.遺産が失われる可能性がある

遺産分割をせずに財産を放置すると、遺産が失われる可能性があります。

例えば、銀行預金には時効があり、請求できるのを知って5年間放置したら時効が成立してしまいます。また、10年放置すると「休眠口座」扱いとなり、公益事業などに預金が使われてしまう可能性もあります。

株式の場合、5年以上保有者が不明な場合には会社が株式買取請求できると規定されています。

以上のように、長期にわたって遺産を放置していると、権利そのものが失われるリスクがあることに注意が必要です。

1-3.相続税の控除を受けられない

遺産分割をせずに放置すると、相続税の控除を受けられないリスクも発生します。

相続税には「配偶者控除」や「小規模宅地の特例」といった控除制度が用意されており、適用すれば税額を低く抑えられます。

ところが、相続税の申告時までに遺産分割できていなければ、こういった控除を適用できません。結果的に相続税額が上がってしまうリスクが生じるのです。

1-4.重ねて相続が起こって混乱する

遺産分割をせずに放置していると、さらに相続が重なって起こり混乱が生じる可能性もあります。たとえば祖父の遺産分割をしないうちに父が亡くなって2代分の相続手続きが必要になる場合などです。

複数の遺産相続が重なると手続きが複雑になる上、相続人の人数も増えてそれぞれの関係は希薄になるので、遺産分割に難航する傾向があります。結果的に遺産分割が行われずに放置され、さらに相続が発生する、という負の連鎖が生じる可能性もあります。

2.遺産分割できていないときの対処方法

相続税の申告期限までに遺産分割できていない場合でも、後で控除を適用してもらうための制度が用意されています。

以下で、相続税の申告期限までに遺産分割できていない場合の対処方法をお伝えします。

2-1.「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出する

相続税の申告期限までに遺産分割できない場合、いったん法定相続分に応じて相続税を申告する必要があります。

その際「申告期限後3年以内の分割見込書」という書類を税務署へ提出しましょう。これを提出しておけば、後に遺産分割が整ったときに「相続税の更正請求」ができます。

更正請求をすると、相続税の還付を受けられます。その際には配偶者控除や小規模宅地の特例を適用できるので、税額を抑えられるでしょう。

2-2.3年以内に遺産分割が成立しない場合の対処方法

「申告期限後3年以内の分割見込書」によって相続税控除や特例を適用するには、申告期限後3年以内に遺産分割が成立しなければなりません。

ただ、事案によっては3年以内に遺産分割できない場合もあるでしょう。

そういったケースでは、相続税の申告期限から3年が経過してから2か月以内に「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を税務署へ提出しましょう。そうすれば、「遺産分割できない事情」が止んでから4か月以内に申告を行うことにより、配偶者控除や小規模宅地の特例などの優遇措置を受けられます。

3.早期に遺産分割を成立させるための工夫

早期に遺産分割を成立させるには、どうしたら良いのでしょうか?

自分たちで話し合ってもどうしても早めに遺産分割するのが難しければ、弁護士に相談しましょう。弁護士が間に入れば相続人同士で直接話さなくて良いので、お互いに感情を抑えて話し合いができます。また弁護士は法律に詳しいので、当事者がどのように遺産を分ければ良いか判断しにくい場合でも、法律的に妥当かつ公平な分け方を提案できます。

さらに、弁護士には面倒な相続手続き全般も任せられます。手間を省いてスムーズに相続手続きできることも大きなメリットといえるでしょう。

京都の益川総合法律事務所では、遺産分割案件に力を入れて取り組んでいます。遺産分割がなかなか進まず困っている方がおられましたらお気軽にご相談ください。

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