遺産分割において寄与分は考慮されにくいのか?

こんにちは。

弁護士の益川教親です。

遺産分割を行う際、ある相続人が、亡くなった方を献身的に介護しているような場合、その相続人から「寄与分」の主張がされることがあります。

遺産分割の際に、この寄与分が考慮される割合はどのくらいなのでしょうか。

肌感覚として、寄与分の主張は中々認められづらいとの印象がありますが、実際の割合については、私自身も調べたことがありません。

そこで、今回は、司法統計データを調べてみましたので、是非参考にしてみてください。

1.寄与分とは

まず、最初に、寄与分の説明を簡単に行います。

寄与分とは、亡くなった方の財産の形成や維持に特別な貢献をした相続人に認められる、上乗せの相続分を意味します。

例えば、ある相続人が亡くなった方を献身的に介護して介護費用の支出を抑えた場合や、亡くなった方の事業を無給で手伝って財産形成に貢献した場合などに寄与分が認められます。

この寄与分の話は、「寄与分とは」という記事で詳しく解説しているので、興味がある方は、是非参考になさって下さい。

2.寄与分が考慮される割合

それでは、遺産分割事件の際に、この寄与分が考慮される割合はどれくらいなのでしょうか?

今回参照したデータは、令和3年に終結した遺産分割事件(遺産分割調停が成立した事件と審判が認容された事件)のうち、寄与分が考慮された割合となります。

結果は、下記の通りです。

■寄与分の考慮の有無(総数6996件)

有り     134件

無し    6862件

考慮割合  1.91%(約2%)

遺産分割事件において、寄与分が考慮される割合は約2%のようです。

遺産分割事件50件のうち、1件しか寄与分が考慮されていません。

寄与分は中々考慮されづらいと思っていましたが、ここまで考慮されていないとは思いませんでした。

というのも、これまでの私の経験上、肌感覚にはなりますが、遺産分割案件を12件ぐらいやれば、1件ぐらいは寄与分が考慮されていた印象があるからです。

3.寄与分が遺産の総額に占める割合

遺産分割事件において寄与分が考慮されたとして、その寄与分は遺産の総額に対して、どのくらいの割合を占めているのでしょうか。

その結果は、下記の通りになります。

■寄与分が遺産の総額に占める割合(総数134件)

10%以下   74件(1位、約55%)

20%以下   19件(2位、約14%)

30%以下    5件(6位、約4%)

50%以下   13件(4位、約10%)

50%を超える  8件(5位、約6%)

不詳      15件(3位、約11%)

上位のように、寄与分が遺産の総額に占める割合は、10%以下や20%以下のものが多いですが、中には50%を超えているものもあるようです。

但し、寄与分が遺産の総額に占める割合が大きい案件は、そもそも遺産の総額が小さいため、高い割合が出ているのだと思われます。

例えば、寄与分が100万円認められたとしても、遺産の総額が1億円であれば、遺産の総額に占める割合は1%になりますし、逆に遺産の総額が200万円であれば、その寄与分が遺産の総額に占める割合が50%となります。

4.最後に

今回は、遺産分割事件において、寄与分が考慮される割合がどれくらいかについて、解説しました。

結論として、寄与分が考慮される割合は、全体の約2%となります。私自身は、かなり低い数字だなと感じましたが、皆様はどのように感じられたでしょうか。

京都の益川総合法律事務所では、遺産相続案件に注力しております。お困りの際には、お気軽にご相談頂ければ幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

■参考

令和3年 司法統計年報 3家事編

012597.pdf (courts.go.jp)

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