こんにちは。
弁護士の益川教親です。
当事務所は遺産相続案件に注力しておりますが、弁護士の友人から、遺産相続案件は、解決までに時間がかかりすぎると言われることも多いです。(だからこそ、その友人からは、遺産相続案件を取り扱いたくないというニュアンスで話がされます。)
しかし、私の肌感覚として、遺産相続案件が他の案件と比べて、必ずしも長く時間がかかるとは思いません。
そこで実際はどうなのかが気になったので、今回、
①遺産分割事件(調停・審判)の審理期間がどのくらいで
②実施される期日の回数が何回くらいか
を調べてみました。
現時点で発表されている最新(令和3年)のデータをもとに解説しますので、気になった方は是非参考にしてみてください。
このページの目次
1.審理期間(総数)
まず、令和3年に終結した遺産分割事件の総数は、1万3447件でした。
そして、審理期間は下記のようになっています。
■審理期間
1月以内 269件
3月以内 1161件
6月以内 2749件
1年以内 4136件
2年以内 3607件
3年以内 1074件
3年を超える 451件
上記のように、一番件数が多いのは6ヶ月を超えて1年以内の4136件、2番目に多いのが1年を超えて2年以内の3607件、3番目に多いのが3ヶ月を超えて6ヶ月以内の2749件でした。
私個人の感覚としても、遺産分割事件は、1年以内に終わることが多いと考えているため、このデータと一致していました。
但し、審理期間が1年を超える案件が、1万3447件のうち5132件もあり、約40%となっています。そのため、友人が言うように、他の案件に比べると、審理期間が長くなる傾向があるかと思います。
2.実施期日回数(総数)
それでは、遺産分割事件の実施期日回数は、どのようになっているでしょうか?
■実施期日回数
0回 1006件
1回 1706件
2回 1965件
3回 1745件
4回 1373件
5回 1133件
6~10回 3073件
11~15回 890件
16~20回 294件
21回以上 261件
上記をみると、1番多いのが6回から10回の3073件になっており、私の肌感覚とも合致しています。
なお、実施期日回数0回というのは、調停の取り下げがされた場合などで、裁判所において審理の必要がないと考えた場合を指すと思われます。
3.遺産分割調停が成立する場合
上記の数字は、遺産分割事件全体の数字になりますが、これには、取り下げがされた場合も含まれています。
それでは、調停成立の場合に絞ると、どのくらいの期間と回数になるのでしょうか?
令和3年の遺産分割調停の成立件数は5895件でした。
そして、審理期間や実施期日回数は、下記の通りとなっています。
■審理期間
1月以内 38件
3月以内 462件
6月以内 1063件
1年以内 1835件
2年以内 1774件
3年以内 527件
3年を超える 196件
■実施期日回数
0回 0件
1回 487件
2回 709件
3回 769件
4回 694件
5回 616件
6~10回 1799件
11~15回 517件
16~20回 182件
21回以上 122件
上記をみると、審理期間で1番多いのが1年以内、2番目に多いのが2年以内、3番目に多いのが6ヶ月以内となっています。
実施期日回数は、1番多いのが6回~10回となっており、2番目に多いのが3回、3番目に多いのが2回になっています。
2回や3回で調停が成立している事案については、調停期日のみならず、期日間においても双方で交渉を進めているケースが多いと思います。
4.遺産分割審判が認容される場合
それでは、遺産分割審判で認容される場合はどうしょうか?
審判認容の総数は1101件で、審理期間や実施回数は下記の通りとなっています。
■審理期間
1月以内 3件
3月以内 16件
6月以内 73件
1年以内 201件
2年以内 437件
3年以内 224件
3年を超える 147件
■実施期日回数
0回 32件
1回 73件
2回 56件
3回 83件
4回 77件
5回 88件
6~10回 371件
11~15回 164件
16~20回 66件
21回以上 91件
上記をみると、審理期間で1番多いのが2年以内、2番目が3年以内、3番目が1年以内となっています。
また、実施期日回数をみると、1番多いのが6回~10回の371件、2番目に多いのが11~15回の164件、3番目に多いのが21回以上の91件となっています。
遺産分割調停が決裂した場合に審判手続に進むことが多いため、調停の場合に比して、時間がかかっています。
5.最後に
今回は、遺産分割調停・審判がどのくらい時間がかかるのかについて、解説しました。
皆さんは、どのような印象を持たれたでしょうか?
今回調べたデータからすると、他の案件に比べて遺産相続案件が長期化する傾向にあるといえるかもしれません。
もっとも、私としては、ご依者の方が納得できない形で遺産相続案件を早く終了させるぐらいであれば、多少時間がかかってもご依頼者の方が納得できる形で案件を終了させる方がよいと考えています。
最後までお読みいただきありがとうございました。
■参考
令和3年 司法統計年報 3家事編
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遺産分割、遺留分侵害額請求、遺言書作成など、遺産相続案件に強い法律事務所であると自負しております。
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