遺産の中に、老朽化した建物がある場合、遺産の評価の際に老朽化した建物の解体費用を考慮できるのでしょうか?
また、遺産分割前に、老朽化している相続建物を解体することは認められているのでしょうか?
この記事では、遺産相続の際における老朽化した建物の取扱いについて、京都の弁護士が解説します。相続財産の中に、老朽化した建物がある方は、是非参考になさってください。
このページの目次
1.遺産の評価の際に建物の解体費用を考慮できるのか?
それでは、遺産の中に老朽化した建物がある場合、遺産の評価額を決める際に、その建物の解体費用を考慮できるのでしょうか。
建物の解体費用を考慮できるのであれば、建物の価格は0円と評価して、その上解体費用も差し引くことになります。
これが問題になる典型的な場面は、下記の通りです。
■問題になる典型的な場面
①遺産分割において、相続人の一人が老朽化した建物に加えてその建物が存在する土地の取得を希望している場合に、その相続人が、土地建物の評価にあたって、解体費用を考慮すべきと主張する場面
②遺言書によって、その老朽化した建物も含めて遺産全部を相続人の一人が取得して、他の相続人が遺留分侵害額請求をした際に、遺産全部を取得した相続人が、老朽化した建物の解体費用を考慮すべきと主張する場面
このように、老朽化した建物の解体費用を考慮できるかは、遺産分割においても遺留分においても、どちらのケースでも問題になります。なお、遺留分については、「遺留分侵害額請求をしたい方へ」という記事で詳しく解説していますので、興味がある方は、参考になさってください。
そして、老朽化した建物であっても、遺産の評価の際に、建物の解体費用は考慮できないのが一般的です。
なぜなら、遺産分割においても、遺留分においても、遺産をそのままの状態で評価すべきであり、建物の解体については、遺産取得後の事後的な事情にすぎないためです。
但し、相続人全員が同意した場合には、建物の解体費用を考慮することができます。そのため、建物の解体費用を考慮したいのであれば、まずは他の相続人にその申し出を行ってみるのがよいでしょう。
特に、遺産分割の場合には、だれもその老朽化した建物の取得を望まない場合、その建物が相続人全員の共有になってしまいます。他の相続人も、その老朽化した建物が共有になってしまうぐらいなら、建物の解体費用を考慮した方がマシだと考えることもありますので、遺留分の場合に比べれば、解体費用を考慮してもらえる可能性は高いでしょう。
2.遺産分割前に建物を解体することはできるのか?
それでは、遺産分割前に、老朽化している建物を解体することはできるのでしょうか?
他の相続人全員が同意している場合は、遺産分割前であっても、老朽化している建物の解体を行うことが可能です。
一方、相続人の中に、1人でも解体に同意していない人がいる場合には、原則として、建物の解体は許されていません。なぜなら、遺産分割が完了するまでは、その老朽化している建物も、相続人全員の共有状態になっているためです。
この不動産の共有の話については、「共同相続した不動産を分割する方法」という記事で、詳しく説明していますので、興味がある方は参考になさってください。
そして、他の共有者の同意なく、建物の解体を行ってしまった場合、他の共有者から損害賠償請求を受けてしまったり、最悪の場合、建造物損壊罪で刑事告訴などがされかねませんので、注意が必要です。
一部例外として、建物が今にも倒壊して隣家に迷惑がかかりそうな場合などには、共有者全員の同意がなくても、保存行為として、建物の解体が許容されることはありますが、その判断が難しい上、例外的なケースですので、弁護士に相談の上、行って頂くのがよいでしょう。
3.最後に
京都の益川総合法律事務所では、遺産相続案件に力を入れて取り組んでいます。
老朽化した建物を含めて、相続問題でお困りの方は、お気軽にご相談ください。
当事務所は、1983年創業の老舗法律事務所です。
遺産分割、遺留分侵害額請求、遺言書作成など、遺産相続案件に強い法律事務所であると自負しております。
お悩みの方は、是非お気軽にお問い合わせ下さい。