遺留分の請求をしても「不動産」を返してもらえない?


「遺留分を請求したら、相手に生前贈与された不動産を引き渡してもらえるのでしょうか?」

「不公平な遺言が遺されたので、兄に遺贈された不動産を取り戻したいです。」

このように、不動産を取り戻したいというご相談を受けることがあります。

確かに不公平な遺言が遺されたり生前贈与が行われたりすると、兄弟姉妹以外の法定相続人は「遺留分」を請求できます。

ただし不動産などの遺産を取り戻せるとは限りません。何を受け取れるかは、被相続人がお亡くなりになった時期によって異なります。

今回は遺留分請求をしたときに具体的に何を請求できるのか、京都の弁護士が解説します。

これから遺留分請求をしようと考えている方はぜひ参考にしてみてください。

1.遺留分はお金を請求する権利

現在の民法において、遺留分にもとづく請求権は「お金を請求する権利」です。

つまり侵害された遺留分の「金額」を相手に支払うよう請求できます。

これを「遺留分侵害額請求権」といいます。

不公平な遺言や贈与が行われたとしても、遺産そのものの引き渡しは請求できません。

たとえば不動産が生前贈与されたり遺贈されたりして遺留分が侵害されたとしても、不動産の引き渡し請求はできないのが原則です。

不動産が共有状態になることもありません。

2.話し合いで不動産を取得できるケースもある

実際に遺留分侵害額の請求をすると、当事者同士の話し合いで解決できるケースもよくあります。相手も金銭支払の代わりに不動産による代物弁済を希望するなら、不動産をもらう方法による解決も可能です。

遺留分侵害額の金額が大きい場合、相手としても支払いが難しいケースも少なくありません。そんなとき、不動産を引き渡して解決する方法は相手にとってもメリットがあります。

2-1.遺留分トラブルで不動産を取得する2つの方法

遺留分トラブルの解決方法として不動産を受け取る場合、単独で完全な権利者になる方法と共有にする方法があります。

たとえば、遺留分侵害額が1,000万円で、遺贈された不動産がちょうど1,000万円程度であれば、不動産をそのまま受け取って単独で所有者になれば問題ありません。

一方、遺留分侵害額が500万円で、不動産価額が1,000万円であれば、全部の引き渡しを受けると「もらいすぎ」になってしまいます。その場合、2分の1ずつの共有にすれば公平です。

ただし共有にすると、将来にわたって相手と不動産を共同管理しなければなりません。

売却や修繕などの際にも相手の同意が必要となり、トラブルになる可能性が高いのでおすすめではありません。

遺留分トラブルの解決方法として不動産を受け取るなら、代償金を払ってでも単独名義にしましょう。たとえば上記のケースの場合、不足額である500万円を相手へ支払って単独名義にしてもらうよう交渉してみてください。もし、代償金を支払いたくない場合には、不動産の共有にするのではなく、相手方から現金で支払いを受けるべきです。

2-2.不動産の登記も忘れずに

代物弁済として不動産を受け取る場合には、所有権の移転登記も行わねばなりません。

登記しなければ不動産が相手名義のままになってしまい、第三者へ所有権を対抗できないからです。早めに法務局で登記申請をしましょう。

3.裁判になった場合には不動産は受け取れない

遺留分侵害額請求をしても、相手が応じなければ話し合いで解決できません。

その場合、遺留分侵害額の請求調停や遺留分侵害額請求訴訟を起こす必要があります。

遺留分侵害額の請求調停は当事者同士が話し合いで解決する方法なので、交渉と同様に相手が合意すれば不動産の代物弁済によって遺留分トラブルを解決できます。

一方、遺留分侵害額訴訟になると、裁判所は金銭の支払い命令しか出してくれません。

不動産そのものを取得したいなら、仮に訴訟になったとしても、和解という話し合いで解決する必要があります。

4.法改正前に被相続人が亡くなった場合

現在の民法では、遺留分は「金銭的な清算を求める権利」ですが、法改正前は「遺産そのものを取り戻す権利」でした。

そこで、改正前に被相続人が死亡したケースで遺留分を請求するなら、遺贈や贈与の対象となった遺産そのものの引き渡しを請求できます。

不動産が遺贈されたのであれば、不動産の引き渡しや登記を請求できるのです。

これを「遺留分減殺請求」といいます。

ただし遺贈や贈与された不動産に対して遺留分減殺請求をすると、不動産が共有になってしまいます。共有状態になると将来のトラブルの種になるので、できれば金銭的に清算する方がよいでしょう。

遺留分減殺請求をした場合でも、相手が金銭賠償に応じればお金の支払による解決が可能です。

なお改正前の民法が適用されるのは2019年6月30日より前の相続に限られます。

遺留分侵害額請求(遺留分減殺請求)には時効があり「相続開始と遺留分侵害を知ってから1年以内」に請求しなければなりません。

このことからすると、現在では多くの事案において新法の遺留分侵害額請求が適用されると考えられます。

5.遺留分侵害額請求は京都の弁護士へご相談を

遺留分侵害額請求を行う際には「何を請求するのか」「いくらを払ってもらうのか」「不動産の評価額はいくらにするのか」など、さまざまなことを決めなければなりません。

適切に判断できないと紛争が拡大し、ときには訴訟にまで発展する可能性もあります。

弁護士がサポートすれば最適な方法で遺留分を取り戻しやすくなるものです。京都・滋賀・大阪・兵庫で遺留分トラブルにお困りの方がおられましたら、お気軽にご相談ください。

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