遺言書の内容に納得できない時の2つの対処方法

遺言書が遺されていても、遺言書の内容が不公平で「納得できない」と感じる相続人の方も少なくありません。

遺言書が不公平な場合には、「遺留分侵害額請求」をしてお金を請求できる可能性もありますし、遺言書が必ずしも有効とは限りません。

今回は遺言書の内容に納得できない場合の対処方法を京都の弁護士がお伝えします。

1.遺言書の無効を主張する

遺言書の内容に納得できない場合、まずは「遺言書が本当に有効か」を検討しましょう。

無効になれば遺言書に従わず、相続人が遺産分割協議を行って遺産分割方法を決定することになります。遺産分割協議では基本的に法定相続分に従うので、比較的公平な解決が図られることになります。

遺言書が無効になる場合

遺言書が無効になるのは以下のような場合です。

■要式を満たさない

遺言書がご自身で作成した自筆証書遺言の場合、「要式違反」で無効になるケースも少なくありません。

遺言書には厳格な要式が求められ、少しでも違反すると無効になってしまうためです。

たとえば以下のような遺言書は無効です。

  • 本人が全文を自筆していない自筆証書遺言
  • 日付が入っていない遺言
  • 署名押印が抜けている遺言

なお、家庭裁判所で遺言書の「検認」を受けていても無効になる可能性があります。

他の相続人が「検認を受けたから有効だ」と言ってきても鵜呑みにする必要はありません。

■偽造、変造

要式が整っているように見えても、偽造や変造の遺言書は無効です。特に本人と筆跡が異なる場合、途中で筆跡が変わっている場合などには注意すべきです。

■遺言時に遺言能力が失われていた

遺言者が作成した遺言書でも、作成時に遺言能力が失われていたら遺言書は無効になります。

たとえば認知症が進んで遺言内容を認識できない状態で作成された場合が典型です。

公正証書遺言であっても遺言能力がない状態で作成されると無効です。

遺言書の無効を主張する方法

STEP1 話し合う

まずは相手に「遺言書は無効なので遺産分割協議を行いたい」希望を伝えて話し合いましょう。

相手が納得すれば遺産分割協議で遺産相続方法を決められます。

STEP2 遺言無効確認調停

相手が「遺言書は有効」として譲らない場合、家庭裁判所で遺言無効確認調停を申し立てましょう。調停委員が間に入り、遺言書が有効か無効かを話し合うことができます。

STEP3 遺言無効確認訴訟

調停が不成立になったら、遺言無効確認訴訟を提起しましょう。

訴訟では「遺言が無効である根拠」を示さねばなりません。

筆跡鑑定、本人の遺言作成当時のカルテや診断書などさまざまな証拠が必要となります。

ご自身で対応すると不利になる可能性が高いので、速やかに弁護士へ相談しましょう。

2.遺留分侵害額請求をする

遺言書が有効でも、内容が不公平なら「遺留分侵害額請求」を行える可能性があります。

遺留分は、兄弟姉妹以外の法定相続人に認められる最低限の遺産取得分です。

不公平な遺言により、取得できる遺産が遺留分を割り込んでしまったら、遺留分の侵害者(遺言で多くの遺産を受け取った相続人や受遺者)へ「遺留分侵害額」という金銭請求を行うことが可能です。

遺留分が認められるのは兄弟姉妹以外の相続人です。

  • 配偶者
  • 子ども、代襲相続人である孫、ひ孫などの直系卑属
  • 親、祖父母、曽祖父母などの直系尊属

遺留分の割合は、親などの直系尊属のみが相続人となる場合は3分の1、それ以外の場合には2分の1です。

遺産そのものの引き渡しは求められない

遺留分侵害額請求権は「金銭請求」を行う権利なので、遺産そのものの取り戻しはできません。たとえば遺言書で「不動産を長男へ相続させる」と書いてある場合、不動産そのものを引き渡す請求はできません。

あくまで「遺留分に相当するお金」の支払いを求めることになります。

ただし相手が現物による支給を希望し、請求者も納得した場合には物による弁済も可能です。

遺留分侵害額請求の進め方

STEP1 話し合う

まずは相手に対し「遺言によって遺留分が侵害されているので遺留分侵害額を払ってほしい」と伝えましょう。

相手が支払いに応じれば、合意して解決できます。

なお、支払い方法を分割にする場合には特に合意書を作成して公正証書にしておくよう強くおすすめします。

公正証書を作成しておけば、相手が支払わくなったときに預金や保険、給料や不動産などを差し押さえられるので、安心です。

STEP2 遺留分侵害額調停を申し立てる

話し合っても相手が遺留分侵害額の支払いに応じないなら、家庭裁判所で遺留分侵害額の請求調停を申し立てましょう。

STEP3 遺留分侵害額請求訴訟を申し立てる

調停でも合意できない場合、裁判所で遺留分侵害額請求訴訟を提起する必要があります。

遺言によって遺留分を侵害されたことを証明できれば、遺留分侵害額請求が認められます。

遺留分侵害額請求権の時効

遺留分侵害額請求権には時効があります。

「不公平な遺言書の存在と相続開始を知ってから1年以内」に相手へ請求しなければなりません。

時効が成立すると遺留分侵害額を払ってもらえなくなるので、早めに対応しましょう。

3.最後に

当事務所は相続トラブルの解決に力を入れて取り組んでいます。

遺言書の内容に納得できない方には最適な対処方法をアドバイスしますので、京都・滋賀・大阪・兵庫で相続に悩まれている方がいらっしゃいましたらお気軽にご相談ください。

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