亡くなった方を献身的に介護した親族がいる場合、その人が相続人なら「寄与分」、相続人でない親族なら「特別寄与料」の請求が認められる可能性があります。
寄与分と特別寄与料はよく似ていますが全く異なる制度なので、それぞれ認められる人や請求方法の違いなど、正しく理解しておきましょう。
この記事では、亡くなった人を介護していた親族がいることが、遺産相続にどのように影響するのかについて解説します。
このページの目次
1.相続人が介護したら寄与分が認められる可能性がある
相続人が被相続人を介護した場合、その相続人には「寄与分」が認められる可能性があります。
寄与分とは、遺産の形成や維持に貢献した相続人がいる場合、その相続人に認められる多めの遺産取得割合です。遺産の維持や形成に特別の貢献をした相続人には寄与分が認められ、遺産分割における遺産の取得割合が増えます。
相続人が被相続人を介護すると、本来なら頼まねばならなかった介護サービスを利用しなくて済むでしょう。
すると、遺産の維持や形成に貢献したといいうるので、介護した相続人に寄与分が認められる可能性があります。
1-1.寄与分の主張方法
寄与分を主張する場合、該当する相続人は遺産分割協議の中で主張しなければなりません。
遺産分割協議の場で他の相続人全員に向けて介護による寄与分を主張し、認められれば寄与分を加味して増額された遺産を受け取れます。
1-2.寄与分を主張する期限
2023年3月までは、遺産分割における寄与分の主張に期限はありません。しかし、2023年4月からは民法が改正され、基本的に相続開始から10年間しか主張できなくなります。
寄与分を認めてもらいたい場合には、早めに遺産分割協議を行って遺産を分ける方が良いでしょう。
2.相続人でなくても介護した親族には特別寄与料が認められる可能性がある
寄与分が認められるのは相続人のみです。
相続人以外の親族が被相続人を介護しても、その親族は寄与分を受け取れません。(ただし、相続人の妻や娘などの親族が介護した場合、相続人の寄与とみなして相続人に寄与分が認められる可能性はあります。)
例えば、長男の嫁や孫、甥姪などが被相続人を介護しても、本人は遺産を一切受け取れません。
それでは介護した親族が報われないので、法改正によってそういった親族に「特別寄与料」が認められるようになりました。
2-1.特別寄与料とは
特別寄与料とは、介護や事業の手伝いによって、被相続人の遺産の維持や形成に特別の貢献をした親族に認められる金銭請求権です。
相続人でなくても、被相続人を献身的に介護して遺産の維持や形成に貢献した一定範囲の親族には、「特別寄与料」が認められます。すると、その親族は、被相続人の死後に相続人へ「特別寄与料」というお金を請求できます。
特別寄与料を請求しても遺産そのものは受け取れませんが、金銭的な支払を受けられるメリットがあります。
2-2.特別寄与料が認められる親族の範囲
介護したとしても、すべての人に特別寄与料が認められるわけではありません。
特別寄与料が認められるのは、以下の範囲の「親族」に限られます。
- 配偶者
- 6親等以内の血族
- 3親等以内の姻族
血族とは自分と血縁関係のある親族、姻族とは配偶者と血縁関係のある親族です。
例えば、長男の嫁や甥姪、孫などには特別寄与料が認められる可能性があります。
2-3.親族でも特別寄与料を請求できない場合
ただし、上記の親族の中でも以下の人は特別寄与料を請求できません。
- 相続放棄した人
- 相続欠格者
- 相続廃除された人
- 相続人
2-4.特別寄与料を請求する方法
特別寄与料を請求するには、請求者が相続人へ特別寄与料の支払を求める必要があります。
遺産分割の中ではなく、相続開始後に直接相続人へ請求します。相続人は法定相続分に応じて特別寄与料を負担します。
話し合って特別寄与料の支払について合意できれば、その合意内容に従って特別寄与料が支払われます。
話し合いができない場合、請求者は家庭裁判所で「特別の寄与に関する処分調停(審判)」を申し立てる必要があります。
すると、裁判所が「そもそも特別寄与料が認められるか」、また「認められるとすれば特別寄与料の金額」を定めてくれます。
2-5.特別寄与料を請求できる期間
特別寄与料は以下のうち、早い方の時期までしか請求できません。
- 相続開始と相続人を知った日から6か月を経過したとき
- 相続開始から1年を経過したとき
遺産分割の中で主張する寄与分とは違い、特別寄与料を請求できる期間は短期です。
請求したい場合には、早めに対応する必要があるといえるでしょう。
3.寄与分、特別寄与料はトラブルのもとになりやすい
寄与分や特別寄与料を請求する相続人がいると、トラブルになりやすいので注意しましょう。
主張された相続人が寄与を否定して支払を拒んだり、金額に折り合いがつかないケースが多いからです。
寄与分や特別寄与料を請求する場合又は請求を受けた場合には、弁護士に相談しておいた方が良いです。
もめてしまったときには早めに弁護士へ協議や調停、審判などの手続きを依頼しましょう。
4.最後に
京都の益川総合法律事務所では相続問題に積極的に取り組んでいます。
相続問題でお困りの際にはお気軽にご相談ください。
当事務所は、1983年創業の老舗法律事務所です。
遺産分割、遺留分侵害額請求、遺言書作成など、遺産相続案件に強い法律事務所であると自負しております。
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