生前贈与に対して遺留分請求できるケースと順序について

生前贈与が行われた場合、一定範囲の相続人は受贈者(贈与を受けた人)に対して、「遺留分侵害額」を請求できる可能性があります。

ただし、すべての生前贈与が遺留分侵害額請求の対象になるわけではありません。

今回は、生前贈与に対して遺留分侵害額請求できる場合とできない場合、請求する順序について、京都の弁護士が解説します。

1.遺留分侵害額請求の対象となる生前贈与

遺留分侵害額請求とは、遺留分を侵害されたときに権利者が侵害者へ金銭による清算を求めることです。

兄弟姉妹以外の相続人には「遺留分」が認められるので、遺贈や生前贈与によって遺留分を侵害されたら侵害者へ遺留分侵害額というお金の請求ができます。

遺留分侵害額請求の対象となる生前贈与は、以下のようなものです。

1-1.相続人以外の人への生前贈与

■基本的には死亡前1年以内に贈与された財産が対象

相続人以外の人へ生前贈与された場合、基本的に「死亡前1年以内に行われた贈与」のみが遺留分侵害額請求の対象となります。

例えば、お亡くなりになった方が「相続人ではない孫」へ「死亡の6か月前」に不動産を贈与した場合、贈与財産は遺留分侵害額請求の対象になります。

一方、贈与時期が1年より前の場合、遺留分侵害額請求はできません。例えば、相続人でない孫へ「死亡の2年前」に不動産を贈与されていたとしても、相続人は遺留分を主張できません。

■当事者が遺留分侵害を知っていた場合

ただし当事者双方が「遺留分を侵害する」と知りながらあえて贈与契約を締結した場合には、死亡の1年より前に行われた贈与も遺留分侵害額請求の対象になります。

例えば、被相続人が長男の嫁に不動産を贈与した場合、被相続人も長男の嫁も「贈与によって相続人の遺留分を侵害する」と認識していれば、贈与時期が古くても相続人は遺留分を請求できます。

1-2.相続人への生前贈与

■基本的には死亡前10年以内に贈与された財産が対象

婚姻や養子縁組、生計の資本として贈与を受けた人が相続人の場合、基本的には「死亡前10年以内に行われた生前贈与」が遺留分侵害額請求の対象になります。

相続法改正前は時期の制限がありませんでしたが、改正によって10年に制限する規定が設けられています。

■当事者が遺留分侵害を知っていた場合

相続人が生前贈与を受けた場合も、被相続人と生前贈与を受けた相続人双方が「遺留分を侵害する」と認識しながら贈与契約を締結した場合、10年より前の贈与も遺留分侵害額請求の対象になります。

2.遺留分侵害額請求の順番

複数の生前贈与が行われると、遺留分侵害額請求をする順番を決めなければなりません。

例えば、長男に3,000万円分の不動産が贈与され、その後長女に2,000万円分の不動産が贈与されるケースを考えてみましょう。

この場合、次男はどちらに対してどれだけの遺留分請求をすればよいのでしょうか?

2-1.死亡時期に近いものから先に請求する

生前贈与に対する遺留分侵害額請求は「新しいものから」先に対象となります。

つまり死亡時期に近い生前贈与から順番に遺留分侵害額請求をしなければなりません。

例えば、長男に3,000万円分の生前贈与が行われ、その後長女に2,000万円分の生前贈与が行われた場合、次男はまずは長女に対して、遺留分侵害額請求を行う必要があります。

長女の支払い分だけでは遺留分侵害額に足りなかった場合、残りを長男へ請求します。

2-2.生前贈与が同時期に行われた場合

生前贈与が同時期に複数の人へ行われた場合には、どのように請求するのでしょうか?

この場合についても、民法によって請求方法が定められています。

同時に複数の生前贈与が行われた場合、遺留分は「目的の価額の割合に応じて」負担します。

つまり、贈与された財産額に応じて割合的に負担する、という意味です。

例えば、長男へ3,000万円の不動産、長女へ2,000万円の不動産が贈与され、次男の遺留分侵害額が1,000万円とします。

この場合、次男は長男に対して600万円、長女に対して400万円の遺留分侵害額を請求できます。

3.遺言によって遺留分侵害額の順番を指定できる

複数の生前贈与が行われた際の遺留分侵害額請求の順番は法律によって定められていますが、贈与者が遺言を遺すと順序を変更できます(民法1047条1項2号但書)。

同時期に複数の贈与が行われたとき、遺言者が「こちらの贈与から先に遺留分侵害額請求するように」と指定しておけば、権利者が按分して請求する必要はありません。

例えば、長男と長女へ同時に不動産が贈与されたとき、遺言で「先に長男へ遺留分侵害額請求するように」と指定されていたら、次男は先に長男へ遺留分侵害額請求を行います。

4.遺留分侵害額請求は弁護士へご相談を

生前贈与に対して遺留分侵害額請求を行うには、贈与が行われた証拠を集めて遺留分侵害額の計算も行わねばなりません。相手が拒否してトラブルになるケースも多々あります。

弁護士にご相談いただけましたら適正な遺留分侵害額を計算できますし、ご自身で交渉するよりも、代理交渉によってスムーズに解決できる可能性があります。

京都・滋賀・大阪・兵庫で遺留分トラブルに悩まれている方がおられましたら、お気軽にご相談ください。

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