相続不動産から生じる賃料に対する遺留分請求

遺贈や贈与された財産の中に、賃料収入が発生する「収益不動産」が含まれていると、得られた賃料に対しても遺留分を請求できるのでしょうか?

実は収益不動産の賃料に対する遺留分請求の可否は、民法改正前後で変わってきます。

今回は収益不動産の賃料と遺留分の関係について、民法の改正内容もあわせて、京都の弁護士が解説します。

1.民法改正で「遺留分減殺請求」から「遺留分侵害額請求」へ

遺留分は兄弟姉妹以外の法定相続人に認められる最低限度の遺産取得割合です。

遺言や贈与によって相続人の遺留分が侵害されると、侵害された相続人(権利者)は侵害者へ遺留分を請求できます。

ただし遺留分の請求方法は、民法改正によって変更されたので、それぞれについて簡単に確認しましょう。

1-1.改正前の民法は遺留分減殺請求

改正前の民法において遺留分を請求する方法は「遺留分減殺請求」でした。

遺留分減殺請求権とは、遺産そのものの取り戻しを求める権利です。

たとえば不動産が遺贈された場合、不動産そのものを請求できます。

結果として不動産は請求者と侵害者との共有となります。

1-2.改正後の民法は遺留分侵害額請求

改正後の民法で遺留分を請求する方法は「遺留分侵害額請求」です。

遺留分侵害額請求とは、侵害された遺留分を「お金」で清算してもらう権利です。

たとえば不動産が遺贈された場合でも、不動産そのものの引き渡しや共有は請求できません。遺留分に相当する「お金」の支払いを求められるだけです。

改正前の民法が適用されるのは2019年6月30日までに相続が発生した場合、改正後の民法が適用されるのは2019年7月1日以降に相続が発生した場合です。

2.改正前の「遺留分減殺請求」なら収益不動産の賃料を請求できる

民法改正前の遺留分減殺請求権の場合、行使すると同時に不動産が遺留分権利者のものとなって権利者との共有状態になります。

共有不動産からの賃料は共有持分権者が共有持分に応じて取得できるので、遺留分権利者にも取得する権利が認められます。

2-1.賃料分配方法の具体例

たとえば毎月の収入が30万円の物件があり、遺留分減殺請求によって不動産が「遺留分権利者3分の1、侵害者3分の2」の共有になったとしましょう。

この場合、遺留分権利者には毎月10万円の賃料を得る権利が認められます。

2-2.賃料を得られる時期は「遺留分減殺請求をした日から」

遺留分権利者が賃料を得られるのは「遺留分減殺請求を行った日から」に限られます。

相続発生後、遺留分減殺請求を行うまでの賃料は受け取れません。

収益不動産に対して遺留分減殺請求をするなら、早めに行った方がよいでしょう。

3.改正後の「遺留分侵害額請求」の場合は賃料請求できない

民法改正後の遺留分侵害額請求の場合、権利者は収益不動産からの賃料は受け取れません。

改正前の民法にあった「遺留分減殺請求をした場合の果実(収益不動産の賃料など)」についての規定も削除されています。

遺留分侵害額請求権は、あくまで「金銭的な清算を求める権利」です。

遺産そのものを返還してもらう権利ではありません。

不動産そのものに対しては権利が認められないので、そこから発生する賃料についても権利が認められないのです。

4.遺留分減殺請求できるケースとは

収益不動産の賃料を請求できるのは改正前民法の「遺留分減殺請求」に限られますが、現時点において遺留分減殺請求できるケースはどういったケースなのでしょうか?

遺留分減殺請求には「時効」が適用されるので、「相続開始と遺留分侵害を知ってから1年以内」に請求しなければ、権利が消滅してしまいます。

改正民法が施行されたのは2019年7月1日であり、すでに1年半以上が経過しています。

現在まで遺留分減殺請求を行っていない場合、時効消滅してしまっている可能性が高いでしょう。

現時点において遺留分減殺請求できるケースは、多くないと考えられます。

ただし以下のような場合には、現在でも遺留分減殺請求権が時効消滅していない可能性があります。

  • 2019年6月30日までに相続が発生したが、被相続人と生前交流がなく死亡の事実を最近まで知らなかった
  • 2019年6月30日までに相続が発生したが、不公平な遺言書や生前贈与の事実を最近知った
  • 相続開始と遺留分侵害を知ってから1年以内に遺留分減殺請求を行ったが、その後相手が応じないので交渉や調停、訴訟などが継続している

上記に該当するなら、遺留分減殺請求を行った以後の収益不動産の賃料を請求できる可能性があるでしょう。

5.遺留分に関するご相談は弁護士へ

遺留分減殺請求や遺留分侵害額請求を行うと、相手に拒否されて大きなトラブルになるケースが少なくありません。

特に収益不動産が対象となる場合、「評価」して適正金額を求める必要があります。

収益不動産の評価方法は一般の住居とは異なり複雑なので、一般の方には正しく算定するのが難しいケースも多く、トラブルの種になりがちです。

弁護士へご相談いただけましたら、各遺産の適正な評価方法や遺留分の割合、遺留分侵害額をお伝えできます。相手との交渉を代行すればスムーズに解決しやすくなるメリットもあります。

京都、滋賀、大阪、兵庫で遺留分に関してお悩みの方がおられましたら、ぜひとも一度ご相談ください。

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