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遺産分割調停・審判はどのくらい時間がかかるの?
こんにちは。
弁護士の益川教親です。
当事務所は遺産相続案件に注力しておりますが、弁護士の友人から、遺産相続案件は、解決までに時間がかかりすぎると言われることも多いです。(だからこそ、その友人からは、遺産相続案件を取り扱いたくないというニュアンスで話がされます。)
しかし、私の肌感覚として、遺産相続案件が他の案件と比べて、必ずしも長く時間がかかるとは思いません。
そこで実際はどうなのかが気になったので、今回、
①遺産分割事件(調停・審判)の審理期間がどのくらいで
②実施される期日の回数が何回くらいか
を調べてみました。
現時点で発表されている最新(令和3年)のデータをもとに解説しますので、気になった方は是非参考にしてみてください。
1.審理期間(総数)
まず、令和3年に終結した遺産分割事件の総数は、1万3447件でした。
そして、審理期間は下記のようになっています。
■審理期間
1月以内 269件
3月以内 1161件
6月以内 2749件
1年以内 4136件
2年以内 3607件
3年以内 1074件
3年を超える 451件
上記のように、一番件数が多いのは6ヶ月を超えて1年以内の4136件、2番目に多いのが1年を超えて2年以内の3607件、3番目に多いのが3ヶ月を超えて6ヶ月以内の2749件でした。
私個人の感覚としても、遺産分割事件は、1年以内に終わることが多いと考えているため、このデータと一致していました。
但し、審理期間が1年を超える案件が、1万3447件のうち5132件もあり、約40%となっています。そのため、友人が言うように、他の案件に比べると、審理期間が長くなる傾向があるかと思います。
2.実施期日回数(総数)
それでは、遺産分割事件の実施期日回数は、どのようになっているでしょうか?
■実施期日回数
0回 1006件
1回 1706件
2回 1965件
3回 1745件
4回 1373件
5回 1133件
6~10回 3073件
11~15回 890件
16~20回 294件
21回以上 261件
上記をみると、1番多いのが6回から10回の3073件になっており、私の肌感覚とも合致しています。
なお、実施期日回数0回というのは、調停の取り下げがされた場合などで、裁判所において審理の必要がないと考えた場合を指すと思われます。
3.遺産分割調停が成立する場合
上記の数字は、遺産分割事件全体の数字になりますが、これには、取り下げがされた場合も含まれています。
それでは、調停成立の場合に絞ると、どのくらいの期間と回数になるのでしょうか?
令和3年の遺産分割調停の成立件数は5895件でした。
そして、審理期間や実施期日回数は、下記の通りとなっています。
■審理期間
1月以内 38件
3月以内 462件
6月以内 1063件
1年以内 1835件
2年以内 1774件
3年以内 527件
3年を超える 196件
■実施期日回数
0回 0件
1回 487件
2回 709件
3回 769件
4回 694件
5回 616件
6~10回 1799件
11~15回 517件
16~20回 182件
21回以上 122件
上記をみると、審理期間で1番多いのが1年以内、2番目に多いのが2年以内、3番目に多いのが6ヶ月以内となっています。
実施期日回数は、1番多いのが6回~10回となっており、2番目に多いのが3回、3番目に多いのが2回になっています。
2回や3回で調停が成立している事案については、調停期日のみならず、期日間においても双方で交渉を進めているケースが多いと思います。
4.遺産分割審判が認容される場合
それでは、遺産分割審判で認容される場合はどうしょうか?
審判認容の総数は1101件で、審理期間や実施回数は下記の通りとなっています。
■審理期間
1月以内 3件
3月以内 16件
6月以内 73件
1年以内 201件
2年以内 437件
3年以内 224件
3年を超える 147件
■実施期日回数
0回 32件
1回 73件
2回 56件
3回 83件
4回 77件
5回 88件
6~10回 371件
11~15回 164件
16~20回 66件
21回以上 91件
上記をみると、審理期間で1番多いのが2年以内、2番目が3年以内、3番目が1年以内となっています。
また、実施期日回数をみると、1番多いのが6回~10回の371件、2番目に多いのが11~15回の164件、3番目に多いのが21回以上の91件となっています。
遺産分割調停が決裂した場合に審判手続に進むことが多いため、調停の場合に比して、時間がかかっています。
5.最後に
今回は、遺産分割調停・審判がどのくらい時間がかかるのかについて、解説しました。
皆さんは、どのような印象を持たれたでしょうか?
今回調べたデータからすると、他の案件に比べて遺産相続案件が長期化する傾向にあるといえるかもしれません。
もっとも、私としては、ご依者の方が納得できない形で遺産相続案件を早く終了させるぐらいであれば、多少時間がかかってもご依頼者の方が納得できる形で案件を終了させる方がよいと考えています。
最後までお読みいただきありがとうございました。
■参考
令和3年 司法統計年報 3家事編

当事務所は、1983年創業の老舗法律事務所です。
遺産分割、遺留分侵害額請求、遺言書作成など、遺産相続案件に強い法律事務所であると自負しております。
お悩みの方は、是非お気軽にお問い合わせ下さい。
遺産分割調停は1年間で何件の申立てがあるの?
こんにちは。
弁護士の益川教親です。
突然ですが、遺産分割調停が1年で何件、家庭裁判所に申し立てられているかご存じですか?
相続法務に注力している弁護士であるにもかかわらず、お恥ずかしながら、私もあまり意識したことはありませんでした。
そこで今回、現時点で発表されている最新(令和3年)のデータを調べてみたので、気になった方は参考になさって下さい。
1.全国総数
まず、厚生労働省のデータによると、令和3年にお亡くなりになった方は、143万9809人のようです。そのため、令和3年に日本全体で、143万9809件の相続が発生していることになります。
そして、令和3年の日本全体における、遺産分割調停の新規申立数は1万3565件です。
それゆえ、相続が発生して遺産分割調停の申立がされる割合は、おおよそ1%(厳密には0.942%)であり、おおよそ100件相続が発生すれば、1件遺産分割調停が申し立てられる計算となっています。
この数字を皆さんはどのようにお考えでしょうか?
私個人としては、思ったより割合が低いなというのが率直な感想です。
もちろん、相続人間で話がまとまらず弁護士が就いた案件でも、遺産分割調停までいかずに、当事者間の話合いで終わる案件が多くあるので、相続で争う割合が1%というわけではないでしょう。しかし、個人的には3%ぐらいはあると思っていたので、私の予想が結構外れていました。
なお、上記統計データには、遺留分侵害額請求という、不公平な遺言が作成された場合の争いは含まれておらず、こちらの調停件数を含まれれば、全体の2%ぐらいの割合になるのではないかと推測します。但し、遺留分調停の申立件数については、公表されていないので、正確には分かりません。
2.全国トップ3
それでは、遺産分割調停の新規申立数、全国トップ3はどこでしょうか?
結論としては、第1位が東京で1620件、第2位が大阪で978件、第3位が横浜(神奈川)で916件になります。
第4位と第5位も発表しておくと、第4位が名古屋で726件、第5位が埼玉で669件になります。
なお、第6位は神戸(兵庫)で627件、第7位は福岡で624件です。神戸と福岡については、件数がわずか3件差なので、おそらく年によっては、順位が入れ替わると思います。
一般的に京都は相続で揉めるイメージがあるかと思いますが、京都はトップ3どころかトップ7にさえ入っていません。
もちろん、人口数や死者数が違うので、単純に比較することはできませんが、意外と京都において遺産分割調停の申立がされている件数は多くないようです。
3.関西地方(京都、大阪、兵庫、滋賀、奈良、和歌山)
当事務所は京都にあり、遺産相続案件については、関西地方の方からご依頼を受けることが多いので、関西地方の件数についても紹介しておきます。
遺産分割調停の新規件数が多いところから紹介していくと、①大阪978件、②神戸(兵庫)627件、③京都281件、④奈良141件、⑤大津(滋賀)115件、⑥和歌山96件となっています。
関西地方全体の申立件数を足しても2238件ですので、第1位の東京の1620件という数字がどれだけ多いかお分かり頂けるかと思います。
上記の通り、京都の件数は281件で、2倍をしても627件の神戸(兵庫)より少ないですし、3倍しても978件の大阪より少ないです。
そうなると、京都って、一般的に言われている印象と違って、相続でそれほど揉めないのではないかという疑問が生まれます。
そこで、死亡者数との兼ね合いで見てみると、令和3年の京都府の死亡者数は2万8309人であり、遺産分割調停申立数は281件なので、調停申立ての割合が1%以下になっています。
そう考えると、京都は相続で揉めるというのは、あくまでイメージの問題で、実際には全国平均と大して変わらないのだろうと思います。
なお、京都の281件というのは、岡山の253件、那覇(沖縄)の262件よりは多いものの、仙台(岩手)の286件、広島の307件よりは少ない数字となっています。
4.最後に
今回は、令和3年の遺産分割調停の新規申立数について、解説しました。
個人的な感想としては、想像よりも遺産分割調停までいく相続の割合は低いなと思いましたし、京都も意外とイメージが先行しているだけだなと思いました。
皆さんは、どのような印象を持たれたでしょうか?
今回のような、統計を使ったコラムは調べていて面白かったので、また機会があれば行おうと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
■参考
令和3年 司法統計年報 3家事編
令和3年 人口動態統計月報年計(概数)の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai21/dl/gaikyouR3.pdf

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弁護士って普段どんな業務をしているの?
こんにちは。
弁護士の益川教親です。
皆さんは、弁護士の日常というと、どのようなものをイメージされるでしょうか?
弁護士は、テレビドラマで見ると派手な仕事だと思われがちですが、普段どんな業務をしているのか、意外と知られていないように思います。
一言に弁護士といっても、注力分野などによって業務にも差はあると思いますが、今回は参考までに、私が普段行っている業務について、お話しさせて頂きます。
1.ご依頼者様(ご相談者様)対応
当たり前ですが、我々弁護士は、ご依頼者(ご相談者)の方から、ご依頼を受けることによって、生活が成り立っています。
そして、我々弁護士の目的は、ご依頼者の方に少しでもご満足頂くことですが、ご依頼者の方ごとに何を重視されるかは異なってきます。そのため、事件を処理するにあたっては、何か進展があり次第、ご依頼者にお伝えして、今後の方針を共に協議していくことになります。
もちろん、ご依頼者によっては、あまり自分に報告せず、弁護士側で業務を進めてほしい等のご要望を頂くので、そのような場合には、おおよその目標と方向性は協議した上で、弁護士が業務を進めることになります。
2.事件処理
次に、弁護士はご依頼を受けた事件の処理を行うことになります。
主に下記のような業務を行っています。
■示談交渉段階
①方針の検討
②現地調査
③ご依頼事件の類似裁判例や文献の調査
④証拠収集
⑤相手方との交渉書面の作成
⑥相手方との電話又は対面での交渉
■裁判(調停)段階
①裁判書面の作成(証拠収集や類似裁判例調査、文献調査なども含む)
②裁判対応(裁判準備、裁判所への出廷、尋問準備など)
この中で、圧倒的に時間がかかるのは、交渉書面の作成と裁判書面の作成です。
示談交渉段階においても、交渉書面が説得的でないと、良い解決案を得ることはできません。
また、裁判においては、裁判官は当事者からの口頭での話よりも、書面を重視する傾向が強いので、この裁判書面の出来が結果に大きく関わってきます。
なので、私も、示談交渉書面や裁判書面の作成に、全力を注いでいます。
ご依頼者から聞き取った内容や証拠、調査した文献や裁判例をもとに、構成をして、書面作成をして、書いた内容を見返して、何度も訂正をするという作業をしています。
私が書いた書面には一文一文に意味がありますし、ご依頼者の方から、何故その文を書いたのかをご質問頂ければ、多くの場合すぐにお答えできるかと思います。
示談交渉書面や裁判書面というのは、1通を作成するだけではなく、何通も何通も作成することが多いです。なので、この書面作成の作業が、一番時間がかかる作業ですし、その意味で弁護士の業務は派手さからは遠いような気がしています(土日祝日などに書面作成をしていることも多いです)。
3.ご依頼案件以外の活動
弁護士の業務には、ご依頼案件の処理だけではなく、顧問業務というのもあります。顧問業務というのは、企業様から月々●万円という顧問契約をして頂き、企業様からの法律が関わる質問にお答えしたり、企業間の契約書等をチェックする作業になります。イメージ的には、企業の法務部のような作業をします。
当事務所は、相続法務と企業法務に特に力をいれており、顧問契約をして頂いている企業様も40社以上あります。そのため、これらの企業様からの日々のご相談にもお答えしています。
また、顧問契約の延長上ではありますが、お客様の法人の委員会(例えば財産をどのように使用するかの委員会や、経営方針に関する委員会)に参加して、意見を述べることもあります。
4.最後に
今回は、弁護士が普段どんな業務をしているのかについて、解説しました。
書面作成など、おそらくイメージよりもかなり地味な仕事かと思います。
ですが、この地味な作業が依頼者の方の笑顔につながることが多いので、私としてもやりがいを感じています。
地道な作業も多いですが、弁護士って案外良い仕事ですよ(笑)、というのをお伝えして、このコラムを締めたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。

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相続人に未成年の子どもがいる場合の対処法
遺産分割協議を行う際に、相続人の中に未成年者がいる場合、未成年者自身が遺産分割協議を行うことができるのでしょうか?
また、親権者が未成年者の代理人として、遺産分割協議を行うことができるのでしょうか?
未成年者が相続人になるケースもあり、その際の対応に困ることもあるかと思います。
今回は、相続人の中に未成年の子どもがいる場合の対処法について、京都の弁護士が解説いたします。
1.未成年の子どもは自身で遺産分割を行えるのか?
遺産分割協議は、相続人全員で合意をする必要があるため、未成年者も含めて協議を行う必要があります。
それでは、未成年者は、自身で遺産分割を行えるのでしょうか?
結論としては、未成年者は自身で遺産分割を行うことはできません。
なぜなら、未成年者は、自身で法律行為をすることができないためです。
法律行為(契約など)については、通常、親権者が法定代理人として、未成年者に代わりに行うことになります。
2.親権者が代理人として遺産分割を行えるのか?
それでは、親権者が未成年者の代理人として、遺産分割を行うことができるのでしょうか?
結論としては、原則として、親権者が、遺産分割を行うことはできません。親が未成年者の代理人として、遺産分割を行っても、その遺産分割が無効になってしまいます。
なぜなら、多くのケースでは、未成年者が相続人になる場合、親権者である親も相続人となっており、親と子どもの利益が相反するためです。
例えば、お父さんとお母さん、お子さん1人の家庭で、お父さんがお亡くなりになったとします。この時、相続人は、お母さんとお子さんです。この場合、お母さんが遺産を多く取得すればお子さんの取得出来る遺産は減りますし、一方、お子さんが多く遺産を取得すれば、お母さんの取得できる遺産が減ることになります。
このように、相続人であるお母さんの立場と、お子さんの立場は、利益が相反するのです。
そのため、法律上、親権者が未成年者の代理人として、遺産分割を行うことは原則禁止されているのです。
ただし、以下の場面では、例外的に、親権者が子どもの法定代理人として、遺産分割を行うことが許容されています。
■親が代理人になることができる例外的な場面
①親権者が相続人とならない場合
親権者が相続人にならない場合、親権者が未成年者の代理人として、遺産分割を行うことができます。例えば、父母が離婚後、母が親権者となり、父が亡くなった場合には、母は相続人とはならないため、子どもの法定代理人として遺産分割を行うことができます。
②親権者が相続放棄をした場合
親権者が相続放棄をした場合には、親権者は子の法定代理人として、遺産分割を行うことができます。ただし、自身が相続放棄をするのであれば、お子さんも相続放棄をすることになる可能性が高いので、あまり現実的な場面ではないです。
※上記の①②の場合にも、親権者である親が法定代理人として関与できるのは、子ども1名についてだけであり、他の子どもには法定代理人として関与することはできません。
3.特別代理人の選任申立
それでは、相続人の中に未成年の子どもがいる場合には、どうすればよいのでしょうか?
結論としては、家庭裁判所に対して、特別代理人の選任を申し立てることになります。特別代理人とは、未成年者などの代わりに、遺産分割などの特定の法律行為をするために選任される代理人のことを言います。
3-1.裁判所の管轄
特別代理人選任の申立は、「子の住所地の家庭裁判所」に行うことになります。
3-2.必要書類
- 特別代理人選任申立書
- 未成年者の戸籍謄本
- 親権者の戸籍謄本
- 特別代理人選任候補者の住民票又は戸籍附票
- 利益相反が分かる資料(遺産分割協議書案など)
- 利害関係人からの申立の場合には、利害関係を証明する資料
などです。
3-3.費用
- 収入印紙800円分(子ども1人につき)
- 連絡用の郵便切手
3-4.特別代理人の選任者
遺産分割のために、未成年者の特別代理人の選任申立がされる場合には、弁護士、司法書士、親族等のいずれかが選任される可能性が高いです。
多くの場合には、弁護士か司法書士が選ばれている印象ですが、遺産分割調停中において、既に遺産分割の内容が定まっており、その内容が未成年者に不利益でない場合には、相続人でない親族などが選ばれることも多い印象です。
■参考:特別代理人選任(親権者と子との利益相反の場合)
https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_11/index.html
4.最後に
今回は、相続人の中に、未成年の子どもがいた場合の対処方法について、解説しました。
益川総合法律事務所では、遺産分割をはじめとした遺産相続案件に注力しています。
お困りの際には、お気軽に当事務所までご相談ください。

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遺産分割、遺留分侵害額請求、遺言書作成など、遺産相続案件に強い法律事務所であると自負しております。
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遺産相続の際における老朽化した建物の取扱いについて
遺産の中に、老朽化した建物がある場合、遺産の評価の際に老朽化した建物の解体費用を考慮できるのでしょうか?
また、遺産分割前に、老朽化している相続建物を解体することは認められているのでしょうか?
この記事では、遺産相続の際における老朽化した建物の取扱いについて、京都の弁護士が解説します。相続財産の中に、老朽化した建物がある方は、是非参考になさってください。
1.遺産の評価の際に建物の解体費用を考慮できるのか?
それでは、遺産の中に老朽化した建物がある場合、遺産の評価額を決める際に、その建物の解体費用を考慮できるのでしょうか。
建物の解体費用を考慮できるのであれば、建物の価格は0円と評価して、その上解体費用も差し引くことになります。
これが問題になる典型的な場面は、下記の通りです。
■問題になる典型的な場面
①遺産分割において、相続人の一人が老朽化した建物に加えてその建物が存在する土地の取得を希望している場合に、その相続人が、土地建物の評価にあたって、解体費用を考慮すべきと主張する場面
②遺言書によって、その老朽化した建物も含めて遺産全部を相続人の一人が取得して、他の相続人が遺留分侵害額請求をした際に、遺産全部を取得した相続人が、老朽化した建物の解体費用を考慮すべきと主張する場面
このように、老朽化した建物の解体費用を考慮できるかは、遺産分割においても遺留分においても、どちらのケースでも問題になります。なお、遺留分については、「遺留分侵害額請求をしたい方へ」という記事で詳しく解説していますので、興味がある方は、参考になさってください。
そして、老朽化した建物であっても、遺産の評価の際に、建物の解体費用は考慮できないのが一般的です。
なぜなら、遺産分割においても、遺留分においても、遺産をそのままの状態で評価すべきであり、建物の解体については、遺産取得後の事後的な事情にすぎないためです。
但し、相続人全員が同意した場合には、建物の解体費用を考慮することができます。そのため、建物の解体費用を考慮したいのであれば、まずは他の相続人にその申し出を行ってみるのがよいでしょう。
特に、遺産分割の場合には、だれもその老朽化した建物の取得を望まない場合、その建物が相続人全員の共有になってしまいます。他の相続人も、その老朽化した建物が共有になってしまうぐらいなら、建物の解体費用を考慮した方がマシだと考えることもありますので、遺留分の場合に比べれば、解体費用を考慮してもらえる可能性は高いでしょう。
2.遺産分割前に建物を解体することはできるのか?
それでは、遺産分割前に、老朽化している建物を解体することはできるのでしょうか?
他の相続人全員が同意している場合は、遺産分割前であっても、老朽化している建物の解体を行うことが可能です。
一方、相続人の中に、1人でも解体に同意していない人がいる場合には、原則として、建物の解体は許されていません。なぜなら、遺産分割が完了するまでは、その老朽化している建物も、相続人全員の共有状態になっているためです。
この不動産の共有の話については、「共同相続した不動産を分割する方法」という記事で、詳しく説明していますので、興味がある方は参考になさってください。
そして、他の共有者の同意なく、建物の解体を行ってしまった場合、他の共有者から損害賠償請求を受けてしまったり、最悪の場合、建造物損壊罪で刑事告訴などがされかねませんので、注意が必要です。
一部例外として、建物が今にも倒壊して隣家に迷惑がかかりそうな場合などには、共有者全員の同意がなくても、保存行為として、建物の解体が許容されることはありますが、その判断が難しい上、例外的なケースですので、弁護士に相談の上、行って頂くのがよいでしょう。
3.最後に
京都の益川総合法律事務所では、遺産相続案件に力を入れて取り組んでいます。
老朽化した建物を含めて、相続問題でお困りの方は、お気軽にご相談ください。

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特別受益は常に考慮される?特別受益の持ち戻し免除について解説
遺産分割を行う際に、高額な生前贈与を受けた相続人がいると、「特別受益」に該当する可能性があります。
そして、「特別受益」を受けた相続人がいる場合、特別受益の持ち戻し計算を行って、その相続人の遺産からの取り分を減らすことになります。
それでは、このような特別受益は常に考慮されるのでしょうか?
今回は、「特別受益の持ち戻し免除」といわれる事柄について、京都の弁護士が解説します。遺産相続において、特別受益が問題になりそうな方は是非参考にされて下さい。
1.特別受益とは
まず、前提として、特別受益について、簡単に説明します。
特別受益とは、特定の相続人が生前贈与や遺贈などによって受けた利益のことをいいます。
高額な財産を生前贈与されたり、遺贈を受けた相続人がいる場合、その財産を無視して、法定相続分通りに遺産分割をすると、不公平になってしまいます。
そこで、生前贈与や遺贈を受けた相続人がいる場合、その相続人の遺産からの取り分を減らすことになります。その計算を、「特別受益の持ち戻し計算」といいます。
その相続人が受けた生前贈与などが、特別受益に該当する時は、特別受益の持ち戻し計算が行われて、その相続人の遺産からの取り分が減ることになるのです。
特別受益については、「遺産分割と生前贈与の関係について」という記事で、詳しく解説していますので、興味がある方は参考にされて下さい。
2.特別受益の持ち戻し免除とは
それでは、相続人の中に特別受益を受けた人がいる場合、常にこの特別受益が考慮されるのでしょうか?
結論としては、被相続人(亡くなった方)が、「特別受益の持ち戻し計算免除」の意思表示をしていた場合には、特別受益は考慮されなくなります。
例えば、被相続人が遺言書で、「特別受益の持戻し計算を免除する」と記載していれば、その相続人の特別受益は考慮されなくなります。
このように、被相続人が遺言書などで、「特別受益の持ち戻し計算免除」の意思を表示している場合には、特別受益を考慮せずに、遺産を分配することになるのです。
また、被相続人が、遺言書などで明示的には意思を表示していないとしても、黙示的な、持ち戻し免除の意思表示が認められて、特別受益を考慮しないことがあります。
黙示的な、持ち戻し計算免除の意思が認められやすいのは、下記のような場合です。
■黙示の持ち戻し計算免除の意思表示が認められやすい場合
①被相続人が生前贈与の見返りに利益を受けている場合
②相続人全員に生前贈与をしていたり、遺贈をしている場合
③家業を受け継ぐ相続人に対して、家業に必要な財産を渡している場合
④病気その他の理由により、その相続人が、相続分以上の財産を必要とする特別な事情ある場合。配偶者の老後の生活を支えるための贈与も含む。
⑤被相続人の居住する地方の社会的慣行や風習として、財産を渡している場合
このように、特別受益の持ち戻し免除の意思表示が認められる場合には、特別受益は考慮されなくなるのです。
3.夫婦間の持ち戻し免除意思の推定規定
婚姻期間の長い夫婦間の贈与の場合には、持ち戻し免除の意思が推定されることがあります。
具体的には、①婚姻期間が20年以上の夫婦が、②居住用不動産の贈与又は遺贈をした場合には、持ち戻し免除の意思が推定されます。
これは、婚姻期間の長い夫婦の一方が、他方に対して居住用不動産を生前贈与したり遺贈したりする場合には、通常それまでの長年の貢献に報いるとともに、老後の生活を図る目的であると考えられるためです。
もちろん、あくまで持ち戻し免除の意思が推定されるにすぎないので、被相続人が異なる意思表示をしていた場合には、特別受益として考慮されることになります。
4.遺留分侵害額請求の際には考慮されない
遺留分とは、兄妹姉妹以外の法定相続人に認められた、最低限の遺産取得割合をいいます。
例えば、被相続人が、生前贈与や遺言書によって、財産のほとんどを相続人の一人に渡した場合には、他の相続人の遺留分を侵害することになります。
この場合には、遺留分を侵害された相続人が、財産を譲り受けた相続人に対して、遺留分侵害請求を行うことができます。
この遺留分については、「遺留分侵害額請求をしたい方へ」という記事で、詳しく解説しているので、興味がある方は参考にされて下さい。
そして、この遺留分請求の際には、先ほど解説した、特別受益の持ち戻し免除は問題になりません。
なぜなら、被相続人による持ち戻し免除の意思の問題を、遺留分制度にも適用させると、各相続人に遺留分という最低限度の権利を認めた意味が無くなってしまうためです。
そのため、「特別受益の持ち戻し免除の意思」が問題となるのは、主として遺産分割の話の際になります。
5.最後に
特別受益が問題になる場合、相続人間での話合いは難しいことが多いです。
なぜなら、被相続人から財産をもらった相続人と、他の相続人の間で、それぞれが考える解決の方向性に大きな差があることが多いためです。
京都の益川総合法律事務所では、今回の特別受益も含めて、遺産相続案件に注力しております。
遺産相続でお困りの際には、お気軽にご相談ください。

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死亡退職金は遺産分割の対象になる?相続財産に含まれるかを解説
退職金制度のある会社に勤めていた方が、退職前にお亡くなりになった場合には、ご遺族に死亡退職金が支給されます。
このような場合に、死亡退職金が相続財産に含まれて、遺産分割の対象になるか否かが問題になります。
そこで、今回は、死亡退職金が遺産分割などの対象になるかについて、京都の弁護士が解説します。死亡退職金が問題になっている方は、是非参考にしてみてください。
1.死亡退職金が遺産分割の対象になるか
死亡退職金には、大きく分けて、故人への賃金の後払いとしての性質と、ご遺族の生活保障としての性質の2つの性質があります。
そして、故人への賃金の後払いとしての性質を重視すれば、死亡退職金が遺産に含まれるという方向に近づきます。
一方、ご遺族の生活保障としての性質を重視すれば、死亡退職金は遺産とは別物であるとの考えに近づきます。
そして、実務上、死亡退職金が、相続財産に含まれて遺産分割の対象になるかは、亡くなった方の勤務先の規定次第になってきます。
そこで、以下では、場合を分けて解説していきます。
1-1.受取人が定められている場合
被相続人が公務員ではなく、企業に勤めていた場合、退職金制度を設けている会社の多くは、死亡退職金の受取人やその順位を定めています。
このような場合、配偶者→子ども→父母→孫→祖父母→兄妹姉妹などの順に受取人を定めており、配偶者がいる場合には、子どもは一切死亡退職金を取得できないことが多いです。
民法の規定からすれば、配偶者と子どもの取得割合が1対1になるはずですが、会社の退職金規定では、受取人について民法と異なる定めがされているのです。
このように、受取人について、民法と異なる規定となっている場合には、死亡退職金が受取人固有の財産になるため、遺産分割の対象になりません。
なぜなら、受取人について、わざわざ民法と異なる規定を定めている場合、その死亡退職金がご遺族の生活保障を目的としていると判断されるためです。
1-2.国家公務員の死亡退職手当
国家公務員の方が在職中に亡くなった場合には、ご遺族に死亡退職手当が支給されます。
死亡退職手当も、本来被相続人がもらうはずだった退職金をご遺族が取得するという点で、死亡退職金と意味合いは変わりませんので、ここでは同じものと思って頂いて構いません。
国家公務員の死亡退職手当の場合にも、国家公務員退職手当法という法律で、受取人の範囲や順位を定めていますが、配偶者がいる場合には、子どもは一切手当を受け取れないなど、民法と異なる規定となっています。
そのため、国家公務員の死亡退職手当についても、受取人固有の財産となるため、遺産分割の対象にはなりません。
1-3.地方公務員の死亡退職手当
地方公務員の方が在職中に亡くなった場合にも、ご遺族に死亡退職手当が支給されます。
地方公務員の死亡退職手当についても、死亡退職金と同じものだと思って頂いて構いません。
地方公務員の死亡退職手当については、その内容を条例で定めることになっています。但し、総務省から、国家公務員の制度に準じて作成するように、条例案が示されていることから、多くの条例では、受取人が民法と異なる規定となっています。
そのため、地方公務員の死亡退職手当についても、多くの場合には、受取人固有の財産になるため、遺産分割の対象にはなりません。
1-4.受取人の定めがない場合
退職金制度を設けている会社の場合、退職金規定などで死亡退職金の受取人を定めていることが多いでしょうが、仮に会社が死亡退職金の受取人を定めていなかった場合、どのように扱われるのでしょうか。
この点については、最高裁判決がないため、実務上の判断が分かれているところです。結局は、その死亡退職金が、賃金の後払いとしての性質が大きいのか、遺族の生活保障としての性質が大きいのかを個別に判断するしかありません。
■類似事案の最高裁判決
退職金の支給規程のない法人が、理事長の死亡後に、同人の妻に死亡退職金を支給する旨の決定をして、これを支払った事案については、最高裁判決があります。
この判決では、①元々法人には退職金の支給規程が存在していないこと、②それにもかかわらず、法人が妻に死亡退職金を支払う旨の決定をして支払ったことなどを重視して、死亡退職金が相続財産に含まれないと判断しました。このような場合には、ご遺族の生活保障としての性質が大きいためです。
この最高裁判決は、あくまで、その法人に元々退職金の支給規程がなかった事案です。
退職金の支給規定があったにもかかわらず、死亡退職金の受取人の規定がなかった場合とは、一線を画すと考えられます。なぜなら、元々その会社に退職金の支給規程がある場合、賃金の後払いとしての性質も大きくなってくるためです。
2.死亡退職金が特別受益になるのか?
上記の通り、死亡退職金(手当)は多くの場合、相続財産とは別物であり、遺産分割の対象になりません。
但し、相続人の一人が死亡退職金を受け取った場合、これが特別受益にあたり、その相続人の遺産の取得分が減るのではないかが問題となります。
この特別受益については、「遺産分割と生前贈与の関係」という記事で、詳しく解説していますので、気になる方は参考にされて下さい。
死亡退職金が、特別受益(又はそれに準ずるもの)に該当するか否かについては、その死亡退職金支給規定の内容や、当該退職金支給の目的等に照らして、特別受益に該当するかが事案毎に判断されることになります。
但し、多くのケースでは、死亡退職金が、ご遺族の生活保障を目的とした制度に依拠して支出されたものであることが考慮され、特別受益(又はそれに準ずるもの)に該当しないと判断されている印象です。
3.死亡退職金の取り扱いで迷ったら弁護士へ相談を
今回は、死亡退職金が相続財産に含まれて、遺産分割の対象になるのかを解説しました。
遺産相続が発生した場合、死亡退職金の判断のみならず、多くの判断が必要となってくるものです。
京都の益川総合法律事務所では、遺産相続案件に注力していますので、相続に関するお悩みがありましたら、お気軽にご相談ください。

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相続人の中に音信不通の人や行方不明者がいる場合の対処法
遺産分割協議を進める際に、音信不通や行方不明の相続人がいる場合、その人を省いて遺産分割協議を行ってもよいのでしょうか?
今回は、相続人の中に音信不通や行方不明の相続人がいる場合の対処方法についてお伝えします。相続人の立場になられた方は、是非参考にされて下さい。
1.遺産分割は相続人全員で行う必要がある
遺産分割協議は、相続人全員で合意をする必要があります。もちろん、相続人の中に、相続放棄などをしている人がいる場合には、その相続人の合意は不要です。
そのため、基本的には、音信不通や行方不明の相続人がいたとしても、その方を省いて、遺産分割の合意をすることはできません。
それでは、音信不通や行方不明の相続人がいた場合、どのように対処すればよいのでしょうか。
2.相続人の中に音信不通の人がいる場合
音信不通の方の住所などが分かっているかどうかで対応も変わってくるので、以下では場合を分けて、ご説明していきます。
2-1.住所などが分かっている場合
音信不通の方の現住所が分かっている場合には、まずは、お手紙を書いてみることをお勧めします。その方は、被相続人がお亡くなりになったことも知らないと思うので、被相続人がお亡くなりになったことと、遺産分割協議を行う必要があることなどを記載しておくことが考えられます。
そのようなお手紙を書いても、何も返信が無い場合には、これ以上ご自身で連絡を取って頂いても進展がないと思います。
そのため、①弁護士に依頼してその方に書面を送付する、又は②家庭裁判所の遺産分割調停などを申し立てるのがよいです。
というのも、これまで相続人からの連絡を無視していた方も、弁護士や家庭裁判所からの連絡であれば、無視してはいけないと考え、対応をすることも多いからです。
2-2.住所などが分からない場合
音信不通の方の現在の住所などが分からなくても、その方の本籍地や過去の住所地が分かっている場合には、現在の住所を調べることができる可能性があります。
相続人同士であれば、市役所に対して、戸籍や住民票の第三者請求という方法をとることができます。
その方の本籍地が分かっている場合には、本籍地の市役所に対して、戸籍の附票の第三者請求を行えば、現在の住所が判明する可能性があります。
また、過去の住所地が分かっている場合には、過去の住所地の市役所に対して、住民票の第三者請求を行えば、現在の住所が判明する可能性があります。
もちろん、このような方法をご自身で取ることが煩わしければ、弁護士にご依頼頂ければ、この辺りの処理も弁護士が行うことが可能です。
■参考:住民票や戸籍の証明の第三者(本人以外の方)の請求
https://www.city.fuchu.tokyo.jp/kurashi/tetuduki/sekyu/daisansya.html
3.相続人の中に行方不明の人がいる場合
相続人の中に、音信不通を超えて、行方不明者がいる場合には、不在者財産管理人の選任申立を行うことが必要になってきます。ここでいう、「不在者」とは、従来の住所や居所を去って、容易に戻る見込みのない人をいいます。
3-1.裁判所の管轄
不在者財産管理人の選任申立は、「不在者の従来の住所地又は居所地の家庭裁判所」に行うことになります。
3-2.必要書類
- 不在者財産管理人選任申立書
- 不在者の戸籍謄本及び戸籍附票
- 財産管理人候補者の住民票又は戸籍附票
- 不在の事実を証明する資料
- 不在者の財産に関する資料
- 利害関係を証明する資料(戸籍謄本など)
などです。
もし、ご自身で申立をされる方は、管轄の家庭裁判所に必要書類等の確認をされれば、対応してもらえるかと思いますので、申立前に一度確認した方がよいかと思います。
3-3.費用
- 収入印紙800円分
- 連絡用の郵便切手
不在者の財産内容からして、不在者財産管理人が不在者の財産を管理するために必要な費用(不在者財産管理人に対する報酬を含む。)に不足が出る可能性がある場合には、申立人が予納金を納付しなければいけないことがあります。
3-4.不在者財産管理人に選ばれる人
遺産分割のために、不在者財産管理人の選任申立がされる場合には、弁護士又は司法書士が不在者財産管理人に選ばれることが多いです。
■参考:不在者財産管理人選任(裁判所)
https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_05/index.html
4.最後に
今回は、音信不通や行方不明の相続人がいた場合の対処方法について、ご説明いたしました。
今回のケースと同じく、相続人の中に海外居住の方がいる場合や、認知症の方がいる場合には、相続人絡みで問題になります。
このようなケースについては、「海外居住の相続人がいる場合の遺産分割協議」、「相続人に認知症の人がいる場合の対処法」で解説しているので、気になる方は参考にされて下さい。
京都の益川総合法律事務所では、遺産相続案件に注力しています。
対応に迷ったときなどは、お気軽に当事務所までご相談ください。

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遺言書と矛盾する行為をした場合にも、遺言書は有効なの?
一度作成した遺言書は、その内容を書き直したり、破棄しない限り、必ず効力を有するのでしょうか?
例えば、ある不動産を相続人の一人に相続させるとの遺言書を作成した方が、その後その不動産の違う人に贈与した場合にも、その遺言書は有効なのでしょうか。
今回は、遺言内容が、遺言書作成後の遺言者の行為と矛盾する場合の、遺言書の効力などについて解説します。被相続人の作成した遺言書の効力について知りたい方や、遺言書を書き直した方が良いか迷っている方にお役に立つ内容ですので、是非参考にされて下さい。
1.遺言書の撤回、取消のルールについて
まず、前提として、遺言書を作成しても、遺言書の撤回や取消は、自由にできます。
これは、遺言書を作成する方の、最終意思を尊重すべきであるとの考えがあるためです。
一旦、遺言書を作成しても、その後、気が変わったり、事情が変わることもあるかと思います。その場合には、遺言書を作り直して頂く形で構いません。
この辺りの話は、「作り直された遺言書の効力~遺言書の撤回と取消について~」で詳しく解説していますので、気になった方は、こちらをご確認ください。
2.遺言者が遺言内容と矛盾する行為をした場合
それでは、遺言書作成後に、遺言者が遺言内容と矛盾する行為をしても、その遺言書は必ず有効なのでしょうか。
民法では、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合には、その抵触する部分については、前の遺言を撤回したものとみなすと規定されています(民法第1023条2項)。要は、遺言書作成後に、遺言者が遺言内容と「抵触」する行為をした際には、その遺言書の「抵触」する部分が撤回されたものとしますという規定です。
この規定は、遺言の法律上の撤回を認めることにより、遺言者の最終意思を重視することを目的にしたものです。
ここで、遺言書と「抵触」という意味が問題になりますが、最高裁判決において、「抵触とは、単に、後の生前処分を実現しようとするときには前の遺言の執行が客観的に不能となるような場合にのみとどまらず、諸般の事情より観察して後の生前処分が前の遺言と両立せしめない趣旨のもとにされたことが明らかである場合をも包含する」とされています。
分かりづらいので、かみ砕いて説明します。
上記判決は、遺言内容と後の行為が同時に実現するのが絶対に不可能な場合だけじゃなくて、さまざまな事情から観察して、後の行為が、前の遺言と両立させない趣旨のもとにされたことが明らかな場合にも「抵触」するとしています。
まだ少し、わかりづらいので、具体例を用いて、ご説明します。
■具体例
具体例①
例えば、ある不動産を相続人の一人に相続させるとの遺言書を作成した方が、その後その不動産の違う人に贈与したとします。
この場合には、遺言内容(ある不動産を相続人の一人に相続させる)と、後の行為(その不動産を違う人に贈与)を同時に実現するのが絶対に不可能です。亡くなる前に、違う人に不動産をあげているのですから、遺言によって、その不動産を相続人の一人に渡すことはできません。
なので、遺言内容が、後の行為と「抵触」することになるので、遺言書が撤回したものとみなされます。
具体例②
これは、先ほどの最高裁判決で、問題になったケースです。
その事案では、遺言者に、子どもがいなかったため、Aさんから一生面倒をみてもらうことを前提に、遺言者がAさんと養子縁組をした上で、保有する不動産をAさんに相続させるとの遺言書を作成していました。そして、遺言者が、Aさんと同居して共同生活を送っていました。
しかし、その後、遺言者とAさんが仲違いをして、同居を解消した上で、養子縁組の解消も行い、Aさんが遺言者の面倒をみなくなりました。
但し、遺言書を書き直したり、破棄したりはされておらず、その遺言書は残されたままになっています。
最高裁判決は、このような場合にも、遺言書が有効なのかが争われた事案でした。
このケースでは、遺言書で対象とされた不動産を他者に贈与したというわけではないので、遺言書の内容と、後の行為(養子縁組の解消や同居の解消など)を同時に実現するのが絶対に不可能というわけではありません。
なぜなら、養子縁組の解消や同居の解消を行っても、その不動産をAさんに相続させるのは、理屈上は可能だからです。
しかし、このようなケースだと、遺言者は、養子縁組の解消や同居の解消などをした時点で、既に自己が保有する不動産をAさんに相続させる気はなかったと考えられます。
そのため、上記判決においては、これらの事情を考慮して、養子縁組の解消や同居の解消などが、前の遺言書と両立させない趣旨の行為であることが明らかであるとして、遺言書が撤回されていると判断しました。
このように、遺言書と、遺言書作成後の行為が「抵触」するとして、遺言書の撤回をみとめた事例はありますが、これはかなり珍しい事例と評価できるかと思います。
なぜなら、このような遺言書の撤回は、相続人などの法律上の地位に重大な影響を及ぼすものですし、遺言者本人が撤回や取消しの意思表示をしたわけでもないのに、遺言書を撤回したとみなすのは、慎重に判断すべきとされやすいためです。
3.遺言書作成上の注意点
上記のように、遺言書作成時と異なる事態が生じた場合、その遺言書が撤回したとみなされるのか否か、その遺言書をどのように解釈すべきなのか等の争いが生じやすいです。
せっかく、争いが生じないように遺言書を作成しているのに、その遺言書が原因で争いが生じてしまっては本末転倒です。
そのため、遺言書作成時と異なる事態が生じた場合には、遺言書を書き直したり、又は当初の作成時から、後にいかなる事態が生じてもその遺言書の効力に疑義が生じない形で作成しておくのが望ましいといえます。
4.最後に
益川総合法律事務所では、遺言書作成に関するサポートや遺言書の効力を争う事案に積極的に取り組んでいます。
この2つの内容については、一見矛盾するように見えるかもしれません。しかし、遺言書の効力を争う事案に取り組んでいるからこそ、そのような紛争が生じにくい形での遺言書作成のサポートができると考えております。
お困りの方は、当事務所までお気軽にご相談頂ければ幸いです。

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弁護士は休日に何をしているの?
こんにちは。
弁護士の益川教親です。
時々、ご依頼者の方から、「休日は何をして過ごしているのですか?」とお尋ね頂くことがあります。
普段、中々休日の過ごし方をお話しする機会もないので、今回は私が休日に何をしているかについてお話しさせて頂きます。
需要があるのか分かりませんが、最後までお付き合い頂ければ嬉しいです。
1.ジムに行く
基本的に、土曜日の朝はジムに行って体を鍛えています。
ジムに行っている理由は2つです。
①身体のメンテナンス
1つ目は30歳になった辺りで、急に体調不良になることが多くなったので、身体のメンテナンスのためです。
ジムに定期的に行くようになってからは、あまり身体を壊すこともなくなりました。
あと、職業柄、精神的に疲弊することもたまにあるのですが、ジムで身体を動かすとメンタルも整います。
サウナも好きですが、個人的には、サウナに負けないぐらい、整うんじゃないかなと思っています。
②相手から殴りかかられた時のため
2つ目は、事件の相手方から殴りかかられた時に対処できるようにするためです(笑)
私は、幸い、事件の相手方から物理的な攻撃を受けたことはないのですが、職業柄その機会が絶対にないとはいえないので、その時に備えて鍛えています。
ただ、もちろん殴りかかられたくはないですが。。。
2.ゴルフに行く
次に、休日、ゴルフに行くことも多いです。
元々、仕事がらみでやり出したのですが、今ではプライベートでも行くほどゴルフにはまっています。
以前、ライザップゴルフにも通ったことがあるのですが、全くスコアが向上しなかったので、おそらくセンスはないんだと思います(笑)
元々自然が好きで、ゴルフをすれば、自然に囲まれることができるので、だからこそゴルフも好きになりました。
3.家族と過ごす
休日で仕事をしない時は、家族(妻)と過ごすことが多いです。
特に何をするというわけでもないのですが、一緒の空間で一緒に過ごすだけで、私は楽しいです。妻はどう思っているのか、分かりませんが(笑)
後は、美味しいご飯を食べるのが好きで、休日に妻とご飯屋さんに行くことが多いです。
4.最後に
今回は、休日の過ごし方についてお話ししました。
基本的には、上の3つの方法で過ごしますが、なんだかんだ仕事をしていることもあります。
趣味が仕事という面もあるのかもしれませんね。
もし、お会いすることがあれば、一緒に休日の話ができれば嬉しいです。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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