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遺言書に遺産の一部のみが記載されている場合の対処方法
遺言書が遺されたとき、すべての財産の分け方について指示されているとは限りません。
一部の財産の分割方法や遺贈のみが記載されていたら、相続人としてはどのように対応すれば良いのでしょうか?
今回は、遺言書に一部の財産の分け方のみが書いてあった場合の対処方法を弁護士がお伝えします。遺言書を発見したけれども、どのように対応すればよいかわからない方は、ぜひ参考にしてみてください。
1.一部の財産の分け方を指定する遺言書も有効
そもそも、一部の財産の分け方しか書いていない遺言書は有効なのでしょうか?
例えば、遺産全体としては自宅不動産とA銀行の預金、B銀行の預金、C会社の株式があったとします。その中で「自宅不動産とA銀行の預金を長男に遺贈する」と書かれており、その他の遺産については特に言及されていなかったとしましょう。
法的には、このような遺言書も有効です。遺言書の内容は、遺言者が自由に決められるものであり、必ずしもすべての遺産についての分け方を指定する必要はありません。
一部の遺産の分け方のみが書いてある内容でも有効なので、相続人は基本的にその内容に従って遺産分割や遺贈の対応を進める必要があります。
2.残りの財産は遺産分割協議で分ける必要がある
一部の財産のみの分け方が指定されている遺言書がある場合、分け方を指定されていない財産についてはどのように分ければ良いのでしょうか?
残りの財産については「遺言書がないのと同じ」になります。
つまり、相続人が自分たちで遺産分割協議を行って分け方を決めなければなりません。前提として、相続人調査や他の遺産内容の調査も必要となります。遺産分割協議が整ったら遺産分割協議書を作成し、名義変更などの対応をする必要もあります。
2-1.遺言書で指定されていない財産の分け方の流れ
遺言書で指定されていない財産の分け方の流れをまとめると、以下のとおりです。
- 相続人調査、相続財産調査
- 遺産分割協議
- 遺産分割協議書を作成する
- 名義変更や預貯金払い戻しなどの相続手続き
相続人としては、上記と遺贈を並行して行わねばなりません。
2-2.相続税が発生する可能性もある
遺贈された財産額と、分け方を指定されていなかった財産額の合計が「相続税の基礎控除」を超えると、受遺者や相続人は相続税を払わねばなりません。
3.相続人への遺贈は特別受益になる
遺言書によって相続人へ財産が遺贈されると、原則的に「特別受益」になります。
特別受益とは、特定の相続人が遺贈や贈与によって受ける利益です。
特別受益が成立すると、遺産分割協議の際に、当該利益を受けた相続人の取得分を減らす計算方法を適用できます。受益を受けた相続人がいる場合、単純に法定相続分によって遺産を分けるとかえって不公平となってしまう可能性があるからです。
実質的な公平を図るために、受遺者の取得分を減らすための計算方法を「特別受益の持戻計算」といいます。
特別受益持戻計算の具体例
例えば、遺産全体の評価額が3000万円、相続人は子ども3人、遺産のうち自宅不動産(1000万円分)が長男へ遺贈(遺言書によって贈与)されたとしましょう。この場合、残りの2000万円分については相続人らが自分たちで話し合って遺産分割しなければなりません。
長男はすでに1000万円の不動産を遺贈されているので、特別受益の持戻計算を適用できます。
具体的には、長男の遺産取得分が0円となり、次男と三男が1000万円ずつの遺産を取得する結果となります。
結果として、長男は遺贈された1000万円分の不動産を受け取り、次男と三男はそれぞれ1000万円ずつの別の遺産を受け取るので公平に遺産分割ができます。
4.持戻免除の意思表示があるかどうかで対応が変わる
特別受益の持戻計算は、すべてのケースで適用されるとは限りません。
そもそも、相続人のうち誰も「持戻計算を行うべき」と主張しなければ適用されないのです。例えば、上記の事例でも、次男や三男が主張しなければ残りの2000万円についても法定相続分に応じて分配することとなるでしょう。
また、遺言者自身の希望により、特別受益の持戻計算を免除できます。
例えば、上記の事例でも、死亡した被相続人自身が遺言書に、「特別受益の持戻計算は免除する」と記載していれば、特別受益の持戻計算は適用されません。
具体的にいうと長男は遺贈を受けた上、さらに2000万円の3分の1である666万円を相続できます。
この場合、次男と三男は666万円ずつの遺産しか受け取れず長男は1666万円分の遺産を受け取れるので不公平とも思えますが、遺言者の希望があるのでやむを得ません。
なお、特別受益の持戻免除の意思表示は遺言書以外の方法でもできます。例えば、エンディングノートなどに特別受益の持戻免除の意思表示が行われた場合であっても、それが本当に本人の書いたものであれば有効です。
5.遺言書についてのご相談はお気軽に
相続人が遺言書を発見したときには、内容に応じて適切な対応をとる必要があります。間違った対応をすると後にトラブルになったりして、不利益を受けてしまいます。迷ったときには、お気軽に京都の益川総合法律事務所までご相談ください。

当事務所は、1983年創業の老舗法律事務所です。
遺産分割、遺留分侵害額請求、遺言書作成など、遺産相続案件に強い法律事務所であると自負しております。
お悩みの方は、是非お気軽にお問い合わせ下さい。
消費者志向自主宣言
益川総合法律事務所では、消費者庁などが目指している、「消費者志向経営」に誠実に取り組むことを自主宣言いたします。
1.経営理念
1.ご依頼者のより良い明日を創造する
2.ご依頼者の真の満足を追求する
3.ご依頼者のためにより良い方法を考え抜く
2.取組方針
①「みんなの声を聴き、かついかすこと」
ご相談者・ご依頼者の方の心情に配慮し、悩みを共有したうえで、最適な選択をするお手伝いをします。
②「未来・次世代のために取り組むこと」
ご相談者・ご依頼者の未来・次世代をも考え、法的な視点からの検討と最適な選択をするお手伝いをします。
③「法令の遵守/コーポレートガバナンスの強化をすること」
弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命としています(弁護士法1条1項)。 弁護士は、この使命に基づいて誠実に職務を行うものです。
益川総合法律事務所では、法令の遵守やコーポレートガバナンスの強化に積極的に取り組んでいます。

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遺言執行者に関する相続法改正の内容
2019年7月1日より、民法が改正されて遺言執行者に関する規定にも変更が加えられました。
これまで不明確だった遺言執行者の立場がより明確になり、業務を進めやすくなっています。
これから遺言書を作成するなら、遺言執行者をつけておくメリットが大きくなったといえるでしょう。
この記事では遺言執行者に関する相続法改正内容をお伝えします。
遺言書作成をご検討されている方は、ぜひ参考にしてみてください。
1.遺言執行者とは
遺言執行者とは、遺言内容を実現する職務を行う人です。
たとえば以下のようなことを行います。
- 具体的な相続手続き(預金払戻しや相続人への分配、登記名義の変更など)
- 遺贈
- 寄付
- 子どもの認知
- 相続人の廃除や取消し
- 保険金受取人の変更
遺言執行者を指定しておくと、遺言内容が実現されやすくなります。また相続人が相続手続きをしなくて良いので、負担を軽減させる効果も期待できます。
遺言によって遺言執行者を指定できるので、信頼できる人を遺言執行者にしておくと良いでしょう。今すぐに遺言執行者を決められない場合、遺言執行者を指定すべき人を決めておくことも可能です。
2.改正法における遺言執行者に関する変更点
2019年7月の民法改正により、遺言執行者の立場が明確化されて業務の範囲も広がりました。以下では改正民法で遺言執行者にどういった変更があったのか、みていきましょう。
3.遺言執行者の立場や権限の明確化
改正前の民法では、遺言執行者は相続人の「代理人」とみなされていました。
しかし遺言執行者は、必ずしも相続人の利益のために動くとは限りません。
すると相続人から「代理人なのになぜ意思に反することをするのか」と責められ、トラブルになるケースがみられました。
そこで、改正法では、「相続人の代理人とみなす」のではなく、「遺言執行者としての独立した立場」を与えました。同時に遺言執行者の行為には相続人へ直接効力が発生することも明記されました。
このように、遺言執行者の立場や権限が明確化されたのが、1つ目の大きな改正点といえます。
民法第1012条(遺言執行者の権利義務)
遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。
民法第1015条(遺言執行者の行為の効果)
遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は、相続人に対して直接にその効力を生ずる。
4.遺言執行者の任務開始の通知義務
2つ目は、遺言執行者に相続人への通知義務が課されたことです。
法改正前は、遺言執行者が就任して任務を開始しても、相続人に通知する必要がありませんでした。それでは相続人としては不安定な立場に立たされてしまいます。相続人の知らないうちに遺言執行が進められるケースもありました。
そこで、改正法では、遺言執行者として指定された人が遺言執行を開始した場合、遅滞なく遺言内容を相続人に通知しなければならないことになったのです。
民法第1007条(遺言執行者の任務の開始)
遺言執行者が就職を承諾したときは、直ちにその任務を行わなければならない。
2 遺言執行者は、その任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならない。
5.遺言執行者による相続登記の申請
民法改正により「特定財産承継遺言」に関する取り扱いも変わります。
特定財産承継遺言とは、ある特定の不動産のような特定財産を承継させる旨の遺言です。
特定財産承継遺言の例
「A不動産を子どもXに相続させる」
これまで特定不動産を相続人へ相続させる旨の遺言が遺されていた場合、遺言執行者は単独では登記申請ができませんでした。相続人と一緒に相続登記申請しなければならないので、手間がかかっていたのです。
改正法では、遺言執行者が単独で相続登記の申請をできるようになっています。
6.遺言執行者の預貯金解約や払戻し
これまでの法律下でも、遺言執行者は、預金の払い戻し権限は解釈上、認められていました。
ただし、明文上では規定されていなかったのです。
そこで改正民法下では、遺言によって預貯金の承継が指定されている場合、遺言執行者が預金の解約や払戻しをできることが明記されました。
なお解約できる範囲は、「預貯金債権の全部が特定財産承継遺言の目的である場合」に限られ、一部のみの承継が指定されている場合には払い戻しなどができません。
たとえば「1000万円のA銀行における預金のうち300万円のみを子どもBに相続させる」という遺言がある場合、遺言執行者は300万円分のみの預金の解約払い戻しができないので注意が必要です。
民法第1014条3項
前項の財産が預貯金債権である場合には、遺言執行者は、同項に規定する行為のほか、その預金又は貯金の払戻しの請求及びその預金又は貯金に係る契約の解約の申入れをすることができる。ただし、解約の申入れについては、その預貯金債権の全部が特定財産承継遺言の目的である場合に限る。
7.復任権
改正民法では、遺言執行者の復任権も明確に認められました。
復任権とは、業務を他人に任せられる権限をいいます。改正前の民法下では復任権については「やむをえない事由」がある場合しか認められませんでした。
改正法下では、遺言者によって復任が禁止されていない限り、遺言執行者は自分の判断で第三者に業務を任せられます。
民法第1016条(遺言執行者の復任権)
遺言執行者は、自己の責任で第三者にその任務を行わせることができる。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
まとめ
改正相続法において、遺言執行者の権限が強められ、選任する意義が高まっているといえます。弁護士が遺言執行者へ就任することもできるので、京都でこれから遺言書を作成する方がおられましたらお気軽にご相談ください。

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遺留分侵害額請求を受けて約500万円の減額に成功した事例【相続解決事例⑩】
・キーワード
遺言書、遺留分侵害額請求、不動産の売却、提携税理士のご紹介
・ご相談内容
ご依頼者は遺留分侵害額請求を受けた側です。
お亡くなりになった被相続人は、生前、「ご依頼者に全ての財産を取得させる」旨の遺言書を作成しておられました。
ご依頼者のご兄妹(相手方)は、この遺言書に納得できず、ご依頼者に対して遺留分侵害額請求を行い、特に被相続人の通帳からの出金を問題視していました。
ご依頼者は、このような相手方からの請求に困り果て、当事務所にご依頼されました。
・当事務所の対応及び結果
弁護士受任後、相手方に対して内容証明郵便を送付し、被相続人(お亡くなりになった方)の通帳からの出金については、被相続人自身が使用されたものである等の説明を行いました。
その後、相手方にも弁護士が就任し、相手方は、①通帳から出金された当時、被相続人は認知症であったため、そのような高額の出金を使用することはできない、②相続不動産の価格について、相手方が依頼した不動産業者の査定価格をもとにした主張などをしてきました。
これに対して、当職において、①被相続人の医療機関のカルテや介護施設の介護記録などを取り寄せ、その当時被相続人は日常生活を支障なく送り、出金された金銭を使用できたこと、②相続不動産の価格は、固定資産評価額を基準とすべきことなどの反論を行いました。
ご依頼者は、相続不動産を売却して、相手方への解決金を支払おうとお考えになっており、ご依頼者が相続不動産の売却代金を取得されるまで、相手方には解決金の支払を待ってもらう必要がありました。
最終的には、①については相手方の請求を約半分に減らし、②については不動産の売却代金から売却に必要な費用を差し引いた金額を基準とし、不動産の売却代金がご依頼者に入るまでは支払を待ってもらう形で示談が成立しました。
最終的に、弁護士関与のもと、不動産業者に依頼して、相続不動産も売却でき、無事にご依頼頂いた案件が解決となりました。
・コメント
本事案は、被相続人の通帳からの出金の金額が大きく、通帳を当方のご依頼者がお預かりしていたとの事案でした。
また、ご依頼者のご意向は、可能な限り示談で終わらせて欲しいというものと、解決金を支払うのは、不動産の売却代金を取得してからにして欲しいというものでした。
そのため、当職においても、ご依頼者のご意向に沿う形で処理させて頂きました。
本事案では税務申告が必要になったため、ご依頼者には当事務所が提携する税理士の先生をご紹介させて頂きました。
ご依頼者からは、「最初知人から別の弁護士を紹介されていたけれども、先生に依頼して本当によかった」と言って頂きました。
※特定できない程度に内容をぼかしています。

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遺産分割、遺留分侵害額請求、遺言書作成など、遺産相続案件に強い法律事務所であると自負しております。
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不動産が遺贈されてしまった場合の対処法
不動産が特定の相続人に遺贈された場合、他の相続人は十分な遺産を受け取れなくなってしまう可能性が高まります。
他の相続人としては、どのようにして権利を守れば良いのでしょうか?
この記事では、不動産が遺贈された場合の法的な対処方法を弁護士がお伝えします。
不公平な遺言書が遺されて納得できない方は参考にしてみてください。
1.不動産が遺贈された場合の影響
特定の相続人に不動産が遺贈されると、他の相続人には以下のような影響が及ぶ可能性が高まります。遺贈とは、遺言によって財産を特定の人へ受け継がせることです。
1-1.他の相続人の遺産取得分が減る
特定の相続人に不動産が遺贈されると、他の相続人の遺産取得分が減ってしまいます。
例えば、長男にのみ実家の土地建物が遺贈されると、遺産全体の価値は実家の分だけ減ってしまうでしょう。そうなると、他の相続人は実家を除いた遺産からしか財産を受け取れないので、結果的に取得できる遺産が減ってしまいます。
1-2.他の相続人は遺産を受け取れない可能性がある
特定の相続人に不動産が遺贈されると、他の相続人が遺産を受け取れなくなる可能性もあります。例えば、遺された遺産が実家の土地建物のみであった場合、実家の土地建物が長男に遺贈されると他の子どもは遺産を一切受け取れなくなってしまうでしょう。
このように不動産が特定の相続人へ遺贈されると他の相続人に不利益が及ぶ可能性があるので、注意が必要です。
以下では、特定の相続人へ不動産が遺贈されたとき、他の相続人として何ができるのかみてみましょう。
2.遺産分割で「特別受益の持戻計算」を行う
1つ目は、遺産分割の際に「特別受益の持戻計算」を行う対処方法です。
特別受益の持戻計算とは、特別受益を受けた相続人がいる場合にその相続人の遺産取得割合を減らす計算方法です。
特別受益とは、特定の相続人が遺贈や贈与によって受けた特別な利益であり、遺贈が行われた場合にも特別受益になります。
特別受益の持戻計算を適用すると、特別受益を受けた相続人の遺産取得分を減らして他の相続人が取得する遺産相続分が増えるので、公平に遺産分割しやすくなります。
特別受益の持戻計算免除について
特別受益の持戻計算は、常に適用できるとは限りません。
被相続人(亡くなった人)が「特別受益の持戻計算免除」の意思表示をしていた場合、特別受益の持戻計算を適用できないからです。
例えば、遺言書で「特別受益の持戻計算を免除する」と書かれていたら、遺産分割時に特別受益の持戻計算ができなくなってしまいます。20年以上連れ添った配偶者へ居住用不動産を遺贈した場合には、明示的な意思表示がなくても特別受益の持戻計算免除意思が推定されます。
その場合、以下に記載する遺留分侵害額請求を検討するなどの方法を取るしかなくなるでしょう。
また、遺産内容が遺贈された不動産しかない場合にも、特別受益の持戻計算をするまでもなく他の相続人は遺産を受け取れなくなってしまいます。その場合にも、以下でご説明する遺留分侵害額請求を検討する必要性が高くなります。
3.遺留分侵害額請求を行う
特定の相続人に不動産が遺贈された場合、他の相続人は遺贈を受けた相続人に対し、遺留分侵害額請求できる可能性があります。
遺留分侵害額請求とは、侵害された遺留分を金銭的に取り戻すための手続きです。
兄弟姉妹以外の法定相続人には、最低限の遺産取得割合である遺留分が認められます。
遺留分は遺言によっても侵害できないので、遺贈によって遺留分を侵害された場合、遺留分権利者は遺留分侵害者へ遺留分侵害額請求ができます。
3-1.遺留分侵害額請求の効果
遺留分侵害額請求をすると、侵害された遺留分に相当する金銭を払ってもらえます。
なお、遺留分侵害額請求権は遺産そのものを取り戻す手続きではありません。請求しても不動産が共有になったり不動産そのものの所有権を取り戻せたりするものではないので、勘違いしないように注意しましょう。
3-2.遺留分侵害額請求の時効
遺留分侵害額請求には時効があります。基本的には「相続開始と遺留分侵害を知ってから1年以内」に請求者なければなりません。
1年が経過すると、時効により遺留分を取り戻せなくなってしまいます。
不動産が遺贈されて納得できないなら、早めに遺留分侵害額請求を行う判断をして、請求手続きを進めましょう。
また、遺留分侵害額請求を行う際には、確実に時効の期間内に請求した証拠を残すため、内容証明郵便を利用するようおすすめします。
4.遺言書が無効なら遺言無効確認請求を行う
遺言書に「不動産を遺贈する」が書かれていても、遺言書が無効であれば遺贈の効果は生じません。例えば、自筆証書遺言で自筆以外の部分があったり偽造変造されたりしている場合や、遺言者の意思能力が低下してから遺言書(公正証書遺言を含む)が作成された場合などには遺言書が無効になる可能性もあります。
遺言書が無効となる疑いがあるなら、遺言無効確認請求を行うのも一つの手です。調停や訴訟を行えば、遺言書が無効かどうかを法的に確認できます。
不動産が遺贈されると他の相続人の遺産取得分が減ってしまい、不公平な状況となってしまう可能性が高まります。不動産の遺贈に納得できない相続人の方は、お早めに弁護士までご相談ください。

当事務所は、1983年創業の老舗法律事務所です。
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お悩みの方は、是非お気軽にお問い合わせ下さい。
当事務所が初回法律相談を無料で行う理由
こんにちは。
弁護士の益川教親です。
時々、ご相談者の方から、「初回相談を無料でしてもらえるのはありがたいんですけど、なぜ無料にしているんですか」という趣旨のご質問を頂くことがあります。
そこで、今回は、当事務所が初回法律相談を無料で行う理由についてお話しさせて頂きます。
①弁護士に相談するハードルを下げたい
これまで弁護士とあまり関わりのない方にとって、弁護士に相談するハードルは高いのが通常だと思います。
おそらく、私も逆の立場の場合、弁護士に相談するのは中々億劫ですし、気乗りしないというのが正直なところだと思います。
一方、弁護士にご相談頂くのは、できるだけ早い方がよく、ご相談頂いた時点ではもう遅く、今からの対応が難しいということもあります。例えば、相続案件の場合、遺産分割協議書に署名押印された後などに、やっぱり遺産分割協議書の内容に納得できないとご相談頂いたとしても、協議書の内容をひっくり返すのは困難なことが多いです。
このように、弁護士の立場からすれば、できるだけ早くご相談頂きたい一方、ご相談者の立場からすれば、中々相談しにくいというのが現状だと思います。
そのため、当事務所としても、できるだけ弁護士に相談するハードルを下げたいという思いから、初回法律相談を無料で行っています。
もちろん、初回法律相談を無料で行ったぐらいで、弁護士に相談しやすいかというと必ずしもそうではないと思いますが、有料よりはまだマシかなと思います。
② 弁護士との相性が良いかを見極めて頂きたい
弁護士にご依頼頂く場合には、ご依頼者と弁護士との相性がかなり重要になってきます。なぜなら、ご依頼者の方にとっては、ただでさえストレスのかかる状況な上に、場合によってはご依頼者と弁護士が長い付き合いになるためです。
例えば、ご自身がストレスを抱えておられる状況で、弁護士との相性が良くない場合、どうでしょうか?案件解決のためには、ご依頼者と弁護士が二人三脚で進む必要がありますが、その相性が良くない場合、ご依頼者が弁護士と話しづらいと感じてしまったり、最悪の場合弁護士と話すことさえ苦痛ということにもなりかねません。
せっかく自己のストレスを軽減させるために弁護士に依頼しているのに、弁護士に依頼したことでかえってストレスを抱えてしまっては本末転倒です。
当事務所にも、他の弁護士にご依頼されている方がご相談にいらっしゃって、今依頼している弁護士と話すことさえ苦痛である旨のご相談をされる方はいらっしゃいます。
そのような場合、途中から当事務所がご依頼を受けることがありますが、それであれば、始めから相性のいい弁護士を選んで頂いた方がよいと思います。
私見としては、そのような場合でも他の弁護士の方が絶対的に悪いと言うよりは、そもそもの相性が良くないのではないかと思います。
このように、ご依頼者の方と弁護士との相性は極めて重要であり、当事務所としては、その相性を見極めて頂くために、無料の法律相談をご活用頂きたいと考えております。
③ 経営的にも問題ない
初回法律相談を有料でされている事務所においては、①経営的に有料の方がよい、②冷やかしのような相談(失礼な言い方をして恐縮ですが「変な相談」)をはじきたい、というお気持ちがあるのではないかと推測します。
しかし、①については、当事務所の感覚では、初回法律相談を有料で行ったとしても、せいぜい30分5500円(税込)ぐらいであり、正直、当事務所の経営に影響を及ぼさない金額なので、その金額を頂く必要性をあまり感じません。もちろん、初回法律相談が毎日10件あるというのであれば、別ですが、現状の初回法律相談の件数からすれば、費用を頂かなくとも特に問題ありません。
次に、②については、おそらく、事務所毎の特性にもよるのですが、少なくとも当事務所の場合、冷やかしのような相談はあまりありません。
当事務所のご相談者やご依頼者の方は良識のある方ばかりなので、②についても特に問題ないと考えています。
④最後に
今回は、当事務所が初回法律相談を無料で行う理由についてお話しさせて頂きました。
色々言いましたが、一番大きいのは、弁護士に相談するハードルを下げて、早く弁護士に相談して欲しいからです。そして、弁護士に依頼した方がよい案件については、是非相性の良い弁護士を見つけて依頼して頂きたいです。
なので、このコラムを見て頂いている方で、もし弁護士に相談するか迷っている方がいらっしゃれば、すぐに弁護士に相談して頂きたいというのが正直な思いです。もし、当事務所にご相談頂ける場合には、このコラムの上と下に当事務所の電話番号が載っているので、そこを押して頂ければ幸いです。
もし、そのご相談を受けたり、相性の良い弁護士が当事務所の弁護士であれば、大変嬉しく思います。
このコラムを見て下さった方のお悩みが解決されることを祈っております。
最後までお読みいただきありがとうございました。

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独身の「おひとりさま」が遺言書を書いた方がよい理由を弁護士が解説
最近では、「おひとりさま」とよばれる独身の高齢者の方が増えています。
配偶者や子どもなどの親族がおらず、一人暮らしをされている方です。
おひとりさまの場合、死後の遺産の行方についてあまりしっかり考えることがないかもしれません。子どもや配偶者がいないので、「相続トラブルは起こらないだろう」と考える方もいるでしょう。
しかし、おひとりさまのケースでこそ、遺言書を作成しておく必要があります。
この記事では、独身のおひとりさまが遺言書を作成しておくべき理由を弁護士がお伝えします。
1.おひとりさまが遺言書を作成した方が良い理由
おひとりさまの場合に遺言書を作成した方が良い理由は以下のとおりです。
1-1.相続手続きがややこしくなる
おひとりさまであっても「相続人がいない」とは限りません。
親や兄弟姉妹がいたら、そういった方々が相続人となります。
親がおらず兄弟姉妹がおひとりさまご本人より先に亡くなっている場合には、兄弟姉妹の子どもである「甥や姪」が相続人になります。
ただ、兄弟姉妹や甥姪が相続する場合、相続手続きが非常に煩雑になります。
集めなければならない戸籍謄本類が大量になるからです。
死亡した方の、生まれてから死亡するまでの戸籍謄本類をすべて集めるだけではなく、親の戸籍謄本や兄弟姉妹の戸籍謄本類まで必要になってしまいます。
集めるべき戸籍類だけで40点以上になってしまうケースもあります。遺言書を作成しておかないと、兄弟姉妹や甥姪といった相続人に多大な負担をかけてしまうのです。
遺言書で誰に何を相続させるか決めておけば、法定相続人が戸籍類を集める必要はありません。
1-2.遺産分割協議が難しくなりやすい
おひとりさまが死亡して兄弟姉妹や甥姪が相続人となった場合、相続人同士で遺産分割協議を行って遺産分け方を決めなければなりません。
ただ、特に甥姪が相続人になると「お互いに疎遠でほとんど会ったこともない」というケースもあります。遺産分割協議を進めようにもお互いのコミュニケーションが難しく、遺産分けをしにくくなってしまうのです。
遺言書があれば相続人たちが遺産分割協議を行う必要がないので、相続人同士が疎遠でも問題になりません。
1-3.望む人に遺産を受け継がせられない
おひとりさまであっても、死後の財産は自分の望むように処分したい方が多いでしょう。
たとえば、慈善団体などに寄付する方法もありますし、お世話になった方へ残す方法もあります。
ところが、遺言書がないと、遺産はあまりかかわりのなかった甥姪に相続されてしまう可能性もあります。また、兄弟姉妹すらいない本当の意味での「天涯孤独」な方の場合、遺産は最終的に国のものとなってしまいます。
遺言書がないと、望む人や団体へ遺産を残せません。このこともおひとりさまが遺言書を作成すべき理由の1つとなるでしょう。
2.おひとりさまが遺言書を作成すべき状況
独身のおひとりさまが以下のような状況であれば、遺言書を作成するよう強くおすすめします。
- 親が死亡して相続人は兄弟姉妹のみ
- 兄弟姉妹の中に亡くなっている人がいる
- 法定相続人以外の人へ遺産を遺したい
- 天涯孤独で相続人となる親族が誰もいない
- お世話になった人など、遺産を残したい相手がいる
- 遺産を国に帰属させるのに抵抗があり、自分の財産の行方は自分で決めたい
3.遺言書の作成方法
遺言書の作成方法には、以下の3種類があります。
3-1.自筆証書遺言
自筆証書遺言とは、遺言者が全文を自筆しなければならない遺言書です。自宅で手軽に作成できますが、要式違反で無効になりやすく、死後に発見されにくい、破棄隠匿されやすいなどのリスクもあります。
3-2.公正証書遺言
公正証書遺言は、公証人に公文書として作成してもらう遺言書です。
公文書なので信用性が高く、無効になるリスクは非常に低くなっています。
作成するためには公証役場へ申込み、費用を払う必要があります。
3-3.秘密証書遺言
秘密証書遺言は内容を秘密にしておける遺言書です。公証人に認証してもらいますが、公証人にも中身をみられることはありません。作成には費用がかかり、保管は自分で行う必要があります。
3つの遺言方式の中でもっともおすすめするのは公正証書遺言です。
自筆証書遺言の場合、以下のようなデメリットが大きいためです。
【自筆証書遺言のデメリット】
- 要式違反で無効になりやすい
- 発見されないリスクがある(自宅保管の場合)
- 破棄や隠匿のリスクがある(自宅保管の場合)
- 発見した相続人は検認を受けなければならない(自宅保管の場合)
おひとりさまが相続に備えるなら、公正証書遺言を作成しておきましょう。
4.おひとりさまの相続で弁護士に依頼するメリット
おひとりさまが弁護士に遺言書作成を相談すると、弁護士が適切な遺言書作成方法をアドバイスします。遺言内容が定まっていない場合、遺言内容についてのご提案も可能です。
公正証書遺言の作成方法についてもアドバイスやサポートしますので、初めてでも安心して手続きを進めて頂けるかと思います。
京都の益川総合法律事務所では遺言書作成や遺産相続案件に力を入れて取り組んでいます。おひとりさまの相続対策は、お気軽にご相談ください。

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不動産が生前贈与されていた場合の対処法
特定の相続人へ不動産が生前贈与されていたら、不動産の贈与が「特別受益」に該当する可能性があります。特別受益になる場合、「特別受益の持戻計算」によって贈与を受けた相続人の遺産取得割合が減ることになります。
また、生前贈与によって他の相続人が取得できる遺産が減ってしまった場合、「遺留分侵害額請求」によって一定額を取り戻せる可能性もあります。
この記事では、不動産が生前贈与されていた場合に他の相続人がとりうる対処方法をお伝えします。不公平な生前贈与が行われて納得できない方などは、ぜひ参考にしてください。
1.不動産の生前贈与が特別受益になるケース
不動産が生前贈与されると、その相続人に特別受益が成立する可能性が高くなります。
特別受益とは、特定の相続人が遺贈や贈与によって受けた特別な利益です。
遺贈や生前贈与が行われた場合、贈与を受けた相続人に特別受益が成立する可能性があります。
生前贈与が特別受益になるのは、その贈与が婚姻や養子縁組、生計の資本として贈与された場合です。例えば、結婚や養子縁組の際に不動産の贈与が行われた場合や、住むための家が贈与された場合などには通常、特別受益が成立すると考えて良いでしょう。
2.特別受益の持戻計算について
特定の相続人が不動産の生前贈与を受けて特別受益が成立する場合、贈与を無視して法定相続分に従って遺産分割すると不公平になってしまいます。特別受益を受けた相続人の財産取得分が多くなってしまうためです。
そこで、特別受益が成立する場合には、「特別受益の持戻計算」を行って特別受益を受けた相続人の遺産取得割合を減らすことになります。
特別受益の持戻計算を適用すると、特別受益を受けた相続人の遺産取得割合を減らして他の相続人の取得分が増えるので、公平に遺産分割しやすくなります。
3.特別受益の持戻計算を適用する方法
特別受益の持戻計算は、どのようにして適用すれば良いのでしょうか?
基本的には、遺産分割の際に、他の相続人が「特別受益の持戻計算を適用したい」と主張しなければなりません。
話し合いによって全員が以下の内容に合意できれば、特別受益を考慮して遺産分割ができます。
- 特別受益の持戻計算を適用すること
- 特別受益の持戻計算の方法(財産評価額や各自の遺産取得割合、具体的な遺産分割方法など)
贈与を受けられなかった相続人が特別受益の持戻計算をしたい場合には、遺産分割協議の際に特別受益の持戻計算を適用するよう主張しましょう。
合意できない場合には家庭裁判所で調停や審判を申し立てる必要があります。
4.不動産の生前贈与によって遺留分侵害額請求できるケース
不動産が生前贈与された場合、他の相続人の「遺留分」が侵害される可能性があります。
遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人に認められる最低限の遺産取得割合です。
不公平な生前贈与によって遺留分すら受け取れなくなってしまった場合、他の相続人は侵害者(贈与を受けた人)に対し、遺留分侵害額請求を行って金銭で清算を求めることができます。
5.遺留分侵害額請求の対象となる贈与
生前贈与が行われても、すべての贈与が遺留分侵害額請求の対象になるわけではありません。贈与によって遺留分侵害額請求できるのは以下のような場合です。
- 死亡前1年以内の贈与
- 当事者が遺留分を侵害すると知って行った贈与
- 死亡前10年以内の特別受益に該当する贈与
不動産の生前贈与の場合、死亡前10年以内に行われたものであれば遺留分侵害額請求の対象になる可能性があります。
6.遺留分を請求できる相続人
遺留分はすべての相続人に認められるわけではありません。請求できるのは、「兄弟姉妹やその代襲相続人である甥姪以外の相続人です。つまり、以下のような相続人であれば遺留分侵害額を請求できます。
- 配偶者
- 子どもや孫、ひ孫などの直系卑属
- 親や祖父母、曾祖父母などの直系尊属
一方、兄弟姉妹やその代襲相続人である甥姪は遺留分侵害額請求できないので、遺された遺産の中から遺産分割で遺産を取得するしかありません。
7.遺留分侵害額請求は金銭を求める権利
遺留分侵害額請求は金銭を求める権利であり、遺産そのものの引き渡しを求められるものではありません。
あくまで、「遺留分侵害額」という金銭支払を請求できるだけです。
例えば、不動産が贈与されて遺留分を侵害されたとしても、不動産そのものの引き渡しを求めたり共有にしたりできません。遺留分侵害額を計算して、遺留分侵害額請求を行いましょう。
8.遺留分侵害額請求権の時効
遺留分侵害額請求権には時効があるので要注意です。「相続開始と遺留分侵害の事実」を知ってから遺留分を請求しないで1年が経過すると、時効が成立して遺留分を請求できなくなってしまいます。
不動産の生前贈与によって遺留分侵害を受けて納得できないなら、早めに遺留分侵害額請求を行いましょう。
相手と話し合っても遺留分侵害額の支払方法について合意できない場合、調停や訴訟で争う必要があります。
9.不動産が生前贈与されて納得できない場合、弁護士までご相談ください
不動産が生前贈与されると、他の相続人の遺産取得分が減ってしまう可能性があります。
そのような場合でも、特別受益の持戻計算をしたり遺留分侵害額請求を行ったりして不公平感を是正できるケースが多数です。
どのように対応するのが最適か、判断しかねる場合には弁護士までご相談ください。弁護士が遺産分割や遺留分侵害額請求の代理人となることも可能です。
京都の益川総合法律事務所では相続人さまの支援に力を入れておりますので、お気軽にご相談ください。

当事務所は、1983年創業の老舗法律事務所です。
遺産分割、遺留分侵害額請求、遺言書作成など、遺産相続案件に強い法律事務所であると自負しております。
お悩みの方は、是非お気軽にお問い合わせ下さい。
相続案件を弁護士に依頼すると他の相続人との関係が悪化するの?
こんにちは。
弁護士の益川教親です。
時々、ご相談者の方から、弁護士に依頼した場合、他の相続人(ご兄弟など)と今後関係をもつことは難しいですかという趣旨のご質問を頂くことがあります。
そこで、今回は、相続案件を弁護士に依頼すると他の相続人との関係が悪化するのかというテーマでお話しさせて頂きます。
結論としては、①依頼した弁護士の個性、②元々の相続人同士の関係の2つが大きく影響しますが、弁護士にご依頼頂いたからといって、必ず今後他の相続人との関係がもてなくなるわけではないです。現に、私の過去のご依頼者の方でも、ご依頼後そして案件解決後も他の相続人との関係をもってらっしゃる方もいます。
以下では、本テーマに大きく影響を与える、①依頼した弁護士の個性、②元々の相続人同士の関係についてご説明いたします。
①依頼した弁護士の個性
例えば、他の相続人が依頼した弁護士が高圧的な態度をとってきたり、書面上でかなり失礼な内容を記載してきた場合、どのように感じるでしょうか?
その弁護士に対して不快感を頂くでしょうし、その不快感は当該弁護士に依頼した相続人に対しても向くことになります。
対して、他の相続人が依頼した弁護士が、自身と向き合いしっかり話をしてくれた場合には、
どのように感じるでしょうか?
その弁護士に対して、さほど悪印象を抱かないでしょうし、その弁護士に依頼した相続人に対しても、悪い感情を抱かない可能性は十分あります。もちろん、自身と向き合いしっかり話をするというのは、他の相続人の話を鵜呑みにして、その相続人の言うとおりに解決するということを意味するわけではなく、文字通りしっかり話をするという意味のみです。
このように、弁護士に依頼すると他の相続人との関係が悪化するかについては、依頼した弁護士の個性に影響を受けることになります。
②元々の相続人同士の関係
元々の相続人同士の関係性が悪い場合、弁護士に依頼すると、そのことが決定打となり、今後一切関係を持たないことがあります。
この場合、元々、弁護士に依頼される際に、今後の他の相続人と関係を持ちたくないとおっしゃることも多いので、他の相続人との関係が悪化をそもそも心配されない方が大半です。
対して、元々の相続人同士の関係がそれなりに良いこともあります。この場合、相続の話は当事者間で話しても埒があかないので、弁護士に依頼するが、他の相続人との関係を悪化させたくないとのご意向をもたれることがあるので、今回のテーマに沿う方かと思います。
このような場合には、弁護士に依頼されても、今後も関係を持つ方が多い印象です。
もちろん、ケースバイケースにはなるのですが、元々の相続人同士の関係がそれなりに良い場合には、弁護士にご依頼頂いても比較的話合いで早期に解決する印象があり、そうすると長期の争いで関係性が壊滅的な状況に陥ることは少ないかと思います。
③最後に
私も、ご依頼者の方に、他の相続人との関係を悪化させたくないとのご要望を頂くことがありますし、その場合には、細心の注意を払って対応することにしています。
但し、相手方が法的にまともなことを言っているのであれば、関係を悪化させずに事件を終了させやすいのですが、相手方が法的におかしい主張(例えば、自分が遺産を全てもらうのが当然で、こちらの依頼者にははんこ代としてわずかな金額を渡す等)をしている場合には、どうしても強く言わなければ分かってもらえないことがあります。
このような場合には、私は、ご依頼者の方に、相手方に強く言うことをご説明して、了解を頂いてから、言うようにしています。
元々の私の案件対応の方針は、丁寧な相手には丁寧に対応し、失礼な相手には即座に強めの口調で言い返すというものなのですが、今回のケースのような場合には、即座に強めの口調で言い返さないようにしています。
失礼な対応を受けた場合には、反射的にかなり強く言ってしまいそうになるのですが、ご依頼者の言葉を思い出し、ぐっと耐えています(笑)
個人的には、どうしても話が通じない相手には、強く言わないと分からないと思っています。
但し、他の相続人との関係を気にされるご依頼者の案件の場合には、他の相続人も話が通じる方が多い印象です。
おそらく、だからこそ、相続人同士の関係が比較的良好なのだと思います。
なので、他の相続人との関係悪化を気にされている方も、中々相続人間で話がまとまらなければ、一度弁護士にご相談いただければと思います。そして、もし、そのご相談頂ける弁護士が、当事務所なのであれば大変嬉しく思います。
このコラムを見て下さった方のお悩みが解決されることを祈っております。
最後までお読みいただきありがとうございました。

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独身の方(おひとり様)の遺産相続や対策方法を弁護士が解説
独身の方がお亡くなりになると、誰が遺産相続するかご存知でしょうか?将来の相続に備えて、法定相続人や法定相続人がいない場合の相続方法についても知っておきましょう。
この記事では独身の「おひとり様」の場合にどのように遺産相続が行われるのか、弁護士が解説します。独身の方はぜひ参考にしてみてください。
1.独身の方の法定相続人
独身のおひとりさまであっても、法定相続人がいれば法定相続人が遺産を相続します。
法定相続人とは、民法の定める相続人です。
独身者の法定相続人は以下のとおりです。
1-1.第1順位は子どもや孫など
独身者であっても子どもがいるケースがあります。その場合、第1順位として子どもが優先的に相続人になります。
子どもがご本人より先に死亡していて孫がいたら、孫が代襲相続によって相続人になります。孫も先に死亡していてひ孫がいたら、ひ孫が相続人になります。このように直系卑属の代襲相続は、延々と続いていきます。
1-2.第2順位は親や祖父母など
独身の方に子どもや孫などの直系卑属がいない場合には、親が第2順位の法定相続人として遺産を相続します。親が先に死亡していて祖父母が生きていたら、祖父母が相続します。
1-3.第3順位は兄弟姉妹か甥姪
お亡くなりになった方に子どもなどの直系卑属も親などの直系尊属もいない場合には、第3順位である兄弟姉妹が相続人になります。兄弟姉妹ご本人より先に死亡していて甥や姪がいたら甥姪が代襲相続人として相続します。甥姪がご本人より先に死亡していても、甥姪の子どもは相続人になりません。
2.独身の方に法定相続人がいない場合の相続方法
独身のおひとり様の場合、近親者がまったくいないケースもあるでしょう。その場合「相続財産管理人」により、以下のような順番で遺産が配分されます。相続財産管理人とは、遺産を管理する職務を担う人です。利害関係人などによって家庭裁判所で選任されます。
以下でどういった人に遺産が配分されるのか、みてみましょう。
2-1.債権者
死亡した方に支払うべき債務がある場合、まずは遺産の中から債権者への支払いが行われます。たとえば以下のような負債がある場合です。
- 借金していた
- 家賃を払っていなかった
- 税金を払っていなかった
- 水道光熱費やスマホ代を払っていなかった
2-2.特定受遺者
特定受遺者とは、遺言によって遺産のうち特定の財産を受け取る人です。遺言が遺されていて、ある人に特定の財産を受け継がせるよう指定されている場合には、遺言とおりに遺産が受遺者に受け継がれます。
独身のおひとりさまの場合、お世話になった人などに遺産を遺したい場合もあるでしょう。そういったケースでは遺言書を作成して遺贈しておくようおすすめします。
2-3.特別縁故者
特別縁故者とは、被相続人と特別に親しい関係にあった人です。債権者や受遺者への支払をしても遺産にあまりがある場合には、特別縁故者への財産分与が行われます。特別縁故者に該当するのは、以下のような人です。
- 被相続人を療養看護していた人
- 被相続人と生計を同一にしていた内縁の夫や妻
- 事実上の養子養親など
ただし、特別縁故者が財産を受け取るには、指定された期間内に家庭裁判所へ「特別縁故者への財産分与の申立て」をしなければならず、手間がかかります。お世話になった人などへ財産を譲りたい場合には、生前贈与するか遺言書を作成しておく方が良いでしょう。
2-4.財産の共有者
不動産などの財産については、他人と共有しているケースが珍しくありません。共有物件の場合、債権者も受遺者も特別縁故者もいなければ、他の共有者へ権利が引き継がれます。
2-5.国庫に帰属
財産を引き継ぐべき債権者も受遺者も特別縁故者もいない場合、最終的に財産は国のものとなります。
3.おひとりさまの相続対策
以上のように、おひとりさまが遺産相続について何の対応もしていなかった場合、最終的には遺産は国のものとなってしまいます。そういった事態を避けたい場合、遺言書を作成しておきましょう。
遺言書を作成すると、遺言書で指定したとおりに遺産を受け継がせることができるので、死後も自分の意思を実現できます。特別縁故者がいる場合でも、はじめから遺言書で近しい人を相続財産全部の「受遺者」として指定しておいたら、わざわざ相続財産管理人の選任や特別縁故者への財産分与の申立てをさせずに済みます。
3-1.法定相続人がいても遺言書は必要
法定相続人がいる場合でも、遺言書を作成しておく必要性は高いといえます。独身の方に子どもも親もいない場合、兄弟姉妹やその子どもである甥姪に遺産が引き継がれるためです。普段かかわりのない遠縁の親族に遺産が引き継がれるのを望まないなら、遺言によって近しい人へ遺産を遺しましょう。
3-2.遺言執行者を指定する
お一人様が遺言書を作成する際には、必ず遺言執行者をつけておくようおすすめします。遺言執行者がいないと遺言内容を実現する人がおらず、手続きが滞ってしまう可能性が高いからです。遺言書によって信頼できる人を指定しておきましょう。
4.相続対策は弁護士までご相談ください
京都の益川総合法律事務所では相続対策に力を入れて取り組んでいます。遺言書の作成や遺言執行者の就任も積極的にお引き受けいたします。独身の方で相続が気になっている場合、お気軽にご相談ください。

当事務所は、1983年創業の老舗法律事務所です。
遺産分割、遺留分侵害額請求、遺言書作成など、遺産相続案件に強い法律事務所であると自負しております。
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