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遺留分侵害額請求を受けて約500万円の減額に成功した事例【相続解決事例⑩】
・キーワード
遺言書、遺留分侵害額請求、不動産の売却、提携税理士のご紹介
・ご相談内容
ご依頼者は遺留分侵害額請求を受けた側です。
お亡くなりになった被相続人は、生前、「ご依頼者に全ての財産を取得させる」旨の遺言書を作成しておられました。
ご依頼者のご兄妹(相手方)は、この遺言書に納得できず、ご依頼者に対して遺留分侵害額請求を行い、特に被相続人の通帳からの出金を問題視していました。
ご依頼者は、このような相手方からの請求に困り果て、当事務所にご依頼されました。
・当事務所の対応及び結果
弁護士受任後、相手方に対して内容証明郵便を送付し、被相続人(お亡くなりになった方)の通帳からの出金については、被相続人自身が使用されたものである等の説明を行いました。
その後、相手方にも弁護士が就任し、相手方は、①通帳から出金された当時、被相続人は認知症であったため、そのような高額の出金を使用することはできない、②相続不動産の価格について、相手方が依頼した不動産業者の査定価格をもとにした主張などをしてきました。
これに対して、当職において、①被相続人の医療機関のカルテや介護施設の介護記録などを取り寄せ、その当時被相続人は日常生活を支障なく送り、出金された金銭を使用できたこと、②相続不動産の価格は、固定資産評価額を基準とすべきことなどの反論を行いました。
ご依頼者は、相続不動産を売却して、相手方への解決金を支払おうとお考えになっており、ご依頼者が相続不動産の売却代金を取得されるまで、相手方には解決金の支払を待ってもらう必要がありました。
最終的には、①については相手方の請求を約半分に減らし、②については不動産の売却代金から売却に必要な費用を差し引いた金額を基準とし、不動産の売却代金がご依頼者に入るまでは支払を待ってもらう形で示談が成立しました。
最終的に、弁護士関与のもと、不動産業者に依頼して、相続不動産も売却でき、無事にご依頼頂いた案件が解決となりました。
・コメント
本事案は、被相続人の通帳からの出金の金額が大きく、通帳を当方のご依頼者がお預かりしていたとの事案でした。
また、ご依頼者のご意向は、可能な限り示談で終わらせて欲しいというものと、解決金を支払うのは、不動産の売却代金を取得してからにして欲しいというものでした。
そのため、当職においても、ご依頼者のご意向に沿う形で処理させて頂きました。
本事案では税務申告が必要になったため、ご依頼者には当事務所が提携する税理士の先生をご紹介させて頂きました。
ご依頼者からは、「最初知人から別の弁護士を紹介されていたけれども、先生に依頼して本当によかった」と言って頂きました。
※特定できない程度に内容をぼかしています。

当事務所は、1983年創業の老舗法律事務所です。
遺産分割、遺留分侵害額請求、遺言書作成など、遺産相続案件に強い法律事務所であると自負しております。
お悩みの方は、是非お気軽にお問い合わせ下さい。
不動産が遺贈されてしまった場合の対処法
不動産が特定の相続人に遺贈された場合、他の相続人は十分な遺産を受け取れなくなってしまう可能性が高まります。
他の相続人としては、どのようにして権利を守れば良いのでしょうか?
この記事では、不動産が遺贈された場合の法的な対処方法を弁護士がお伝えします。
不公平な遺言書が遺されて納得できない方は参考にしてみてください。
1.不動産が遺贈された場合の影響
特定の相続人に不動産が遺贈されると、他の相続人には以下のような影響が及ぶ可能性が高まります。遺贈とは、遺言によって財産を特定の人へ受け継がせることです。
1-1.他の相続人の遺産取得分が減る
特定の相続人に不動産が遺贈されると、他の相続人の遺産取得分が減ってしまいます。
例えば、長男にのみ実家の土地建物が遺贈されると、遺産全体の価値は実家の分だけ減ってしまうでしょう。そうなると、他の相続人は実家を除いた遺産からしか財産を受け取れないので、結果的に取得できる遺産が減ってしまいます。
1-2.他の相続人は遺産を受け取れない可能性がある
特定の相続人に不動産が遺贈されると、他の相続人が遺産を受け取れなくなる可能性もあります。例えば、遺された遺産が実家の土地建物のみであった場合、実家の土地建物が長男に遺贈されると他の子どもは遺産を一切受け取れなくなってしまうでしょう。
このように不動産が特定の相続人へ遺贈されると他の相続人に不利益が及ぶ可能性があるので、注意が必要です。
以下では、特定の相続人へ不動産が遺贈されたとき、他の相続人として何ができるのかみてみましょう。
2.遺産分割で「特別受益の持戻計算」を行う
1つ目は、遺産分割の際に「特別受益の持戻計算」を行う対処方法です。
特別受益の持戻計算とは、特別受益を受けた相続人がいる場合にその相続人の遺産取得割合を減らす計算方法です。
特別受益とは、特定の相続人が遺贈や贈与によって受けた特別な利益であり、遺贈が行われた場合にも特別受益になります。
特別受益の持戻計算を適用すると、特別受益を受けた相続人の遺産取得分を減らして他の相続人が取得する遺産相続分が増えるので、公平に遺産分割しやすくなります。
特別受益の持戻計算免除について
特別受益の持戻計算は、常に適用できるとは限りません。
被相続人(亡くなった人)が「特別受益の持戻計算免除」の意思表示をしていた場合、特別受益の持戻計算を適用できないからです。
例えば、遺言書で「特別受益の持戻計算を免除する」と書かれていたら、遺産分割時に特別受益の持戻計算ができなくなってしまいます。20年以上連れ添った配偶者へ居住用不動産を遺贈した場合には、明示的な意思表示がなくても特別受益の持戻計算免除意思が推定されます。
その場合、以下に記載する遺留分侵害額請求を検討するなどの方法を取るしかなくなるでしょう。
また、遺産内容が遺贈された不動産しかない場合にも、特別受益の持戻計算をするまでもなく他の相続人は遺産を受け取れなくなってしまいます。その場合にも、以下でご説明する遺留分侵害額請求を検討する必要性が高くなります。
3.遺留分侵害額請求を行う
特定の相続人に不動産が遺贈された場合、他の相続人は遺贈を受けた相続人に対し、遺留分侵害額請求できる可能性があります。
遺留分侵害額請求とは、侵害された遺留分を金銭的に取り戻すための手続きです。
兄弟姉妹以外の法定相続人には、最低限の遺産取得割合である遺留分が認められます。
遺留分は遺言によっても侵害できないので、遺贈によって遺留分を侵害された場合、遺留分権利者は遺留分侵害者へ遺留分侵害額請求ができます。
3-1.遺留分侵害額請求の効果
遺留分侵害額請求をすると、侵害された遺留分に相当する金銭を払ってもらえます。
なお、遺留分侵害額請求権は遺産そのものを取り戻す手続きではありません。請求しても不動産が共有になったり不動産そのものの所有権を取り戻せたりするものではないので、勘違いしないように注意しましょう。
3-2.遺留分侵害額請求の時効
遺留分侵害額請求には時効があります。基本的には「相続開始と遺留分侵害を知ってから1年以内」に請求者なければなりません。
1年が経過すると、時効により遺留分を取り戻せなくなってしまいます。
不動産が遺贈されて納得できないなら、早めに遺留分侵害額請求を行う判断をして、請求手続きを進めましょう。
また、遺留分侵害額請求を行う際には、確実に時効の期間内に請求した証拠を残すため、内容証明郵便を利用するようおすすめします。
4.遺言書が無効なら遺言無効確認請求を行う
遺言書に「不動産を遺贈する」が書かれていても、遺言書が無効であれば遺贈の効果は生じません。例えば、自筆証書遺言で自筆以外の部分があったり偽造変造されたりしている場合や、遺言者の意思能力が低下してから遺言書(公正証書遺言を含む)が作成された場合などには遺言書が無効になる可能性もあります。
遺言書が無効となる疑いがあるなら、遺言無効確認請求を行うのも一つの手です。調停や訴訟を行えば、遺言書が無効かどうかを法的に確認できます。
不動産が遺贈されると他の相続人の遺産取得分が減ってしまい、不公平な状況となってしまう可能性が高まります。不動産の遺贈に納得できない相続人の方は、お早めに弁護士までご相談ください。

当事務所は、1983年創業の老舗法律事務所です。
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お悩みの方は、是非お気軽にお問い合わせ下さい。
当事務所が初回法律相談を無料で行う理由
こんにちは。
弁護士の益川教親です。
時々、ご相談者の方から、「初回相談を無料でしてもらえるのはありがたいんですけど、なぜ無料にしているんですか」という趣旨のご質問を頂くことがあります。
そこで、今回は、当事務所が初回法律相談を無料で行う理由についてお話しさせて頂きます。
①弁護士に相談するハードルを下げたい
これまで弁護士とあまり関わりのない方にとって、弁護士に相談するハードルは高いのが通常だと思います。
おそらく、私も逆の立場の場合、弁護士に相談するのは中々億劫ですし、気乗りしないというのが正直なところだと思います。
一方、弁護士にご相談頂くのは、できるだけ早い方がよく、ご相談頂いた時点ではもう遅く、今からの対応が難しいということもあります。例えば、相続案件の場合、遺産分割協議書に署名押印された後などに、やっぱり遺産分割協議書の内容に納得できないとご相談頂いたとしても、協議書の内容をひっくり返すのは困難なことが多いです。
このように、弁護士の立場からすれば、できるだけ早くご相談頂きたい一方、ご相談者の立場からすれば、中々相談しにくいというのが現状だと思います。
そのため、当事務所としても、できるだけ弁護士に相談するハードルを下げたいという思いから、初回法律相談を無料で行っています。
もちろん、初回法律相談を無料で行ったぐらいで、弁護士に相談しやすいかというと必ずしもそうではないと思いますが、有料よりはまだマシかなと思います。
② 弁護士との相性が良いかを見極めて頂きたい
弁護士にご依頼頂く場合には、ご依頼者と弁護士との相性がかなり重要になってきます。なぜなら、ご依頼者の方にとっては、ただでさえストレスのかかる状況な上に、場合によってはご依頼者と弁護士が長い付き合いになるためです。
例えば、ご自身がストレスを抱えておられる状況で、弁護士との相性が良くない場合、どうでしょうか?案件解決のためには、ご依頼者と弁護士が二人三脚で進む必要がありますが、その相性が良くない場合、ご依頼者が弁護士と話しづらいと感じてしまったり、最悪の場合弁護士と話すことさえ苦痛ということにもなりかねません。
せっかく自己のストレスを軽減させるために弁護士に依頼しているのに、弁護士に依頼したことでかえってストレスを抱えてしまっては本末転倒です。
当事務所にも、他の弁護士にご依頼されている方がご相談にいらっしゃって、今依頼している弁護士と話すことさえ苦痛である旨のご相談をされる方はいらっしゃいます。
そのような場合、途中から当事務所がご依頼を受けることがありますが、それであれば、始めから相性のいい弁護士を選んで頂いた方がよいと思います。
私見としては、そのような場合でも他の弁護士の方が絶対的に悪いと言うよりは、そもそもの相性が良くないのではないかと思います。
このように、ご依頼者の方と弁護士との相性は極めて重要であり、当事務所としては、その相性を見極めて頂くために、無料の法律相談をご活用頂きたいと考えております。
③ 経営的にも問題ない
初回法律相談を有料でされている事務所においては、①経営的に有料の方がよい、②冷やかしのような相談(失礼な言い方をして恐縮ですが「変な相談」)をはじきたい、というお気持ちがあるのではないかと推測します。
しかし、①については、当事務所の感覚では、初回法律相談を有料で行ったとしても、せいぜい30分5500円(税込)ぐらいであり、正直、当事務所の経営に影響を及ぼさない金額なので、その金額を頂く必要性をあまり感じません。もちろん、初回法律相談が毎日10件あるというのであれば、別ですが、現状の初回法律相談の件数からすれば、費用を頂かなくとも特に問題ありません。
次に、②については、おそらく、事務所毎の特性にもよるのですが、少なくとも当事務所の場合、冷やかしのような相談はあまりありません。
当事務所のご相談者やご依頼者の方は良識のある方ばかりなので、②についても特に問題ないと考えています。
④最後に
今回は、当事務所が初回法律相談を無料で行う理由についてお話しさせて頂きました。
色々言いましたが、一番大きいのは、弁護士に相談するハードルを下げて、早く弁護士に相談して欲しいからです。そして、弁護士に依頼した方がよい案件については、是非相性の良い弁護士を見つけて依頼して頂きたいです。
なので、このコラムを見て頂いている方で、もし弁護士に相談するか迷っている方がいらっしゃれば、すぐに弁護士に相談して頂きたいというのが正直な思いです。もし、当事務所にご相談頂ける場合には、このコラムの上と下に当事務所の電話番号が載っているので、そこを押して頂ければ幸いです。
もし、そのご相談を受けたり、相性の良い弁護士が当事務所の弁護士であれば、大変嬉しく思います。
このコラムを見て下さった方のお悩みが解決されることを祈っております。
最後までお読みいただきありがとうございました。

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独身の「おひとりさま」が遺言書を書いた方がよい理由を弁護士が解説
最近では、「おひとりさま」とよばれる独身の高齢者の方が増えています。
配偶者や子どもなどの親族がおらず、一人暮らしをされている方です。
おひとりさまの場合、死後の遺産の行方についてあまりしっかり考えることがないかもしれません。子どもや配偶者がいないので、「相続トラブルは起こらないだろう」と考える方もいるでしょう。
しかし、おひとりさまのケースでこそ、遺言書を作成しておく必要があります。
この記事では、独身のおひとりさまが遺言書を作成しておくべき理由を弁護士がお伝えします。
1.おひとりさまが遺言書を作成した方が良い理由
おひとりさまの場合に遺言書を作成した方が良い理由は以下のとおりです。
1-1.相続手続きがややこしくなる
おひとりさまであっても「相続人がいない」とは限りません。
親や兄弟姉妹がいたら、そういった方々が相続人となります。
親がおらず兄弟姉妹がおひとりさまご本人より先に亡くなっている場合には、兄弟姉妹の子どもである「甥や姪」が相続人になります。
ただ、兄弟姉妹や甥姪が相続する場合、相続手続きが非常に煩雑になります。
集めなければならない戸籍謄本類が大量になるからです。
死亡した方の、生まれてから死亡するまでの戸籍謄本類をすべて集めるだけではなく、親の戸籍謄本や兄弟姉妹の戸籍謄本類まで必要になってしまいます。
集めるべき戸籍類だけで40点以上になってしまうケースもあります。遺言書を作成しておかないと、兄弟姉妹や甥姪といった相続人に多大な負担をかけてしまうのです。
遺言書で誰に何を相続させるか決めておけば、法定相続人が戸籍類を集める必要はありません。
1-2.遺産分割協議が難しくなりやすい
おひとりさまが死亡して兄弟姉妹や甥姪が相続人となった場合、相続人同士で遺産分割協議を行って遺産分け方を決めなければなりません。
ただ、特に甥姪が相続人になると「お互いに疎遠でほとんど会ったこともない」というケースもあります。遺産分割協議を進めようにもお互いのコミュニケーションが難しく、遺産分けをしにくくなってしまうのです。
遺言書があれば相続人たちが遺産分割協議を行う必要がないので、相続人同士が疎遠でも問題になりません。
1-3.望む人に遺産を受け継がせられない
おひとりさまであっても、死後の財産は自分の望むように処分したい方が多いでしょう。
たとえば、慈善団体などに寄付する方法もありますし、お世話になった方へ残す方法もあります。
ところが、遺言書がないと、遺産はあまりかかわりのなかった甥姪に相続されてしまう可能性もあります。また、兄弟姉妹すらいない本当の意味での「天涯孤独」な方の場合、遺産は最終的に国のものとなってしまいます。
遺言書がないと、望む人や団体へ遺産を残せません。このこともおひとりさまが遺言書を作成すべき理由の1つとなるでしょう。
2.おひとりさまが遺言書を作成すべき状況
独身のおひとりさまが以下のような状況であれば、遺言書を作成するよう強くおすすめします。
- 親が死亡して相続人は兄弟姉妹のみ
- 兄弟姉妹の中に亡くなっている人がいる
- 法定相続人以外の人へ遺産を遺したい
- 天涯孤独で相続人となる親族が誰もいない
- お世話になった人など、遺産を残したい相手がいる
- 遺産を国に帰属させるのに抵抗があり、自分の財産の行方は自分で決めたい
3.遺言書の作成方法
遺言書の作成方法には、以下の3種類があります。
3-1.自筆証書遺言
自筆証書遺言とは、遺言者が全文を自筆しなければならない遺言書です。自宅で手軽に作成できますが、要式違反で無効になりやすく、死後に発見されにくい、破棄隠匿されやすいなどのリスクもあります。
3-2.公正証書遺言
公正証書遺言は、公証人に公文書として作成してもらう遺言書です。
公文書なので信用性が高く、無効になるリスクは非常に低くなっています。
作成するためには公証役場へ申込み、費用を払う必要があります。
3-3.秘密証書遺言
秘密証書遺言は内容を秘密にしておける遺言書です。公証人に認証してもらいますが、公証人にも中身をみられることはありません。作成には費用がかかり、保管は自分で行う必要があります。
3つの遺言方式の中でもっともおすすめするのは公正証書遺言です。
自筆証書遺言の場合、以下のようなデメリットが大きいためです。
【自筆証書遺言のデメリット】
- 要式違反で無効になりやすい
- 発見されないリスクがある(自宅保管の場合)
- 破棄や隠匿のリスクがある(自宅保管の場合)
- 発見した相続人は検認を受けなければならない(自宅保管の場合)
おひとりさまが相続に備えるなら、公正証書遺言を作成しておきましょう。
4.おひとりさまの相続で弁護士に依頼するメリット
おひとりさまが弁護士に遺言書作成を相談すると、弁護士が適切な遺言書作成方法をアドバイスします。遺言内容が定まっていない場合、遺言内容についてのご提案も可能です。
公正証書遺言の作成方法についてもアドバイスやサポートしますので、初めてでも安心して手続きを進めて頂けるかと思います。
京都の益川総合法律事務所では遺言書作成や遺産相続案件に力を入れて取り組んでいます。おひとりさまの相続対策は、お気軽にご相談ください。

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遺産分割、遺留分侵害額請求、遺言書作成など、遺産相続案件に強い法律事務所であると自負しております。
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不動産が生前贈与されていた場合の対処法
特定の相続人へ不動産が生前贈与されていたら、不動産の贈与が「特別受益」に該当する可能性があります。特別受益になる場合、「特別受益の持戻計算」によって贈与を受けた相続人の遺産取得割合が減ることになります。
また、生前贈与によって他の相続人が取得できる遺産が減ってしまった場合、「遺留分侵害額請求」によって一定額を取り戻せる可能性もあります。
この記事では、不動産が生前贈与されていた場合に他の相続人がとりうる対処方法をお伝えします。不公平な生前贈与が行われて納得できない方などは、ぜひ参考にしてください。
1.不動産の生前贈与が特別受益になるケース
不動産が生前贈与されると、その相続人に特別受益が成立する可能性が高くなります。
特別受益とは、特定の相続人が遺贈や贈与によって受けた特別な利益です。
遺贈や生前贈与が行われた場合、贈与を受けた相続人に特別受益が成立する可能性があります。
生前贈与が特別受益になるのは、その贈与が婚姻や養子縁組、生計の資本として贈与された場合です。例えば、結婚や養子縁組の際に不動産の贈与が行われた場合や、住むための家が贈与された場合などには通常、特別受益が成立すると考えて良いでしょう。
2.特別受益の持戻計算について
特定の相続人が不動産の生前贈与を受けて特別受益が成立する場合、贈与を無視して法定相続分に従って遺産分割すると不公平になってしまいます。特別受益を受けた相続人の財産取得分が多くなってしまうためです。
そこで、特別受益が成立する場合には、「特別受益の持戻計算」を行って特別受益を受けた相続人の遺産取得割合を減らすことになります。
特別受益の持戻計算を適用すると、特別受益を受けた相続人の遺産取得割合を減らして他の相続人の取得分が増えるので、公平に遺産分割しやすくなります。
3.特別受益の持戻計算を適用する方法
特別受益の持戻計算は、どのようにして適用すれば良いのでしょうか?
基本的には、遺産分割の際に、他の相続人が「特別受益の持戻計算を適用したい」と主張しなければなりません。
話し合いによって全員が以下の内容に合意できれば、特別受益を考慮して遺産分割ができます。
- 特別受益の持戻計算を適用すること
- 特別受益の持戻計算の方法(財産評価額や各自の遺産取得割合、具体的な遺産分割方法など)
贈与を受けられなかった相続人が特別受益の持戻計算をしたい場合には、遺産分割協議の際に特別受益の持戻計算を適用するよう主張しましょう。
合意できない場合には家庭裁判所で調停や審判を申し立てる必要があります。
4.不動産の生前贈与によって遺留分侵害額請求できるケース
不動産が生前贈与された場合、他の相続人の「遺留分」が侵害される可能性があります。
遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人に認められる最低限の遺産取得割合です。
不公平な生前贈与によって遺留分すら受け取れなくなってしまった場合、他の相続人は侵害者(贈与を受けた人)に対し、遺留分侵害額請求を行って金銭で清算を求めることができます。
5.遺留分侵害額請求の対象となる贈与
生前贈与が行われても、すべての贈与が遺留分侵害額請求の対象になるわけではありません。贈与によって遺留分侵害額請求できるのは以下のような場合です。
- 死亡前1年以内の贈与
- 当事者が遺留分を侵害すると知って行った贈与
- 死亡前10年以内の特別受益に該当する贈与
不動産の生前贈与の場合、死亡前10年以内に行われたものであれば遺留分侵害額請求の対象になる可能性があります。
6.遺留分を請求できる相続人
遺留分はすべての相続人に認められるわけではありません。請求できるのは、「兄弟姉妹やその代襲相続人である甥姪以外の相続人です。つまり、以下のような相続人であれば遺留分侵害額を請求できます。
- 配偶者
- 子どもや孫、ひ孫などの直系卑属
- 親や祖父母、曾祖父母などの直系尊属
一方、兄弟姉妹やその代襲相続人である甥姪は遺留分侵害額請求できないので、遺された遺産の中から遺産分割で遺産を取得するしかありません。
7.遺留分侵害額請求は金銭を求める権利
遺留分侵害額請求は金銭を求める権利であり、遺産そのものの引き渡しを求められるものではありません。
あくまで、「遺留分侵害額」という金銭支払を請求できるだけです。
例えば、不動産が贈与されて遺留分を侵害されたとしても、不動産そのものの引き渡しを求めたり共有にしたりできません。遺留分侵害額を計算して、遺留分侵害額請求を行いましょう。
8.遺留分侵害額請求権の時効
遺留分侵害額請求権には時効があるので要注意です。「相続開始と遺留分侵害の事実」を知ってから遺留分を請求しないで1年が経過すると、時効が成立して遺留分を請求できなくなってしまいます。
不動産の生前贈与によって遺留分侵害を受けて納得できないなら、早めに遺留分侵害額請求を行いましょう。
相手と話し合っても遺留分侵害額の支払方法について合意できない場合、調停や訴訟で争う必要があります。
9.不動産が生前贈与されて納得できない場合、弁護士までご相談ください
不動産が生前贈与されると、他の相続人の遺産取得分が減ってしまう可能性があります。
そのような場合でも、特別受益の持戻計算をしたり遺留分侵害額請求を行ったりして不公平感を是正できるケースが多数です。
どのように対応するのが最適か、判断しかねる場合には弁護士までご相談ください。弁護士が遺産分割や遺留分侵害額請求の代理人となることも可能です。
京都の益川総合法律事務所では相続人さまの支援に力を入れておりますので、お気軽にご相談ください。

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相続案件を弁護士に依頼すると他の相続人との関係が悪化するの?
こんにちは。
弁護士の益川教親です。
時々、ご相談者の方から、弁護士に依頼した場合、他の相続人(ご兄弟など)と今後関係をもつことは難しいですかという趣旨のご質問を頂くことがあります。
そこで、今回は、相続案件を弁護士に依頼すると他の相続人との関係が悪化するのかというテーマでお話しさせて頂きます。
結論としては、①依頼した弁護士の個性、②元々の相続人同士の関係の2つが大きく影響しますが、弁護士にご依頼頂いたからといって、必ず今後他の相続人との関係がもてなくなるわけではないです。現に、私の過去のご依頼者の方でも、ご依頼後そして案件解決後も他の相続人との関係をもってらっしゃる方もいます。
以下では、本テーマに大きく影響を与える、①依頼した弁護士の個性、②元々の相続人同士の関係についてご説明いたします。
①依頼した弁護士の個性
例えば、他の相続人が依頼した弁護士が高圧的な態度をとってきたり、書面上でかなり失礼な内容を記載してきた場合、どのように感じるでしょうか?
その弁護士に対して不快感を頂くでしょうし、その不快感は当該弁護士に依頼した相続人に対しても向くことになります。
対して、他の相続人が依頼した弁護士が、自身と向き合いしっかり話をしてくれた場合には、
どのように感じるでしょうか?
その弁護士に対して、さほど悪印象を抱かないでしょうし、その弁護士に依頼した相続人に対しても、悪い感情を抱かない可能性は十分あります。もちろん、自身と向き合いしっかり話をするというのは、他の相続人の話を鵜呑みにして、その相続人の言うとおりに解決するということを意味するわけではなく、文字通りしっかり話をするという意味のみです。
このように、弁護士に依頼すると他の相続人との関係が悪化するかについては、依頼した弁護士の個性に影響を受けることになります。
②元々の相続人同士の関係
元々の相続人同士の関係性が悪い場合、弁護士に依頼すると、そのことが決定打となり、今後一切関係を持たないことがあります。
この場合、元々、弁護士に依頼される際に、今後の他の相続人と関係を持ちたくないとおっしゃることも多いので、他の相続人との関係が悪化をそもそも心配されない方が大半です。
対して、元々の相続人同士の関係がそれなりに良いこともあります。この場合、相続の話は当事者間で話しても埒があかないので、弁護士に依頼するが、他の相続人との関係を悪化させたくないとのご意向をもたれることがあるので、今回のテーマに沿う方かと思います。
このような場合には、弁護士に依頼されても、今後も関係を持つ方が多い印象です。
もちろん、ケースバイケースにはなるのですが、元々の相続人同士の関係がそれなりに良い場合には、弁護士にご依頼頂いても比較的話合いで早期に解決する印象があり、そうすると長期の争いで関係性が壊滅的な状況に陥ることは少ないかと思います。
③最後に
私も、ご依頼者の方に、他の相続人との関係を悪化させたくないとのご要望を頂くことがありますし、その場合には、細心の注意を払って対応することにしています。
但し、相手方が法的にまともなことを言っているのであれば、関係を悪化させずに事件を終了させやすいのですが、相手方が法的におかしい主張(例えば、自分が遺産を全てもらうのが当然で、こちらの依頼者にははんこ代としてわずかな金額を渡す等)をしている場合には、どうしても強く言わなければ分かってもらえないことがあります。
このような場合には、私は、ご依頼者の方に、相手方に強く言うことをご説明して、了解を頂いてから、言うようにしています。
元々の私の案件対応の方針は、丁寧な相手には丁寧に対応し、失礼な相手には即座に強めの口調で言い返すというものなのですが、今回のケースのような場合には、即座に強めの口調で言い返さないようにしています。
失礼な対応を受けた場合には、反射的にかなり強く言ってしまいそうになるのですが、ご依頼者の言葉を思い出し、ぐっと耐えています(笑)
個人的には、どうしても話が通じない相手には、強く言わないと分からないと思っています。
但し、他の相続人との関係を気にされるご依頼者の案件の場合には、他の相続人も話が通じる方が多い印象です。
おそらく、だからこそ、相続人同士の関係が比較的良好なのだと思います。
なので、他の相続人との関係悪化を気にされている方も、中々相続人間で話がまとまらなければ、一度弁護士にご相談いただければと思います。そして、もし、そのご相談頂ける弁護士が、当事務所なのであれば大変嬉しく思います。
このコラムを見て下さった方のお悩みが解決されることを祈っております。
最後までお読みいただきありがとうございました。

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独身の方(おひとり様)の遺産相続や対策方法を弁護士が解説
独身の方がお亡くなりになると、誰が遺産相続するかご存知でしょうか?将来の相続に備えて、法定相続人や法定相続人がいない場合の相続方法についても知っておきましょう。
この記事では独身の「おひとり様」の場合にどのように遺産相続が行われるのか、弁護士が解説します。独身の方はぜひ参考にしてみてください。
1.独身の方の法定相続人
独身のおひとりさまであっても、法定相続人がいれば法定相続人が遺産を相続します。
法定相続人とは、民法の定める相続人です。
独身者の法定相続人は以下のとおりです。
1-1.第1順位は子どもや孫など
独身者であっても子どもがいるケースがあります。その場合、第1順位として子どもが優先的に相続人になります。
子どもがご本人より先に死亡していて孫がいたら、孫が代襲相続によって相続人になります。孫も先に死亡していてひ孫がいたら、ひ孫が相続人になります。このように直系卑属の代襲相続は、延々と続いていきます。
1-2.第2順位は親や祖父母など
独身の方に子どもや孫などの直系卑属がいない場合には、親が第2順位の法定相続人として遺産を相続します。親が先に死亡していて祖父母が生きていたら、祖父母が相続します。
1-3.第3順位は兄弟姉妹か甥姪
お亡くなりになった方に子どもなどの直系卑属も親などの直系尊属もいない場合には、第3順位である兄弟姉妹が相続人になります。兄弟姉妹ご本人より先に死亡していて甥や姪がいたら甥姪が代襲相続人として相続します。甥姪がご本人より先に死亡していても、甥姪の子どもは相続人になりません。
2.独身の方に法定相続人がいない場合の相続方法
独身のおひとり様の場合、近親者がまったくいないケースもあるでしょう。その場合「相続財産管理人」により、以下のような順番で遺産が配分されます。相続財産管理人とは、遺産を管理する職務を担う人です。利害関係人などによって家庭裁判所で選任されます。
以下でどういった人に遺産が配分されるのか、みてみましょう。
2-1.債権者
死亡した方に支払うべき債務がある場合、まずは遺産の中から債権者への支払いが行われます。たとえば以下のような負債がある場合です。
- 借金していた
- 家賃を払っていなかった
- 税金を払っていなかった
- 水道光熱費やスマホ代を払っていなかった
2-2.特定受遺者
特定受遺者とは、遺言によって遺産のうち特定の財産を受け取る人です。遺言が遺されていて、ある人に特定の財産を受け継がせるよう指定されている場合には、遺言とおりに遺産が受遺者に受け継がれます。
独身のおひとりさまの場合、お世話になった人などに遺産を遺したい場合もあるでしょう。そういったケースでは遺言書を作成して遺贈しておくようおすすめします。
2-3.特別縁故者
特別縁故者とは、被相続人と特別に親しい関係にあった人です。債権者や受遺者への支払をしても遺産にあまりがある場合には、特別縁故者への財産分与が行われます。特別縁故者に該当するのは、以下のような人です。
- 被相続人を療養看護していた人
- 被相続人と生計を同一にしていた内縁の夫や妻
- 事実上の養子養親など
ただし、特別縁故者が財産を受け取るには、指定された期間内に家庭裁判所へ「特別縁故者への財産分与の申立て」をしなければならず、手間がかかります。お世話になった人などへ財産を譲りたい場合には、生前贈与するか遺言書を作成しておく方が良いでしょう。
2-4.財産の共有者
不動産などの財産については、他人と共有しているケースが珍しくありません。共有物件の場合、債権者も受遺者も特別縁故者もいなければ、他の共有者へ権利が引き継がれます。
2-5.国庫に帰属
財産を引き継ぐべき債権者も受遺者も特別縁故者もいない場合、最終的に財産は国のものとなります。
3.おひとりさまの相続対策
以上のように、おひとりさまが遺産相続について何の対応もしていなかった場合、最終的には遺産は国のものとなってしまいます。そういった事態を避けたい場合、遺言書を作成しておきましょう。
遺言書を作成すると、遺言書で指定したとおりに遺産を受け継がせることができるので、死後も自分の意思を実現できます。特別縁故者がいる場合でも、はじめから遺言書で近しい人を相続財産全部の「受遺者」として指定しておいたら、わざわざ相続財産管理人の選任や特別縁故者への財産分与の申立てをさせずに済みます。
3-1.法定相続人がいても遺言書は必要
法定相続人がいる場合でも、遺言書を作成しておく必要性は高いといえます。独身の方に子どもも親もいない場合、兄弟姉妹やその子どもである甥姪に遺産が引き継がれるためです。普段かかわりのない遠縁の親族に遺産が引き継がれるのを望まないなら、遺言によって近しい人へ遺産を遺しましょう。
3-2.遺言執行者を指定する
お一人様が遺言書を作成する際には、必ず遺言執行者をつけておくようおすすめします。遺言執行者がいないと遺言内容を実現する人がおらず、手続きが滞ってしまう可能性が高いからです。遺言書によって信頼できる人を指定しておきましょう。
4.相続対策は弁護士までご相談ください
京都の益川総合法律事務所では相続対策に力を入れて取り組んでいます。遺言書の作成や遺言執行者の就任も積極的にお引き受けいたします。独身の方で相続が気になっている場合、お気軽にご相談ください。

当事務所は、1983年創業の老舗法律事務所です。
遺産分割、遺留分侵害額請求、遺言書作成など、遺産相続案件に強い法律事務所であると自負しております。
お悩みの方は、是非お気軽にお問い合わせ下さい。
遺産分割しない、できない場合のデメリットと対処方法
「いつまでも遺産分割しなかった場合、どういった問題が生じるのでしょうか?」
といったご質問を受けるケースがあります。
遺産分割そのものには期限がありませんが、放置しておくと相続税の控除を受けられなくなったり、遺産の名義変更や活用ができなかったりする不利益が及ぶ可能性があります。
この記事では、遺産分割をしないデメリットやすぐに遺産分割できない場合の対処方法をお伝えしますので、これから遺産分割する方はぜひ参考にしてみてください。
1.遺産分割できない場合のデメリット
遺産分割ができないと、以下のようなデメリットが発生します。
- 遺産の名義変更や活用ができない
- 遺産が失われる可能性がある
- 相続税の控除を受けられない
- さらに相続が起こって混乱する
以下で、それぞれについてみてみましょう。
1-1.遺産の名義変更や活用ができない
遺産分割ができないと、遺産の名義変更や活用ができません。
不動産や株式などがいつまでも死亡した被相続人名義のままになってしまい、相続人たちが不動産を賃貸したり売却したりするのも難しくなります。
不動産などの遺産は相続人全員の共有になりますが、共有不動産の場合には共有者の同意がないと活用や処分ができないためです。
結果として、遺産が放置されてしまうケースも少なくありません。活用していなくても不動産であれば固定資産税などの負担は生じるので、デメリットばかりが強調されてしまうでしょう。
1-2.遺産が失われる可能性がある
遺産分割をせずに財産を放置すると、遺産が失われる可能性があります。
例えば、銀行預金には時効があり、請求できるのを知って5年間放置したら時効が成立してしまいます。また、10年放置すると「休眠口座」扱いとなり、公益事業などに預金が使われてしまう可能性もあります。
株式の場合、5年以上保有者が不明な場合には会社が株式買取請求できると規定されています。
以上のように、長期にわたって遺産を放置していると、権利そのものが失われるリスクがあることに注意が必要です。
1-3.相続税の控除を受けられない
遺産分割をせずに放置すると、相続税の控除を受けられないリスクも発生します。
相続税には「配偶者控除」や「小規模宅地の特例」といった控除制度が用意されており、適用すれば税額を低く抑えられます。
ところが、相続税の申告時までに遺産分割できていなければ、こういった控除を適用できません。結果的に相続税額が上がってしまうリスクが生じるのです。
1-4.重ねて相続が起こって混乱する
遺産分割をせずに放置していると、さらに相続が重なって起こり混乱が生じる可能性もあります。たとえば祖父の遺産分割をしないうちに父が亡くなって2代分の相続手続きが必要になる場合などです。
複数の遺産相続が重なると手続きが複雑になる上、相続人の人数も増えてそれぞれの関係は希薄になるので、遺産分割に難航する傾向があります。結果的に遺産分割が行われずに放置され、さらに相続が発生する、という負の連鎖が生じる可能性もあります。
2.遺産分割できていないときの対処方法
相続税の申告期限までに遺産分割できていない場合でも、後で控除を適用してもらうための制度が用意されています。
以下で、相続税の申告期限までに遺産分割できていない場合の対処方法をお伝えします。
2-1.「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出する
相続税の申告期限までに遺産分割できない場合、いったん法定相続分に応じて相続税を申告する必要があります。
その際「申告期限後3年以内の分割見込書」という書類を税務署へ提出しましょう。これを提出しておけば、後に遺産分割が整ったときに「相続税の更正請求」ができます。
更正請求をすると、相続税の還付を受けられます。その際には配偶者控除や小規模宅地の特例を適用できるので、税額を抑えられるでしょう。
2-2.3年以内に遺産分割が成立しない場合の対処方法
「申告期限後3年以内の分割見込書」によって相続税控除や特例を適用するには、申告期限後3年以内に遺産分割が成立しなければなりません。
ただ、事案によっては3年以内に遺産分割できない場合もあるでしょう。
そういったケースでは、相続税の申告期限から3年が経過してから2か月以内に「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を税務署へ提出しましょう。そうすれば、「遺産分割できない事情」が止んでから4か月以内に申告を行うことにより、配偶者控除や小規模宅地の特例などの優遇措置を受けられます。
3.早期に遺産分割を成立させるための工夫
早期に遺産分割を成立させるには、どうしたら良いのでしょうか?
自分たちで話し合ってもどうしても早めに遺産分割するのが難しければ、弁護士に相談しましょう。弁護士が間に入れば相続人同士で直接話さなくて良いので、お互いに感情を抑えて話し合いができます。また弁護士は法律に詳しいので、当事者がどのように遺産を分ければ良いか判断しにくい場合でも、法律的に妥当かつ公平な分け方を提案できます。
さらに、弁護士には面倒な相続手続き全般も任せられます。手間を省いてスムーズに相続手続きできることも大きなメリットといえるでしょう。
京都の益川総合法律事務所では、遺産分割案件に力を入れて取り組んでいます。遺産分割がなかなか進まず困っている方がおられましたらお気軽にご相談ください。

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遺産分割、遺留分侵害額請求、遺言書作成など、遺産相続案件に強い法律事務所であると自負しております。
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遺言書を見つけた方へ
遺言書を見つけた場合、その遺言書が法務局に預けられていない自筆証書遺言や秘密証書遺言であれば「検認」を受けなければなりません。検認を受けずに開封するとペナルティが科される可能性もありますし、遺言書を隠したり書き換えたりすると「相続欠格者」になってしまうおそれもあります。
また、遺言書によって最低限の遺産さえ取得できなくなったら、遺留分侵害額請求ができます。
この記事では遺言書を発見した場合の対処方法をお伝えしますので、該当する相続人の方はぜひ参考にしてください。
1.遺言書の検認を受ける
遺言書を発見したとき、発見した遺言書が「法務局に預けられていない自筆証書遺言」や「秘密証書遺言」だった場合には、家庭裁判所で検認を受けなければなりません。
検認とは、遺言書の内容や状態を裁判所で確かめて記録を残す手続きです。遺言書の破棄や勝手な書き換えなどを防止するために検認が行われます。
検認を受けずに勝手に遺言書を開封すると、5万円以下の過料の制裁が適用される可能性もあります。
ただし公正証書遺言や法務局に預けられていた自筆証書遺言の場合には検認は不要です。
検認の手続きについて詳しくはこちらの記事に書かれているのでご参照ください。
2.遺言書を破棄したり書き換えたりすると相続欠格者となる
遺言書を発見したとき、自分に不利な内容になっていても破棄したり隠したり勝手に内容を書き換えたりしてはなりません。
このようなことをすると、相続欠格者となってしまいます。相続欠格者とは、もともと相続人であっても相続できなくなった人のことです。
遺言書に対して破棄、隠匿、書き換えなどの不正行為をすると、遺産を一切相続できなくなるのでやってはなりません。
遺言書の内容に納得できないときには、次のように遺言無効確認調停を申し立てるか遺留分侵害額請求を行いましょう。
3.遺言無効確認の手続きを行う
「発見された遺言書が無効ではないか?」と疑われるケースも少なくありません。
たとえば以下のような場合、遺言書は無効になります。
3-1.本人が書いたものではない
誰かが勝手に遺言書を書いた場合、その遺言書は無効です。
3-2.自筆証書遺言や秘密証書遺言の要式を守っていない
たとえば、自筆証書遺言で全文を自筆で書かずに一部がパソコンで書かれている、署名押印が抜けている、加筆訂正の方法が法律上の方法と異なるなどの場合、遺言書の全部や一部が無効となる可能性があります。
3-3.遺言書作成当時、本人の意思能力が低下して有効に遺言書を作成できる状態ではない
遺言書の要式は守られていても、遺言書が作成された当時に本人の意思能力が大きく低下していて有効な法律行為をできる状態でなかったら、作成された遺言書は無効になります。たとえば、遺言書作成当時に本人が重度の認知症にかかっていた場合などです。
3-4.誰かが無理やり遺言書を書かせた
人から強要されて書かされた遺言書に効果は認められません。被相続人が特定の相続人やその関係者から脅されて無理やり遺言書を書かされた場合、遺言書の効果が失われる可能性があります。
3-5.遺言無効確認調停を申し立てる
上記のような理由で遺言書が無効と疑われる場合には、家庭裁判所で遺言無効確認調停を申し立てましょう。遺言無効確認調停では、申立人と相手方の間に調停委員が入って遺言が無効かどうかの話し合いを進めます。両者が納得すれば遺言書が無効であることを法的に確認できます。
3-6.遺言無効確認訴訟を申し立てる
調停が不成立になった場合には、遺言無効確認訴訟を提起しましょう。遺言無効確認訴訟で遺言書が無効であることを証明できれば、裁判所が「遺言書は無効」と確認してくれます。
遺言書の検認を受けても遺言書が無効になるケースはあります。遺言書の無効を争う手続きは難しいので、迷ったときには弁護士までご相談ください。
4.遺留分侵害額請求を行う
遺言書が有効でも内容に納得できないケースが珍しくありません。たとえば、自分の遺産取得分が大きく減らされていたら、不公平と感じる方が多いでしょう。その場合、遺留分侵害額請求を行って金銭的な補償を受けられる可能性があります。
遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に保障される最低限の遺産取得割合です。
兄弟姉妹以外の法定相続人の場合、遺留分すら侵害されたら、最低限遺留分までは金銭によって取り戻すことができます。
遺留分侵害額請求は、遺留分を侵害した相手へ行わねばなりません。
まずは相手と話し合い、合意できなかったら家庭裁判所で遺留分侵害額調停を申し立てましょう。それでも合意できなければ、遺留分侵害額請求訴訟を提起して遺留分侵害額の請求を進めましょう。
ただし、ご自身で遺留分侵害額請求を行うと、親族間で激しい争いになり、上手く解決できないケースも多々あります。弁護士が交渉や調停・訴訟の代理人をつとめることもできますので、お気軽にご相談ください。
京都の益川総合法律事務所では遺産相続案件に力を入れて取り組んでいます。遺言書を発見して対応方法に迷われた場合には、お気軽にご相談ください。

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遺産分割、遺留分侵害額請求、遺言書作成など、遺産相続案件に強い法律事務所であると自負しております。
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共同相続した不動産を分割する方法
不動産を相続すると、遺産分割協議を行う際に誰か1人の相続人が相続するのではなく、相続人全員の「共有」にしてしまうケースが少なくありません。共有状態のままではデメリットが大きいので、できるだけ早めに分割するようおすすめします。
この記事では相続不動産の共有とはどういった状態なのか、共有不動産を分割する方法をお伝えします。
他の相続人と共有している不動産を分割して分け合いたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
1.相続した不動産を共有する場合とは
まずは共有とはどういった状態なのか、みてみましょう。
1-1.共有とは
共有とは、複数の人が1つのものを共同所有している状態です。
共有していると、各共有者には「持分」という割合的な権利が認められます。そこで共有する人のことを「共有持分権者」といいます。
共有されている場合、対象物の管理や処分などは共有持分権者であってもが勝手に行えません。たとえば、共有物を売却するには共有持分権者全員の合意が必要です。
1-2.相続した不動産が共有になる場合
遺産相続が発生すると、相続不動産が共有になる場面が多々あります。
相続人が複数の場合、所有者が死亡すると不動産は被相続人の死亡と同時に相続人全員の間で共有されます。共有状態を解消するには、遺産分割協議で誰がどのように相続するのか決めなければなりません。
また、遺産分割協議でも1人の相続人を決められず、全員の共有にしてしまうケースがあります。この場合、「共有物分割請求」をしない限り不動産の共有状態が続いてしまいます。
2.不動産を共有するデメリット、リスク
不動産を共有していると、以下のようなデメリットやリスクが発生します。
2-1.他の相続人の合意がないと管理や処分ができない
1つは、他の相続人の同意がない限り管理や処分ができないことです。大規模修繕や売却、抵当権の設定などを行うには他の相続人全員の同意が必要です。相続人が多数になったり仲が悪かったりすると、同意をとるのは難しくなるでしょう。
そのため、円滑に活用や売却できず、放置されてしまう共有不動産も少なくありません。
2-2.固定資産税の清算でもめる可能性がある
共有不動産の場合、固定資産税はそれぞれの共有持分権者が持分割合に応じて負担しなければなりません。通常は代表者が一括して支払を行い、後で内部的に清算します。
ところが、清算に協力しない共有持分権者がいると、もめごとが発生してしまいます。
2-3.1人の相続人が使用してもめる可能性がある
共有持分権者はそれぞれが単独で共有物件を利用できます。
ただし、利用者は他の共有持分権者へ利用料の支払をしなければなりません。
利用料を払わずに単独使用する相続人がいると、もめごとの種になってしまいます。
2-4.さらに相続が起こって権利関係が混乱する可能性がある
不動産を共有している場合においてさらに相続が起こると、権利者が増えて権利関係が複雑になってしまいます。共有持分権者間でお互いに面識もないため、管理や処分がより難しくなってしまうケースも少なくありません。
3.不動産の共有状態を解消する方法
不動産を共有していると何かと不都合があるので、早めに分割するようおすすめします。
以下では、不動産の共有状態を解消する方法をパターン別にお伝えします。
3-1.遺産分割協議前の場合
遺産分割協議前の場合には、まずは遺産分割協議を行いましょう。
以下の3種類のうち1つの分割方法を選んで分割すれば、不動産の共有状態を解消できます。
①現物分割
不動産を誰か1人がそのまま相続する方法です。土地を分筆してそれぞれの相続人が取得する方法もあります。
②代償分割
誰か1人の相続人が不動産を相続し、他の相続人へ代償金を払って清算する方法です。
③換価分割
不動産を売却して売却金を相続人間で分け合う方法です。
3-2.遺産分割後の場合
遺産分割後の場合には、共有物分割請求を行って共有不動産を分割する必要があります。
共有物分割請求とは、共有となっているものを分割するための手続きです。基本的に各共有持分権者はいつでも共有物分割請求ができます。
■共有物分割の方法
①現物分割
共有不動産を物理的に分ける方法です。土地を分筆して分ける場合も含まれます。
②価格賠償
誰か1人が不動産を取得し、他の相続人へ代償金を払って清算する方法です。
③換価分割
不動産を売却して売却金を持分割合に応じて分け合う方法です。
3-3.共有物分割請求の流れ
①話し合う
相続した不動産を分け合うために共有物分割請求をしたい場合、まずは当事者同士で話し合いましょう。自分の持分を買い取ってもらうか、他の共有持分権者の持分を全部買い取れば、不動産の共有状態から脱却できます。売却して清算してもかまいません。
②場合により、共有物分割調停を申し立てる
話し合っても合意できず解決できない場合には、裁判所で共有物分割調停を申し立てる方法があります。調停では専門知識を持った調停委員が共有物分割の話し合いを仲介してくれます。合意ができれば合意した内容に従って共有不動産を分割できます。
なお、共有物分割においては訴訟前の「話し合い」は必須ですが、調停は必須ではありません。
調停をしても合意に見込みがないなら、協議後にすぐに次のステップの訴訟に移行してもかまいません。
③共有物分割訴訟を提起する
話し合いや調停を行っても合意できない場合、裁判所で共有物分割訴訟を提起しましょう。
訴訟では、裁判所が共有不動産の分割方法を決定してくれます。
4.最後に
京都の益川総合法律事務所では、不動産や相続案件に力を入れて取り組んでいます。お気軽にご相談ください。

当事務所は、1983年創業の老舗法律事務所です。
遺産分割、遺留分侵害額請求、遺言書作成など、遺産相続案件に強い法律事務所であると自負しております。
お悩みの方は、是非お気軽にお問い合わせ下さい。