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遺産分割において弁護士が関与する割合はどれくらい?
こんにちは。
弁護士の益川教親です。
被相続人がお亡くなりになった後、遺言書がなければ、遺産分割を行うことになりますが、相続人同士では中々話がまとまらないこともあります。
このように中々話がまとまらない遺産分割事件において、弁護士が関与する割合はどのぐらいでしょうか?
私自身が弁護士であるためか、弁護士が関与しない遺産分割事件というのを中々見る機会がなく、その割合を正直よく分かっていません。
そこで、今回は、最新のデータを調べてみましたので、もし良かったら参考になさって下さい。
1.遺産分割調停(審判)事件における弁護士の関与割合
まず、前提として、今回参照したデータは、令和3年に終結した遺産分割事件(遺産分割調停が成立した事件と審判が認容された事件)について、弁護士が関与していた割合となります。
そして、令和3年に終結した遺産分割事件の総数は、6996件となっています。
これらの案件は、相続人間で話し合っても決着がつかずに、家庭裁判所に持ち込まれた案件なので、相続人同士で話がまとまらなかった遺産分割と言ってよいと思います。
それでは、これらの案件について、弁護士が関与している割合はどうなっているでしょうか?
■代理人弁護士の関与の有無(総数6996件)
有り 5939件
無し 1057件
関与割合 84.89%(約85%)
上記のように、約85%の遺産分割事件については、代理人として弁護士が関与しているようです。
逆に言えば、約15%の遺産分割事件については、代理人弁護士が関与せずに、当事者のみで調停や審判が進められているようです。
但し、私もそうですが、遺産分割調停や審判をご自身で行っている方からご相談を受けることもあります。そのため、おそらく代理人弁護士が関与していない案件についても、適宜、弁護士に相談はしているのだと思います。
2.遺産の価格別の弁護士の関与割合
次に、遺産の総額と弁護士の関与割合が関係するのかも調べてみました。
遺産の総額が高ければ、弁護士の関与割合も高い結果になっているのでしょうか?
遺産の価格別(総額別)の代理人弁護士の関与割合については、下記のようになっています。
■1000万円以下(総数2310件)
有り 1807件
無し 503件
関与割合 78.22%(約78%)
■5000万円以下(総数3052件)
有り 2622件
無し 430件
関与割合 85.91%(約86%)
■1億円以下(総数866件)
有り 795件
無し 71件
関与割合 91.80%(約92%)
■1億円を超える(総数521件)
有り 496件
無し 25件
関与割合 95.20%(約95%)
上記をみると、遺産の総額が1000万円以下の案件では、代理人弁護士の関与割合が約78%と一番低くなっています。
そして、そこから遺産の総額が上がるにつれて、代理人弁護士の関与割合も上がっていく傾向が見て取れました。
遺産の総額1000万円以下が、圧倒的に代理人弁護士の関与割合が低い結果となっていますが、おそらくこれは、遺産の価格が1000万円以下の中でも、遺産の価格がかなり低い方が、代理人弁護士を関与させないためだと思います。
例えば、遺産の価格が300万円以下だと、相続人が2人でも、単純計算すれば一人150万円ほどしか取得できず、その状況で弁護士を入れてしまうと、取得できる遺産に比して弁護士費用が高くついてしまうので、中々弁護士を入れる状況になりません。
逆に言えば、遺産の価格が1000万円近い案件については、弁護士の関与割合が82%、83%辺りまではいっているのでないかと推測します。
3.最後に
今回は、遺産分割事件において弁護士が関与する割合はどれぐらいかについて、解説しました。
全体として85%というのは、どのように感じられたでしょうか。
私としては、90%ぐらいかと思っていたので、想像より低いなという印象でした。
これも、我々弁護士が、弁護士にご依頼頂いた際のメリットを上手く伝えられていないのが、原因かもしれませんし、反省しないといけないですね。
当事務所は、遺産相続案件に注力していますので、もしご相談等があれば、お気軽にご相談ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
また、次回のコラムでお会いしましょう。
■参考
令和3年 司法統計年報 3家事編

当事務所は、1983年創業の老舗法律事務所です。
遺産分割、遺留分侵害額請求、遺言書作成など、遺産相続案件に強い法律事務所であると自負しております。
お悩みの方は、是非お気軽にお問い合わせ下さい。
遺産が少ないと相続人が本当に揉めないの?
こんにちは。弁護士の益川教親です。
私は遺産相続案件に注力しているのですが、それを知っている方から、プライベートの時に、「うちは遺産が少ないから子どもたちは揉めないわ」と言われることがあります。
「遺産が少ないと相続人が揉めない」というのは本当なのでしょうか?
一応肌感覚として、私自身も答えをもっているのですが、実際にはどうなのかが気になったので、データを調べてみました。
最新(令和3年)のデータをもとに解説しますので、良かったら参考にしてみてください。
1.遺産分割調停(審判)事件の遺産の価格について
まず、令和3年に終結した遺産分割事件のうち、調停が成立した案件と審判が認容された案件の総数は、6996件となっています。
これらの案件については、相続人間で話し合っても決着がつかずに、家庭裁判所に持ち込まれた案件なので、揉めた案件といってよいと思います。
それでは、これらの案件の中に、遺産が少ない案件はないのでしょうか?
遺産の価格については、下記のようになっています。
■遺産の価格(総数6996件)
1000万円以下 2310件(2位)
5000万円以下 3052件(1位)
1億円以下 866件(3位)
5億円以下 493件
5億円を超える 28件
算定不能・不詳 247件
上記のように、1000万円以下の案件が2310件の2位で、全体の約3分の1となっています。
もちろん1000万円以下の中には、遺産が100万円以下の案件から、1000万円近い案件も含まれており、遺産が1000万円近い案件についても、遺産が少ないと言っていいかは評価が分かれるところかもしれません。
ですが、遺産が1000万円以下の案件が、家庭裁判所に持ち込まれた遺産分割事件の、全体の約3分の1になっていることは、知っておいた方が良いかと思います。
私の経験上、遺産が100万円以下で、相続人同士が揉めている案件を見たことがあります。なので、必ずしも、遺産が少なければ揉めないわけではありません。
遺産相続案件は、家族間のこれまでのいきさつ、いわば家族の歴史が丸ごと問題になることも多いため、揉めるときは遺産の価格に関わらず、揉める印象です
2.遺産が少なければ審理期間は短いのか?
次に、遺産が少なければ、遺産分割調停や遺産分割審判が早く終わるのかについて、解説します。
遺産の価格ごとの審理期間については、下記のようになっています。
■1000万円以下(総数2310件)
1月以内 27件
3月以内 252件
6月以内 493件(3位)
1年以内 744件(1位)
2年以内 580件(2位)
3年以内 163件
3年を超える 51件
■5000万円以下(総数3052件)
1月以内 4件
3月以内 170件
6月以内 484件(3位)
1年以内 928件(2位)
2年以内 1052件(1位)
3年以内 304件
3年を超える 110件
■1億円以下(総数866件)
1月以内 6件
3月以内 21件
6月以内 87件
1年以内 207件(2位)
2年以内 315件(1位)
3年以内 151件(3位)
3年を超える 79件
■1億円を超える(総数521件)
1月以内 2件
3月以内 18件
6月以内 40件
1年以内 97件(3位)
2年以内 166件(1位)
3年以内 110件(2位)
3年を超える 88件
上記のように、遺産の価格が1000万円以下の案件でも、総数2310件のうち、審理期間が1年を超えている案件は794件もあり、全体の3分の1以上は、審理期間が1年を超えています。
また、3年を超えている案件も51件あり、遺産の価格が1000万円以下の案件でも、審理が長期化している案件もあります。
そのため、遺産の価格が少なければ、審理期間が短いとは必ずしもいえなさそうです。
但し、遺産の価格が、1000万以下は1位が1年以内であるのに対して、1000万円を超える価格は全て1位が2年以内となっています。
なので、遺産の価格が少ないと、審理期間が少し短くなるとはいえそうです。
3.最後に
今回は、遺産が少ないと相続人が揉めないのかについて、解説しました。
結論としては、遺産が少なくても揉める時は揉めます。
これは、遺産相続案件の場合、単純に金銭だけではなく、これまでの家族の関係性や歴史が問題になるためだと思います。
当事務所は、遺産相続案件に注力していますので、もしご相談等があれば、お気軽にご相談頂ければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
また、次回のコラムでお会いしましょう。
■参考
令和3年 司法統計年報 3家事編

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遺産分割、遺留分侵害額請求、遺言書作成など、遺産相続案件に強い法律事務所であると自負しております。
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撤回された遺言書の効力が復活する場合とは?
遺言書を一度作成しても、その後気が変われば、遺言書を自由に撤回することができます。これは、遺言者の最終的な意思を尊重すべきだからです。
それでは、遺言書を一度撤回してしまうと、その遺言書の効力が復活することはないのでしょうか。
今回は、京都の弁護士が、撤回された遺言書の効力が復活する場合について、解説します。遺言書の撤回が問題になっている方などは、是非参考にしてみてください。
1.撤回された遺言書の効力は復活しない(原則)
一度、遺言書の撤回をしてしまうと、その後気が変わって、「撤回の撤回」をしようとしても原則できません。
なぜなら、撤回の撤回を簡単に認めると、法律関係がややこしくなり争いが生じやすくなりますし、これを認めなくても、元の遺言書と同じ内容の遺言書を作成すれば、撤回の撤回と同じ状況を作り出せるためです。
2.撤回された遺言書の効力が復活する場面(例外)
それでは、撤回された遺言書の効力が復活する場面はないのでしょうか?
この場合について、民法第1025条が規定しています。
第1025条 前三条の規定により撤回された遺言は、その撤回の行為が、撤回され、取り消され、又は効力を生じなくなるに至ったときであっても、その効力を回復しない。ただし、その行為が錯誤、詐欺又は強迫による場合は、この限りでない。
民法の規定上、錯誤や詐欺、強迫によって遺言書を撤回してしまった場合にのみ、撤回の撤回によって、元の遺言書の効力が復活することになります。
それでは、錯誤や詐欺、強迫によって遺言書を撤回してしまった場合以外は、元の遺言書の効力が復活することはないのでしょうか?
これが問題になったのが、最高裁平成9年11月13日判決です。
■最高裁平成9年11月13日判決
この裁判では、第1遺言が第2遺言によって撤回され、そして第3遺言には、「第2遺言を無効とし、第1遺言を有効とする」との記載がされていました。
先ほどの民法の規定を前提にすると、遺言者は、錯誤や詐欺、強迫によって第1遺言を撤回したわけではないので、第3遺言によって、第1遺言の効力を復活させることはできないはずです。
もっとも、遺言者の最終的な意思は、第1遺言を有効にしたいとの内容であることが第3遺言から明らかでした。それなのに、第1遺言の復活を認めないのでよいのかという点が問題意識になります。
裁判所は、「遺言書の記載に照らし、遺言者の意思が原遺言の復活を希望するものであることが明らかなときは、民法1025条ただし書の法意にかんがみ、遺言者の真意を尊重して原遺言の効力の復活を認めるのが相当と解する」と判示しました。
要は、遺言書の内容からして、遺言者が一度撤回した遺言書の復活を希望することが明らかな時は、元々の遺言書の効力を復活させるとの内容です。
そして、この裁判では、第3遺言の記載からして、第1遺言の復活を希望していることが明らかであるとして、第1遺言の復活を認めています。
なお、この裁判では、第1遺言の復活が認められましたが、仮に、第1遺言の復活を認めなければ、どうなるのでしょうか?この場合は、第3遺言によって、第2遺言も無効になっているので、遺言書がないケースと同様、法定相続分に応じて相続を行うことになります。
3最後に
今回は、撤回された遺言書の効力が復活する場合について、解説しました。
上でご説明した裁判の事例についても、そもそもちゃんと第3遺言を作っておけば、争いが生じない事例でした。
このように、遺言書の撤回方法を間違えると、相続人が揉めるのを防ぐために作成した遺言書が、かえって相続人が揉める原因にもなってしまいます。
この記事では、遺言書の撤回や取消の方法などについては、詳しく解説していませんが、こちらについては、「作り直された遺言書の効力~遺言書の撤回と取消について~」で解説しています。気になった方は、是非参考になさってください。
京都の益川総合法律事務所では、遺産相続案件に注力しています。
もし、お困りの方がおられましたら、お気軽にご相談下さい。

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遺産分割調停・審判はどのくらい時間がかかるの?
こんにちは。
弁護士の益川教親です。
当事務所は遺産相続案件に注力しておりますが、弁護士の友人から、遺産相続案件は、解決までに時間がかかりすぎると言われることも多いです。(だからこそ、その友人からは、遺産相続案件を取り扱いたくないというニュアンスで話がされます。)
しかし、私の肌感覚として、遺産相続案件が他の案件と比べて、必ずしも長く時間がかかるとは思いません。
そこで実際はどうなのかが気になったので、今回、
①遺産分割事件(調停・審判)の審理期間がどのくらいで
②実施される期日の回数が何回くらいか
を調べてみました。
現時点で発表されている最新(令和3年)のデータをもとに解説しますので、気になった方は是非参考にしてみてください。
1.審理期間(総数)
まず、令和3年に終結した遺産分割事件の総数は、1万3447件でした。
そして、審理期間は下記のようになっています。
■審理期間
1月以内 269件
3月以内 1161件
6月以内 2749件
1年以内 4136件
2年以内 3607件
3年以内 1074件
3年を超える 451件
上記のように、一番件数が多いのは6ヶ月を超えて1年以内の4136件、2番目に多いのが1年を超えて2年以内の3607件、3番目に多いのが3ヶ月を超えて6ヶ月以内の2749件でした。
私個人の感覚としても、遺産分割事件は、1年以内に終わることが多いと考えているため、このデータと一致していました。
但し、審理期間が1年を超える案件が、1万3447件のうち5132件もあり、約40%となっています。そのため、友人が言うように、他の案件に比べると、審理期間が長くなる傾向があるかと思います。
2.実施期日回数(総数)
それでは、遺産分割事件の実施期日回数は、どのようになっているでしょうか?
■実施期日回数
0回 1006件
1回 1706件
2回 1965件
3回 1745件
4回 1373件
5回 1133件
6~10回 3073件
11~15回 890件
16~20回 294件
21回以上 261件
上記をみると、1番多いのが6回から10回の3073件になっており、私の肌感覚とも合致しています。
なお、実施期日回数0回というのは、調停の取り下げがされた場合などで、裁判所において審理の必要がないと考えた場合を指すと思われます。
3.遺産分割調停が成立する場合
上記の数字は、遺産分割事件全体の数字になりますが、これには、取り下げがされた場合も含まれています。
それでは、調停成立の場合に絞ると、どのくらいの期間と回数になるのでしょうか?
令和3年の遺産分割調停の成立件数は5895件でした。
そして、審理期間や実施期日回数は、下記の通りとなっています。
■審理期間
1月以内 38件
3月以内 462件
6月以内 1063件
1年以内 1835件
2年以内 1774件
3年以内 527件
3年を超える 196件
■実施期日回数
0回 0件
1回 487件
2回 709件
3回 769件
4回 694件
5回 616件
6~10回 1799件
11~15回 517件
16~20回 182件
21回以上 122件
上記をみると、審理期間で1番多いのが1年以内、2番目に多いのが2年以内、3番目に多いのが6ヶ月以内となっています。
実施期日回数は、1番多いのが6回~10回となっており、2番目に多いのが3回、3番目に多いのが2回になっています。
2回や3回で調停が成立している事案については、調停期日のみならず、期日間においても双方で交渉を進めているケースが多いと思います。
4.遺産分割審判が認容される場合
それでは、遺産分割審判で認容される場合はどうしょうか?
審判認容の総数は1101件で、審理期間や実施回数は下記の通りとなっています。
■審理期間
1月以内 3件
3月以内 16件
6月以内 73件
1年以内 201件
2年以内 437件
3年以内 224件
3年を超える 147件
■実施期日回数
0回 32件
1回 73件
2回 56件
3回 83件
4回 77件
5回 88件
6~10回 371件
11~15回 164件
16~20回 66件
21回以上 91件
上記をみると、審理期間で1番多いのが2年以内、2番目が3年以内、3番目が1年以内となっています。
また、実施期日回数をみると、1番多いのが6回~10回の371件、2番目に多いのが11~15回の164件、3番目に多いのが21回以上の91件となっています。
遺産分割調停が決裂した場合に審判手続に進むことが多いため、調停の場合に比して、時間がかかっています。
5.最後に
今回は、遺産分割調停・審判がどのくらい時間がかかるのかについて、解説しました。
皆さんは、どのような印象を持たれたでしょうか?
今回調べたデータからすると、他の案件に比べて遺産相続案件が長期化する傾向にあるといえるかもしれません。
もっとも、私としては、ご依者の方が納得できない形で遺産相続案件を早く終了させるぐらいであれば、多少時間がかかってもご依頼者の方が納得できる形で案件を終了させる方がよいと考えています。
最後までお読みいただきありがとうございました。
■参考
令和3年 司法統計年報 3家事編

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遺産分割調停は1年間で何件の申立てがあるの?
こんにちは。
弁護士の益川教親です。
突然ですが、遺産分割調停が1年で何件、家庭裁判所に申し立てられているかご存じですか?
相続法務に注力している弁護士であるにもかかわらず、お恥ずかしながら、私もあまり意識したことはありませんでした。
そこで今回、現時点で発表されている最新(令和3年)のデータを調べてみたので、気になった方は参考になさって下さい。
1.全国総数
まず、厚生労働省のデータによると、令和3年にお亡くなりになった方は、143万9809人のようです。そのため、令和3年に日本全体で、143万9809件の相続が発生していることになります。
そして、令和3年の日本全体における、遺産分割調停の新規申立数は1万3565件です。
それゆえ、相続が発生して遺産分割調停の申立がされる割合は、おおよそ1%(厳密には0.942%)であり、おおよそ100件相続が発生すれば、1件遺産分割調停が申し立てられる計算となっています。
この数字を皆さんはどのようにお考えでしょうか?
私個人としては、思ったより割合が低いなというのが率直な感想です。
もちろん、相続人間で話がまとまらず弁護士が就いた案件でも、遺産分割調停までいかずに、当事者間の話合いで終わる案件が多くあるので、相続で争う割合が1%というわけではないでしょう。しかし、個人的には3%ぐらいはあると思っていたので、私の予想が結構外れていました。
なお、上記統計データには、遺留分侵害額請求という、不公平な遺言が作成された場合の争いは含まれておらず、こちらの調停件数を含まれれば、全体の2%ぐらいの割合になるのではないかと推測します。但し、遺留分調停の申立件数については、公表されていないので、正確には分かりません。
2.全国トップ3
それでは、遺産分割調停の新規申立数、全国トップ3はどこでしょうか?
結論としては、第1位が東京で1620件、第2位が大阪で978件、第3位が横浜(神奈川)で916件になります。
第4位と第5位も発表しておくと、第4位が名古屋で726件、第5位が埼玉で669件になります。
なお、第6位は神戸(兵庫)で627件、第7位は福岡で624件です。神戸と福岡については、件数がわずか3件差なので、おそらく年によっては、順位が入れ替わると思います。
一般的に京都は相続で揉めるイメージがあるかと思いますが、京都はトップ3どころかトップ7にさえ入っていません。
もちろん、人口数や死者数が違うので、単純に比較することはできませんが、意外と京都において遺産分割調停の申立がされている件数は多くないようです。
3.関西地方(京都、大阪、兵庫、滋賀、奈良、和歌山)
当事務所は京都にあり、遺産相続案件については、関西地方の方からご依頼を受けることが多いので、関西地方の件数についても紹介しておきます。
遺産分割調停の新規件数が多いところから紹介していくと、①大阪978件、②神戸(兵庫)627件、③京都281件、④奈良141件、⑤大津(滋賀)115件、⑥和歌山96件となっています。
関西地方全体の申立件数を足しても2238件ですので、第1位の東京の1620件という数字がどれだけ多いかお分かり頂けるかと思います。
上記の通り、京都の件数は281件で、2倍をしても627件の神戸(兵庫)より少ないですし、3倍しても978件の大阪より少ないです。
そうなると、京都って、一般的に言われている印象と違って、相続でそれほど揉めないのではないかという疑問が生まれます。
そこで、死亡者数との兼ね合いで見てみると、令和3年の京都府の死亡者数は2万8309人であり、遺産分割調停申立数は281件なので、調停申立ての割合が1%以下になっています。
そう考えると、京都は相続で揉めるというのは、あくまでイメージの問題で、実際には全国平均と大して変わらないのだろうと思います。
なお、京都の281件というのは、岡山の253件、那覇(沖縄)の262件よりは多いものの、仙台(岩手)の286件、広島の307件よりは少ない数字となっています。
4.最後に
今回は、令和3年の遺産分割調停の新規申立数について、解説しました。
個人的な感想としては、想像よりも遺産分割調停までいく相続の割合は低いなと思いましたし、京都も意外とイメージが先行しているだけだなと思いました。
皆さんは、どのような印象を持たれたでしょうか?
今回のような、統計を使ったコラムは調べていて面白かったので、また機会があれば行おうと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
■参考
令和3年 司法統計年報 3家事編
令和3年 人口動態統計月報年計(概数)の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai21/dl/gaikyouR3.pdf

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弁護士って普段どんな業務をしているの?
こんにちは。
弁護士の益川教親です。
皆さんは、弁護士の日常というと、どのようなものをイメージされるでしょうか?
弁護士は、テレビドラマで見ると派手な仕事だと思われがちですが、普段どんな業務をしているのか、意外と知られていないように思います。
一言に弁護士といっても、注力分野などによって業務にも差はあると思いますが、今回は参考までに、私が普段行っている業務について、お話しさせて頂きます。
1.ご依頼者様(ご相談者様)対応
当たり前ですが、我々弁護士は、ご依頼者(ご相談者)の方から、ご依頼を受けることによって、生活が成り立っています。
そして、我々弁護士の目的は、ご依頼者の方に少しでもご満足頂くことですが、ご依頼者の方ごとに何を重視されるかは異なってきます。そのため、事件を処理するにあたっては、何か進展があり次第、ご依頼者にお伝えして、今後の方針を共に協議していくことになります。
もちろん、ご依頼者によっては、あまり自分に報告せず、弁護士側で業務を進めてほしい等のご要望を頂くので、そのような場合には、おおよその目標と方向性は協議した上で、弁護士が業務を進めることになります。
2.事件処理
次に、弁護士はご依頼を受けた事件の処理を行うことになります。
主に下記のような業務を行っています。
■示談交渉段階
①方針の検討
②現地調査
③ご依頼事件の類似裁判例や文献の調査
④証拠収集
⑤相手方との交渉書面の作成
⑥相手方との電話又は対面での交渉
■裁判(調停)段階
①裁判書面の作成(証拠収集や類似裁判例調査、文献調査なども含む)
②裁判対応(裁判準備、裁判所への出廷、尋問準備など)
この中で、圧倒的に時間がかかるのは、交渉書面の作成と裁判書面の作成です。
示談交渉段階においても、交渉書面が説得的でないと、良い解決案を得ることはできません。
また、裁判においては、裁判官は当事者からの口頭での話よりも、書面を重視する傾向が強いので、この裁判書面の出来が結果に大きく関わってきます。
なので、私も、示談交渉書面や裁判書面の作成に、全力を注いでいます。
ご依頼者から聞き取った内容や証拠、調査した文献や裁判例をもとに、構成をして、書面作成をして、書いた内容を見返して、何度も訂正をするという作業をしています。
私が書いた書面には一文一文に意味がありますし、ご依頼者の方から、何故その文を書いたのかをご質問頂ければ、多くの場合すぐにお答えできるかと思います。
示談交渉書面や裁判書面というのは、1通を作成するだけではなく、何通も何通も作成することが多いです。なので、この書面作成の作業が、一番時間がかかる作業ですし、その意味で弁護士の業務は派手さからは遠いような気がしています(土日祝日などに書面作成をしていることも多いです)。
3.ご依頼案件以外の活動
弁護士の業務には、ご依頼案件の処理だけではなく、顧問業務というのもあります。顧問業務というのは、企業様から月々●万円という顧問契約をして頂き、企業様からの法律が関わる質問にお答えしたり、企業間の契約書等をチェックする作業になります。イメージ的には、企業の法務部のような作業をします。
当事務所は、相続法務と企業法務に特に力をいれており、顧問契約をして頂いている企業様も40社以上あります。そのため、これらの企業様からの日々のご相談にもお答えしています。
また、顧問契約の延長上ではありますが、お客様の法人の委員会(例えば財産をどのように使用するかの委員会や、経営方針に関する委員会)に参加して、意見を述べることもあります。
4.最後に
今回は、弁護士が普段どんな業務をしているのかについて、解説しました。
書面作成など、おそらくイメージよりもかなり地味な仕事かと思います。
ですが、この地味な作業が依頼者の方の笑顔につながることが多いので、私としてもやりがいを感じています。
地道な作業も多いですが、弁護士って案外良い仕事ですよ(笑)、というのをお伝えして、このコラムを締めたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。

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相続人に未成年の子どもがいる場合の対処法
遺産分割協議を行う際に、相続人の中に未成年者がいる場合、未成年者自身が遺産分割協議を行うことができるのでしょうか?
また、親権者が未成年者の代理人として、遺産分割協議を行うことができるのでしょうか?
未成年者が相続人になるケースもあり、その際の対応に困ることもあるかと思います。
今回は、相続人の中に未成年の子どもがいる場合の対処法について、京都の弁護士が解説いたします。
1.未成年の子どもは自身で遺産分割を行えるのか?
遺産分割協議は、相続人全員で合意をする必要があるため、未成年者も含めて協議を行う必要があります。
それでは、未成年者は、自身で遺産分割を行えるのでしょうか?
結論としては、未成年者は自身で遺産分割を行うことはできません。
なぜなら、未成年者は、自身で法律行為をすることができないためです。
法律行為(契約など)については、通常、親権者が法定代理人として、未成年者に代わりに行うことになります。
2.親権者が代理人として遺産分割を行えるのか?
それでは、親権者が未成年者の代理人として、遺産分割を行うことができるのでしょうか?
結論としては、原則として、親権者が、遺産分割を行うことはできません。親が未成年者の代理人として、遺産分割を行っても、その遺産分割が無効になってしまいます。
なぜなら、多くのケースでは、未成年者が相続人になる場合、親権者である親も相続人となっており、親と子どもの利益が相反するためです。
例えば、お父さんとお母さん、お子さん1人の家庭で、お父さんがお亡くなりになったとします。この時、相続人は、お母さんとお子さんです。この場合、お母さんが遺産を多く取得すればお子さんの取得出来る遺産は減りますし、一方、お子さんが多く遺産を取得すれば、お母さんの取得できる遺産が減ることになります。
このように、相続人であるお母さんの立場と、お子さんの立場は、利益が相反するのです。
そのため、法律上、親権者が未成年者の代理人として、遺産分割を行うことは原則禁止されているのです。
ただし、以下の場面では、例外的に、親権者が子どもの法定代理人として、遺産分割を行うことが許容されています。
■親が代理人になることができる例外的な場面
①親権者が相続人とならない場合
親権者が相続人にならない場合、親権者が未成年者の代理人として、遺産分割を行うことができます。例えば、父母が離婚後、母が親権者となり、父が亡くなった場合には、母は相続人とはならないため、子どもの法定代理人として遺産分割を行うことができます。
②親権者が相続放棄をした場合
親権者が相続放棄をした場合には、親権者は子の法定代理人として、遺産分割を行うことができます。ただし、自身が相続放棄をするのであれば、お子さんも相続放棄をすることになる可能性が高いので、あまり現実的な場面ではないです。
※上記の①②の場合にも、親権者である親が法定代理人として関与できるのは、子ども1名についてだけであり、他の子どもには法定代理人として関与することはできません。
3.特別代理人の選任申立
それでは、相続人の中に未成年の子どもがいる場合には、どうすればよいのでしょうか?
結論としては、家庭裁判所に対して、特別代理人の選任を申し立てることになります。特別代理人とは、未成年者などの代わりに、遺産分割などの特定の法律行為をするために選任される代理人のことを言います。
3-1.裁判所の管轄
特別代理人選任の申立は、「子の住所地の家庭裁判所」に行うことになります。
3-2.必要書類
- 特別代理人選任申立書
- 未成年者の戸籍謄本
- 親権者の戸籍謄本
- 特別代理人選任候補者の住民票又は戸籍附票
- 利益相反が分かる資料(遺産分割協議書案など)
- 利害関係人からの申立の場合には、利害関係を証明する資料
などです。
3-3.費用
- 収入印紙800円分(子ども1人につき)
- 連絡用の郵便切手
3-4.特別代理人の選任者
遺産分割のために、未成年者の特別代理人の選任申立がされる場合には、弁護士、司法書士、親族等のいずれかが選任される可能性が高いです。
多くの場合には、弁護士か司法書士が選ばれている印象ですが、遺産分割調停中において、既に遺産分割の内容が定まっており、その内容が未成年者に不利益でない場合には、相続人でない親族などが選ばれることも多い印象です。
■参考:特別代理人選任(親権者と子との利益相反の場合)
https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_11/index.html
4.最後に
今回は、相続人の中に、未成年の子どもがいた場合の対処方法について、解説しました。
益川総合法律事務所では、遺産分割をはじめとした遺産相続案件に注力しています。
お困りの際には、お気軽に当事務所までご相談ください。

当事務所は、1983年創業の老舗法律事務所です。
遺産分割、遺留分侵害額請求、遺言書作成など、遺産相続案件に強い法律事務所であると自負しております。
お悩みの方は、是非お気軽にお問い合わせ下さい。
遺産相続の際における老朽化した建物の取扱いについて
遺産の中に、老朽化した建物がある場合、遺産の評価の際に老朽化した建物の解体費用を考慮できるのでしょうか?
また、遺産分割前に、老朽化している相続建物を解体することは認められているのでしょうか?
この記事では、遺産相続の際における老朽化した建物の取扱いについて、京都の弁護士が解説します。相続財産の中に、老朽化した建物がある方は、是非参考になさってください。
1.遺産の評価の際に建物の解体費用を考慮できるのか?
それでは、遺産の中に老朽化した建物がある場合、遺産の評価額を決める際に、その建物の解体費用を考慮できるのでしょうか。
建物の解体費用を考慮できるのであれば、建物の価格は0円と評価して、その上解体費用も差し引くことになります。
これが問題になる典型的な場面は、下記の通りです。
■問題になる典型的な場面
①遺産分割において、相続人の一人が老朽化した建物に加えてその建物が存在する土地の取得を希望している場合に、その相続人が、土地建物の評価にあたって、解体費用を考慮すべきと主張する場面
②遺言書によって、その老朽化した建物も含めて遺産全部を相続人の一人が取得して、他の相続人が遺留分侵害額請求をした際に、遺産全部を取得した相続人が、老朽化した建物の解体費用を考慮すべきと主張する場面
このように、老朽化した建物の解体費用を考慮できるかは、遺産分割においても遺留分においても、どちらのケースでも問題になります。なお、遺留分については、「遺留分侵害額請求をしたい方へ」という記事で詳しく解説していますので、興味がある方は、参考になさってください。
そして、老朽化した建物であっても、遺産の評価の際に、建物の解体費用は考慮できないのが一般的です。
なぜなら、遺産分割においても、遺留分においても、遺産をそのままの状態で評価すべきであり、建物の解体については、遺産取得後の事後的な事情にすぎないためです。
但し、相続人全員が同意した場合には、建物の解体費用を考慮することができます。そのため、建物の解体費用を考慮したいのであれば、まずは他の相続人にその申し出を行ってみるのがよいでしょう。
特に、遺産分割の場合には、だれもその老朽化した建物の取得を望まない場合、その建物が相続人全員の共有になってしまいます。他の相続人も、その老朽化した建物が共有になってしまうぐらいなら、建物の解体費用を考慮した方がマシだと考えることもありますので、遺留分の場合に比べれば、解体費用を考慮してもらえる可能性は高いでしょう。
2.遺産分割前に建物を解体することはできるのか?
それでは、遺産分割前に、老朽化している建物を解体することはできるのでしょうか?
他の相続人全員が同意している場合は、遺産分割前であっても、老朽化している建物の解体を行うことが可能です。
一方、相続人の中に、1人でも解体に同意していない人がいる場合には、原則として、建物の解体は許されていません。なぜなら、遺産分割が完了するまでは、その老朽化している建物も、相続人全員の共有状態になっているためです。
この不動産の共有の話については、「共同相続した不動産を分割する方法」という記事で、詳しく説明していますので、興味がある方は参考になさってください。
そして、他の共有者の同意なく、建物の解体を行ってしまった場合、他の共有者から損害賠償請求を受けてしまったり、最悪の場合、建造物損壊罪で刑事告訴などがされかねませんので、注意が必要です。
一部例外として、建物が今にも倒壊して隣家に迷惑がかかりそうな場合などには、共有者全員の同意がなくても、保存行為として、建物の解体が許容されることはありますが、その判断が難しい上、例外的なケースですので、弁護士に相談の上、行って頂くのがよいでしょう。
3.最後に
京都の益川総合法律事務所では、遺産相続案件に力を入れて取り組んでいます。
老朽化した建物を含めて、相続問題でお困りの方は、お気軽にご相談ください。

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遺産分割、遺留分侵害額請求、遺言書作成など、遺産相続案件に強い法律事務所であると自負しております。
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特別受益は常に考慮される?特別受益の持ち戻し免除について解説
遺産分割を行う際に、高額な生前贈与を受けた相続人がいると、「特別受益」に該当する可能性があります。
そして、「特別受益」を受けた相続人がいる場合、特別受益の持ち戻し計算を行って、その相続人の遺産からの取り分を減らすことになります。
それでは、このような特別受益は常に考慮されるのでしょうか?
今回は、「特別受益の持ち戻し免除」といわれる事柄について、京都の弁護士が解説します。遺産相続において、特別受益が問題になりそうな方は是非参考にされて下さい。
1.特別受益とは
まず、前提として、特別受益について、簡単に説明します。
特別受益とは、特定の相続人が生前贈与や遺贈などによって受けた利益のことをいいます。
高額な財産を生前贈与されたり、遺贈を受けた相続人がいる場合、その財産を無視して、法定相続分通りに遺産分割をすると、不公平になってしまいます。
そこで、生前贈与や遺贈を受けた相続人がいる場合、その相続人の遺産からの取り分を減らすことになります。その計算を、「特別受益の持ち戻し計算」といいます。
その相続人が受けた生前贈与などが、特別受益に該当する時は、特別受益の持ち戻し計算が行われて、その相続人の遺産からの取り分が減ることになるのです。
特別受益については、「遺産分割と生前贈与の関係について」という記事で、詳しく解説していますので、興味がある方は参考にされて下さい。
2.特別受益の持ち戻し免除とは
それでは、相続人の中に特別受益を受けた人がいる場合、常にこの特別受益が考慮されるのでしょうか?
結論としては、被相続人(亡くなった方)が、「特別受益の持ち戻し計算免除」の意思表示をしていた場合には、特別受益は考慮されなくなります。
例えば、被相続人が遺言書で、「特別受益の持戻し計算を免除する」と記載していれば、その相続人の特別受益は考慮されなくなります。
このように、被相続人が遺言書などで、「特別受益の持ち戻し計算免除」の意思を表示している場合には、特別受益を考慮せずに、遺産を分配することになるのです。
また、被相続人が、遺言書などで明示的には意思を表示していないとしても、黙示的な、持ち戻し免除の意思表示が認められて、特別受益を考慮しないことがあります。
黙示的な、持ち戻し計算免除の意思が認められやすいのは、下記のような場合です。
■黙示の持ち戻し計算免除の意思表示が認められやすい場合
①被相続人が生前贈与の見返りに利益を受けている場合
②相続人全員に生前贈与をしていたり、遺贈をしている場合
③家業を受け継ぐ相続人に対して、家業に必要な財産を渡している場合
④病気その他の理由により、その相続人が、相続分以上の財産を必要とする特別な事情ある場合。配偶者の老後の生活を支えるための贈与も含む。
⑤被相続人の居住する地方の社会的慣行や風習として、財産を渡している場合
このように、特別受益の持ち戻し免除の意思表示が認められる場合には、特別受益は考慮されなくなるのです。
3.夫婦間の持ち戻し免除意思の推定規定
婚姻期間の長い夫婦間の贈与の場合には、持ち戻し免除の意思が推定されることがあります。
具体的には、①婚姻期間が20年以上の夫婦が、②居住用不動産の贈与又は遺贈をした場合には、持ち戻し免除の意思が推定されます。
これは、婚姻期間の長い夫婦の一方が、他方に対して居住用不動産を生前贈与したり遺贈したりする場合には、通常それまでの長年の貢献に報いるとともに、老後の生活を図る目的であると考えられるためです。
もちろん、あくまで持ち戻し免除の意思が推定されるにすぎないので、被相続人が異なる意思表示をしていた場合には、特別受益として考慮されることになります。
4.遺留分侵害額請求の際には考慮されない
遺留分とは、兄妹姉妹以外の法定相続人に認められた、最低限の遺産取得割合をいいます。
例えば、被相続人が、生前贈与や遺言書によって、財産のほとんどを相続人の一人に渡した場合には、他の相続人の遺留分を侵害することになります。
この場合には、遺留分を侵害された相続人が、財産を譲り受けた相続人に対して、遺留分侵害請求を行うことができます。
この遺留分については、「遺留分侵害額請求をしたい方へ」という記事で、詳しく解説しているので、興味がある方は参考にされて下さい。
そして、この遺留分請求の際には、先ほど解説した、特別受益の持ち戻し免除は問題になりません。
なぜなら、被相続人による持ち戻し免除の意思の問題を、遺留分制度にも適用させると、各相続人に遺留分という最低限度の権利を認めた意味が無くなってしまうためです。
そのため、「特別受益の持ち戻し免除の意思」が問題となるのは、主として遺産分割の話の際になります。
5.最後に
特別受益が問題になる場合、相続人間での話合いは難しいことが多いです。
なぜなら、被相続人から財産をもらった相続人と、他の相続人の間で、それぞれが考える解決の方向性に大きな差があることが多いためです。
京都の益川総合法律事務所では、今回の特別受益も含めて、遺産相続案件に注力しております。
遺産相続でお困りの際には、お気軽にご相談ください。

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遺産分割、遺留分侵害額請求、遺言書作成など、遺産相続案件に強い法律事務所であると自負しております。
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死亡退職金は遺産分割の対象になる?相続財産に含まれるかを解説
退職金制度のある会社に勤めていた方が、退職前にお亡くなりになった場合には、ご遺族に死亡退職金が支給されます。
このような場合に、死亡退職金が相続財産に含まれて、遺産分割の対象になるか否かが問題になります。
そこで、今回は、死亡退職金が遺産分割などの対象になるかについて、京都の弁護士が解説します。死亡退職金が問題になっている方は、是非参考にしてみてください。
1.死亡退職金が遺産分割の対象になるか
死亡退職金には、大きく分けて、故人への賃金の後払いとしての性質と、ご遺族の生活保障としての性質の2つの性質があります。
そして、故人への賃金の後払いとしての性質を重視すれば、死亡退職金が遺産に含まれるという方向に近づきます。
一方、ご遺族の生活保障としての性質を重視すれば、死亡退職金は遺産とは別物であるとの考えに近づきます。
そして、実務上、死亡退職金が、相続財産に含まれて遺産分割の対象になるかは、亡くなった方の勤務先の規定次第になってきます。
そこで、以下では、場合を分けて解説していきます。
1-1.受取人が定められている場合
被相続人が公務員ではなく、企業に勤めていた場合、退職金制度を設けている会社の多くは、死亡退職金の受取人やその順位を定めています。
このような場合、配偶者→子ども→父母→孫→祖父母→兄妹姉妹などの順に受取人を定めており、配偶者がいる場合には、子どもは一切死亡退職金を取得できないことが多いです。
民法の規定からすれば、配偶者と子どもの取得割合が1対1になるはずですが、会社の退職金規定では、受取人について民法と異なる定めがされているのです。
このように、受取人について、民法と異なる規定となっている場合には、死亡退職金が受取人固有の財産になるため、遺産分割の対象になりません。
なぜなら、受取人について、わざわざ民法と異なる規定を定めている場合、その死亡退職金がご遺族の生活保障を目的としていると判断されるためです。
1-2.国家公務員の死亡退職手当
国家公務員の方が在職中に亡くなった場合には、ご遺族に死亡退職手当が支給されます。
死亡退職手当も、本来被相続人がもらうはずだった退職金をご遺族が取得するという点で、死亡退職金と意味合いは変わりませんので、ここでは同じものと思って頂いて構いません。
国家公務員の死亡退職手当の場合にも、国家公務員退職手当法という法律で、受取人の範囲や順位を定めていますが、配偶者がいる場合には、子どもは一切手当を受け取れないなど、民法と異なる規定となっています。
そのため、国家公務員の死亡退職手当についても、受取人固有の財産となるため、遺産分割の対象にはなりません。
1-3.地方公務員の死亡退職手当
地方公務員の方が在職中に亡くなった場合にも、ご遺族に死亡退職手当が支給されます。
地方公務員の死亡退職手当についても、死亡退職金と同じものだと思って頂いて構いません。
地方公務員の死亡退職手当については、その内容を条例で定めることになっています。但し、総務省から、国家公務員の制度に準じて作成するように、条例案が示されていることから、多くの条例では、受取人が民法と異なる規定となっています。
そのため、地方公務員の死亡退職手当についても、多くの場合には、受取人固有の財産になるため、遺産分割の対象にはなりません。
1-4.受取人の定めがない場合
退職金制度を設けている会社の場合、退職金規定などで死亡退職金の受取人を定めていることが多いでしょうが、仮に会社が死亡退職金の受取人を定めていなかった場合、どのように扱われるのでしょうか。
この点については、最高裁判決がないため、実務上の判断が分かれているところです。結局は、その死亡退職金が、賃金の後払いとしての性質が大きいのか、遺族の生活保障としての性質が大きいのかを個別に判断するしかありません。
■類似事案の最高裁判決
退職金の支給規程のない法人が、理事長の死亡後に、同人の妻に死亡退職金を支給する旨の決定をして、これを支払った事案については、最高裁判決があります。
この判決では、①元々法人には退職金の支給規程が存在していないこと、②それにもかかわらず、法人が妻に死亡退職金を支払う旨の決定をして支払ったことなどを重視して、死亡退職金が相続財産に含まれないと判断しました。このような場合には、ご遺族の生活保障としての性質が大きいためです。
この最高裁判決は、あくまで、その法人に元々退職金の支給規程がなかった事案です。
退職金の支給規定があったにもかかわらず、死亡退職金の受取人の規定がなかった場合とは、一線を画すと考えられます。なぜなら、元々その会社に退職金の支給規程がある場合、賃金の後払いとしての性質も大きくなってくるためです。
2.死亡退職金が特別受益になるのか?
上記の通り、死亡退職金(手当)は多くの場合、相続財産とは別物であり、遺産分割の対象になりません。
但し、相続人の一人が死亡退職金を受け取った場合、これが特別受益にあたり、その相続人の遺産の取得分が減るのではないかが問題となります。
この特別受益については、「遺産分割と生前贈与の関係」という記事で、詳しく解説していますので、気になる方は参考にされて下さい。
死亡退職金が、特別受益(又はそれに準ずるもの)に該当するか否かについては、その死亡退職金支給規定の内容や、当該退職金支給の目的等に照らして、特別受益に該当するかが事案毎に判断されることになります。
但し、多くのケースでは、死亡退職金が、ご遺族の生活保障を目的とした制度に依拠して支出されたものであることが考慮され、特別受益(又はそれに準ずるもの)に該当しないと判断されている印象です。
3.死亡退職金の取り扱いで迷ったら弁護士へ相談を
今回は、死亡退職金が相続財産に含まれて、遺産分割の対象になるのかを解説しました。
遺産相続が発生した場合、死亡退職金の判断のみならず、多くの判断が必要となってくるものです。
京都の益川総合法律事務所では、遺産相続案件に注力していますので、相続に関するお悩みがありましたら、お気軽にご相談ください。

当事務所は、1983年創業の老舗法律事務所です。
遺産分割、遺留分侵害額請求、遺言書作成など、遺産相続案件に強い法律事務所であると自負しております。
お悩みの方は、是非お気軽にお問い合わせ下さい。
