遺言書作成

遺言と家族信託の違いや選び方を弁護士が解説

2022-06-08

遺言と家族信託は似ている部分もありますが、まったく異なる制度です。

それぞれの違いやできることを知り、効果的な相続対策、生前対策を行いましょう。

今回は遺言と家族信託の違いや選び方、活用方法を京都の弁護士がお伝えします。

将来の認知症対策、死後の相続対策を検討している方はぜひ参考にしてみてください。

【家族信託と遺言の違い 一覧表】

 家族信託遺言
生前の財産管理や認知症対策できるできない
2代以上先の財産承継方法指定できるできない
子どもの認知や相続人廃除、取消などできないできる
行為の性質契約単独行為
撤回の可否合意がないとできないが条件を満たせば解約は可能できる
要式(手続きの方法)委託者と受託者が合意して契約する遺言書を作成する(厳格な要式を守らねばならない)

■家族信託とは

家族信託とは、信頼できる家族へ財産を預けて管理・処分してもらう信託契約です。

預けた財産は委託者の希望するとおりに管理や処分をしてもらえます。

生前から効力を発生させられますし、死後にまでも効力を及ぼすことが可能です。

■遺言とは

遺言とは、遺言者が死後の財産承継方法や身分行為などについて指定するための書面です。

たとえば相続分や遺産分割方法、寄付や遺贈、子どもの認知などを定められます。

効力を発生させられるのは死亡と同時であり、生前には効力がありません。

1.家族信託にしかできないこと

家族信託と遺言にはさまざまな違いがあります。
まずは、家族信託にしかできない事項をみていきましょう。

1-1.生前の財産管理や認知症対策

生前の財産管理や認知症対策は、家族信託にしかできません。遺言は「死後」にしか効力を発生させられないためです。

たとえば認知症になったときの預貯金の管理、不動産の管理処分や株式、投資用物件の運用などを家族に任せたい場合、家族信託を検討しましょう。

1-2.障害のあるお子さんの生活保障

障害のあるお子さんがおられる方は、ご自身が亡くなった後のお子さんの生活が心配になるでしょう。遺言の場合、障害のあるお子さんに財産を残すとしても死亡時に一括で渡すことになってしまいます。お子さん自身に管理能力がなければうまく使っていくのが難しくなるでしょう。

家族信託であれば、障害のない親族に預貯金や不動産を委託して障害のあるお子さんのために管理処分してもらえます。本人に管理能力がなくても月々の生活費を出してもらったり家を管理してもらえたりするので安心です。

1-3.生前の事業承継への活用

生前の事業承継対策も家族信託にしかできません。

家族信託を利用すると、先代が後継者に会社株式や事業用資産を預けて様子を見ることができます。先代に指図権を残せるので議決権行使できますし、後継者として不適切な場合には解約も可能です。

遺言では死亡時に一括して株式や事業用資産を相続または遺贈してしまうので、後継者が不適切かどうか見届けることはできません。

生前に様子を見たい場合には家族信託が適しているでしょう。

1-4.二代以上先の財産承継方法指定

家族信託を利用すると、2代以上先の財産承継方法を指定できます。たとえばまずは配偶者に財産を遺し、配偶者の死亡後は長男に受け継がせ、さらにその後は次男の子ども(孫)へ家を継がせるなどの希望を実現可能です。

遺言の場合、本人の直後の相続や遺贈しか指定できません。相続人がどのように財産を受け継がせるかは相続人が決定するので、遺言者が決められないのです。

2代以上先の財産承継を指定したいなら家族信託を利用しましょう。

2.遺言にしかできないこと

遺言にしかできないこともあるので、ご紹介します。

2-1.子どもの認知や相続人廃除など

子どもの認知や相続人廃除、その取消などの身分的な行為は遺言でしかできません。

2-2.遺言執行者の指定

遺言執行者の指定は遺言にて行う必要があり、家族信託では指定できません。

2-3.遺留分侵害額請求の順序指定

遺留分侵害額請求の順序は遺言によって指定できます。家族信託では指定できないので、遺留分トラブルを防止したいなら遺言の方が有効でしょう。

2-4.祭祀承継者の指定や特別受益の持ち戻し免除なども遺言の方が適している

先祖を祀るための財産を承継する「祭祀承継者」は先代の祭祀主宰者が指定する必要があります(指定がなければ慣習や家庭裁判所の指定によって決まります)。

また被相続人が生前贈与や遺贈を行う場合には、被相続人の意思で特別受益の持ち戻し計算を免除できます。

祭祀承継者の指定や特別受益の持ち戻し免除は遺言でなくてもできますが、遺言書で明らかにしておくとわかりやすいでしょう。

少なくとも契約行為である家族信託には適さない行為といえます。

3.行為の性質や方式の違い

家族信託は委託者と受託者の契約行為なので、双方の合意が必要です。特に厳格な要式は要求されません。ただし契約内容を明らかにするため、公正証書化が推奨されますし、信託財産に不動産が含まれていたら信託登記すべきです。

一方、遺言は遺言者が行う単独行為です。受贈者や相続人の合意は要りません。

厳格な要式行為なので、要式を満たさないと無効になってしまいます。

家族信託と遺言では設定方法が大きく異なるので、それぞれにおいて適切に対処しましょう。

4.最後に

当事務所では相続が発生した後はもちろんのこと、生前の財産管理対策にも力を入れて取り組んでいます。京都、滋賀、大阪、兵庫で家族信託や遺言に関心をお持ちの方がいらっしゃいましたら、お気軽にご相談ください。

家族信託を弁護士に依頼するメリット

2022-05-31

家族信託を利用する場合、弁護士や司法書士、行政書士などの専門家に依頼するのが一般的です。高度な法律知識を要求されるので対応できない方がほとんどだからです。

また自分たちだけで契約書を作成すると失敗してしまうリスクも高くなってしまいます。

今回は家族信託を弁護士へ依頼するメリットをお伝えしますので、家族信託に関心をお持ちの方はぜひ参考にしてみてください。

1.家族信託についての説明やアドバイスを受けられる

家族信託については、なんとなく知っていても具体的によくわからない方が多いと思います。

弁護士に相談すると、家族信託でできることやできないこと、メリットとデメリット、利用方法などについて正確に説明してもらえます。

家族信託を利用する際のアドバイスを受けられるので、安心して取り組めるのがメリットとなるでしょう。

2.有効なスキームを設定してもらえる

家族信託を設定する際には、状況に応じたスキームを組み立てる必要があります。

具体的には誰を委託者、受託者、受益者とするのか、何を信託財産とするのか、いつ信託契約を終了させるのかなどを決めなければなりません。

専門知識がなければ、家族信託のスキームを組み立てるのは困難です。自己判断すると、意味のない信託契約書を作成するだけで家族信託に失敗してしまう可能性もあります。

弁護士に依頼すると、ご家族の状況に応じて最適な家族信託のスキームを提案してもらえます。

法的な専門知識がなくても有効な家族信託のスキームを組んで利用できるのは大きなメリットとなるでしょう。

3.手間がかからない

家族信託には手間がかかります。

  • スキームを検討して決定する
  • 家族会議を開いて関係者へ理解を求める
  • 信託契約書を作成する
  • 信託契約書を公正証書にする
  • 信託登記をする
  • 信託口座を開設する
  • 受託者が財産管理や処分を開始する

上記のようなステップを踏まねばなりません。自分たちで取り組むと、慣れない契約書作成や公正証書化などに手間取ってしまう方が多数です。

弁護士に依頼するとスキームの決定、契約書の作成や公正証書化などについて全面的に支援してもらえます。登記については提携している司法書士に依頼できるので、依頼者に手間はかかりません。

労力をかけずに家族信託を利用できるのは多大なメリットとなるでしょう。

4.スムーズな対応

自分たちで家族信託に取り組むと、手順やルールがわからないために非常に長い時間がかかりますし、最終的に失敗するリスクも高まります。

弁護士に依頼すればスムーズに手続きを進めてくれるので、早期に家族信託の設定が完了するのもメリットとなるでしょう。

5.遺言や成年後見も合わせた総合的な対応が可能

認知症対策を行う際には、成年後見制度や任意後見契約なども視野にいれつつ家族信託を利用するのが得策です。それぞれの制度において、できることが異なるからです。

相続対策にも同様のことがいえ、遺言書と家族信託には別の機能があります。

弁護士は家族信託だけではなく成年後見制度や遺言にも精通しているので、これらを組み合わせて最適な対処方法を実行できます。

自分たちだけで対応するより有効な対処ができて、ご本人の希望を実現しやすいのはメリットとなるでしょう。

6.対応範囲が無制限

家族信託を依頼できる専門家としては、行政書士や司法書士も存在します。

ただ、行政書士や司法書士は、弁護士と異なり、相談に対応できる範囲が限定的になってしまいます。

弁護士であれば無制限に家族信託についてのアドバイスや対応ができるので、任せていて安心感があります。

7.紛争になっても安心

家族信託を設定すると、後日にトラブルになる可能性も0ではありません。

きちんと家族の理解を得なかったために受託者や受益者以外の親族が不公平感を抱くケースもあり、死後に相続トラブルや遺留分トラブルが生じてしまう事例もみられます。

弁護士は紛争解決の専門家なので、トラブルが起こったときにすぐに収束させるための対応をとることができます。

将来発生するかもしれないトラブルに備えるには、当初から弁護士へ依頼するのがおすすめです。

8.家族信託を依頼する弁護士の選び方

家族信託を弁護士に依頼するときには弁護士選びにも注意しましょう。

家族信託は弁護士の取扱業務の中でも比較的新しい分野であり、専門性も高いため、誰でもよいわけではありません。適切にスキームを組み立ててスムーズに信託契約を設定できる弁護士は限られています。

益川総合法律事務所は1983年に京都の地にて創業した老舗の法律事務所で、およそ40年間にわたり京都、滋賀、大阪、兵庫の皆様のため、邁進してまいりました。これまで数多くの相続案件を手掛けてきた経験があり、家族信託についても十分な知見を有していると自負しております。

ご相談者の方に応じて、スキームをご提案して迅速に対応いたしますので、家族信託に関心をお持ちの方は、お気軽にご相談ください。

家族信託とは

2022-05-26

家族信託を利用すると、将来認知症が進行したときの財産凍結を防いだり、相続が発生したときに希望通りに財産を受け継がせられたりする効果があり、大きなメリットを得られます。

最近では家族信託の認知度も高まり、利用者も増加しているので聞いたことのある方も多いのではないでしょうか。

ただ「具体的にどういったものかわからない」「家族信託で何ができるのかわからない」「自分たちのケースで家族信託が適しているのか判断できない」といったご相談を受けるケースも少なくありません。

今回は京都の弁護士が家族信託について、わかりやすく説明します。活用事例もご紹介しますので、関心をお持ちの方はぜひ参考にしてみてください。

1.家族信託とは

家族信託は、信頼できる家族に財産を預けて管理処分してもらう信託契約です。

たとえば親が子どもに自宅不動産や預貯金を預けて管理してもらい、将来認知症になったときに備えるケースなどがよくあります。

親族間の契約なので、高額な報酬も発生しません。信頼できる家族さえいたら利用できる手続きです。

□家族信託の基本的な仕組み

家族信託を設定する際には「委託者」と「受託者」「受益者」「信託財産」を決めなければなりません。

・委託者

財産を預ける人です。たとえば親が子どもへ不動産を預ける場合には親が委託者となります。

・受託者

財産を預かって管理する人です。たとえば親が子どもへ預貯金を預ける場合、子どもが受託者となります。

・受益者

受益者は、家族信託によって利益を得る人です。

受益者は委託者と一致する場合もあれば異なる場合もあります。

たとえば親が子どもへ不動産を預ける場合、親の存命中は親自身を受益者とするケースが多数です。親の死亡後は配偶者や別の子ども、孫などへ受益者を変更できます。

・信託財産

信託財産は、家族信託によって預ける財産です。たとえば親が子どもへ不動産と預金を信託する場合、信託財産は不動産と預金になります。

2.家族信託のメリット

2-1.柔軟に対応できる

認知症になったときの財産管理方法としては成年後見制度が有名ですが、成年後見制度に比べて家族信託は柔軟な対応が可能です。

成年後見制度の場合、家庭裁判所の監督を受けるのでどうしても硬直的になってしまいます。ご本人が後見人を自由に選ぶこともできません。

家族信託であれば、ご本人の希望する方法で希望する相手に財産管理や処分をしてもらえます。ご家族の状況に応じたスキームを組み立てられるのが大きなメリットとなるでしょう。

2-2.高額な費用がかからない

信託銀行で遺言信託などを利用すると、最低でも100万円程度の費用がかかってしまいます。

家族信託であれば、家族へ財産を預けるだけなので費用はさほど高額にならないケースが多数です。ただし専門家へ依頼する報酬や公正証書作成費用など、一定額はかかります。

2-3.家族信託にしかできないことも多い

遺言や成年後見制度では対応できず、家族信託にしかできないことがたくさんあります。

たとえば2代以上先への財産受け継ぎ方法を指定したり、事業承継において先代社長に権限を残したまま株式を信託したりするのは、家族信託ならではの機能です。

3.家族信託の活用事例

3-1.認知症対策

将来の認知症に備えて家族信託を利用されるケースが多数あります。

たとえば親が子どもに自宅の不動産を信託し、親が家に住んでいる期間の管理を委託します。その後、認知症が進行して施設入所が必要になったタイミングで子どもに家を売却してもらい、施設の頭金を用意することも可能です。

3-2.二代以上先の財産引き継ぎ方法を指定

家族信託を利用すると、2代以上先への財産引き継ぎ方法を指定できます。

たとえば長男に子どものいないご家庭で、まずは長男に財産を継がせたいけれど、その後は次男の子ども(孫)へ引き継がせたいご希望を持っている場合を考えてみてください。

家族信託であれば、まずは長男、その次は次男の孫への財産引き継ぎを指定できます。

遺言の場合には長男への相続しか指定できないので、その後の孫への財産引き継ぎを指定できません。

2代以上先の財産引き継ぎを指定したいなら、家族信託が有効です。

3-3.障害のある子どもの生活保障

障害のあるお子様がいらっしゃって、親なき後の生活が心配な場合にも、家族信託が有効です。

障害のないお子様(ご本人のご兄妹)や甥姪などの親族に預貯金や不動産を信託し、障害のあるお子様のために管理してもらえば、ご本人の生活が守られます。

3-4.事業承継

事業承継の際に家族信託を用いると、先代に「指図権」という権利を残したまま株式を後継者候補へ信託できます。指図権を残すと、信託後も株式の議決権を先代が行使できます。

また後継者候補が不適格な場合、信託契約を解約して別の候補者を探せるので、お試しで承継できるのも大きなメリットとなるでしょう。

4.家族信託をおすすめするパターン

  • 将来の認知症が心配
  • 2代や3代先の財産承継方法を指定したい
  • 障害のある子どもの生活を守りたい
  • 事業承継したい
  • 遺産相続対策をしたい
  • 相続トラブルを防止したい

5.最後に

京都の益川総合法律事務所は家族信託や相続対策、認知症対策に力を入れて取り組んでいます。
家族信託に関心をお持ちの方はお気軽にご相談ください。

自筆証書遺言についての相続法改正

2022-05-03


近年の相続法改正により、自筆証書遺言の作成方法や保管方法が変わりました。

①これまで自筆以外が許されなかった遺産目録をパソコン等で作成できるようになった

②自筆証書遺言を法務局で預かってもらえる制度が新設された

大きな改正点は上記の2つです。

今回は自筆証書遺言がどのように変わったのかについて、京都の弁護士がお伝えします。これから遺言書を作成される方はぜひ参考にしてみてください。

1.自筆証書遺言とは

自筆証書遺言とは、遺言者が全文を自筆する遺言書です。

遺言書には自筆証書遺言、秘密証書遺言、公正証書遺言の3種類があり、中でも頻繁に利用されるのが自筆証書遺言と公正証書遺言です。

自筆証書遺言は基本的に無料で作成できますし、思い立ったときに遺言者が手軽に作成できるメリットがあります。

確実性としては公正証書遺言に劣りますが、適正な方法で作成・保管さえすれば遺言書としての効力は公正証書遺言と変わりません。

2.自筆証書遺言の変更点その1 遺産目録について

法改正により、自筆証書遺言における「遺産目録」の作成方法が変わりました。

遺産目録とは、どういった遺産があるのかを明らかにする表です。

従来、自筆証書遺言では遺産目録の部分も含めて遺言者が自筆しなければなりませんでした。ただ現代ではパソコンを使う方も多いですし、遺産目録を自筆すると不動産や預金の番号などを間違ってしまうリスクもかえって高くなります。

そこで改正法では遺産目録のみ、自筆の必要がなくなりました。

パソコンで目録を作ってもかまいませんし、不動産なら全部事項証明書、預金なら預貯金通帳のコピーをつける方法で代替できます。

ただし自筆しない場合には、遺産目録の全ページに遺言者が署名押印しなければなりません。両面に印字がある場合には両面への署名押印が必要です。

忘れると遺言書が無効になってしまうリスクがあるので注意しましょう。

3.自筆証書遺言の変更点2 法務局で保管してもらえる制度が新設

改正法により自筆証書遺言を法務局で預かってもらえる制度が新設されました。

従来は自筆証書遺言を作成すると、遺言者が自分で保管しなければなりませんでした。

しかし自分で保管すると、どうしても紛失してしまうリスクが高まります。

また遺言書を発見した相続人が隠したり破棄したり、書き換えてしまったりするケースもあります。

そこで自筆証書遺言を法務局に預けて管理してもらうことにより、安全に保管できる制度が作られました。

これが自筆証書遺言書保管制度です。

3-1.自筆証書遺言書保管制度の使い方

まずは遺言者が自分で遺言内容を考えて、有効な自筆証書遺言を作成します。遺言書保管所では遺言書の作成方法や内容については相談に乗ってくれません。

遺言書ができたら遺言者本人が保管所へ遺言書を持ち込みます。封入せずそのまま持参しましょう。

管轄の法務局は以下の3種類です。

  • 遺言者の住所地を管轄する遺言書保管所
  • 遺言者の本籍地を管轄する遺言書保管所
  • 遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する遺言書保管所

事前に予約をとり、定められた日時に遺言書保管所へ出向きましょう。

遺言書を預けられるのは本人のみです。代理人による保管申請は認められません。

3-2.費用

預ける際の費用は、遺言書1通につき3,900円です。

3-3.遺言書を預けた後の対応

遺言書を預けた後、遺言者は遺言内容を確認、撤回、変更できます。

確認する場合、モニター越しに閲覧する方法と原本を閲覧する方法の2種類があります。

□ 手数料

モニター閲覧…1回1,400円

原本閲覧…1回1,700円

遺言書の保管の申請の撤回、遺言者の住所等の変更の届出をする際には手数料はかかりません。

3-4.自筆証書遺言保管制度のメリット

  • 遺言書の紛失を防止できる
  • 破棄隠匿、書き換えなどの不正を防止できる
  • 相続人へ通知する制度を利用できるので、遺言書が発見されやすくなる
  • 死後の検認が不要で相続人に手間がかからない

3-5.自筆証書遺言保管制度の注意点

① 遺言者本人が申請しなければならない

遺言者本人が法務局へ出向いて遺言書を預けなければならないので、寝たきりなど体が動かない方は利用できません。公正証書遺言なら、自宅や施設、入院先などへ公証人に出張してきてもらって遺言書を残せます。

② 遺言が無効になる可能性がある

自筆証書遺言の保管制度を利用しても、遺言書が有効になるとは限りません。

確かに法務局で形式的に審査されますが、有効性を確認するほどのものではないからです。

要式違反で無効になる可能性もありますし、遺言能力が失われていて無効となるリスクもあります。

より確実に遺言書を遺すには、弁護士へ相談しながら作成しましょう。

4,遺言書作成は弁護士へご相談ください

せっかく自筆証書遺言を作成しても、無効になってしまっては意味がありません。

京都の益川総合法律事務所では、遺言書の作成支援に積極的に取り組んでいます。

トラブルを効果的に防ぐための遺言内容についてアドバイスを行い、遺言書が無効にならないよう法的な観点からのチェックも可能です。

遺言書を作成される方は、お気軽にご相談ください。

作り直された遺言書の効力~遺言書の撤回と取消について

2022-04-26

一度は遺言書を作成しても、後に気が変わって書き換えたり破棄したりしたい状況があるものです。

  • 遺言で多めに相続させた子どもと不仲になってしまった
  • 遺言で少なめに相続させた子どもから、献身的に介護を受けたのでもっと多くの遺産を遺したい
  • 事業承継をするケースで、後継者が変わった
  • 財産を使ったので、遺産内容が変わってしまった

民法は、遺言の撤回や取消を認めていますが、撤回、取消にも一定のルールがあります。近年、最高裁判所で遺言の撤回についての新判断も出ています。

今回は、京都の弁護士が遺言書の撤回や取消の方法についてお伝えします。

遺言書を作成される方のみならず、発見された遺言書の効力を知りたい方にもお役に立つ内容ですので、是非ご確認ください。

1.遺言書の撤回、取消は自由にできる

いったん遺言書を作成しても、遺言者は自由に撤回や取消ができます(民法1022条)。

撤回部分は全部であっても一部であってもかまいません。

(遺言の撤回)

第1022条 遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。

反対に、1度遺言書を作成すると撤回しない限り以前の内容が有効なままとなります。もし、遺言書作成時と状況が変化したり気が変わったりしたら、早めに遺言書を撤回しましょう。

以下では法律の定める遺言撤回に関するルールをご紹介します。

2.以前と異なる内容の遺言書を作成する

遺言を撤回したい場合、以前と異なる内容の遺言書を作成するのが基本です。

以前と異なる内容の新しい遺言書を作成すると、自然に以前の遺言書の効力が失われます(民法1023条)。遺言書は「日付の新しいもの」が優先されるのです。

第1023条 前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。

2 前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する。

ただし以前の遺言書のすべての部分が無効になるとは限りません。

新しい遺言書と以前の遺言書で「矛盾する部分」のみが無効になります。

遺言書の一部のみを書き換えたい場合には、法的には、以前の遺言の中で「変えたい部分のみ」を新しい遺言書に書き込めば足ります。

但し、以前の遺言と新しい遺言の「矛盾する部分」がどこかが争いになり得るので、当事務所としては、遺言書を書き換える時は、全部を書き換えることをおすすめしています。

3.遺言書を破棄する

以前に書いた遺言書を破棄したら、遺言書を撤回したことになり効果は失われます(民法1024条前段)。

第1024条 遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなす。遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したときも、同様とする。

■遺言書を破棄する方法

遺言書全体を撤回、取り消したい場合には、破って捨てるのが確実です。

破棄の方法があいまいな場合、自分では撤回したつもりでも撤回が認められない可能性があり、注意しなければなりません。

■遺言書を破棄する方法についての最高裁判例

最高裁判所において、遺言破棄の効果が争われた事例をご紹介します(最判平成27年11月20日)。

このケースでは、遺言者が遺言書作成後、遺言書の一部に赤斜線を引きました。

第1審と第2審は、「赤斜線が引かれても元の文字を判読できる以上、民法1024条前段の『故意に遺言書を破棄したとき』に該当せず、遺言は有効」と判断しました。

一方で最高裁判所は「遺言は無効」と判断しました。

理由は以下のとおりです(判決文をわかりやすく編集しています)。

「赤色のボールペンで遺言書の文面全体に斜線を引くと、一般的には遺言書全体を不要として全ての効力を失わせる意味の表れとみるのが相当である。故意に本件斜線を引く行為は、民法1024条前段の『故意に遺言書を破棄したとき』に該当するというべきで、本件遺言を撤回したものとみなされる。したがって遺言は効力を有しない」

この最高裁判決により、遺言書の一部に赤斜線を引いた場合には、遺言書全体が無効となることが確認されました。但し、このような曖昧な方法により遺言書を破棄すると争いの種になるので、好ましい方法ではありません。

4.遺贈の目的物を破棄する

遺言者が遺贈の目的物を破棄した場合にも、遺言書が無効になります(民法1024条後段)。

たとえば相続人へ骨董品などの動産を遺贈したけれども、その後気が変わって壊したら遺言の該当部分は無効です。

また遺贈した不動産を売却したり預貯金を使ってしまったりした場合にも遺言書の効力は失われます。

5.撤回の撤回はできない

遺言書を1度撤回しても、再度気が変わって「撤回の撤回」をしたい状況も考えられます。

しかし撤回の撤回は認められません(民法1025条)。

1度撤回した後に再度効果を復活させたい場合には、あらためて別の遺言書を作成する必要があります。

第1025条 前三条の規定により撤回された遺言は、その撤回の行為が、撤回され、取り消され、又は効力を生じなくなるに至ったときであっても、その効力を回復しない。ただし、その行為が錯誤、詐欺又は強迫による場合は、この限りでない。

■例外的に撤回の撤回ができるケース

詐欺や強迫によって遺言書を撤回した場合、例外的に撤回の撤回も認められます。

遺言書を撤回したい場合、間違った対応をすると上記の最高裁の事例のように撤回の効力があいまいになってしまいます。遺言書作成後に気が変わったときや状況に変化があったときには、弁護士のアドバイスを受けて撤回、取消を行うのが確実です。

6.最後に

当事務所では遺言書作成に関するサポートや遺言書の効力を争う事案について積極的に取り組んでいます。この2つの内容については一見矛盾するように見えるかもしれませんが、遺言書の効力を争う事案に取り組んでいるからこそ、そのような紛争にならない形での遺言書作成に関するサポートができると自負しております。

お困りの方はお気軽にご相談ください。

遺言書の書き方や注意点を書式つきで弁護士が解説

2022-04-19

遺言書を作成するときには、無効にならないように正しい要式を守らなければなりません。

また、トラブルを防ぐためには、「遺留分」にも配慮する必要があります。

今回は正しい遺言書の書き方を書式付きでご紹介し、トラブルを招かないための注意点を京都の弁護士がお伝えします。

遺言書を作成する方はぜひ参考にしてみてください。

1.遺言書の書式

まずは典型的な遺言書の書式を確認しましょう。

2.遺言書の書き方

上記の書式を参考に、具体的な遺言書の書き方と注意点をお伝えします。

なお、この記事では「自筆証書遺言」を前提にご説明します。

自筆証書遺言とは、遺言者が全文を自筆する遺言書です。

できあがった遺言書は自分で管理する他、法務局に預けることもできます。

2-1.使用する紙やペンについて

自筆証書遺言を作成するとき、使用する紙やペンに指定はありません。

ただし鉛筆など消えてしまう可能性のあるものは不適切です。

消えないボールペンや油性ペンなどを利用しましょう。

2-2.全文自筆で書く

自筆証書遺言は、全文を遺言者が自筆しなければなりません。

一部でもパソコンを使ったり代筆をお願いしたりすると、無効になってしまいます。

日付やタイトルも含め、必ずすべての部分を自筆しましょう。

■遺産目録は例外

近年の法改正により、遺言書に添付する遺産目録のみ、自筆でなくてもよいことになりました。遺産目録とは、遺産内容を示す表です。

遺産目録については、パソコンを使って作成してもかまいません。不動産の全部事項証明書や預貯金通帳のコピーをそのまま添付する方法も有効です。

ただし遺産目録を自筆しない場合でも、目録のすべてのページに遺言者が署名押印しなければなりません。

単純に預金通帳のコピーなどを付けるだけでは無効になってしまうので注意しましょう。

2-3.遺産の相続方法を指定する

次にどの遺産を誰に引き継がせるのか、記載していきます。

このとき重要なのは、相続人の表示と財産の表示です。

■相続人の表記方法

相続人については被相続人との続柄、氏名、生年月日で特定します。

■財産の表記方法

財産については以下のように表記しましょう。

□不動産の表記

不動産については、登記事項証明書の「表題部」の記載をそのまま引き写してください。

土地の地番や建物の所在、家屋番号などの部分です。

住所表示とは異なるので、注意しましょう。

登記事項証明書は法務局へ申請すれば取り寄せられます。

□預貯金の表記

預貯金については、金融機関名と支店名、口座の種類、口座番号で特定します。

支店名が抜けたり口座番号を間違えたりすると、後に相続手続きを受け付けてもらえない可能性があるので、慎重に記載してください。

□株式の表記

株式については発行会社名と株式数により特定します。どこの証券会社に預けているのかも記載しましょう。

2-4.遺言執行者を指定する場合

遺言書で遺言執行者を指定しておくと、スムーズに相続手続きを進めやすくなります。

遺言執行者を指定する際には、その人の氏名や住所を記載しましょう。

上記の書式は弁護士を遺言執行者として指定するものです。

2-5.日付を入れる

遺言書には必ず日付を入れなければなりません。

作成した日付を自筆で記入しましょう。

2-6.署名押印する

遺言者が署名押印しなければ遺言書は有効になりません。

印鑑は認印でも有効ですが、信頼性を高めるためには実印を使うとよいでしょう。

3.遺留分にも配慮が必要

遺言書を作成する際には、相続人の「遺留分」にも配慮すべきです。遺留分とは一定の相続人に保障される最低限度の遺産割合です。

遺留分を侵害すると、死後に遺留分侵害額請求が起こってトラブルになるリスクがあるので、なるべく遺留分を侵害しないようにしましょう。

どうしても遺留分を侵害せざるをえない場合、付言事項で相続人へ遺留分侵害額請求をしないように伝えたり、侵害者(遺言により財産を多く取得する人)へ死亡保険金を受け取らせたりする対策方法を検討すべきです。

4.最後に

弁護士にご相談いただけましたら、今回ご説明した内容を踏まえて、遺言内容をご提案できますし、トラブルを可能な限り防止する方法もお伝えいたします。

京都・滋賀・大阪・兵庫で遺言書を作成しようと考えている方は、お気軽に当事務所までご相談ください。


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