遺産分割
被相続人が会社経営者や資産家の場合における遺産分割の注意点
お亡くなりになった被相続人が会社経営者や資産家の場合、相続人の立場として注意すべき事項がたくさんあります。
特に後継者以外の相続人が不利益を受けるケースも多いので、法律の規定する法定相続、遺留分請求等のリスクを避けるための対処方法を知っておきましょう。
今回は、被相続人が会社経営者や資産家の場合の遺産分割の注意点をお伝えしますので、ぜひ参考にしてみてください。
1.後継者以外にも法定相続分がある
会社経営者や資産家の方が亡くなると、後継者が多くの遺産を相続しようとするケースが大多数です。
例えば、ご長男が後継者になる場合、ご長男が会社株式や事業に必要な資産を承継して、他の相続人の取得分はほとんどなくなってしまうケースも少なくありません。
但し、後継者以外の法定相続人にも、法定相続分が認められます。
法定相続分は、事業承継における後継者かどうかとは無関係に認められるので、長男も長女も同じです。家を出てご結婚されていても別の仕事をしていても、後継者と同等の法定相続分が認められます。
法律上、法定相続分までは受け取れる権利があるので、後継者へ遠慮する必要はありません。
■中小企業の株式は価値が高いケースも多い
事業者が亡くなると、会社株式が遺産として遺されるケースが多々あります。
一般的には非上場の会社株式には流動性がなく、価値が低いと思われがちです。しかし実際に株式を適正に評価すると、非上場の中小企業株式の評価額は高額になるケースが少なくありません。
後継者が会社株式を取得する場合、他の相続人は後継者へ高額な代償金を請求できる可能性があります。代償金を払ってもらえないなら株式そのものを取得して、経営権を一部取得する対処方法も考えられます。
遺産分割協議で「株式は相続しない」「代償金は請求しない」と合意してしまう前に、弁護士までご相談ください。
2.遺留分侵害額請求できる可能性がある
被相続人が事業経営者や資産家の場合、遺言書を遺して遺産分割の方法を指定しているケースもよくあります。
確かに遺言書があると、法定相続分とおりの遺産は受け取れなくなります。後継者にほとんどの遺産を相続させる遺言内容になっている事例も多くみられます。
ただし、子どもなどの一定範囲の相続人には「遺留分」が認められます。
遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に認められる最低限度の遺産取得割合です。
遺言や生前贈与で遺留分を侵害されると、遺留分権利者は侵害者へ「遺留分侵害額請求」という金銭の請求ができます。
■遺留分侵害額請求の具体例
父親(事業者)が亡くなり3億円の遺産が遺された。相続人は長男と長女であり、長男が後継者となるため遺言書で「すべての遺産を長男に相続させる」と指定されていたケース。
この事案において、長女には4分の1の遺留分が認められます。そこで長女は後継者である長男に対し、3億円×4分の1=7,500万円の支払いを請求できます。
長男が払わない場合には調停や訴訟を起こして取り立てることも可能です。
3.負債の相続に要注意
被相続人が事業者や資産家の場合、高額な負債が遺されるケースも多いので注意が必要です。
事業用の借入や不動産ローンなどの借金、未払税や保険料等の負債はすべて相続の対象になります。借金については法定相続分に応じて相続されるので、法定相続人である以上は支払いをしなければなりません。自分は会社経営にまったくかかわっていなくても、借金だけ払わねばならないのです。遺産分割協議で「借金は相続しない」と定めても債権者には主張できません。
借金を免れるには、相続放棄が有効です。相続放棄とは、資産も負債も含めて一切の遺産を相続しないことです。相続放棄したらはじめから相続人ではなかったことになるので、借金や負債は相続しません。
ただし、法定相続分とおりにプラスの遺産を受け取れば、そこから負債を全額支払える可能性もあります。安易に相続放棄する前に、遺産の調査をしっかり行いましょう。
4.相続税に要注意
相続が発生して遺産を受け取ると、相続税が発生する可能性があります。特に事業者や資産家は多くの遺産を遺すケースが多いので、相続税も高額になるでしょう。相続税については、相続発生後10か月以内に申告と納税を両方済まさねばなりません。
相続税は現金一括納付が基本となるので、不動産や株式を相続すると納税資金が不足するケースもよくあります。不動産を売却したり株式以外の資産を受け取ったりして、相続税の支払いに充てましょう。
5.迷ったときには弁護士へ相談を
事業経営者や資産家が死亡したときの遺産分割は複雑で、相続人間でトラブルになりがちです。遺言書がない場合はもちろんのこと、遺されていても遺留分トラブルが発生するケースが少なくありません。
問題が発生したら、すぐに弁護士へ相談しましょう。弁護士であれば相手と交渉したり調停、審判、訴訟の代理人として活動したりしてトラブルを最小限度に抑えられます。
京都の益川総合法律事務所では、遺産相続案件に力を入れて取り組んでいますので、お困りの相続人の方はお気軽にご相談ください。

当事務所は、1983年創業の老舗法律事務所です。
遺産分割、遺留分侵害額請求、遺言書作成など、遺産相続案件に強い法律事務所であると自負しております。
お悩みの方は、是非お気軽にお問い合わせ下さい。
内縁の妻や夫、連れ子、離婚した時の子どもに相続権はある?京都の弁護士が解説!
- 内縁の妻には相続権がないのでしょうか?遺産を受け取れないのですか?
- 連れ子は親の遺産を相続できないのですか?相続するにはどうしたら良いでしょうか?
- 離婚した場合、子どもは親の遺産を相続できますか?その場合どのような手続きをとれば良いのでしょうか?
こういったご相談を受けるケースがよくあります。
今回は内縁の夫や妻、連れ子や離婚前の子どもの相続権について、京都の弁護士が解説します。
相続権のない人に相続させる方法や、相続人に相続させたくない方法についてもご説明しますので、お悩みの方はぜひ参考にしてみてください。
1.内縁の夫や妻の相続権
まずは内縁の夫や妻に相続権が認められるのか、みていきましょう。
1-1.内縁関係とは
内縁関係とは、婚姻届を提出していない事実上の夫婦関係を意味します。
婚姻届を提出していないので、夫婦であっても名字も戸籍も異なります。
ただし婚姻して夫婦共同生活をする意思を持ち、実際に夫婦として生活している実態があるので、一定程度までは法律上の「夫婦」としての保護を受けます。
一方、相続に関しては、内縁の夫婦に権利が認められません。
内縁関係の場合、パートナーが死亡しても一切遺産相続ができないのです。たとえばパートナーに子どもがいると、遺産はすべて子どもに相続されてしまいます。
内縁の配偶者は家も預貯金も相続できず、家を退去しなければならない可能性もあります。
1-2.内縁の夫や妻へ相続させる方法
内縁のパートナーへ相続させるには、「遺言書」を作成しましょう。
遺言書があれば、相続権のない人への「遺贈」ができるからです。たとえば自宅不動産や預貯金などを内縁の夫や妻へ遺贈しておけば、他に相続人がいても内縁の配偶者へ一定の遺産を遺せます。
ただし、子どもなどの相続人には「遺留分」が認められます。
すべての遺産を内縁の配偶者へ遺贈すると、子どもから内縁の配偶者へ「遺留分侵害額請求」が行われてトラブルになってしまうリスクも生じます。
内縁のパートナーへ財産を遺言によって遺贈する場合、子どもなどの遺留分権利者にも一定の資産を相続させる内容にするのが良いでしょう。
2.連れ子の相続権
次に「連れ子」の相続権についてご説明します。連れ子とは、結婚相手の前の配偶者との間の子どもを意味します。
例えば、AさんがBさんと結婚するとき、Bさんが前の夫との子どもの親権者になっているとしましょう。この場合、AさんにとってBさんの子どもは連れ子です。
連れ子は自分と直接の血のつながりはないけれど、結婚相手が親権者となっているので一緒に暮らすようになり、自分の子どものように可愛がる方も多数います。
ただし、連れ子には基本的に相続権がありません。あくまで結婚相手の子どもであり、自分とは親子関係がないからです。何の対応もしなければ連れ子に遺産を受け継がせることができません。
結婚後に実子ができていれば、実子にすべての財産が引き継がれてしまい、連れ子が不公平と感じる可能性もあります。
連れ子へ相続させる方法
連れ子へ遺産を相続させる方法は以下の2つです。
■養子縁組をする
連れ子と養子縁組をすると、連れ子とも法律上の親子関係ができます。すると連れ子は「子ども」として第一順位の優先的な遺産相続権を取得します。
実子がいる場合でも実子と同様の遺産相続権を取得できるので、公平に遺産相続できるでしょう。
この場合、実子と養子が話し合って遺産分割の方法を決定する必要があります。
■遺言書を作成する
2つ目の方法は遺言です。たとえば実子がいる場合でも、連れ子と実子に同等の遺産を遺す内容の遺言をしておけば不満は生じにくいでしょう。
実子と連れ子の取得割合を指定したり、特定の遺産を遺贈したりもできます。
3.離婚前の子どもの相続権
ご相談の多い3パターン目として、離婚前の子どもの相続権についてもみておきましょう。
離婚前の子どもとは、前婚の配偶者との間の子どもです。
離婚して親権者にならなかった場合、子どもとは没交渉となるケースもあります。そんなときでも子どもには相続権が認められるのでしょうか?
法律的に、婚姻時に生まれた子どもには基本的に相続権が認められます。その後に親が離婚したとしても子どもは相続権を失いません。特別な手続きを経なくても、親が死亡したら子どもは相続人になります。
親権者にならなかった親が再婚していたら、離婚前の子どもは親の新しい家族(再婚相手や子どもなど)と遺産分割協議を行って遺産分割方法を決定しなければなりません。
■離婚前の子どもに相続させない方法
離婚前の子どもに相続させたくない場合、やはり遺言書が役立ちます。
遺言で「離婚前の子どもには相続させない」「遺産はすべて現在の家族へ相続させる」旨の内容を指定しておけば、離婚前の子どもは相続できません。
ただし、遺留分を侵害すると遺留分侵害額請求が起こる可能性もあるので、一定の遺産は相続させるのが良いでしょう。
4.最後に
京都の益川総合法律事務所では遺産相続のサポートに力を入れて取り組んでいます。お悩みごとがありましたら、お気軽にご相談ください。

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結婚していない人や子どもがいない夫婦の相続について
結婚していない方や子どもがいないご夫婦の場合、特に相続対策をしておく必要性が高くなります。
例えば、子どものいないご夫婦の場合、一方が死亡すると配偶者と親や兄弟姉妹が遺産分割トラブルに巻き込まれるケースが少なくありません。
今回は結婚していない方、子どものいないご夫婦の相続対策方法について、京都の弁護士が解説します。ぜひ参考にしてみてください。
1.結婚していない人の相続
まずは、結婚しておらず子どもがいない方の相続についてみていきましょう。
1-1.結婚していない人の相続人
一度も結婚したことがなく子どものいない方の場合、以下の人が優先的に遺産を相続します。
①親や祖父母などの直系尊属
法律上、第1順位の相続人は子どもですが、子どもがいないので第2順位の親が相続人となります。親が死亡していて祖父母が存命の場合には祖父母が相続します。祖父母も死亡していて曽祖父母がいれば曽祖父母が相続人になります。
このように、親や祖父母などの「直接、上に遡っていく親族」を「直系尊属」と言います。
②兄弟姉妹または甥姪
親や祖父母などの直系尊属がいない場合、第3順位の兄弟姉妹が相続人になります。
兄弟姉妹が先に死亡していて、その子どもである甥姪がいる場合には、甥姪が代襲相続人として相続します。
なお、甥姪の子どもには相続権がありません。
③親も兄弟姉妹もいない場合には国庫に帰属
親も兄弟姉妹もおらず「相続人がいない」ケースでは、遺産は最終的に国のものとなります。
1-2.結婚していない人の相続対策
①遺言書を作成する
結婚していない方が相続に備えるには、遺言書が必須です。遺言書がないと、ほとんど交流のなかった甥姪などに相続されてしまうケースが少なくありません。
遺言書を作成すれば、自分の希望通りに遺産分割方法を指定できますし、相続権のない人にも遺贈できます。希望を叶えやすく遺産分割トラブルも防止できるメリットがあります。
②任意後見契約を利用する
子どものいない方の場合、老後に認知症になったときの財産管理も心配でしょう。
この点については、信頼できる専門家と任意後見契約を締結されるようおすすめします。
任意後見契約を締結しておけば、自分で財産管理できなくなったときに後見人が適切に管理してくれるので安心です。
当事務所の弁護士も任意後見人への就任を承っていますので、お気軽にご相談ください。
2.子どものいないご夫婦の相続
次に子どものいないご夫婦の場合の相続についてみていきましょう。
2-1.相続人になる人
①配偶者は常に相続人になる
配偶者は常に相続人になります。親族が配偶者しかいなければ、配偶者が全部の遺産を相続できます。
一方、親や兄弟姉妹が生きていれば、配偶者と親や兄弟姉妹の共同相続となります。この場合、遺産分割トラブルが起こりやすいので対応に注意が必要です。
②親などの直系尊属
死亡した人の親や祖父母などの直系尊属が生きていれば配偶者と親や祖父母などが共同相続人となります。この場合の法定相続分は、配偶者が3分の2、親や祖父母などが3分の1です。
③兄弟姉妹と甥姪
親や祖父母などの直系尊属はいないけれども兄弟姉妹や甥姪がいる場合、配偶者と兄弟姉妹(甥姪)が共同相続人となります。
この場合の法定相続分は、配偶者が4分の3、兄弟姉妹や甥姪が4分の1となります。
2-2.子どものいないご夫婦の相続では遺産分割トラブルが多い
子どものいないご夫婦の相続では、「配偶者と親」「配偶者と兄弟姉妹」が共同相続人となるケースが多々あります。
この場合、配偶者と親や兄弟姉妹が遺産分割協議を進めなければなりません。両者の仲が良くなければ意見が合わず、トラブルになる可能性があります。
子どもがいないご夫婦の場合にも、遺言書によって相続対策しておく必要性が極めて高いといえるでしょう。
たとえば、配偶者にすべての遺産を相続させる内容の遺言書があれば、配偶者は親や兄弟姉妹と遺産分割協議をする必要がありません。相続トラブルの防止に役立ちます。
ただし、親や祖父母などの直系尊属には「遺留分」が認められます。遺言や贈与によって遺留分を侵害すると遺留分侵害額請求が起こってかえってトラブルのもとになるケースが少なくありません。
親や祖父母のいる方の場合、そういった相続人へ遺留分相当額を相続させる内容の遺言書にしておくのが得策です。
なお、兄弟姉妹や甥姪には遺留分がありません。配偶者と兄弟姉妹が法定相続人になるケースでは、すべての遺産を配偶者へ遺しても大きな問題はないでしょう。
3.相続人の立場になったら弁護士までご相談を
結婚していないおひとりさまであっても法定相続人がいるケースが少なくありません。
子どものいないご夫婦の場合、パートナーが死亡して突然義理の親や義理の兄弟姉妹と遺産分割協議を行わねばならなくなってトラブルに巻き込まれるケースが多々あります。
相続人になって困ったときには、弁護士までご相談ください。親身になってアドバイスさせていただきますし、遺産分割協議の代理人なども努めさせていただきます。
京都の益川総合法律事務所では遺産相続に力を入れていますので、まずはお気軽にご相談ください。

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無償で借りている不動産(使用借権)の相続について
被相続人が無償で不動産を借りていた場合、不動産を使用する権利は相続人へ引き継がれるのでしょうか?
不動産などの「物」を無償で借りる契約を「使用貸借」といいます。使用貸借の場合、賃貸借と違って借主の地位は基本的に相続対象になりません。
ただし、一定のケースでは使用貸借の権利も相続人が引き継げます。
今回は、無償で借りている不動産(使用借権)の相続について、京都の弁護士が解説します。
1.使用貸借とは
使用貸借とは、借主が無償で物を使用させてもらう契約です。
たとえば、不動産を無償で借りて居住している場合などが、典型的な使用貸借契約となります。
使用貸借契約の最大の特徴は「無償」となる点です。
貸主と借主の人間関係が重視されるため、借主の地位については「一身専属的」なものと考えられています。
2.使用貸借と賃貸借の違い
使用貸借も賃貸借も、どちらも「他人の物を利用させてもらう契約」です。
両者の違いはどういったところにあるのでしょうか?
最大の違いは有償か無償か
使用貸借と賃貸借の最大の違いは「有償契約」か「無償契約」かという点です。
無償であれば使用貸借契約となり、有償なら賃貸借契約になります。
また、使用貸借の場合、借主の地位は一身専属的となりますが、賃貸借契約の場合には一身専属的ではありません。
解約申入れについての制限も異なります。賃貸借契約の場合、賃借人は強く保護されるので、きちんと賃料を払うなどしていれば契約を解除されることはありません。また、契約期間が終了しても更新が原則となります。
使用貸借の場合、借主はさほど強く保護されず、期間や目的が定められていない場合には、貸主は任意のタイミングで解約を申し入れることができます。期間が満了したときの更新拒絶に正当事由も要りません。
3.使用貸借は相続の対象にならないのが原則
物件を無償で利用していた被相続人が死亡した場合、相続人は「使用貸借の借主の地位」を引き継げるのでしょうか?
法律上、原則として使用借権は相続対象になりません。
使用貸借の場合、貸主と借主との間に人間関係があるのが通常であり、借主の地位は一身専属的と考えられるからです。
よって、相続人は使用貸借の借主の地位を引き継げないのが原則です。
相続発生とともに契約が終了するので、貸主が借主の相続人へ退去を求めてきたら、相続人としては退去に応じざるを得ません。
4.例外的に使用貸借が相続の対象となるケース
ただし、以下のような場合、使用貸借の借主の地位が例外的に相続対象になり得ます。
4-1.当事者間の合理的な意思解釈
まずは「契約当事者間の合理的な意思解釈により、使用貸借契約を相続人へ引き継ぐべきケース」が考えられます。
たとえば、建物所有を目的とする土地の使用貸借契約の場合、借主が死亡したからといって建物を収去して明け渡さねばならないとすると経済的損失も大きくなるでしょう。一般的には、建物使用や収益の必要性がある限り、底地の使用貸借を認めるのが当事者の考え方に沿うと考えられます。
そこで「借主が死亡しても使用収益の必要性が失われない」として、借主の地位や権利の相続が認められると考えられています(東京地判昭和56年3月12日、東京高判平成13年4月18日、最判平成8年12月17日など)。
建物所有目的の使用貸借権の相続を認めた裁判例(東京地裁平成5年9月14日)
裁判例の一部を抜粋します。
「土地に関する使用貸借契約がその敷地上の建物を所有することを目的としている場合には、当事者間の個人的要素以上に敷地上の建物所有の目的が重視されるべきであって、特段の事情がない限り、建物所有の用途にしたがってその使用を終えたときに、その返還の時期が到来するものと解するのが相当であるから、借主が死亡したとしても、土地に関する使用貸借契約が当然に終了することにならないというべきである。」
このように、建物所有目的の土地の使用貸借については、基本的に借主の権利が相続人へ引き継がれると考えてよいでしょう。
4-2.当事者間に別段の定めがある場合
次に、当事者間で別途定めをした場合にも相続人は使用借権を引き継げます。
「借主の死亡によって使用貸借契約が終了する」という民法597条の規定は、任意規定だからです。
使用貸借契約書を作成して「借主の死亡時には相続人が借主の地位を引き継ぐ(相続する)」「借主の相続発生時には貸主は借主の相続人に引き続きの物件使用を認める」などと記載されていれば、相続人は引き続いて物件を利用できると考えましょう。
4-3.明示や黙示の承諾がある場合
借主が死亡したあとに相続人が引き続いて対象物を使用し続けており、貸主がはっきり使用を認めた場合には明示の承諾があったと捉えられます。
明示的に承諾しなくても、相続人によって使用されている事実を知りながら特段異議を述べなかった場合には黙示の承諾があったと捉えられる可能性があります。
こういった状況下においても、使用貸借契約が継続する余地があるでしょう。
5.最後に
使用貸借契約や賃貸借契約の相続が発生すると、当事者の方が対処方法に迷われるケースが多々あります。法律的に正しい対応をするために弁護士によるアドバイスやサポートを受けましょう。
京都で相続人になった方がおられましたら、お気軽に益川総合法律事務所の弁護士までご相談ください。

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借地権や借家権の相続
「親が土地や家を借りているのですが、このような借地権や借家権も相続の対象になるのでしょうか?」
といったご相談を受けるケースがよくあります。
借地権や借家権などの権利も相続対象になります。相続が発生したからといって退去を要求されることもありません。ただし、相続人は継続して賃料を払う義務を負います。
今回は、借地権や借家権の相続方法について、京都の弁護士が解説しますので、被相続人が賃貸物件を利用していた場合にはぜひ参考にしてみてください。
1.賃借人の地位は相続される
被相続人が土地や家を借りていた場合、死亡すると賃借人の地位は相続人に引き継がれます。
賃借権も一種の「財産権」と評価されるからです。賃借権は、被相続人に一身専属的な権利ではないので、相続対象となります。
相続人が1人であればその相続人が権利のすべてを相続しますが、相続人が複数いる場合には「準共有」となると考えられています。
つまり、相続人らは賃借権を全員で共有することになる、という意味です。
2.物件から退去する必要はない
賃貸借契約では、無断転貸や賃借権の無断譲渡が禁止されます。
こういった行為があると、大家や地主における賃借人への信頼が裏切られるので、大家や地主の方から賃貸借契約の解除が可能です。
相続が発生したときにも賃借人が入れ替わるので、大家や地主は退去請求できるのでしょうか?
結論的に、相続が発生しても大家や地主は退去請求できません。相続によって権利者が変わるのは法律上当然のことであり、無断譲渡や転貸が行われた場合とは事情を異にするためです。賃借人側が大家や地主を裏切る背信行為を行ったわけでもありません。
よって、大家や地主には賃貸借契約を解除する権利が認められず、退去請求も認められません。
承諾料も請求されない
同様の理由により、法律上、大家や地主は相続人へ「(相続の)承諾料」の請求もできません。賃借権の承継に大家や地主による承諾は不要だからです。
万一、大家や地主が退去請求や承諾料の支払い請求をしてきても、相続人の立場として応じる必要はありません。
3.地代や家賃の負担者、支払い方法について
賃借権の相続が発生しても、相続人が退去する必要はありません。
ただし、賃料をきちんと支払わないと、大家や地主から賃貸借契約を解除される可能性があります。賃料不払いは重大な背信行為となり、契約が解除されれば相続人らは物件を明け渡さなければなりません。
では、地代や家賃は誰がどのように支払えば良いのでしょうか?
3-1.相続人が1人の場合
相続人が1人の場合には、その相続人が賃料全額を支払う義務を負います。
支払いを3か月分程度滞納すると、賃貸人側から契約を解除されるリスクが高くなるので、そういったことのないようにきちんと支払いをしましょう。
3-2.相続人が複数の場合
相続人が複数の場合、それぞれが法定相続分に応じて賃借料を負担しなければなりません。
それぞれの相続人が、大家や地主へバラバラに賃借料を払う方法でも支払いとしては有効です。
ただ、それでは賃貸人としても回収や確認に手間がかかってしまうでしょう。そこで、相続人側が代表者を定めてまとめて賃借料を払うケースもよくあります。この場合には、後に相続人同士で賃料についての清算をしなければなりません。
また、3か月分程度賃料を滞納すると契約を解除される可能性があります。相続人が複数の場合、まとまって対応するのに手間がかかって支払い遅延が起こるケースもみられるので、くれぐれもきちんと支払いをしましょう。
4.賃貸借契約を解除したい場合の対処方法
被相続人が賃貸物件を借りていた場合でも、相続人が物件を使わないなら「契約を解除したい」と考えるでしょう。
相続人の方から、賃貸借契約の解除や解約を行うことも、もちろん可能です。
ただ、賃借人が契約を解除する際には、原状回復しなければなりません。原状回復義務も相続人全員が負うので、かかった費用は法定相続分に応じて清算する必要があります。敷金が返ってきた場合には、法定相続分に応じて分配しましょう。
5.遺産分割協議が済むと単独で対応できる
以上のように、賃借権が相続されたときには「法定相続分」によって賃料支払義務などの対応を行うのが原則です。
ただし、遺産分割協議が済んで単独の相続人が相続することに決まったら、その相続人が単独で賃料を支払います。契約解除の意思表示なども単独の相続人が1人でできるようになります。
遺産分割協議で賃借権を相続することになったら、早めに大家さんへ通知しましょう。
6.相続税が発生する可能性もある
賃借権を相続した場合、相続税がかかる可能性もあります。
賃借権も一種の財産権であり、遺産としての価値があるからです。
ただし、相続税が発生するのは、遺産全体の評価額が相続税の基礎控除を超える場合に限られます。
相続税の基礎控除額=3000万円+600万円×法定相続人数
まずは、遺産全体の評価を行い、基礎控除を超えるようであれば相続税の申告について税理士に相談してみるようおすすめします。
7.最後に
京都の益川総合法律事務所では遺産分割のサポートに力を入れています。
相続に詳しい税理士とも提携しており、相続税についてもワンストップで解決できます。
もし、相続に関してお困りであれば、お気軽にご相談ください。

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多額の生前贈与を受けている相続人がいる場合の対処方法
高額な生前贈与を受けた相続人がいる場合、単純に法定相続分に従って遺産分割するだけでは不公平になってしまいます。
公平に分けるには、贈与を受けた相続人の相続分を減らすため、「特別受益持戻計算」をしなければなりません。
生前贈与によって遺産が減って十分な財産を受け取れない場合には、「遺留分侵害額請求」もできる可能性があります。
今回は、多額の生前贈与を受けた相続人がいる場合の対処方法を、遺産分割と遺留分侵害額請求の2パターンに分けて、京都の弁護士がお伝えします。
1.特別受益の持戻計算をする
相続人へ多額の生前贈与が行われると、受贈者には「特別受益」が発生する可能性があります。
特別受益とは、相続人が遺言や贈与によって受ける特別な利益です。
贈与の場合、以下のものが特別受益となります。
- 婚姻や養子縁組のための贈与
- 生計の資本としての贈与
1-1.特別受益となる生前贈与の具体例
よくある生前贈与による特別受益の例をみてみましょう。
- 結婚するときに親から持参金をもらった
- 結婚するときにパートナーと住む家の資金を出してもらった
- 養子縁組するときに居住用の不動産を用意してもらった
- 事業を起こすときに資金を出してもらった
- 留学費用などの高額な学費を出してもらった
- 親から高級車を買い与えてもらった
但し、上記がすべて特別受益になるとは限りません。
例えば、学費を出してもらったケースでは、ご家族の経済状況や他の相続人との取り扱いの差なども考慮して特別受益となるかどうかが決定されます。
特別受益に該当するかどうか判断に迷ったら弁護士へ相談しましょう。
1-2.特別受益の持戻計算とは
特別受益を受けた相続人がいる場合、特別受益の持戻計算を適用して遺産分割を公平に行うことができます。
特別受益の持戻計算とは、受益者の受けた特別受益の分、受益者の相続分を減らすための計算方法です。
持戻計算をすれば、受益者の受け取り分が減って他の相続人の受け取り分が増え、最終的に公平に遺産分割ができます。
1-3.特別受益の持戻計算の具体例
遺産の価額は4,300万円、子ども3人(長男、次男、長女)が相続人となり、長男へ2,000万円の生前贈与が行われていた。
この場合、遺産である4,300万円に長男へ贈与された2,000万円を足します。
すると全体は6,300万円となります。これを法定相続分(3分の1)に応じて割り付け、それぞれの取得分は2,100万円ずつとなります。
但し、長男はすでに2,000万円受け取っているので、100万円しか受け取れません。次男と長女はそれぞれ2,100万円ずつ相続できます。
1-4.特別受益の持戻計算は免除されている可能性も
被相続人は、自分の意思で特別受益の持戻計算を免除できます。
遺言書に「特別受益の持戻計算はしない」と書かれていたら、他の相続人の希望があっても持戻計算を適用できません。
また、20年以上連れ添った配偶者へ居住用不動産が贈与された場合には、被相続人による持戻計算免除意思が推定されます。
1-5.特別受益の持戻計算を適用する方法
特別受益の持戻計算を適用するには、遺産分割協議の場で他の相続人が特別受益を主張する必要があります。
何も言わなければ、法定相続分に応じて遺産分割される可能性が高いと考えましょう。
受贈者が特別受益の存在を否定すると、話し合い(協議)では解決するのは難しくなります。
その場合、家庭裁判所で遺産分割調停や審判を申し立てなければなりません。
審判になると、裁判所が特別受益の有無や金額を判断し、適切な遺産分割の方法を決定します。
2.遺留分侵害額請求をする
生前贈与の額が大きくなると、特別受益の持戻計算を行っても相続人が十分な遺産を受け取れない可能性があります。例えば、全財産を生前贈与されてしまったら、他の相続人は一切遺産を受け取れません。
そのような場合、相続人が「遺留分侵害額請求」により遺産に相当するお金を請求できる可能性があります。
2-1.遺留分の割合
子どもや配偶者が相続人に含まれる場合、遺留分割合は遺産全体の2分の1です。
親や祖父母などの直系尊属のみが相続人になる場合、遺留分割合は遺産全体の3分の1になります。
遺留分権利者が複数いる場合、上記の割合をそれぞれの相続人の法定相続分に応じて分配します。
2-2.遺留分侵害額請求の効果
遺留分侵害額請求をすると、侵害された遺留分を「お金」として取り戻せます。
例えば、3人の子どもが相続人になる場合で遺産額が600万円、亡くなる1年前に長男へ3,000万円の生前贈与が行われていたとしましょう。
この場合、次男と長女にはそれぞれ6分の1の遺留分が認められます(遺留分割合2分の1×各人の法定相続分3分の1)。
そこで長男に対し、3600万円×6分の1=600万円の遺留分侵害額請求権が認められ、次男と長女はそれぞれ長男に対し、600万円の支払いを求めることが可能です。
但し、遺産額の600万円を次男と長女で分割した場合には、次男と長女がそれぞれ300万円ずつ取得していることになるため、長男に対しては、300万円の支払いを求めることができるにとどまります。
2-3.遺留分侵害額請求の方法と期限
遺留分侵害額請求を行使したい場合、それぞれの遺留分権利者が侵害者に対し、任意の方法で請求すれば足ります。
口頭やメールなどでもかまいませんが、内容証明郵便を使うとより大きなプレッシャーをかけられるでしょう。
但し、相続開始と遺留分侵害を知ってから1年以内に請求しなければなりません。時効を確実に止めるには内容証明郵便が最適です。
弁護士を交渉代理に立てるとスムーズに支払いを受けられるケースが多いので、もめてしまいそうなケースではぜひご検討ください。
3.最後に
京都の益川総合法律事務所では、相続人の方々へのサポートに力を入れています。不公平な生前贈与に納得できない方は、お気軽にご相談ください。

当事務所は、1983年創業の老舗法律事務所です。
遺産分割、遺留分侵害額請求、遺言書作成など、遺産相続案件に強い法律事務所であると自負しております。
お悩みの方は、是非お気軽にお問い合わせ下さい。
相続不動産の評価方法や基準時について
不動産を相続したら「評価」をしなければなりません。
現金や預金と異なり不動産の価値は日々変動するので、「いつの時点の価値」を基準とすべきかが問題になります。
また相続税を計算する際にも時価とは異なる特殊な計算方法が適用されるので、正しい評価方法を理解する必要があります。
今回は相続不動産の評価方法について、京都の弁護士が解説します。土地や建物、マンションなどの不動産を相続された方はぜひ参考にしてみてください。
1.不動産を評価する「タイミング(時点)」について
不動産の価値は日々変動するので、遺産分割や特別受益となる生前贈与があった場合などには「いつの時点の評価額を基準にすべきか」決めなければなりません。
法律実務では、以下の時点における評価額を採用すべきと考えられています。
- 遺産分割の場合は遺産分割時
- 特別受益の場合には相続開始時
- 遺留分侵害額請求の場合には相続開始時
また税制上、相続時精算課税制度が適用される場合には「贈与時」の評価額が適用されます。
それぞれについて、解説します。
2.遺産分割の場合は遺産分割時
遺産分割が行われる場合には、遺産分割時の「時価」を基準に不動産を評価します。
遺産分割時とは、相続人たちが実際に話し合いを行って遺産分割協議や調停をするタイミングです。そのときの「不動産の時価」を調べて不動産の価額とします。
時価は不動産会社へ無料の査定を申し込めば提示してもらえます。
また、法律実務では、固定資産評価額を基に不動産の時価を判断することも多いです。
具体的には、一般的に土地の固定資産評価額は時価の7割程度とされているため、土地については固定資産評価額に7分の10を掛けた金額を時価とします。対して、建物の時価は固定資産評価額を基準に判断することが多い印象です。
相続人間で意見が割れる場合には不動産鑑定士に依頼して鑑定をしなければならない可能性もあります。
3.特別受益の評価は相続開始時
特別受益がある場合にも不動産の評価が問題となります。
たとえば不動産が生前贈与された場合、贈与時なのか相続開始時なのか特別受益の持戻計算を適用する遺産分割時なのか、3パターンの評価時が考えられるでしょう。
法律実務では「相続開始時の時価」が採用されています。
つまり「被相続人が死亡した時点」における不動産の時価が特別受益で贈与された不動産の評価額となります。
遺産分割の対象となる他の不動産は「遺産分割時の時価」で評価されるので、贈与された財産とは評価時が異なります。
4.遺留分侵害額請求の評価時点は相続開始時
遺留分侵害額請求をするときにも不動産を評価しなければなりません。
遺留分侵害額請求とは、配偶者、子どもや親などの相続人が遺留分を侵害されたときに最低限の遺産保障分である遺留分を取り戻すための手続きです。
遺留分侵害額請求における遺産の評価基準時は「相続開始時」となります。
遺留分侵害額請求を行うタイミングではないので、混乱しないよう注意しましょう。
5.相続時精算課税制度における不動産評価基準時
相続時精算課税制度を適用する際にも不動産の評価方法が問題となります。
相続時精算課税制度とは、親や祖父母などの直系尊属が子どもや孫などの直系卑属へ資産を生前贈与するときに最大2500万円分が非課税となる制度です。
贈与された資産は相続発生時に相続財産に組み入れられてまとめて相続税の課税対象になります。そこで、贈与された不動産がいつのタイミングで評価されるのか、贈与時か相続発生時なのか定めなければなりません。
相続時精算課税制度を適用する場合、生前贈与された資産は「贈与時」のタイミングで評価するので、正しく把握しておきましょう。
6.相続税における不動産評価方法
相続税を計算する際には、時価とは異なる特殊な評価方法を適用します。
6-1.土地の場合
土地の場合には基本的に「相続税路線価」を使って評価します。相続時路線価とは、道路に面した宅地の1平方メートルあたりの単価をいいます。
路線価がわかれば、路線価に土地の面積を掛け算すると不動産の評価額を求められます。
相続税路線価の設定のない場所では、土地の固定資産評価額に一定の倍率を掛け算して評価額を求める「評価倍率」という方法を用います。
相続税路線価や評価倍率を適用すると、不動産の価額は時価の約80%程度になります。
各地の路線価や評価倍率は、下記の国税庁のサイトで公表されています。
https://www.rosenka.nta.go.jp/
6-2.建物の場合
建物の場合には「固定資産税評価額」を用いて評価します。
調べたいときには役所へ行って固定資産評価証明書を申請しましょう。
6-3.マンションの場合
マンションの場合にも土地や建物と基本的な考え方は同じです。
マンションの建物部分(専有部分)については「固定資産評価額」で評価し、敷地権の部分については「相続税路線価」で計算し、双方を合算します。
以上のとおり、現預金と不動産を比較すると、不動産の方が評価額は下がります。
この性質を利用し、生前に現預金を使って不動産を購入すると、遺産の評価額を下げて節税する方が多数おられます。
7.最後に
京都の益川総合法律事務所では遺産相続された方へのサポートに注力しています。
不動産の評価方法に迷われた方、遺産分割や遺留分侵害額請求を行う必要のある方はお気軽にご相談ください。

当事務所は、1983年創業の老舗法律事務所です。
遺産分割、遺留分侵害額請求、遺言書作成など、遺産相続案件に強い法律事務所であると自負しております。
お悩みの方は、是非お気軽にお問い合わせ下さい。
甥や姪が相続人になる場合と遺産相続の注意点
相続が発生したとき、甥や姪が相続人になるケースがあります。
甥姪の父母である被相続得人の兄弟姉妹が、被相続人より先に死亡した場合です。
今回は、甥姪が相続人になる際の遺産相続における注意点を、京都の弁護士が解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
1.甥姪は第3順位の法定相続人
甥姪が相続人になるのはどういったケースなのでしょうか?
それは、甥姪の父や母である「被相続人の兄弟姉妹」が、被相続人より先に死亡しているケースです。
兄弟姉妹は第3順位の法定相続人になるので、被相続人に子どもや親がいない場合、兄弟姉妹が相続権を取得します。
ただ、親である兄弟姉妹が先に死亡しているケースもあるでしょう。その場合には、
「代襲相続人」として甥姪が遺産を相続するのです。
1-1.代襲相続とは
代襲相続とは、相続人が被相続人より先に死亡している場合において、相続人の子どもが相続することを言います。
例えば、子どもの子どもである「孫」や兄弟姉妹の子どもである「甥姪」が該当します。
被相続人より子どもが先に死亡していれば孫が代襲相続人になりますし、被相続人より兄弟姉妹が先に死亡していれば甥姪が代襲相続人になります。
代襲相続人は被代襲者の地位をそのまま引き継ぐので、親である兄弟姉妹が相続権を取得していれば、甥姪は兄弟姉妹と同じだけの法定相続分を引き継ぎます。
1-2.甥姪が複数いる場合
甥姪が複数いる場合には、兄弟姉妹の法定相続分を「甥姪の頭数」によって分配します。
例えば、被相続人の弟が3分の1の法定相続分を有しており、被相続人より先に死亡したとしましょう。弟には2人の子ども(被相続人の甥姪)があるとします。
この場合、2人の甥姪の法定相続分は、3分の1×2分の1=6分の1ずつとなります。
1-3.甥姪の子どもは代襲相続しない
甥姪も被相続人より先に死亡していた場合、甥姪の子どもは代襲相続できません。
兄弟姉妹などの本流ではない血族を「傍系血族」といいますが、傍系の場合には代襲相続は一代限りとされているからです。
甥姪が被相続人より先に死亡していた場合だけではなく、相続欠格者となった場合や相続人として廃除された場合にも甥姪の子どもは再代襲相続できません。
2.配偶者がいる場合の甥姪の法定相続分
相続人が甥姪だけであれば、それぞれの法定相続分は人数で等分になるだけです。
一方、配偶者があると法定相続分が異なってきます。
配偶者と甥姪が相続人になる場合、配偶者に4分の3、甥姪に4分の1の相続分が認められます。
法定相続分の求め方が分かりづらい場合、お気軽に弁護士までご相談ください。
3.甥姪には遺留分がない
甥姪が相続人になることが予想される場合、被相続人が遺言書を作成して「甥姪には相続させない」と書き残している事例もよくあります。この場合、甥名は遺産を相続できません。
また、甥姪には遺留分も認められないので注意が必要です。
遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人に認められる最低限の遺産取得割合です。
子どもや孫などの相続人であれば「遺留分」が認められるので、不公平な遺言があっても最低限「遺留分」の取り戻しを請求できます。
一方、甥姪には遺留分が認められないので、遺言で「遺産を相続させない」と書かれてしまったら何も請求できません。
4.他の相続人との間で遺産分割がまとまらない場合の対処方法
甥姪が代襲相続すると、他の相続人との間で遺産分割協議がまとまらないケースがよくあります。
甥姪と他の相続人(配偶者や叔父叔母)はふだんからあまり交流がないケースも多く、他の相続人からすると「甥姪に遺産を分けたくない」と考える傾向があるためです。
遺産分割協議でもめてしまったときには、家庭裁判所で遺産分割調停を申し立てることになります。
調停では、調停委員が間に入って話し合いを調整してくれます。
5.甥姪は借金に気づかないケースも多い
被相続人が借金を残している場合、甥姪が気づかないケースも多いので注意が必要です。
先順位者である子どもや親が相続放棄してしまったために債権者が甥姪へ借金の支払いを求めてくる事例が少なくありません。
借金を引き継ぎたくない場合には、相続放棄や限定承認を行う必要があります。
ただし、これらの手続きには「自分のために相続があったことを知ってから3か月以内」という期限があります。
債権者から連絡が来て借金を相続したことを知ったら、早めに家庭裁判所で相続放棄や限定承認の申述をしましょう。
6.最後に
京都の益川総合法律事務所は、相続案件に積極的に取り組んでいます。
相続問題でお困りの方は、お気軽にご相談ください。

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遺産分割、遺留分侵害額請求、遺言書作成など、遺産相続案件に強い法律事務所であると自負しております。
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寄与分とは
相続人の中に被相続人を介護するなどして「財産維持に特別な貢献をした」人がいる場合、「寄与分」が認められます。
寄与分のある相続人は、他の相続人よりも多くの遺産を受け取れる可能性があります。
ただし、介護をしたからといって必ず寄与分が認められるわけではありません。
今回は寄与分とはなにか、特別寄与料との違い、どういったケースで認められるのかなどを、京都の弁護士がわかりやすく解説します。
1.寄与分とは
寄与分とは、被相続人の財産の形成や維持に特別な貢献をした相続人に認められる、上乗せの相続分を意味します。
たとえば、被相続人を献身的に介護して介護費用の支出を抑えた相続人、被相続人の事業を無給で手伝って財産形成に貢献した相続人などに寄与分が認められます。
被相続人の財産形成や維持に貢献した相続人がいる場合、他の相続人と同様に法定相続分通りに遺産分割すると、かえって不公平となってしまうこともあります。
そこで、貢献のある相続人には「寄与分」を認め、他の相続人より多くの遺産を受け取れるようにしているのです。寄与分は、相続人間の実質的な平等を実現するための制度と言われています。
2.寄与分が認められる人や条件
寄与分が認められるのは「被相続人の財産維持や形成に特別の貢献をした相続人」です。
以下で寄与分が認められる人の条件をみていきましょう。
2-1.被相続人の財産維持や形成に貢献
まずは被相続人の財産維持や形成に対し、具体的に貢献しなければなりません。
精神的な励ましなどをしても寄与分は認められません。
2-2.特別の貢献をした
貢献は「特別」でなければなりません。親族として当然の義務の範囲であれば、介護や扶養をしても寄与分は認められないと考えましょう。
2-3.相続人
寄与分が認められるのは相続人のみです。相続人以外の親族が献身的に介護しても寄与分は認められません。
ただし2019年7月1日、法改正によって一定範囲の親族には「特別寄与料」が認められるようになりました。たとえば長男の嫁や孫などが被相続人を献身的に介護した場合、相続人に対して「特別寄与料」というお金を請求できる可能性があります。
特別寄与料は寄与分とは異なりますが、寄与に応じたリターンを得られるという意味では寄与分に共通した性質を持つといえるでしょう。
3.寄与分の類型
寄与分には以下の4つの類型があります。
3-1.介護や看護を行った
1つ目は、被相続人を介護したり看護したりした相続人の寄与分です。親族として当然なすべき限度を超えて献身的に介護、看護した場合には寄与分が認められます。
たとえば、仕事を辞めて10年以上被相続人を介護し続けた場合などには寄与分が認められる可能性が高いです。
3-2.事業を手伝った
被相続人の事業を無給や薄給で手伝ったケースでも、寄与分が認められます。
たとえば、被相続人が商店を経営している場合、農業や漁業を営んでいる場合などに子どもが無給で10年以上労働力を提供し続けた場合などです。
正当な報酬を受け取っていると特別な寄与とはいえないので寄与分は認められなくなります。
3-3.扶養した、生活費を支援した
生活の面倒を見た場合にも寄与分が認められます。
たとえば、被相続人と同居して扶養したり、毎月生活費を送金し続けたりした場合などです。
ただし、親族には扶養義務があるので、寄与分が認められるには義務の範囲を超えた扶養をしなければなりません。
3-4.財産を管理した
被相続人の財産を適切に管理して維持に貢献した場合にも寄与分が認められる可能性があります。
4.寄与分を主張する方法
相続人の中に寄与分を主張したい人がいる場合、遺産分割の際に「寄与分を認めるべき」と主張しなければなりません。
自分から言わないと他の相続人の方から寄与分を認めるケースは少ないので、寄与分を認めてもらいたければ、寄与分の主張が必要となります。
遺産分割協議の際、相続人全員が寄与分を考慮した遺産分割方法に合意できればその内容に従って遺産を受け取れます。
一方、寄与分を認めない相続人が1人でもいたら、遺産分割協議は成立しません。
その場合に寄与分を主張するのであれば、家庭裁判所で遺産分割や寄与分を求める調停、審判を申し立てる必要があります。
まずは、調停を先に申し立てて、不成立になったときに審判へ移行する例が多数です。審判になると、審判官が寄与分の有無や金額、遺産分割方法を決めるので、反対する相続人がいても寄与分を受け取れる可能性があります。
有利な内容の審判を出してもらうには、具体的にどういった寄与をしたのか、いくらくらいの評価額になるのかなど明らかにしなければなりません。ご自身では適切に対応しにくいでしょうから、弁護士までご相談ください。
5.最後に
京都の益川総合法律事務所は遺産相続案件への対応に力を入れています。
寄与分が認められるかどうか知りたい方、主張したいけれども他の相続人に反対されている方、他の相続人が寄与分を主張してきた方など、お気軽にご相談ください。

当事務所は、1983年創業の老舗法律事務所です。
遺産分割、遺留分侵害額請求、遺言書作成など、遺産相続案件に強い法律事務所であると自負しております。
お悩みの方は、是非お気軽にお問い合わせ下さい。
遺言書の効力、無効になる場合をパターンごとに弁護士が解説
「遺言書にはどのような効力が認められるのでしょうか?」
といったご相談を受けるケースがよくあります。
遺言書を作成すると相続分の指定や相続人以外の人への遺贈など、さまざまな事項を指定できます。相続トラブルを防ぐ効力もあります。
ただし認知症の方が遺言書を作成すると無効になってしまうリスクがあるので、遺言書を作成されるのであれば、元気なうちに早めに作成される方がよいです。
今回は遺言書の効力、無効になるケースや有効な遺言書を作成する方法について、京都の弁護士が解説します。
1.遺言書で指定できること
遺言書にはさまざまな効力があります。
まずは遺言によって何を指定できるのか、代表的な事項をお伝えします。
- 相続分の指定
- 遺産分割方法の指定
- 一定期間における遺産分割の禁止
- 遺贈
- 寄付
- 子どもの認知
- 相続人の廃除や取消し
- 遺言執行者の指定
- 特別受益持戻し計算の免除
- 生命保険受取人の指定や変更
遺言書には相続トラブル予防の効力がある
遺言書には相続トラブルを予防する効力も期待できます。
例えば、遺産分割方法を指定しておけば、相続人が遺産分割協議を行う必要がありません。意見が合わなくて対立してしまうトラブルを防げるでしょう。
遺言執行者を指定しておけばスムーズに遺言内容を実現できるので、遺言書が無視されたり放置されたりするトラブルを防げます。
死後にトラブルを防いでご希望を実現したいなら、遺言書の作成を検討しましょう。
2.遺言書が要式違反で無効になるパターン
遺言書に効力が認められない1つ目のパターンは「要式違反」です。
自筆証書遺言の場合、自分で要式を守った遺言書を作成しなければなりません。
要式を守らない遺言書は無効です。
よくある間違いをみてみましょう。
2-1.自筆していない部分がある
自筆証書遺言は、遺産目録の部分以外すべて自筆しなければなりません。
一部でもパソコンを使ったり代筆をお願いしたりすると無効になります。
2-2.日付を入れない
日付を入れ忘れると無効です。「○月吉日」など、日付を特定しない場合も無効になるので必ず年月日まで記入しましょう。
2-3.署名押印を忘れる
署名押印を忘れると遺言書に効力が認められません。
2-4.加除訂正方法を間違える
遺言書を書き間違えたときの加除訂正方法については、法律によって細かいルールが定められています。
きちんと従わないと無効になってしまうので正しい知識をもって対応しましょう。
3.遺言能力がなくて遺言書が無効になるパターン
遺言書の要式を守っていても「遺言能力が失われた状態で作成した」場合、無効になります。
3-1.遺言能力とは
遺言能力とは、遺言書を作成する意味を理解し、死後に遺言書によってどういった効果が発生するのかわかる能力です。
有効に遺言書を作成するには、遺言能力が必要です。
基本的には15歳以上の人に遺言能力が認められますが(民法961条)、認知症が進行して事理弁識能力が低下すると「遺言能力がない」と判断される可能性があります。
遺言能力のない人が作成した遺言書は無効であり、重度な認知症の方が遺言書を作成しても、効力が認められない可能性が高くなります。
3-2.遺言能力があるかどうかの判断基準
遺言能力があるかどうかについては、以下のような要素によって判断されます。
■医学的な診断、医師の意見
まずは医学的な診断や検査結果が重要な考慮要素となります。
例えば、以下のようなものは判断の指標として重要視されるでしょう。
- 遺言書を作成した当時の診断書、カルテ
- 要介護認定の有無や程度
- 要介護認定時に提出された資料
- 介護施設での記録
- 介護日誌
- 長谷川式スケールの点数
■当時の本人の言動
遺言者本人が作成当時、どういった言動をとっていたかも考慮されます。
例えば、日常的に徘徊や妄想など、異常な行動や言動があれば遺言能力がなかったと判断される可能性が高まります。
判断能力が十分だった頃の行動や言動と、実際の遺言内容との間に大きな剥離がある場合にも、遺言能力が怪しまれる可能性があります。
■遺言書の内容や表現
遺言書の内容や表現そのものも遺言能力の判断の指標になります。
例えば、複数の収益不動産や株式の遺産分割方法を指定するなど、複雑な遺言内容であれば高度な判断能力が必要です。難しい、遺言内容であるにもかかわらず本人の能力に不安があれば、遺言能力がないとされる可能性が高まります。
反対に、少額の預金を特定の相続人に残すだけ、全財産を配偶者に残すだけなどの簡単な内容であれば、遺言能力が認められやすいでしょう。
4.遺言書の効力に疑問がある場合には
「遺言書が無効なのではないか」と考えられる場合、まずは他の相続人や受遺者と話し合って遺言書に従うべきかどうか検討されることになります。全員が納得すれば、遺言書を無視して、遺産分割協議で遺産を分けることも可能となります。
話し合っても合意できないなら、家庭裁判所で遺言無効確認調停を申し立てられることになります。
それでも合意が難しければ、最終的に地方裁判所で遺言無効確認訴訟が提起されます。
5.最後に
遺言書を作成するのであれば、適切な方法で作成する必要があります。
遺言書の有効性を巡ってトラブルが発生すると、熾烈な争いに発展して紛争が長期化するケースも多々あります。
いずれの場合でも、弁護士によるサポートが必要になるので、困ったときには京都の益川総合法律事務所までご相談ください。

当事務所は、1983年創業の老舗法律事務所です。
遺産分割、遺留分侵害額請求、遺言書作成など、遺産相続案件に強い法律事務所であると自負しております。
お悩みの方は、是非お気軽にお問い合わせ下さい。