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遺産分割において寄与分は考慮されにくいのか?
こんにちは。
弁護士の益川教親です。
遺産分割を行う際、ある相続人が、亡くなった方を献身的に介護しているような場合、その相続人から「寄与分」の主張がされることがあります。
遺産分割の際に、この寄与分が考慮される割合はどのくらいなのでしょうか。
肌感覚として、寄与分の主張は中々認められづらいとの印象がありますが、実際の割合については、私自身も調べたことがありません。
そこで、今回は、司法統計データを調べてみましたので、是非参考にしてみてください。
1.寄与分とは
まず、最初に、寄与分の説明を簡単に行います。
寄与分とは、亡くなった方の財産の形成や維持に特別な貢献をした相続人に認められる、上乗せの相続分を意味します。
例えば、ある相続人が亡くなった方を献身的に介護して介護費用の支出を抑えた場合や、亡くなった方の事業を無給で手伝って財産形成に貢献した場合などに寄与分が認められます。
この寄与分の話は、「寄与分とは」という記事で詳しく解説しているので、興味がある方は、是非参考になさって下さい。
2.寄与分が考慮される割合
それでは、遺産分割事件の際に、この寄与分が考慮される割合はどれくらいなのでしょうか?
今回参照したデータは、令和3年に終結した遺産分割事件(遺産分割調停が成立した事件と審判が認容された事件)のうち、寄与分が考慮された割合となります。
結果は、下記の通りです。
■寄与分の考慮の有無(総数6996件)
有り 134件
無し 6862件
考慮割合 1.91%(約2%)
遺産分割事件において、寄与分が考慮される割合は約2%のようです。
遺産分割事件50件のうち、1件しか寄与分が考慮されていません。
寄与分は中々考慮されづらいと思っていましたが、ここまで考慮されていないとは思いませんでした。
というのも、これまでの私の経験上、肌感覚にはなりますが、遺産分割案件を12件ぐらいやれば、1件ぐらいは寄与分が考慮されていた印象があるからです。
3.寄与分が遺産の総額に占める割合
遺産分割事件において寄与分が考慮されたとして、その寄与分は遺産の総額に対して、どのくらいの割合を占めているのでしょうか。
その結果は、下記の通りになります。
■寄与分が遺産の総額に占める割合(総数134件)
10%以下 74件(1位、約55%)
20%以下 19件(2位、約14%)
30%以下 5件(6位、約4%)
50%以下 13件(4位、約10%)
50%を超える 8件(5位、約6%)
不詳 15件(3位、約11%)
上位のように、寄与分が遺産の総額に占める割合は、10%以下や20%以下のものが多いですが、中には50%を超えているものもあるようです。
但し、寄与分が遺産の総額に占める割合が大きい案件は、そもそも遺産の総額が小さいため、高い割合が出ているのだと思われます。
例えば、寄与分が100万円認められたとしても、遺産の総額が1億円であれば、遺産の総額に占める割合は1%になりますし、逆に遺産の総額が200万円であれば、その寄与分が遺産の総額に占める割合が50%となります。
4.最後に
今回は、遺産分割事件において、寄与分が考慮される割合がどれくらいかについて、解説しました。
結論として、寄与分が考慮される割合は、全体の約2%となります。私自身は、かなり低い数字だなと感じましたが、皆様はどのように感じられたでしょうか。
京都の益川総合法律事務所では、遺産相続案件に注力しております。お困りの際には、お気軽にご相談頂ければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
■参考
令和3年 司法統計年報 3家事編

当事務所は、1983年創業の老舗法律事務所です。
遺産分割、遺留分侵害額請求、遺言書作成など、遺産相続案件に強い法律事務所であると自負しております。
お悩みの方は、是非お気軽にお問い合わせ下さい。
相続建物の無償使用が特別受益になるの?
相続人の一人が、被相続人の建物に無償で居住していた場合、他の相続人から、「特別受益」に該当する旨の主張がされることがあります。
被相続人の建物を無償で使用することは、「特別受益」に該当するのでしょうか。
今回は、相続建物の無償使用が「特別受益」に該当するかについて、京都の弁護士が解説します。遺産相続において、相続人の一人が建物を無償使用していることが問題になりそうな方は、是非参考になさって下さい。
1.特別受益とは
まず、前提として、特別受益について、簡単に説明します。
特別受益とは、特定の相続人が遺言によって財産を譲り受けたり、生前に遺産の前渡しとなるような贈与などによって受けた利益のことをいいます。
特別受益を受けた相続人がいる場合、相続人間の公平の観点から、その相続人の遺産からの取り分を減らすことになります。その計算を、「特別受益の持ち戻し計算」といいます。
このように、その相続人が受けた利益が、特別受益に該当する場合には、特別受益の持ち戻し計算が行われて、その相続人の遺産からの取り分が減ることになるのです。
特別受益については、「遺産分割と生前贈与の関係について」という記事で、詳しく解説していますので、興味がある方は是非参考になさって下さい。
2.同居している場合
それでは、相続人の一人が、被相続人の建物に無償で居住していた場合には、かかる無償使用が「特別受益」に該当するのでしょうか?
まずは、被相続人と同居しているケースについて解説します。
こちらの場合には、相続人による建物の無償使用が、「特別受益」に該当することはありません。
なぜなら、被相続人との同居の場合には、相続人は単なる占有補助者にすぎません。相続人に、独立の占有権限があるとは認められず、使用借権(建物を借りる権利)は認められないためです。
この理由については、法的にもややこしいので、参考程度にして頂ければと思います。
3.別居している場合
それでは、被相続人と同居していない場合はどうでしょうか?
こちらの場合にも、一般的には、相続人による建物の無償使用は、「特別受益」に該当しないとされています。
理由としては、下記の通りです。
①建物の無償使用は、被相続人からの恩恵的な要素が強く、遺産の前渡しという性格が薄い
②建物の使用借権(無償で借りる権利)は、第三者に対する対抗力がないため、明け渡しも容易であり、経済的価値がないものと評価できる
③賃料相当額を特別受益とすると、かなり大きな金額となり、遺産の総額と比べても大きくなってしまう
これらの理由により、別居している場合にも、建物の無償使用は「特別受益」に該当しないとされています。
■収益物件を無償で使用していた場合
被相続人がアパートやマンションなどの賃貸不動産を所有していて、その一室を相続人が無償で使用している場合にも、「特別受益」に該当しないのでしょうか?
その相続人がいなければ、その一室も賃貸でき、賃料が取得できたのですから、他の相続人からも、「特別受益」に該当する旨の主張をされることが多いです。
しかし、一般的には、この場合にも、「特別受益」には該当しないとされています。この場合においても、被相続人からの恩恵的な要素が強く、遺産の前渡しと評価することが難しいためです。
4.相続発生後から遺産分割までの賃料請求はできるか?
生前の相続建物の無償使用が「特別受益」に該当しないとしても、相続発生後から遺産分割までの賃料請求は認められるのでしょうか?
生前、被相続人と相続人が同居していた場合については、最高裁判例上、賃料請求が否定されています。これは、「被相続人と同居の相続人の間において、被相続人が死亡し相続が開始した後も、遺産分割により建物の所有関係が最終的に確定するまでの間は、引き続き同居の相続人にこれを無償で使用させる旨の合意があったものと推認される」ためです。
対して、被相続人と相続人が同居していない場合については、どうでしょうか?
この点について、当職の知る限り、最高裁判例はありませんが、実務上は、やはり賃料請求が否定される傾向です。
5.最後に
今回は、相続建物の無償使用が「特別受益」になるかについて、解説しました。
結論としては、否定となっており、他の相続人の立場からすれば、残念な結論になっていると言えるでしょう。
京都の益川総合法律事務所では、遺産相続案件に力を入れて取り組んでいます。
遺産相続でお困りの際には、お気軽にご相談ください。

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遺産分割において特別受益が考慮される割合は何%?
こんにちは。
弁護士の益川教親です。
遺産分割を行う際、特定の相続人が、亡くなった方から生前贈与などを受けていた場合、他の相続人が特別受益の主張を行うことになります。
遺産分割の際に、この特別受益が考慮される割合はどのくらいなのでしょうか。
私が弁護士として関与する際には、特別受益の主張をして、認められることも多いのですが、私自身も実際の割合については、正直よく分かっていません。
そこで、今回は、最新のデータを調べてみましたので、もし良かったら参考になさって下さい。
1.特別受益とは
まず、前提として、特別受益の説明を簡単に行います。
特別受益とは、特定の相続人が、亡くなった方から遺贈や生前贈与などによって受けた利益をいいます。
遺贈や生前贈与を受けた相続人がいる場合には、法律上、その相続人の取り分を減らすことができ、その計算方法を「特別受益の持ち戻し計算」といいます。
要は、一部の相続人が、亡くなった方から生前贈与などを受けていた場合には、他の相続人との間に不公平が生じるので、遺産の取り分を減らせる制度になります。
この特別受益の話は、「遺産分割と生前贈与の関係について」という記事で詳しく解説しているので、興味がある方は、是非参考になさって下さい。
2.特別受益が考慮される割合
それでは、遺産分割事件において、この特別受益が考慮される割合はどれくらいなのでしょうか?
今回参照したデータは、令和3年に終結した遺産分割事件(遺産分割調停が成立した事件と審判が認容された事件)において、特別受益が考慮された割合となります。
結果は、下記の通りです。
■特別受益の考慮の有無(総数6996件)
有り 588件
無し 5693件
不詳 715件
考慮割合 9.36%(約10%)
遺産分割事件において、特別受益が考慮される割合は約10%のようです。
遺産分割事件10件のうち、1件しか特別受益が考慮されていません。
当初の私の予想では、3件に1件ぐらいは特別受益が考慮されていると思っていたので、この結果は正直驚きました。
以下では、なぜ特別受益を考慮される割合がこんなに低いのかについて、考察していきます。
3.なぜ特別受益を考慮される割合が低いのか
3-1.当事者から主張されていない
弁護士からすれば当然なのですが、当事者から、特別受益の主張がされなければ、裁判所は、その点を一切考慮しません。
当事者から主張されていない生前贈与などは、なかったものとして扱われます。
裁判所は、当事者から特別受益の主張が出なければ、その点を考えることすらしないのです。
弁護士が相手方の代理人になっているケースでも、相手方から生前贈与の主張が出てこないこともあるので、この点は特別受益が考慮される割合が低いことに関係していると思います。
3-2.当事者から証拠が提出されない
裁判所においては、事実を、証拠を基に認定します。
特別受益の主張をして、相手方が認めるケースは証拠も不要ですが、実際そのようなケースはあまりないので、特別受益の主張をする側が、生前贈与などを裏付ける証拠を提出する必要があります。
そして、この証拠の収集については、弁護士でなければ、難しい側面があります。
(弁護士同士でも、この証拠収集への熱量は人によって異なります。)
結局、他の相続人などから、生前贈与の主張がされても、有効な証拠が提出されずに、特別受益が認定されないことが多いのだと思います。
4.最後に
今回は、遺産分割事件において、特別受益が考慮される割合がどれくらいかについて、解説しました。
全体として、約10%という数字を、どのように感じられたでしょうか。
私はかなり低いと感じましたが、これは人によって評価が違うと思います。
京都の益川総合法律事務所では、遺産相続案件に注力しています。
もしお困りのことなどがあれば、お気軽にご相談ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
■参考
令和3年 司法統計年報 3家事編

当事務所は、1983年創業の老舗法律事務所です。
遺産分割、遺留分侵害額請求、遺言書作成など、遺産相続案件に強い法律事務所であると自負しております。
お悩みの方は、是非お気軽にお問い合わせ下さい。
超過特別受益者がいる場合の遺産分割について
遺産分割を行う場合に、相続人の一人が法的相続分を超える超過特別受益を受けていることがあります。
このような場合に、実際の遺産分割はどのように行われるのでしょうか。
また、超過特別受益者から、他の相続人は超過額の返還を受けることができるのでしょうか。
今回は、超過特別受益を受けた相続人がいる場合の、遺産分割の行われ方について、解説いたします。ご自身や他の相続人が超過特別受益者に該当する方は、是非参考になさって下さい。
1.超過特別受益とは
超過特別受益とは、特定の相続人が生前贈与や遺贈などによって利益を受け、その利益額がその相続人の法定相続分を超えることをいいます。
例えば、相続人が子どもであるAとBとCで、遺産が1000万円とします。そして、このケースで、Aだけが被相続人から2000万円の生前贈与を受けていたとしましょう。
この場合には、Aが受けた生前贈与2000万円も相続財産に組み込まれ、みなし相続財産が3000万円と評価されます。
そして、相続財産が3000万円で子どもが3人とすると、子ども1人当たりの法定相続分は1000万円になります。
それにもかかわらず、Aは2000万円の生前贈与を受けており、法定相続分である1000万円を超える特別受益を受けています。そのため、Aは、超過特別受益を受けていることになるのです。
この超過特別受益は、特別受益の理解を前提としているため、もしかしたら、少し難しく感じるかもしれません。そのような方は、まずは、特別受益について解説した、「遺産分割と生前贈与の関係について」という記事をご確認頂ければと思います。
2.遺産分割はどのように行われるのか
それでは、超過特別受益者がいる場合、遺産分割はどのように行われるのでしょうか?
結論としては、超過特別受益者がいる場合には、その相続人は遺産を一切取得することができず、他の相続人で遺産を分けることになります。
■具体的な計算方法
先ほどの具体例を用いて、解説します。
相続人:子どもであるAとBとC
遺産:1000万円
生前贈与:Aに対して2000万円
この場合には、Aは遺産を一切取得できずに、BとCが遺産1000万円を2分の1ずつ、つまり500万円ずつ取得することになります。
3.他の相続人は超過額の返還請求ができないのか?
上記の具体例をみれば、Aは生前贈与によって2000万円を取得している一方、BとCはそれぞれ遺産から500万円ずつしか取得できていません。
このように、相続人間で、取得金額の点で不公平が生じているため、BとCは、Aに対して、超過額の返還請求ができないのでしょうか?
結論としては、超過額の返還請求は認められていません。
法律上は、超過特別受益者であるというだけで、他の相続人からの返還請求は許容していないのです。
4.遺留分侵害額請求ができる可能性がある
もっとも、超過特別受益者が、他の相続人の「遺留分」という権利を侵害している場合もあります。
この場合には、他の相続人は、超過特別受益者に対して、遺留分侵害額請求を行うことができるのです。
遺留分とは、兄妹姉妹以外の法定相続人に認められた、最低限の遺産取得割合をいいます。
この遺留分は多くの場合には、法定相続分の半分が保証されます。
先ほどの具体例に当てはめれば、BとCにも、法定相続分1000万円の半分、すなわち500万円が遺留分として認められるのです。
先ほどの具体例では、BとCも遺産から500万円ずつ取得していたため、遺留分が侵害されたとは認められませんが、例えば、遺産が800万円であり、BとCが400万円ずつ取得していた場合には、遺留分の侵害が認められるのです。
■遺留分の計算方法
先ほどの具体例から、遺産額のみ変更します。
相続人:子どもであるAとBとC
遺産:800万円
生前贈与:Aに対して2000万円
この場合、相続人1人の法定相続分は、(遺産800万円+生前贈与2000万円)×相続分3分の1であり、約933万円となります。
そして、遺留分は、多くの場合には法定相続分の半分が保証されるため、法定相続分約933万円÷2で算出される約466万が、BとCの遺留分となります。
これまで解説してきた通り、Aは遺産を取得できず、BとCは遺産800万円を半分ずつ取得するため、遺産からは400万円ずつ取得することとなります。
もっとも、遺産の400万円だけでは、遺留分である466万円に届いていません。
そのため、BとCはこの差額66万円を、Aに対して遺留分侵害額請求できることとなります。
※説明の便宜上、計算の際には、おおざっぱな金額を使用しており、厳密には、このケースでは、66万6666円の請求が可能となります。
この遺留分については、「遺留分侵害額請求をしたい方へ」という記事で、詳しく解説しているので、興味がある方は参考にされて下さい。
5.最後に
今回は、超過特別受益者がいる場合の遺産分割について、解説しました。
実務上、超過特別受益者がいるケースは多くありますが、この場合には他の相続人が遺留分の請求を行うことが多い印象です。
京都の益川総合法律事務所では、遺産相続案件に注力しています。
遺産相続でお困りの際には、お気軽にご相談ください。

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遺産分割、遺留分侵害額請求、遺言書作成など、遺産相続案件に強い法律事務所であると自負しております。
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家督相続を相続人たる長男から主張された時の対処法
日本でも、生前は家督相続が採用されていました。
そして、現在でも、長男から他の相続人に対して、「自分が家督を継ぐから、相続財産を全て取得するべきである」旨の話をされることがあります。
そこで、今回は、相続人である長男から家督相続を主張された場合の対処法について、京都の弁護士が解説いたします。同じ状況の方は、是非参考になさってください。
1.家督相続とは
家督相続とは、戦前の日本で採用されていた遺産相続の方法で、家督である長男が相続財産を全て取得する相続方法です。
当時の日本では、家制度が確立されており、家のトップである戸主(長男)が全ての財産を取得していたのです。
この家督相続は、昭和22(1947)年5月2日まで施行されていましたが、戦後において重視された法の下の平等の理念等に反するため、戦後すぐに廃止されました。
しかし、現在でも、長男から、家督相続を主張されることは比較的多くのケースでみられます。
2.遺言書がある場合
長男が家督相続を主張するケースでは、「長男にすべての財産を相続させる」旨の遺言書が作成されていることも多いです。
このような場合には、下記の通り、他の相続人は長男に対して、遺言書が無効である旨を主張するか、又は遺留分の請求を行うことになります。
2-1.遺言書が無効である旨主張する
遺言書が無効である理由としては、①遺言書が偽造である、②遺言書作成当時、被相続人が認知症であり遺言能力がない、との2つの主張がされることが多いです。
①の遺言書が偽造である旨の主張は、遺言書が公証役場で作成されたものでなく、自筆証書遺言である時に、主張されることが多いです。
この場合には、被相続人の筆跡との同一性、遺言書の体裁等、被相続人に遺言書作成の動機があるかや、遺言書作成に至る経緯、遺言書の保管状況や発見状況等をもとに、その遺言書が偽造であるか否かが判断されることになります。
この辺りは、「遺言書の偽造が疑われる場合の判断要素は何?」という記事で詳しく解説していますので、興味がある方は参考になさってください。
②の被相続人には遺言能力がない旨の主張は、遺言書作成当時、被相続人が認知症を患っている時に主張されることが多いです。
この場合には、認知症の程度、遺言書の内容の複雑性、被相続人に遺言書作成の動機があるかや、遺言書作成に至る経緯、年齢などをもとに、被相続人に遺言能力が認められるか否かが判断されることになります。
この辺りは、「遺言能力とは?認知症の高齢者が作成した遺言書は有効なのか。」という記事で詳しく解説していますので、興味がある方は参考になさってください。
2-2.遺留分侵害額請求を行う
もし、「長男に全財産を相続させる」との遺言書が有効であったとしても、他の相続人は長男に対して、遺留分侵害額請求を行うことができます。
遺留分とは、被相続人の兄弟姉妹以外の法定相続人に認められる、最低限度の遺産取得割合をいいます。
配偶者や子どものみが法定相続人になる場合には、遺留分の割合は2分の1となります。その割合を、各法定相続人が法定相続分に応じて取得します。
例えば、6,000万円の遺産があって、相続人が長男、長女、次男であるとします。
この場合、長女や次男にも6分の1ずつの遺留分が認められます。そのため、長女や次男は、長男に対して、1,000万円ずつの遺留分の請求が可能となるのです。
但し、遺留分侵害額請求には時効があるので、気を付けましょう。
相続開始と遺留分侵害の両方の事実を知ってから、1年以内に請求しないと権利が失われてしまいます。
遺留分については、「遺留分侵害額請求をしたい方へ」との記事で詳しく解説していますので、是非参考になさってください。
3.遺言書がない場合
遺言書がない場合には、長男がいくら家督相続を主張しようが、相続人は法定相続分に応じて、遺産を取得します。
長男であろうが、他の子どもであろうが、法定相続分は変わりません。
そのため、他の相続人は長男に対して、まずは法定相続分が長男と他の相続人で変わらないことを説明することになります。
それで、長男が納得すれば、法定相続分に応じて、相続人が平等に遺産を取得すれば良いです。
他方、説明してもなお長男が納得しなければ、弁護士に依頼頂くのが良いと思います。弁護士がおらず、兄妹だけの話合いであれば、長男も他の兄妹を押し切れると考えがちですが、弁護士が入ると諦めることが多いからです。
もちろん、弁護士に依頼頂いたからといって、弁護士がご依頼者の意向を無視して対応することはありません、もし、ご依頼者に、全部は嫌だけど少しだけ長男に多く遺産を渡したい等のご意向があれば、そのご意向を踏まえて対応を行っていくことになります。
4.最後に
今回は、相続人である長男から家督相続を主張された場合の対処法を解説いたしました。
戦後すぐに家督相続という制度は廃止されていますが、今でも長男から家督相続の主張がされることは少なくありません。
益川総合法律事務所では、遺産相続案件に注力しています。長男から家督相続の主張をうけた方などは、是非お気軽にご相談ください。

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遺産相続問題は弁護士にいつ相談すればよいの?
こんにちは。
弁護士の益川教親です。
「遺産相続の問題っていつ弁護士に相談すれば良いの?」というご相談を頂くことがあります。
そこで今回は、そんな方に向けて、遺産相続問題をいつ弁護士に相談すべきかについて、お話しさせて頂きます。
その方が相続人の立場なのか、遺産を譲り渡す被相続人の立場なのかによって、弁護士に相談すべきタイミングは変わってきます。そこで、以下では、場合を分けてお話しさせて頂きます。
1.相続人の立場の方
1-1.被相続人の生前について
実は、被相続人の生前に、相続人の立場の方から、ご相談頂くことも多いです。
よくあるご相談が、「両親の相続の際に兄弟と揉めそうなんですけど、どうすればよいですか?」といったご相談になります。
ご両親とご相談頂く相続人の方の関係性から、ご両親がその相続人の方のお願いを聞いてくれそうなら、ご両親にこのような遺言書を書いて欲しいとお願いするのが良いかと思います。
それが難しそうなのであれば、弁護士に生前にご相談頂いても、中々打つべき対策がないというのが実情です。
但し、ご相談を受ける中で、私の方から、①これは事前にやっておいた方が良いですよ、とのお話しができたり、②相続が発生した際の流れ等はお伝えすることはできます。
そうすると、そのご相談者の方から、「具体的な流れも分かって、だいぶ気が楽になりました」であったり、「相続が発生した際に、依頼したい弁護士さんが見つかって良かったです」などのお言葉を頂戴することもあります。
なので、被相続人の生前であっても、相続のことが気になっている方は、その時点ですぐにご相談を頂いてもよいのかもしれません。
1-2.被相続人が亡くなった後について
この場合は、可能な限り早いタイミングで、ご相談頂くことを頂くことをお勧めいたします。早めにご相談頂くことで、今後すべきことや、打つべき対策についてお話しできるためです。
「被相続人が亡くなってから、ある程度期間を空けてから、弁護士に相談した方がいいんじゃないの?」と思われる方もいらっしゃいますが、ご相談自体は、特に期間を空けて頂く必要はございません。
但し、当事務所にご依頼頂いた後に、緊急の必要がない限り、四十九日法要が終わるまでは、他の相続人に書面を送付するのは控え、それ以外の準備をさせて頂くことも多いです。
これは、他の相続人に対する書面送付が早すぎて、余計な争いを生むのを防止するためです。
もちろん、ご依頼者の方が早く書面を送ってほしいというご意向があれば、そのご意向通りに対応させて頂きます。
なので、他の相続人への書面送付時期についても、ご依頼者の方との、話合いをもとに、進めていくことになります。
なお、当然ですが、当事務所の弁護士は、ご依頼者に対する守秘義務を負っています。そのため、弁護士にご相談頂いた時期やご依頼頂いた時期が、他の相続人に漏れることはありません。
そのため、弁護士へのご相談やご依頼のタイミングが、お亡くなりになってからすぐでも、特に問題ありませんし、当職の経験上も、ご相談やご依頼のタイミングが早いことを理由に、他の相続人とトラブルになったことはありません。
2.被相続人の立場の方
ご自身が遺産を譲り渡す被相続人の立場の方は、可能な限り、早めに弁護士にご相談頂くことをお勧めいたします。
なぜなら、あまり考えたくないことなのですが、遺言書作成の準備中などに、お亡くなりになる可能性もあり、その結果、相続人同士が揉めてしまう等の事態も生じ得るからです。
基本的に、被相続人の立場の方が、弁護士に御相談頂く場合には、一緒に遺言書を作成させて頂くことが多いです。
その中で、その方の望みとして、①相続人同士が揉めてほしくないのか、それとも、②ある相続人に遺産を全部渡したいのか、等を確認していくことになります。
①の相続人同士が揉めて欲しくないのであれば、他の相続人の「遺留分」という法律上最低限保障されている遺産取得割合にも配慮して、遺言書を作成する必要があります。
そして、「遺留分」に配慮するためには、その方の遺産がいくらぐらいなのか等を判断する必要がありますし、その上で弁護士とご依頼者が一緒に遺言書の内容を考えていくことになります。
②のある相続人に遺産を全部渡したいとお考えなのであれば、遺産を全て把握した上で、その遺産全てを特定の相続人に相続させる旨の遺言書を作成していくことになります。
このように、被相続人の方からしても、遺言書作成によって、叶えたい望みがあるかと思います。
しかし、万一、遺言書作成前にお亡くなりになってしまえば、その望みは一切叶えられなくなってしまいます。
なので、被相続人の立場の方については、可能な限り、早く、弁護士にご相談頂きたいと考えています。
時々、「誰にどれだけ遺産をあげるか決まっていないんだけど、弁護士に相談しても良いの?」と仰る方もいますが、全く問題ありません。
そんな方も、弁護士と話をしていく中で頭が整理されて、誰にどれだけ遺産をあげるか決めていかれますので、何も決まっていなくても、ご相談ください。
但し、「誰にどれだけ遺産をあげるか」を決めて頂くのはご自身です。
これはご自身の人生の集大成の決断であり、弁護士が決められる内容ではありません。
そのため、弁護士との話の中で、最終的にはご自身でご決断頂く必要はあります。
3.最後に
今回は、「遺産相続問題は弁護士にいつ相談すればよいの?」というテーマで、お話しさせて頂きました。
基本的には、気になったタイミングですぐに弁護士にご相談頂ければと思います。
まさに「思い立ったが吉日」です。
もしかしたら、弁護士に相談をすることは、あまり気がすすまないかもしれませんが、それが大きな1歩になると信じています。
少しでも、コラムを見て頂いた方の背中を押せたのであれば、嬉しいです。
最後までお読みいただきありがとうございました。

当事務所は、1983年創業の老舗法律事務所です。
遺産分割、遺留分侵害額請求、遺言書作成など、遺産相続案件に強い法律事務所であると自負しております。
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相続登記の義務化とは?令和6年4月1日から施行
これまで相続登記の申請は義務ではなかったのですが、令和6年4月1日から、相続登記の申請が義務化されることになります。
そこで、今回は、そもそも相続登記とは何かや、相続登記の義務化の内容について、京都の弁護士が解説します。相続によって不動産を取得する方は、是非参考になさってください。
1.相続登記とは
相続登記とは、相続した不動産について、不動産登記簿の権利者の名義を相続人に変更することを言います。
この名義変更を行うためには、法務局に申請をする必要があります。
この相続登記を行うことによって初めて、登記簿上からも、相続によって不動産の所有権が相続人に移転したことが分かることになります。
不動産の所有者を調べるときは、一般的にこの不動産登記簿を確認します。そのため、相続登記を行うことによって、第三者からも相続不動産の所有者が当該相続人であることが分かるのです。
2.相続登記の義務化の内容
今回の相続登記の義務化によって、
①相続人は、不動産(土地・建物)を相続で取得したことを知った日から3年以内に、相続登記の申請をすることが義務となりました。
②正当な理由がないのに、相続登記をしない場合には、10万円以下の過料が科せられる可能性があります。
③この相続登記の義務化の施行(開始)時期は、令和6年(2024年)4月1日です。
以下では、それぞれの内容について解説していきます。
2-1.3年以内に相続登記の申請を行う必要がある
相続人は、相続により不動産(土地・建物)を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記の申請を行うことが義務となりました。
それでは、もし3年以内に遺産分割が成立しない場合などは、どのようにすればよいのでしょうか。以下では、実際のケース毎に、登記申請の内容を解説していきます。
■実際のケース毎に登記申請の内容を解説
①3年以内に遺産分割が成立しなかった場合
相続登記の義務化に伴って、早期の遺産分割が難しい場合などのために、「相続人申告登記」という新たな登記が設けられました。これは、戸籍などを提出して自分が相続人であることを申告する登記であり、簡易な手続きで行うことができます。
そのため、遺産分割が成立しない場合には、まずは、3年以内に相続人申告登記を行うことになります。
その後、実際に遺産分割が完了した場合には、その遺産分割が成立した日から3年以内にその内容を踏まえた相続登記を行うことになります。
②3年以内に遺産分割が成立した場合
3年以内に遺産分割が成立した場合には、その遺産分割の内容を踏まえた相続登記を行うことになります。
但し、実際に遺産分割が完了したのが3年ギリギリのところで、3年以内に相続登記を行うのが難しいなどの場合には、3年以内に相続人申告登記を行った上で、後は遺産分割が成立した日から3年以内に、遺産分割の内容を踏まえた相続登記を行うことになります。
③遺言書がある場合
遺言書がある場合には、その遺言書によって不動産の所有権を取得した人が、取得を知った日から3年以内に、登記の申請を行うことになります。法務省の資料によると、この登記の申請は、相続登記ではなく、相続人申告登記でもよいとされています。
2-2.相続登記をしない場合に過料が科せられる
正当な理由がないのに、上記の相続登記をしない場合には、10万円以下の過料が科せられる可能性があります。
「正当な理由」とは、①数次相続が発生して相続人が極めて多数になり、かつ、戸籍関係書類等の収集や他の相続人の把握等に多くの時間を要する場合、②遺言の有効性等が争われている場合、③重病等である場合、④DV被害者等である場合、⑤経済的に困窮している場合をいうとされています。
法務省の資料によれば、登記義務に違反しても、登記官がいきなり裁判所への過料通知(裁判所に過料を科す裁判を求める通知)を行うわけではないようです。登記官が、あらかじめ登記申請の義務を負う者に催告をして、それでも催告を受けた人が登記申請を行わなかった時にはじめて、裁判所への過料通知を行うようです。
2-3.令和6年4月1日から開始
相続登記の義務化は、令和6年(2024年)4月1日から開始されます。
そして、注意が必要なのは、この相続登記の義務化は、令和6年4月1日よりも前に相続が発生していたケースでも、登記義務が課せられることです。要は、相続が発生した時期を問わず、全てのケースで相続登記が要求されるため、過去に相続によって不動産を取得しているのに、相続登記をしていなかった人も登記義務を負うことになります。
令和6年4月1日よりも前に相続した不動産については、令和9年3月31日までに相続登記申請を行うことが必要になります。令和9年3月31日というのは、相続登記の義務化の開始日である令和6年4月1日から3年間猶予が与えられていることになります。
3.相続登記が義務化された背景
これまで相続登記の申請が義務ではなく、相続登記をしない人が一定数存在しました。これにより、登記簿を見ても所有者が分からない「所有者不明土地」が全国で増加しました。
このような「所有者不明土地」は、不動産がしっかり管理されないことも多く、隣接する土地への悪影響が発生していました。また、所有者が分からない場合には、公共事業や復旧・復興事業が円滑に進まず、民間取引も阻害されることになってしまっていました。
このような問題解決のために、法律が改正され、相続登記が義務化されたのです。
4.最後に
今回は、相続登記の義務化について解説しました。
今回の改正により、3年以内に遺産分割を完了しないと、相続人申告登記と相続登記という2回の登記が必要になるので、早期に遺産分割協議を始めることが必要になったといえます。
もし相続人同士で話し合っても、中々合意できない場合には、弁護士にご相談頂ければと思います。弁護士が入ることにより、遺産分割が速やかに解決できることもありますので。
京都の益川総合法律事務所では、遺産相続案件に力を入れて取り組んでいます。遺産分割がなかなか進まず困っている方がおられましたら、お気軽にご相談ください。
【参考資料】
令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント(法務省民事局)
https://www.moj.go.jp/content/001401146.pdf

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遺産分割協議の期限は10年間?京都の弁護士が解説
「相続法改正によって、遺産分割協議の期限が10年になったと聞いたのですが、本当ですか?」といった趣旨のご質問をお受けすることがあります。
そこで、今回は、令和3年の相続法改正によって、遺産分割協議の期限が10年になったと言われる理由について、京都の弁護士が解説いたします。気になった方は是非参考になさって下さい。
1.遺産分割協議に期間制限はない
まず、前提として、相続法改正によっても、遺産分割協議に期間制限は設けられていません。
なので、相続開始から10年が経過したとしても、相続人が遺産の分け方について協議し、遺産分割を行うことは可能です。
2.特別受益や寄与分の主張が10年に制限された
それでは、なぜ、相続法改正によって、遺産分割協議を10年以内にしなければならないとの誤解が生じたのでしょうか。
それは、相続法改正によって、相続開始から10年以内の遺産分割でなければ、特別受益や寄与分の主張が出来ないとされたためです。
特別受益とは、特定の相続人が生前贈与や遺贈などによって受けた利益のことを言います。また、寄与分とは、被相続人の財産の形成や維持に特別な貢献をした相続人に認められる、上乗せの相続分を意味します。
この特別受益については「遺産分割と生前贈与の関係について」という記事で、また、寄与分については「寄与分とは」という記事で詳細に解説しています。特別受益や、寄与分について興味がある方は、そちらの記事を参照なさってください。
上記のように、特別受益や寄与分の主張が出来なくなると、遺産分割においては、生前贈与や特定の相続人の貢献を無視して、法定相続分によって画一的に遺産分割を処理することになります。
特別受益や寄与分の主張に期間制限が設けられた理由は、主に2つあります。
1点目は、遺産分割がされないまま、長期間放置されると、相続人が亡くなり更に相続が発生するなど、相続が繰り返され、遺産の管理・処分が困難になるので、長期間放置されるケースを解消するためです。
2点目は、相続開始から長期間が経過するうちに、特別受益や寄与分に関する具体的な証拠等も無くなってしまい、これらを考慮するのが難しくなるためです。
■特別受益や寄与分を考慮したい場合
上記のように、相続開始から10年経過すると、特別受益や寄与分の主張ができなくなるため、10年以内に遺産分割を行う必要があります。
もし、相続開始からもうすぐ10年が経ちそうだけれど、中々遺産分割協議がまとまる気配がない場合には、家庭裁判所に、遺産分割調停や審判を申し立てるのをオススメします。10年以内に、これらの処理をしておけば、実際に遺産分割がまとまるのが、10年を経過していたとしても、特別受益や寄与分の主張を行うことができ、これらを考慮することができるようになります。
なお、家庭裁判所への調停等の処理を行わず、相続開始から10年が経過したとしても、相続人全員が合意すれば、特別受益や寄与分が考慮することはできます。但し、通常は不利益を受ける相続人が同意しないと考えられます。
3.いつから新しいルールが適用されるか
先ほどの、特別受益や寄与分の期間制限のルールについては、令和5年4月1日から適用されています。そして、この新しいルールについては、令和5年4月1日よりも前に発生している相続についても全て適用されることになります。
但し、一定の猶予期間は認められ、令和5年4月1日時点で相続開始から10年間が経っていたとしても、令和10年3月31日までの間は、特別受益や寄与分の主張ができることとなります。
4.遺産分割後に相続登記をしなければならない
令和6年4月1日から、相続登記の申請が義務化されます。
これにより、遺産分割によって不動産を取得した相続人は、遺産分割をした日から3年以内に、相続登記の申請をしなければならなくなります。
また、早期に遺産分割をすることが困難な場合には、法定相続分による相続登記申請を行うか、又は「相続人申告登記」という手続きを法務局にとる必要が出てきます。これらの相続登記との関係でも、早めに遺産分割を行った方がよいです。
5.最後に
今回は、相続法改正によって規定された、特別受益や寄与分の主張の期間制限について、解説しました。相続開始から長期間放置された場合、特別受益や寄与分の主張が出来なくなりますし、場合によっては相続人が亡くなってしまい、関係者が増え協議がまとまりづらくなります。
もし相続人同士で話し合っても、早めに遺産分割するのが難しければ、弁護士に相談してください。弁護士が間に入れば、相続人同士で直接話さなくて良いので、お互いに感情を抑えて話し合いができます。
京都の益川総合法律事務所では、遺産分割案件に力を入れて取り組んでいます。遺産分割がなかなか進まず困っている方がおられましたら、お気軽にご相談ください。

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異父兄弟や異母兄弟に相続権が認められるの?
異父兄弟や異母兄弟も遺産相続をすることができるのでしょうか?
といったご相談を頂くことがあります。
そこで、今回は、異父兄弟や異母兄弟に相続権が認められるかについて、京都の弁護士が解説します。気になっておられる方は、是非参考になさってください。
1.異父兄妹や異母兄妹とは?
異父兄弟とは、母親が同じで父親が異なる兄妹を言います。
例えば、母親が離婚して、その母親が再婚した場合、前の夫との子どもと、現在の夫との子どもがいることがあります。このような場合には、子ども達は異父兄弟となります。
反対に、父親が離婚して、その父親が再婚した場合、前妻との子どもと、現在の妻との子どもがいることがあり、このような場合には、子ども達は異母兄弟となります。
また、父親が離婚していなくても、父親が認知した子どもがいる場合、妻との子どもと認知した子どもの関係は、父親を共にする異母兄弟となります。
以下では、記載の便宜上、異父兄弟と異母兄弟をともに「異母兄弟」として、記載しますが、異父兄弟にも通じる内容になっております。
それでは、異母兄弟に相続権が認められるのでしょうか?以下では、亡くなった方を分けて記載します。
2.父親(母親)が亡くなった場合
異母兄弟において、父親が亡くなった場合、異母兄弟達にとっては、それぞれ自分の血のつながった父親が亡くなったことになります。
そして、父親が離婚して、前妻との子どもの親権者にならなかったとしても、その前妻との子どもである異母兄弟も、父親の相続人になります。
仮に、離婚して以降、父親が前妻との子どもと会っていなかったとしても、その子どもには相続権が認められますし、相続権を取得するために、何か特別な手続きが必要なわけでもありません。
なぜなら、子どもが常に第1順位の相続人であり、これは離婚しようが親権者でなかろうが関係ないためです。
3.異母兄弟姉妹や異父兄弟姉妹が亡くなった場合
それでは、異母兄弟姉妹が亡くなった場合はどうでしょうか。例えば、現在の妻との子どもが亡くなり、前妻との子どもは相続権を取得するのでしょうか。
法律的には、異母兄弟姉妹も相続権を取得しうることになります。
具体的には、亡くなった方に子どもがおらず、両親も既に亡くなっていた場合には、異母兄弟姉妹にも相続権が発生することになります。
そもそも、法律上、配偶者は常に相続人になり、残りの相続について第1順位の相続人は子ども、第2順位の相続人は直系尊属(両親)、第3順位の相続人は兄妹姉妹になります。そして、異母兄弟姉妹もこの第3順位の兄妹姉妹に含まれるのです。
但し、異母兄弟姉妹の相続割合は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続割合の半分とされています。
例えば、父親には前妻との子どもが1人おり、その後再婚して子どもが2人できたとします。そして、再婚して出来た子どものうち、1人が亡くなり、その子には配偶者や子どもがおらず、両親も既に亡くなっていたとします。この場合、前妻との子どもと、再婚後の子どもが兄妹姉妹として相続人になります。但し、前妻との子どもについては、再婚後の子どもの相続割合の半分になります。そのため、前妻との子どもが3分の1、再婚後の子どもが3分の2の遺産を取得することになります。
■異母兄弟姉妹や異父兄弟姉妹に相続をさせない方法
異母兄弟姉妹同士は、前妻の子どもと現在の妻の子どもという関係にあるため、会ったことさえないこともあります。そのため、異母兄弟姉妹に、自身の遺産を相続させたくないとの考えに至ることもあるかと思います。
異母兄弟姉妹に相続をさせない方法としては、「遺言書を作成する」方法があります。遺言書において、異母兄弟姉妹とは異なる人に財産を渡す旨記載しておけば、異母兄弟姉妹に遺産が渡ることを防ぐことができます。
亡くなった方の兄弟姉妹には、遺留分という法律上最低限保証されている権利もありませんので、遺言書を作成すれば、異母兄弟姉妹に遺産がいくことは一切ありません。
4.最後に
今回は、異父兄弟や異母兄弟に相続権が認められるのかについて、解説しました。
結論としては、異父兄弟や異母兄弟にも、相続権が認められることになります。
異父兄弟や異母兄弟がいらっしゃる場合には、相続で揉めやすいため、事前に遺言書を作成しておくのが無難です。また、両親が亡くなったが、遺言書が無く、揉めそうと思われた場合などは、早めに弁護士に相談された方がよいです。
京都の益川総合法律事務所では遺産相続のサポートに力を入れて取り組んでいます。お悩みごとがありましたら、お気軽にご相談ください。

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遺産分割において弁護士が関与する割合はどれくらい?
こんにちは。
弁護士の益川教親です。
被相続人がお亡くなりになった後、遺言書がなければ、遺産分割を行うことになりますが、相続人同士では中々話がまとまらないこともあります。
このように中々話がまとまらない遺産分割事件において、弁護士が関与する割合はどのぐらいでしょうか?
私自身が弁護士であるためか、弁護士が関与しない遺産分割事件というのを中々見る機会がなく、その割合を正直よく分かっていません。
そこで、今回は、最新のデータを調べてみましたので、もし良かったら参考になさって下さい。
1.遺産分割調停(審判)事件における弁護士の関与割合
まず、前提として、今回参照したデータは、令和3年に終結した遺産分割事件(遺産分割調停が成立した事件と審判が認容された事件)について、弁護士が関与していた割合となります。
そして、令和3年に終結した遺産分割事件の総数は、6996件となっています。
これらの案件は、相続人間で話し合っても決着がつかずに、家庭裁判所に持ち込まれた案件なので、相続人同士で話がまとまらなかった遺産分割と言ってよいと思います。
それでは、これらの案件について、弁護士が関与している割合はどうなっているでしょうか?
■代理人弁護士の関与の有無(総数6996件)
有り 5939件
無し 1057件
関与割合 84.89%(約85%)
上記のように、約85%の遺産分割事件については、代理人として弁護士が関与しているようです。
逆に言えば、約15%の遺産分割事件については、代理人弁護士が関与せずに、当事者のみで調停や審判が進められているようです。
但し、私もそうですが、遺産分割調停や審判をご自身で行っている方からご相談を受けることもあります。そのため、おそらく代理人弁護士が関与していない案件についても、適宜、弁護士に相談はしているのだと思います。
2.遺産の価格別の弁護士の関与割合
次に、遺産の総額と弁護士の関与割合が関係するのかも調べてみました。
遺産の総額が高ければ、弁護士の関与割合も高い結果になっているのでしょうか?
遺産の価格別(総額別)の代理人弁護士の関与割合については、下記のようになっています。
■1000万円以下(総数2310件)
有り 1807件
無し 503件
関与割合 78.22%(約78%)
■5000万円以下(総数3052件)
有り 2622件
無し 430件
関与割合 85.91%(約86%)
■1億円以下(総数866件)
有り 795件
無し 71件
関与割合 91.80%(約92%)
■1億円を超える(総数521件)
有り 496件
無し 25件
関与割合 95.20%(約95%)
上記をみると、遺産の総額が1000万円以下の案件では、代理人弁護士の関与割合が約78%と一番低くなっています。
そして、そこから遺産の総額が上がるにつれて、代理人弁護士の関与割合も上がっていく傾向が見て取れました。
遺産の総額1000万円以下が、圧倒的に代理人弁護士の関与割合が低い結果となっていますが、おそらくこれは、遺産の価格が1000万円以下の中でも、遺産の価格がかなり低い方が、代理人弁護士を関与させないためだと思います。
例えば、遺産の価格が300万円以下だと、相続人が2人でも、単純計算すれば一人150万円ほどしか取得できず、その状況で弁護士を入れてしまうと、取得できる遺産に比して弁護士費用が高くついてしまうので、中々弁護士を入れる状況になりません。
逆に言えば、遺産の価格が1000万円近い案件については、弁護士の関与割合が82%、83%辺りまではいっているのでないかと推測します。
3.最後に
今回は、遺産分割事件において弁護士が関与する割合はどれぐらいかについて、解説しました。
全体として85%というのは、どのように感じられたでしょうか。
私としては、90%ぐらいかと思っていたので、想像より低いなという印象でした。
これも、我々弁護士が、弁護士にご依頼頂いた際のメリットを上手く伝えられていないのが、原因かもしれませんし、反省しないといけないですね。
当事務所は、遺産相続案件に注力していますので、もしご相談等があれば、お気軽にご相談ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
また、次回のコラムでお会いしましょう。
■参考
令和3年 司法統計年報 3家事編

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