遺産分割
遺産分割調停の申立方法、必要書類や費用、流れを解説
遺産分割協議で話し合っても合意できないなら「遺産分割調停」を申し立てる必要があります。調停になると裁判所の調停委員が間に入って調整してくれるので、相続人同士では合意できない場合でも合意できるケースがよくあります。
今回は遺産分割調停の申立方法や必要書類、流れについて、京都の弁護士が解説します。
1.遺産分割調停を申し立てるべき場面
以下のような状況になったら、遺産分割調停の申立を検討すべきです。
遺産分割協議が決裂した
他の相続人と遺産分割協議を行い、話し合っても合意できないなら家庭裁判所の力を借りるべきです。遺産分割調停を申し立てましょう。
無視されて話し合いを進められない
他の相続人と連絡をとれない、無視されてそもそも遺産分割協議を始められない場合にも遺産分割調停を申し立てて解決へ進めましょう。
2.遺産分割調停を申し立てる方法
遺産分割調停を申し立てる方法、手順をお伝えします。
必要書類
- 申立書
裁判所に書式が用意されているので、利用して作成しましょう。
裁判所に提出する分のほか、相手方へ送るコピーを相手方の人数分、裁判所へ提出する必要があります。
- 被相続人の出生時から死亡時までの連続するすべての戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本(全部事項証明書)
本籍地のある役所へ申請して取得します。戸籍謄本類は不動産の名義変更などの際にも必要です。
- 相続人全員の戸籍謄本と住民票または戸籍附票
戸籍謄本や戸籍附票は本籍地のある役所で取得します。住民票は住所地の役所で取得しましょう。
- 相続関係説明図
被相続人と相続人の続柄などをわかりやすく記載した家系図のような表です。自分で作成する必要があります。
- 遺産目録(土地遺産目録、建物遺産目録、現金・預貯金・株式等遺産目録)
どのような遺産があるのかを示す表です。裁判所に書式があるので利用して作成しましょう。
- 遺産に関する資料
不動産登記事項証明書や固定資産評価証明書、預金通帳や残高証明書のコピーなどの資料が必要です。
遺産分割調停にかかる費用
- 被相続人1名について1,200円の収入印紙
たとえば両親が死亡した場合で2人分の遺産分割調停を申し立てる場合には、2,400円の収入印紙が必要です。
- 連絡用の郵便切手
各家庭裁判所によって必要な切手の金額や組数が異なります。申立先の家庭裁判所へ事前に問い合わせて確認しましょう。
申立先の家庭裁判所の管轄
遺産分割調停の申立先は、「相手方の住所地を管轄する家庭裁判所」です。
相手方が複数いる場合、そのうち1人の住所地を管轄する家庭裁判所へ申し立てることができます。調停が始まると何度も通わねばならないので、できるだけ近い裁判所へ申し立てるとよいでしょう。
誰が申立人、相手方になるのか?
遺産分割調停には「相続人が全員参加」しなければなりません。相続人は「申立人」または「相手方」になっている必要があります。もめていない相続人がいる場合でも、その人と共同で申立をしないなら相手方に含めなければなりません。突然家庭裁判所から呼出状が届いたら、対立していなくても気分を害して不和になってしまう可能性があります。
争っていない共同相続人がいるなら、事前に遺産分割調停を申し立てる予定を告げて共同で申し立てるのがよいでしょう。
3.遺産分割調停の流れ
STEP1申立
まずは遺産分割調停の申立を行います。
STEP2書類審査
家庭裁判所で提出された書類の審査が行われます。不備があれば追加提出や訂正の連絡があります。
STEP3呼出状が送られる
家庭裁判所から当事者全員へ第1回調停期日への呼出状が送られます。
STEP4第1回期日
呼出状に記載された日時に第1回目の期日が開かれます。申立人と相手方は別々の待合室で待機し、調停委員から交互に呼び出されます。
お互いの意見は調停委員を通じて伝えられるので、直接話し合う必要はありません。
1回で解決できるケースはほとんどなく、多くの場合には2回目の期日の予定を入れて終了します。
STEP5続行期日
2回目以降も遺産分割方法についての話し合いを続けます。調停委員から調停案を示されるケースもあり、当事者全員が納得すればその内容で調停が成立します。
STEP6調停成立
調停が成立したら、その日は書類を受け取らずに帰宅します。
1~3日程度で家庭裁判所から調停調書が送られてきます。調書があれば、不動産の名義変更や預貯金の払い戻しなどの相続手続きを進められます。
STEP7不成立になったら遺産分割審判へ
調停が不成立になったら、手続きは遺産分割審判へ移行します。
審判になると訴訟に似た手続きとなり、お互いが書面で主張や証拠提出を行い、最終的に裁判官が遺産分割方法を決定します。
4.遺産分割調停を有利に進めるために
遺産分割調停を有利に進めるには、法的知識はもちろんのこと、調停委員との折衝方法や折り合いをつけるべきタイミングの判断など、専門的なスキルが必要です。
ご自身のみで対応されるよりも相続トラブルに詳しい弁護士に依頼するほうが有利に運びやすいでしょう。弁護士に依頼すれば調停申し立ての手続きを任せられて手間も省けますし、ご自身のみで対応された場合思わぬ落とし穴にはまることもあり得ます。
当事務所はこれまで多数の遺産相続案件を取り扱い、解決してきた京都所在の弁護士事務所です。遺産分割協議が決裂してしまい、調停申し立てをご検討されている方はお早めにご相談ください。

当事務所は、1983年創業の老舗法律事務所です。
遺産分割、遺留分侵害額請求、遺言書作成など、遺産相続案件に強い法律事務所であると自負しております。
お悩みの方は、是非お気軽にお問い合わせ下さい。
遺産分割でトラブルになりやすい家族の特徴やパターン
遺産分割の際、特にトラブルになりやすいパターンがいくつかあります。
多くのご家庭で遺産分割トラブルが起こっており、当事務所でもこれまでに多数のご相談をお受けしてきました。
今回は遺産分割で争いが生じやすい家族の特徴や対処方法について、弁護士の経験を踏まえてお伝えします。
1.子どもだけが相続人
両親のうち片方のみが亡くなった段階では、あまり遺産相続トラブルが生じません。残った親が多くを相続するケースが多く、子どもたちも「お母さん(お父さん)が相続するなら」と考えて納得しやすいからです。
ところが両親ともに亡くなって子どもたちだけが相続人になると、非常に相続トラブルが起こりやすくなります。子どもたちにはそれぞれの家庭や都合がありますし、兄弟姉妹に対するこれまでの不満が溜まっている場合も多いためです。
遺言書があれば子どもたちの相続争いを回避できますが、なければ遺産分割調停や審判で決着をつけるしかなくなるケースも少なくありません。
2.遺産のほとんどが実家である
遺された遺産が実家のみ、あるいは実家以外にほとんど財産がない場合にも相続争いが生じやすい傾向があります。
実家しか遺されなかった場合、まずは誰が実家を相続するかで問題になります。
また実家を相続するなら、他の相続人へ代償金を払わねばなりません。
長男が両親と同居していたケースなどでは、他の相続人への代償金支払いをしぶることもあり、話し合いが難しくなりがちです。
代償金を支払うとしても「いくらにするのか」合意できない場合や、代償金を払いたくても資力がない場合などもあります。
どうしてももめて解決できない場合、家を売って現金で分けるしかなくなる可能性もあります。
3.介護した相続人と疎遠な相続人がいる
親が亡くなったとき、献身的に介護した相続人と疎遠な相続人がいると、トラブルが生じやすい傾向にあります。介護した相続人の方が「自分はこんなに介護したのに疎遠な相続人と同じ相続割合になるのは納得できない」と考えるからです。
法律的に、献身的に介護した相続人には「寄与分」が認められて遺産相続割合が増える可能性があります。しかし寄与分が認められるかどうか、どの程度の寄与分が認められるべきかについては専門的な判断が必要で、ご自身たちで決めるのは簡単ではありません。
介護した相続人と疎遠な相続人がいて問題を解決できない場合には、家庭裁判所での調停や審判で決着をつけざるを得なくなります。
4.被相続人が再婚している
被相続人(亡くなった方)が再婚していて前婚の際に子どもがいる場合、相続トラブルが発生しやすい状況となります。
この場合、前婚の際に生まれた子どもと死亡時の家族の配偶者や子どもに相続権が認められるので、一緒に遺産分割協議をしなければなりません。
死亡時の家族は「前婚の際の子どもに遺産を渡したくない」と考えます。一方、前婚の際の子どもは「権利があるならきちんと受け取りたい」と考えることが多く、意見が一致しにくくなっています。
法律的には前婚の際の子どもにも死亡時の家族の子どもと同じだけの相続分が認められます。話し合いでどうしても解決できない場合、家庭裁判所で遺産分割調停を申し立てて話し合う必要があります。
5.子どもがいない夫婦
子どもがいない夫婦の一方が死亡したときに遺言書を残していないと、トラブルになる可能性があります。
子どもがいない場合、相続人は配偶者と亡くなった方の親又は兄弟姉妹になります。
すると、配偶者と親(配偶者にとっては義母や義父)、又は配偶者と兄弟姉妹(義兄弟、義姉妹)が共同で遺産分割協議をしなければなりません。もともと不仲なケースはもちろん、疎遠だった場合などにも話し合いを進めにくくなる傾向があります。
自分たちだけでは解決しにくい場合、弁護士を間に入れて遺産分割協議を進める方法もあります。どうしても解決できない場合には家庭裁判所で遺産分割調停を申し立てましょう。
6.内縁の配偶者がいる
被相続人に内縁の配偶者がいる場合にも遺産相続トラブルが発生しやすい傾向があります。
法律上、内縁の配偶者には遺産相続権が認められません。被相続人に実子がいれば実子がすべての遺産を相続します。内縁の配偶者が相続不動産に居住している場合には、不動産からの明渡し等を求められる可能性があります。
子どもや親兄弟がおらず内縁の配偶者のみ遺されたケースでも、内縁の配偶者が遺産を受け取れるわけではありません。まずは家庭裁判所で相続財産管理人を選任して、指定された期間内に相続財産分与の申立を行う必要があります。
7.最後に
遺産相続トラブルに巻き込まれてしまったら、早めに適切な対応をしないと争い事がどんどん大きくなってしまうものです。お困りの際には弁護士がアドバイスやサポートをいたします。
当事務所は相続案件に力を入れており解決実績も多数ありますので、相続問題にお困りの方がおられましたらお気軽にご相談下さい。

当事務所は、1983年創業の老舗法律事務所です。
遺産分割、遺留分侵害額請求、遺言書作成など、遺産相続案件に強い法律事務所であると自負しております。
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