遺産分割
祭祀承継と相続について
仏壇や神棚、墓地などの「祭祀財産」は遺産分割の対象になりません。
遺産分割協議で承継者を決めるのではなく、「祭祀承継者」へと承継されます。
今回は、祭祀財産の承継方法や相続税との関係について解説しますので、仏壇やお墓などの取り扱いに迷われている方はぜひ参考にしてみてください。
1.祭祀財産とは
祭祀財産とは、先祖を祀るための財産です。
祭祀財産は、遺産分割の対象になりません。遺産分割協議とは別に、祭祀承継者を決める必要があるので注意しましょう。
祭祀財産には以下の3種類があります。
1-1.「祭具」
祭具とは、祭祀(先祖を祀る儀式など)に使用するものを意味します。例えば、仏像、仏壇や位牌、神棚などです。但し、仏壇が建物と一体化している場合の仏間は祭具に含まれず建物の一部となります。
1-2.「系譜」
系譜は、いわゆる家系図です。先祖代々の人の氏名やつながりなどがかかれています。
巻物や掛け軸などとして代々受け継がれているケースがあります。
1-3.「墳墓」
墳墓は先祖の遺骨や遺体が葬られている設備です。例えば、墓碑や墓地、霊屋、埋棺などが該当します。
2.祭祀財産を承継する人
人が死亡して祭祀財産が遺された場合、誰が祭祀財産を承継するのでしょうか?
祭祀財産は「祭祀主宰者」が承継すると考えられています。祭祀主宰者とは、法事などの先祖を祀る儀式を執り行い、祭祀財産を管理する人です。
祭祀主宰者となって祭祀財産を承継する人を「祭祀承継者」といいます。
先祖代々伝わるお墓や仏壇仏具、家系図などは遺産分割の対象にならず、「祭祀承継者」が承継しなければなりません。
3.祭祀承継者を決定する方法
祭祀承継者は、以下の方法で決定します。
3-1.先代による指定
まずは、先代の祭祀主宰者による指定内容が優先されます。例えば、遺言などによって次の祭祀承継者が指定されていたら、その人が次の祭祀主宰者として祭祀財産を承継します。
3-2.慣習
先代による指定がない場合には、慣習によって祭祀承継者が決まります。
例えば、地域的な慣習や一族に伝わる慣習があれば、それらの基準で祭祀承継者を決めましょう。
指定がない場合、相続人による話し合いで祭祀継承者を決めることも可能です。
遺産分割協議とは別に、祭祀承継者について話し合って次の祭祀主宰者を決定しましょう。
3-3.家庭裁判所が指定
故人が祭祀承継者を指定しておらず慣習もなく相続人の話し合いによっても祭祀承継者が決まらない場合には、家庭裁判所が祭祀承継者を指定します。
まずは、関係者が家庭裁判所へ祭祀承継者指定調停を申し立てて、そちらで話し合うのが通常です。調停が不成立となったら審判へ移行して、裁判官が次の祭祀主宰者(祭祀承継者)を指定します。
4.祭祀主催者が行うべきこと
祭祀主宰者は以下のような職務を行わねばなりません。
- 祭祀財産の管理
仏壇や仏具、神棚や家系図などの祭祀財産を引き継ぎ、適切な方法で保管する必要があります。
- 法事などの祭祀の実施
法事などの祭祀は祭祀主宰者が中心となって執り行わねばなりません。但し、法要の開催は法律上の義務ではないので、実際には行わない人もいます。実施しなくても罰則はありません。
- 祭祀財産を維持するための支払い
お墓などの祭祀財産を維持するには、管理料金を支払わねばなりません。傷みが発生したら修繕費もかかるでしょう。こういった祭祀財産を維持するための支払いは、祭祀承継者がしなければなりません。
5.祭祀財産には相続税がかからない
祭祀財産には相続税がかかりません。
税制上、非課税の資産と位置づけられているからです。祭祀承継者になったからといって相続税が上がってしまうことはありません。高額な仏壇や仏具、お墓などを引き継いでも相続税との関係は心配する必要は基本的にないといえるでしょう。
但し、祭祀財産といいながら換金目的で高額な仏壇仏具などを購入した場合、相続税を免れるための行為と考えられるので、相続税の課税対象となります。
6.祭祀主宰者が決まらない場合の対処方法
6-1.祭祀承継者指定調停を申し立てる
祭祀主宰者が決まらない場合には、家庭裁判所で「祭祀承継者指定調停」を申し立てましょう。
調停を申し立てると、裁判所の調停委員が間に入って祭祀承継者を誰にするか話し合うことができます。話し合っても決まらない場合、裁判官が審判によって次の祭祀承継者を指定してくれます。
6-2.祭祀財産を処分する
祭祀承継者になるとお墓の管理などをしなければならないので、親族の誰も祭祀承継者になりたくないケースがあります。その場合、祭祀財産を処分するのも一つの方法です。
例えば、古いお墓から魂を抜いて永代供養に付すと、その後はお墓の管理をしなくて済みますし、管理料金も払わずに済みます。いわゆる「墓じまい」をする方法です。
ただ、他の親族の意見を聞かずに勝手にお墓を処分すると後でトラブルになってしまう可能性があります。お墓を処分する際には、親族全員の意見を聞いて、全員が納得した状態で行いましょう。
京都の益川総合法律事務所では相続案件に力を入れて取り組んでいますので、お困りの際にはお気軽にご相談ください。
当事務所は、1983年創業の老舗法律事務所です。
遺産分割、遺留分侵害額請求、遺言書作成など、遺産相続案件に強い法律事務所であると自負しております。
お悩みの方は、是非お気軽にお問い合わせ下さい。
著作権は相続される!手続き方法や期間についても弁護士が解説
亡くなった方が著作権を持っていた場合、著作権も相続の対象になります。
著作権はさまざまな場合に発生するので、意外と多くのケースで相続されるものです。具体的にどのようにして相続すれば良いのか、理解しておきましょう。
また著作権は著作者の死後、永遠に存続するわけではありません。いつまで存続するのか、保護期間についても理解しておく必要があります。
今回は著作権とは何か、どのようにして相続すれば良いのかなどを京都の弁護士がお伝えします。
相続人となった方はぜひ参考にしてみてください。
1.著作権とは
著作権とは、著作物の作者が著作物を独占できる権利です。
著作物とは「思想または感情を創作的に表現したもので、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」をいいます。例えば、文章、イラスト、音楽、彫刻、写真などにはすべて著作権が認められます。
こうした著作物を生み出した人(著作者)にはその著作物を独占的に利用したり自分の名前で発表したりする権利などが認められます。それが「著作権」です。
著作権は、著作物を生み出すと同時に作者に認められます。他の知的財産権と異なり、特許庁への出願や登録などの手続きは要りません。
また財産的な価値とも関係がありません。子どもや素人の描いたイラストや下手な文章であっても著作権が認められます。
2.著作権の種類
著作権は以下の2つに分類できます。
2-1.著作者人格権
著作者の人格に一身専属的に所属する権利です。著作物に氏名を表示したり公表するかどうかを決定したりする権利などが含まれます。
□著作者人格権の中身
- 氏名表示権
- 公表権
- 同一性保持権
2-2.財産権
著作権の中でも財産権は、著作権の財産的な側面です。たとえば以下のような権利が含まれます。
- 複製権
- 上演、上映権
- 公衆送信権
- 口述、展示権
- 頒布権
- 譲渡権
- 翻訳、翻案権
3.相続される著作権は財産権のみ
著作権の中でも「財産権」に属するものは相続の対象になります。
一方、著作者人格権は被相続人に一身専属的な権利なので、相続されません。
たとえば、著作物を複製したり上演や上映を認めたりインターネットなどで送信したりする権利は相続の対象になります。相続人はこういった権利にもとづいて収益を得ることも可能です。
一方、氏名を表示するかどうかを決定したり未公表のものを公表するかどうかを決めたりする権利は相続の対象になりません。
4.著作権を相続する手順
著作権を相続する際には、以下の手順で進めましょう。
4-1.相続人調査、相続財産調査を行う
まずは相続人調査や相続財産調査をしなければなりません。
戸籍謄本類を取得して誰が相続人になるのかを調べ、同時並行で著作権やその他の遺産としてどういったものがあるのかを確定しましょう。
4-2.遺産分割協議を行って著作権の相続人を決める
相続人と遺産内容が明らかになったら、相続人が全員参加して遺産分割協議を行いましょう。遺産分割協議では、誰がどの遺産を取得するのかを決めます。
著作権についても誰が相続するのか話し合って決定しましょう。
複数の相続人が著作権を共有することもできますが、共有すると権利行使の際などに面倒が生じるので、できれば単独保有にするようお勧めします。
4-3.遺産分割協議書を作成する
誰がどの遺産を取得するか決めたら、遺産分割協議書を作成して内容を明らかにしましょう。
4-4.決まらない場合には遺産分割調停を申し立てる
遺産分割協議を行っても著作権やその他の遺産の相続人が決まらない場合、遺産分割調停を申し立てましょう。調停を利用すると、裁判所の調停委員が間に入って話し合いを調整してくれます。
調停でも合意できない場合には、裁判官が審判によって遺産分割の方法を決定してくれます。
4-5.著作権の相続に特別な手続きは不要
著作権の相続人となったとき、登録や名義変更などの特別な手続きは不要です。
ただし、何らかの証拠がないと後に著作権を証明する手段がありません。遺産分割協議書や調停調書、審判書などに記載されるので、著作権を相続した場合にはこれらの書類を大切に保管しましょう。
5.著作権の存続期間
著作権は永遠に存続するわけではありません。「存続期間」があります。
著作権を相続しても一定期間が経過すると消滅してしまうので、いつまで存続するのかについて知識を持っておきましょう。
著作権の存続期間は原則として、「著作物が創作されてから著作者の死後70年まで」となっています。著作権の存続期間は、2018年12月28日の「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定」によってそれまでの50年から70年に延長されました。
なお、著作者が変名や無名、団体名義の場合「公表後70年間」が著作権の保護期間となります。
6.著作権以外の知的財産権
著作権以外の知的財産権である特許権や実用新案権、商標権や意匠権も相続の対象になります。これらについては特許庁長官へ名義変更の手続きをする必要があります。
7.最後に
京都の益川総合法律事務所では遺産相続のサポートに力を入れて取り組んでいます。相続手続きに迷われた場合には、お気軽にご相談ください。
当事務所は、1983年創業の老舗法律事務所です。
遺産分割、遺留分侵害額請求、遺言書作成など、遺産相続案件に強い法律事務所であると自負しております。
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相続人に認知症の人がいる場合の対処法
相続人の中に認知症の人がいたら、その人を交えて遺産分割協議を進められない可能性があります。認知症が進行して意思能力が失われていると「成年後見人」を選任しなければ有効な遺産分割ができないのです。
今回は認知症の相続人がいる場合の対処方法をお伝えしますので、相続人の立場になった方はぜひ参考にしてみてください。
1.認知症が進行すると遺産分割協議を成立させられない
遺産分割協議は、相続人全員が合意しないと成立させられません。
ただし、相続人の中に認知症の人がいると、その人は遺産分割協議に参加できない可能性があります。
遺産分割協議を成立させるには、意思能力が必要だからです。意思能力とは、自分の法律行為の意味を弁識できる能力をいいます。
認知症が進行して判断能力が失われると遺産分割協議を成立させるための意思能力が失われるので、自分では遺産分割協議を進められなくなってしまいます。
1-1.認知症の相続人を無視してはならない
重度の認知症となって意思能力がなくなっている相続人がいたら、その人を交えて遺産分割協議を進められません。
かといって、その人を省いて他の相続人だけで遺産分割協議をしても無効です。
遺産分割協議にはすべての相続人を参加させなければならないにもかかわらず認知症の相続人は参加できないので、進行した認知症の相続人がいる場合、遺産分割協議を行えなくなってしまいます。
1-2.認知症でも遺産分割協議に参加できるケースはある
相続人に認知症の人がいても、すべてのケースで遺産分割協議ができないわけではありません。軽度の認知症で意思能力があるなら遺産分割協議を成立させられます。
ただ、ご自身では意思能力があるかどうか判断するのは困難でしょう。医師や法律家の意見を聞いて判断する必要があります。
2.認知症の相続人がいる場合には成年後見人を選任する
相続人の中に進行した認知症の相続人がいるなら、その人の「成年後見人」を選任しなければなりません。
成年後見人とは、判断能力の低下した人に代わって財産を管理したり身上監護方法を決定したりする人です。
本人の預貯金などの財産を預かって医療費などの必要な支払いを行い、入所先の病院や介護施設を決定したりキーパーソンとなってやり取りをしたりします。
成年後見人がいればその人が遺産分割についての意思決定をできるので、認知症の相続人がいても遺産分割協議を成立させられます。
成年後見人が署名押印すれば遺産分割協議書が有効になるので、相続登記や預貯金払い戻しなども受けられます。
3.成年後見人の申立方法
成年後見人は、以下のような方法で選任しましょう。
3-1.裁判所の管轄
認知症になった本人の住所地を管轄する家庭裁判所で申立を行います。
3-2.必要書類
- 後見開始申立書
- 申立人の戸籍謄本
- 本人の戸籍謄本
- 本人の戸籍附票
- 本人の登記されていないことの証明書
- 診断書
- 成年後見人候補者の戸籍謄本、住民票、身分証明書、成年後見登記事項証明書
※もし、ご自身で申立をされる方は、管轄の家庭裁判所に必要書類等の確認をされれば、対応してもらえるかと思いますので、申立前に一度確認した方がよいかと思います。
3-3.費用
- 申立手数料800円(収入印紙)
- 後見登記手数料2600円(収入印紙)
- 連絡用の郵便切手
3-4.成年後見人になれる人
成年後見人には、未成年者や破産者以外の人であれば就任できます。
親族から選任してもかまいません。
家庭裁判所へ選任を申し立てる際、候補者を立てることも可能です。
ただし、相続人が成年後見人になると本人と利益相反してしまって問題になるので、相続人以外の人を候補者にしましょう。
※利益相反とは、本人と後見人の利益が相反する場合です。本人の取得分が増えると後見人の取得分が減るので、適正な遺産分割が図られなくなってしまいます。この場合、後見監督人や特別代理人などの選任が必要になります。
親族に適切な人がいない場合や親族間に意見の相違がある場合などには、裁判所が弁護士や司法書士などの専門家から成年後見人を選任します。
4.成年後見人を選任する場合の注意点
成年後見人を選任する場合には以下の点に注意しましょう。
4-1.遺産分割協議が終わっても業務は終わらない
遺産分割協議が終わっても成年後見人による財産管理業務は終わりません。本人が死亡するか判断能力を回復するまで、財産管理などを続ける必要があります。
4-2.定期的な報告が必要
成年後見人に選任されると、年に1回程度財産状況や収支の状況を報告しなければなりません。後見人の事務は煩雑なので、親族が選任されると負担になる可能性があります。
4-3.専門家が選任されると報酬が発生する
弁護士や司法書士などの専門家が成年後見人に選任されると、報酬が発生します。管理財産の価額などの事情によって異なりますが、だいたい月2~6万円程度です。
報酬は本人の財産から支払われるので申立人や相続人が負担する必要はありません。
そうはいっても将来の相続財産が目減りしてしまうので、推定相続人にとっては慎重に検討しなければならない事項の1つとなるでしょう。
5.最後に
遺産相続には難しいケースがたくさんあります。 対応に迷ったときには、お気軽に当事務所までご相談ください。
当事務所は、1983年創業の老舗法律事務所です。
遺産分割、遺留分侵害額請求、遺言書作成など、遺産相続案件に強い法律事務所であると自負しております。
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遺産分割調停に欠席するデメリットと対処法
遺産分割調停を申し立てられても、呼び出された期日に都合がつかないケースがあるものです。
一方的に調停を申し立てられたのに、なぜ出席しなければならないのかわからず、「出席したくない」と考える方もいらっしゃるでしょう。
しかし、無断で遺産分割調停に欠席するのはおすすめできません。
この記事では、遺産分割調停に欠席するデメリットや出席できない場合の対処方法をお伝えします。
遺産分割調停を申し立てられて、裁判所から呼出状が届いた方はぜひ参考にしてみてください。
1.遺産分割調停に欠席した場合の影響
1-1.欠席が続くと調停は不成立になる
遺産分割調停は、相続人全員が家庭裁判所へ集まって遺産分割方法を話し合うための手続きです。
相続人が全員出席して合意しなければ、調停は成立しません。
1人でも欠席していたら、話を進められないのです。一部の相続人の欠席が続いて全員の合意ができない場合、遺産分割調停は不成立になってしまいます。
1-2.審判へ移行する
遺産分割調停が不成立になったら、手続きは「遺産分割審判」へと移行します。
遺産分割審判では、審判官が相続人の提出した主張書面や証拠にもとづいて遺産分割方法を決定します。
相続人が話し合って遺産分割方法を決める調停とは異なり、欠席者がいても審判は下されます。
欠席を続けていると、最終的に意見を出せないまま遺産分割の方法が審判で決定されてしまう不利益があるといえるでしょう。
2.遺産分割調停に欠席する場合の不利益
遺産分割調停に欠席を続けても、不利な判断が行われるわけではありません。
その意味では、欠席を続けること自体による不利益はないとも考えられます。
しかし、欠席を続けると、手続きが審判に移行してしまいます。せっかく相続人同士で話し合って遺産分割方法を決める機会がもうけられているのに、みすみすチャンスを捨ててしまうのは大きなデメリットです。
どのくらい欠席すると審判へ移行するのか
遺産分割調停に2~3回連続して欠席し、裁判所からの連絡も無視していると審判に移行してしまうケースが多数です。
1回目に出席できないとしても、2回目以降は必ず出席するようにしましょう。
どうしても都合がつかなくなった場合には、裁判所へ連絡を入れるべきです。
3.遺産分割審判に欠席する場合の不利益
遺産分割審判に欠席し続けると、調停より大きな不利益が及ぶ可能性があります。
遺産分割審判で自分の主張を通すには、法律的に整理された主張書面や資料を提出しなければなりません。欠席していると、そういった書面の提出ができないのです。
すると、自分にとって不利な判断が行われる可能性が高くなってしまいます。
また、申立人が出席して積極的に主張書面や資料を提出すると、裁判所は申立人の意見のみを聞いて審判を出すことになってしまいます。そうなると、ますますこちらにとって不利な審判が出る可能性が高まってしまうでしょう。
4.遺産分割調停に出席できない場合の対処法
仕事や用事があってどうしても遺産分割調停の期日に出席できない場合には、以下のように対応しましょう。
4-1.裁判所へ連絡を入れて日程調整する
裁判所から呼び出された日時に家庭裁判所へ行けない場合、必ず事前に裁判所へ連絡を入れるべきです。無断欠席は避けましょう。
連絡を入れると、「いつなら出席できるのか」と聞かれるので、都合の良い日時を伝えてあらためて日程調整をしてください。
あらたに定められた期日に出席できれば、その後は通常通りに調停を進めていけます。
4-2.電話会議システム・テレビ会議システムを利用する
裁判所が遠方などで出席が難しい場合、電話会議システムやテレビ会議システムの利用を申請しましょう。
これらは、電話やテレビ会議を使って遠隔地から調停を進める方法です。
ただし、申請しても必ず利用できるとは限りません。裁判所が必要性を認めなければ適用されないのです。
まずは出席が難しい理由を付して、裁判所へ電話会議、テレビ会議の申請をしてみてください。
4-3.書面を提出する
調停に出席できないけれども調停委員会に伝えたい内容がある場合には、期日前に書面を提出しましょう。
その上で、次回からは出席すれば通常通りに調停を続けていけます。
4-4.相続分の放棄や譲渡をする
「遺産を相続しなくて良い」と考えている場合、相続分の放棄や譲渡をすれば調停に出席する必要がなくなります。
相続分の放棄とは、資産を相続しないと宣言することです。一切の資産を承継しないので、遺産分割協議や調停に参加する必要はありません。
相続分の譲渡とは、他の相続人へ相続分を譲ることです。すべての相続分を譲ってしまえば遺産相続しないので、やはり遺産分割調停に参加する必要がなくなります。
4-5.弁護士を代理人に立てる
遺産相続したいけれども調停には出席したくない場合、弁護士を代理人に立てましょう。
弁護士が代理人になれば、弁護士のみが調停に出席してでも話を進められます。
また弁護士は法律に精通しており交渉ごとのプロなので、有利に進められる可能性も高くなるでしょう。
調停に毎回出席するのが手間になるなら、遺産相続に詳しい弁護士に相談してみてください。
5.最後に
京都の益川総合法律事務所では、遺産相続の案件に力を入れて取り組んでいます。
遺産分割調停を申し立てられてお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
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養子の相続権について
養子縁組をした場合、養子にも実子と同じだけの相続権が認められます。
養子にも相続税の基礎控除が認められるので、相続対策を兼ねて孫を養子に迎える方も少なくありません。
ただ、養子で基礎控除を増やせる人数は限られています。
むやみに養子をとると、遺産分割の際にもめてしまう原因にもなりうるので、正しい知識をもって適切な範囲で対応することが重要です。
今回は養子の相続権について、京都の弁護士が解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
1.養子にも実子と同様の相続権がある
養子にも相続権が認められます。
養子になった以上、法律上の親族関係ができあがるからです。
被相続人(亡くなった人)に養子がいる場合には、養子を交えて遺産分割協議を行う必要があります。
遺産分割協議を成立させるには養子も含めた全員が合意する必要があるのです。
■養子の相続割合
養子の相続割合は実子と同じで、遺留分の割合についても同様です。
養子であっても実子であっても、法律上はほとんど同様の扱いになると考えましょう。
2.普通養子縁組と特別養子縁組との違い
養子には、普通養子縁組と特別養子縁組があります。
これらの養子の両方とも、養親の遺産については同じように相続権が認められます。
ただし、実親の相続権については違いが生じます。
普通養子縁組の場合、養親だけではなく実親とも親族関係が残るので、実親が死亡した場合にも相続が可能です。
一方特別養子縁組の場合、実親との関係は切れるので実親の遺産を相続できません。
普通養子縁組と特別養子縁組の相続における違いは、「実親の遺産を相続できるか」だといえるでしょう。
相続できるのが普通養子縁組で、できないのが特別養子縁組です。
3.養子の子どもによる代襲相続が発生する場合と発生しない場合
養子も法律上は子どもなので、養親が死亡したときに養子が先に死亡していたら代襲相続が発生する可能性があります。
ただし、養子の子どもが代襲相続できるかどうかは、子どもが生まれた時期によって異なります。
養子の子どもが相続できるのは、養子縁組が行われた後に生まれた場合です。この場合、親子関係ができてからの子どもなので相続権が認められます。
一方、養子縁組の前に生まれていた子どもには相続権が認められません。
子どもが生まれた時期によって代襲相続が発生するかどうか違いが生じるので、間違えないように注意しましょう。
4.養子縁組と相続税控除について
養子縁組した場合でも、子どもが増えた分「相続税の基礎控除」を増やせる可能性があります。
相続税の基礎控除とは、相続税計算の際に遺産額から差し引ける金額です。
基礎控除が大きくなると課税対象遺産額が減るので、節税につながります。
- 相続税の基礎控除額…3000万円+600万円×法定相続人数
養子がいると、法定相続人数が増えるので相続税の基礎控除額が上がって節税対策になります。
ただし、養子縁組による基礎控除の増加は無制限に認められるものではありません。
実子がいない場合には養子2人分まで、実子がいる場合には養子1人分までの基礎控除枠増加しか認められません。
生命保険控除や死亡退職金の控除について
養子縁組によって法定相続人を増やすと、生命保険から支払われる死亡保険金や会社から支給される死亡退職金に認められる控除枠も増やせます。
これらの受取金には相続税がかかりますが、以下の控除が認められているからです。
- 法定相続人数×500万円
基礎控除だけではなく、生命保険などの控除枠も増やせるので、養子縁組は相続税対策としても有効な手段といえるでしょう。
5.養子縁組する場合の注意点
相続対策で養子縁組する場合、以下の点に注意しましょう。
5-1.養子で基礎控除を増やせる枠は限定されている
一定以上遺産のある方の場合、相続税を節税するために養子縁組を行う人が多数います。
ただし、養子縁組によって増やせる基礎控除の枠は限定されているので、縁組をする前に正しく理解しておきましょう。
5-2.孫を養子にすると相続税額が20%増しになる
孫が養子になると、孫が支払うべき相続税額が20%増しになってしまうので注意が必要です。
相続税対策で孫を養子にしたところ、かえって相続税額が上がってしまう可能性もあるのです。
うまく相続税対策を行うには、自己判断せずに税理士に相談してシミュレーションを行うのが良いでしょう。
5-3.相続トラブルの原因になる可能性がある
養子をとると、養子も交えて遺産分割協議をする必要があります。
実子や配偶者などとの間で感情的な軋轢が起こり、遺産分割協議でもめてしまうケースもよく見られます。
例えば、相続税対策で孫を養子にすると、孫の親以外の子どもが反感を抱く可能性があるでしょう(長男の子どもを養子にすると次男が反感を抱くケースなど)。
養子縁組をする場合、親族の理解を得ておくことも大切です。
6.最後に
京都の益川総合法律事務所では、相続問題に力を入れて取り組んでいます。
また、相続税に力を入れている税理士と提携していますので、相続税の部分でもワンストップで対応が可能です。
お悩み事がありましたらお気軽にご相談ください。
当事務所は、1983年創業の老舗法律事務所です。
遺産分割、遺留分侵害額請求、遺言書作成など、遺産相続案件に強い法律事務所であると自負しております。
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被相続人が会社経営者や資産家の場合における遺産分割の注意点
お亡くなりになった被相続人が会社経営者や資産家の場合、相続人の立場として注意すべき事項がたくさんあります。
特に後継者以外の相続人が不利益を受けるケースも多いので、法律の規定する法定相続、遺留分請求等のリスクを避けるための対処方法を知っておきましょう。
今回は、被相続人が会社経営者や資産家の場合の遺産分割の注意点をお伝えしますので、ぜひ参考にしてみてください。
1.後継者以外にも法定相続分がある
会社経営者や資産家の方が亡くなると、後継者が多くの遺産を相続しようとするケースが大多数です。
例えば、ご長男が後継者になる場合、ご長男が会社株式や事業に必要な資産を承継して、他の相続人の取得分はほとんどなくなってしまうケースも少なくありません。
但し、後継者以外の法定相続人にも、法定相続分が認められます。
法定相続分は、事業承継における後継者かどうかとは無関係に認められるので、長男も長女も同じです。家を出てご結婚されていても別の仕事をしていても、後継者と同等の法定相続分が認められます。
法律上、法定相続分までは受け取れる権利があるので、後継者へ遠慮する必要はありません。
■中小企業の株式は価値が高いケースも多い
事業者が亡くなると、会社株式が遺産として遺されるケースが多々あります。
一般的には非上場の会社株式には流動性がなく、価値が低いと思われがちです。しかし実際に株式を適正に評価すると、非上場の中小企業株式の評価額は高額になるケースが少なくありません。
後継者が会社株式を取得する場合、他の相続人は後継者へ高額な代償金を請求できる可能性があります。代償金を払ってもらえないなら株式そのものを取得して、経営権を一部取得する対処方法も考えられます。
遺産分割協議で「株式は相続しない」「代償金は請求しない」と合意してしまう前に、弁護士までご相談ください。
2.遺留分侵害額請求できる可能性がある
被相続人が事業経営者や資産家の場合、遺言書を遺して遺産分割の方法を指定しているケースもよくあります。
確かに遺言書があると、法定相続分とおりの遺産は受け取れなくなります。後継者にほとんどの遺産を相続させる遺言内容になっている事例も多くみられます。
ただし、子どもなどの一定範囲の相続人には「遺留分」が認められます。
遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に認められる最低限度の遺産取得割合です。
遺言や生前贈与で遺留分を侵害されると、遺留分権利者は侵害者へ「遺留分侵害額請求」という金銭の請求ができます。
■遺留分侵害額請求の具体例
父親(事業者)が亡くなり3億円の遺産が遺された。相続人は長男と長女であり、長男が後継者となるため遺言書で「すべての遺産を長男に相続させる」と指定されていたケース。
この事案において、長女には4分の1の遺留分が認められます。そこで長女は後継者である長男に対し、3億円×4分の1=7,500万円の支払いを請求できます。
長男が払わない場合には調停や訴訟を起こして取り立てることも可能です。
3.負債の相続に要注意
被相続人が事業者や資産家の場合、高額な負債が遺されるケースも多いので注意が必要です。
事業用の借入や不動産ローンなどの借金、未払税や保険料等の負債はすべて相続の対象になります。借金については法定相続分に応じて相続されるので、法定相続人である以上は支払いをしなければなりません。自分は会社経営にまったくかかわっていなくても、借金だけ払わねばならないのです。遺産分割協議で「借金は相続しない」と定めても債権者には主張できません。
借金を免れるには、相続放棄が有効です。相続放棄とは、資産も負債も含めて一切の遺産を相続しないことです。相続放棄したらはじめから相続人ではなかったことになるので、借金や負債は相続しません。
ただし、法定相続分とおりにプラスの遺産を受け取れば、そこから負債を全額支払える可能性もあります。安易に相続放棄する前に、遺産の調査をしっかり行いましょう。
4.相続税に要注意
相続が発生して遺産を受け取ると、相続税が発生する可能性があります。特に事業者や資産家は多くの遺産を遺すケースが多いので、相続税も高額になるでしょう。相続税については、相続発生後10か月以内に申告と納税を両方済まさねばなりません。
相続税は現金一括納付が基本となるので、不動産や株式を相続すると納税資金が不足するケースもよくあります。不動産を売却したり株式以外の資産を受け取ったりして、相続税の支払いに充てましょう。
5.迷ったときには弁護士へ相談を
事業経営者や資産家が死亡したときの遺産分割は複雑で、相続人間でトラブルになりがちです。遺言書がない場合はもちろんのこと、遺されていても遺留分トラブルが発生するケースが少なくありません。
問題が発生したら、すぐに弁護士へ相談しましょう。弁護士であれば相手と交渉したり調停、審判、訴訟の代理人として活動したりしてトラブルを最小限度に抑えられます。
京都の益川総合法律事務所では、遺産相続案件に力を入れて取り組んでいますので、お困りの相続人の方はお気軽にご相談ください。
当事務所は、1983年創業の老舗法律事務所です。
遺産分割、遺留分侵害額請求、遺言書作成など、遺産相続案件に強い法律事務所であると自負しております。
お悩みの方は、是非お気軽にお問い合わせ下さい。
内縁の妻や夫、連れ子、離婚した時の子どもに相続権はある?京都の弁護士が解説!
- 内縁の妻には相続権がないのでしょうか?遺産を受け取れないのですか?
- 連れ子は親の遺産を相続できないのですか?相続するにはどうしたら良いでしょうか?
- 離婚した場合、子どもは親の遺産を相続できますか?その場合どのような手続きをとれば良いのでしょうか?
こういったご相談を受けるケースがよくあります。
今回は内縁の夫や妻、連れ子や離婚前の子どもの相続権について、京都の弁護士が解説します。
相続権のない人に相続させる方法や、相続人に相続させたくない方法についてもご説明しますので、お悩みの方はぜひ参考にしてみてください。
1.内縁の夫や妻の相続権
まずは内縁の夫や妻に相続権が認められるのか、みていきましょう。
1-1.内縁関係とは
内縁関係とは、婚姻届を提出していない事実上の夫婦関係を意味します。
婚姻届を提出していないので、夫婦であっても名字も戸籍も異なります。
ただし婚姻して夫婦共同生活をする意思を持ち、実際に夫婦として生活している実態があるので、一定程度までは法律上の「夫婦」としての保護を受けます。
一方、相続に関しては、内縁の夫婦に権利が認められません。
内縁関係の場合、パートナーが死亡しても一切遺産相続ができないのです。たとえばパートナーに子どもがいると、遺産はすべて子どもに相続されてしまいます。
内縁の配偶者は家も預貯金も相続できず、家を退去しなければならない可能性もあります。
1-2.内縁の夫や妻へ相続させる方法
内縁のパートナーへ相続させるには、「遺言書」を作成しましょう。
遺言書があれば、相続権のない人への「遺贈」ができるからです。たとえば自宅不動産や預貯金などを内縁の夫や妻へ遺贈しておけば、他に相続人がいても内縁の配偶者へ一定の遺産を遺せます。
ただし、子どもなどの相続人には「遺留分」が認められます。
すべての遺産を内縁の配偶者へ遺贈すると、子どもから内縁の配偶者へ「遺留分侵害額請求」が行われてトラブルになってしまうリスクも生じます。
内縁のパートナーへ財産を遺言によって遺贈する場合、子どもなどの遺留分権利者にも一定の資産を相続させる内容にするのが良いでしょう。
2.連れ子の相続権
次に「連れ子」の相続権についてご説明します。連れ子とは、結婚相手の前の配偶者との間の子どもを意味します。
例えば、AさんがBさんと結婚するとき、Bさんが前の夫との子どもの親権者になっているとしましょう。この場合、AさんにとってBさんの子どもは連れ子です。
連れ子は自分と直接の血のつながりはないけれど、結婚相手が親権者となっているので一緒に暮らすようになり、自分の子どものように可愛がる方も多数います。
ただし、連れ子には基本的に相続権がありません。あくまで結婚相手の子どもであり、自分とは親子関係がないからです。何の対応もしなければ連れ子に遺産を受け継がせることができません。
結婚後に実子ができていれば、実子にすべての財産が引き継がれてしまい、連れ子が不公平と感じる可能性もあります。
連れ子へ相続させる方法
連れ子へ遺産を相続させる方法は以下の2つです。
■養子縁組をする
連れ子と養子縁組をすると、連れ子とも法律上の親子関係ができます。すると連れ子は「子ども」として第一順位の優先的な遺産相続権を取得します。
実子がいる場合でも実子と同様の遺産相続権を取得できるので、公平に遺産相続できるでしょう。
この場合、実子と養子が話し合って遺産分割の方法を決定する必要があります。
■遺言書を作成する
2つ目の方法は遺言です。たとえば実子がいる場合でも、連れ子と実子に同等の遺産を遺す内容の遺言をしておけば不満は生じにくいでしょう。
実子と連れ子の取得割合を指定したり、特定の遺産を遺贈したりもできます。
3.離婚前の子どもの相続権
ご相談の多い3パターン目として、離婚前の子どもの相続権についてもみておきましょう。
離婚前の子どもとは、前婚の配偶者との間の子どもです。
離婚して親権者にならなかった場合、子どもとは没交渉となるケースもあります。そんなときでも子どもには相続権が認められるのでしょうか?
法律的に、婚姻時に生まれた子どもには基本的に相続権が認められます。その後に親が離婚したとしても子どもは相続権を失いません。特別な手続きを経なくても、親が死亡したら子どもは相続人になります。
親権者にならなかった親が再婚していたら、離婚前の子どもは親の新しい家族(再婚相手や子どもなど)と遺産分割協議を行って遺産分割方法を決定しなければなりません。
■離婚前の子どもに相続させない方法
離婚前の子どもに相続させたくない場合、やはり遺言書が役立ちます。
遺言で「離婚前の子どもには相続させない」「遺産はすべて現在の家族へ相続させる」旨の内容を指定しておけば、離婚前の子どもは相続できません。
ただし、遺留分を侵害すると遺留分侵害額請求が起こる可能性もあるので、一定の遺産は相続させるのが良いでしょう。
4.最後に
京都の益川総合法律事務所では遺産相続のサポートに力を入れて取り組んでいます。お悩みごとがありましたら、お気軽にご相談ください。
当事務所は、1983年創業の老舗法律事務所です。
遺産分割、遺留分侵害額請求、遺言書作成など、遺産相続案件に強い法律事務所であると自負しております。
お悩みの方は、是非お気軽にお問い合わせ下さい。
結婚していない人や子どもがいない夫婦の相続について
結婚していない方や子どもがいないご夫婦の場合、特に相続対策をしておく必要性が高くなります。
例えば、子どものいないご夫婦の場合、一方が死亡すると配偶者と親や兄弟姉妹が遺産分割トラブルに巻き込まれるケースが少なくありません。
今回は結婚していない方、子どものいないご夫婦の相続対策方法について、京都の弁護士が解説します。ぜひ参考にしてみてください。
1.結婚していない人の相続
まずは、結婚しておらず子どもがいない方の相続についてみていきましょう。
1-1.結婚していない人の相続人
一度も結婚したことがなく子どものいない方の場合、以下の人が優先的に遺産を相続します。
①親や祖父母などの直系尊属
法律上、第1順位の相続人は子どもですが、子どもがいないので第2順位の親が相続人となります。親が死亡していて祖父母が存命の場合には祖父母が相続します。祖父母も死亡していて曽祖父母がいれば曽祖父母が相続人になります。
このように、親や祖父母などの「直接、上に遡っていく親族」を「直系尊属」と言います。
②兄弟姉妹または甥姪
親や祖父母などの直系尊属がいない場合、第3順位の兄弟姉妹が相続人になります。
兄弟姉妹が先に死亡していて、その子どもである甥姪がいる場合には、甥姪が代襲相続人として相続します。
なお、甥姪の子どもには相続権がありません。
③親も兄弟姉妹もいない場合には国庫に帰属
親も兄弟姉妹もおらず「相続人がいない」ケースでは、遺産は最終的に国のものとなります。
1-2.結婚していない人の相続対策
①遺言書を作成する
結婚していない方が相続に備えるには、遺言書が必須です。遺言書がないと、ほとんど交流のなかった甥姪などに相続されてしまうケースが少なくありません。
遺言書を作成すれば、自分の希望通りに遺産分割方法を指定できますし、相続権のない人にも遺贈できます。希望を叶えやすく遺産分割トラブルも防止できるメリットがあります。
②任意後見契約を利用する
子どものいない方の場合、老後に認知症になったときの財産管理も心配でしょう。
この点については、信頼できる専門家と任意後見契約を締結されるようおすすめします。
任意後見契約を締結しておけば、自分で財産管理できなくなったときに後見人が適切に管理してくれるので安心です。
当事務所の弁護士も任意後見人への就任を承っていますので、お気軽にご相談ください。
2.子どものいないご夫婦の相続
次に子どものいないご夫婦の場合の相続についてみていきましょう。
2-1.相続人になる人
①配偶者は常に相続人になる
配偶者は常に相続人になります。親族が配偶者しかいなければ、配偶者が全部の遺産を相続できます。
一方、親や兄弟姉妹が生きていれば、配偶者と親や兄弟姉妹の共同相続となります。この場合、遺産分割トラブルが起こりやすいので対応に注意が必要です。
②親などの直系尊属
死亡した人の親や祖父母などの直系尊属が生きていれば配偶者と親や祖父母などが共同相続人となります。この場合の法定相続分は、配偶者が3分の2、親や祖父母などが3分の1です。
③兄弟姉妹と甥姪
親や祖父母などの直系尊属はいないけれども兄弟姉妹や甥姪がいる場合、配偶者と兄弟姉妹(甥姪)が共同相続人となります。
この場合の法定相続分は、配偶者が4分の3、兄弟姉妹や甥姪が4分の1となります。
2-2.子どものいないご夫婦の相続では遺産分割トラブルが多い
子どものいないご夫婦の相続では、「配偶者と親」「配偶者と兄弟姉妹」が共同相続人となるケースが多々あります。
この場合、配偶者と親や兄弟姉妹が遺産分割協議を進めなければなりません。両者の仲が良くなければ意見が合わず、トラブルになる可能性があります。
子どもがいないご夫婦の場合にも、遺言書によって相続対策しておく必要性が極めて高いといえるでしょう。
たとえば、配偶者にすべての遺産を相続させる内容の遺言書があれば、配偶者は親や兄弟姉妹と遺産分割協議をする必要がありません。相続トラブルの防止に役立ちます。
ただし、親や祖父母などの直系尊属には「遺留分」が認められます。遺言や贈与によって遺留分を侵害すると遺留分侵害額請求が起こってかえってトラブルのもとになるケースが少なくありません。
親や祖父母のいる方の場合、そういった相続人へ遺留分相当額を相続させる内容の遺言書にしておくのが得策です。
なお、兄弟姉妹や甥姪には遺留分がありません。配偶者と兄弟姉妹が法定相続人になるケースでは、すべての遺産を配偶者へ遺しても大きな問題はないでしょう。
3.相続人の立場になったら弁護士までご相談を
結婚していないおひとりさまであっても法定相続人がいるケースが少なくありません。
子どものいないご夫婦の場合、パートナーが死亡して突然義理の親や義理の兄弟姉妹と遺産分割協議を行わねばならなくなってトラブルに巻き込まれるケースが多々あります。
相続人になって困ったときには、弁護士までご相談ください。親身になってアドバイスさせていただきますし、遺産分割協議の代理人なども努めさせていただきます。
京都の益川総合法律事務所では遺産相続に力を入れていますので、まずはお気軽にご相談ください。
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無償で借りている不動産(使用借権)の相続について
被相続人が無償で不動産を借りていた場合、不動産を使用する権利は相続人へ引き継がれるのでしょうか?
不動産などの「物」を無償で借りる契約を「使用貸借」といいます。使用貸借の場合、賃貸借と違って借主の地位は基本的に相続対象になりません。
ただし、一定のケースでは使用貸借の権利も相続人が引き継げます。
今回は、無償で借りている不動産(使用借権)の相続について、京都の弁護士が解説します。
1.使用貸借とは
使用貸借とは、借主が無償で物を使用させてもらう契約です。
たとえば、不動産を無償で借りて居住している場合などが、典型的な使用貸借契約となります。
使用貸借契約の最大の特徴は「無償」となる点です。
貸主と借主の人間関係が重視されるため、借主の地位については「一身専属的」なものと考えられています。
2.使用貸借と賃貸借の違い
使用貸借も賃貸借も、どちらも「他人の物を利用させてもらう契約」です。
両者の違いはどういったところにあるのでしょうか?
最大の違いは有償か無償か
使用貸借と賃貸借の最大の違いは「有償契約」か「無償契約」かという点です。
無償であれば使用貸借契約となり、有償なら賃貸借契約になります。
また、使用貸借の場合、借主の地位は一身専属的となりますが、賃貸借契約の場合には一身専属的ではありません。
解約申入れについての制限も異なります。賃貸借契約の場合、賃借人は強く保護されるので、きちんと賃料を払うなどしていれば契約を解除されることはありません。また、契約期間が終了しても更新が原則となります。
使用貸借の場合、借主はさほど強く保護されず、期間や目的が定められていない場合には、貸主は任意のタイミングで解約を申し入れることができます。期間が満了したときの更新拒絶に正当事由も要りません。
3.使用貸借は相続の対象にならないのが原則
物件を無償で利用していた被相続人が死亡した場合、相続人は「使用貸借の借主の地位」を引き継げるのでしょうか?
法律上、原則として使用借権は相続対象になりません。
使用貸借の場合、貸主と借主との間に人間関係があるのが通常であり、借主の地位は一身専属的と考えられるからです。
よって、相続人は使用貸借の借主の地位を引き継げないのが原則です。
相続発生とともに契約が終了するので、貸主が借主の相続人へ退去を求めてきたら、相続人としては退去に応じざるを得ません。
4.例外的に使用貸借が相続の対象となるケース
ただし、以下のような場合、使用貸借の借主の地位が例外的に相続対象になり得ます。
4-1.当事者間の合理的な意思解釈
まずは「契約当事者間の合理的な意思解釈により、使用貸借契約を相続人へ引き継ぐべきケース」が考えられます。
たとえば、建物所有を目的とする土地の使用貸借契約の場合、借主が死亡したからといって建物を収去して明け渡さねばならないとすると経済的損失も大きくなるでしょう。一般的には、建物使用や収益の必要性がある限り、底地の使用貸借を認めるのが当事者の考え方に沿うと考えられます。
そこで「借主が死亡しても使用収益の必要性が失われない」として、借主の地位や権利の相続が認められると考えられています(東京地判昭和56年3月12日、東京高判平成13年4月18日、最判平成8年12月17日など)。
建物所有目的の使用貸借権の相続を認めた裁判例(東京地裁平成5年9月14日)
裁判例の一部を抜粋します。
「土地に関する使用貸借契約がその敷地上の建物を所有することを目的としている場合には、当事者間の個人的要素以上に敷地上の建物所有の目的が重視されるべきであって、特段の事情がない限り、建物所有の用途にしたがってその使用を終えたときに、その返還の時期が到来するものと解するのが相当であるから、借主が死亡したとしても、土地に関する使用貸借契約が当然に終了することにならないというべきである。」
このように、建物所有目的の土地の使用貸借については、基本的に借主の権利が相続人へ引き継がれると考えてよいでしょう。
4-2.当事者間に別段の定めがある場合
次に、当事者間で別途定めをした場合にも相続人は使用借権を引き継げます。
「借主の死亡によって使用貸借契約が終了する」という民法597条の規定は、任意規定だからです。
使用貸借契約書を作成して「借主の死亡時には相続人が借主の地位を引き継ぐ(相続する)」「借主の相続発生時には貸主は借主の相続人に引き続きの物件使用を認める」などと記載されていれば、相続人は引き続いて物件を利用できると考えましょう。
4-3.明示や黙示の承諾がある場合
借主が死亡したあとに相続人が引き続いて対象物を使用し続けており、貸主がはっきり使用を認めた場合には明示の承諾があったと捉えられます。
明示的に承諾しなくても、相続人によって使用されている事実を知りながら特段異議を述べなかった場合には黙示の承諾があったと捉えられる可能性があります。
こういった状況下においても、使用貸借契約が継続する余地があるでしょう。
5.最後に
使用貸借契約や賃貸借契約の相続が発生すると、当事者の方が対処方法に迷われるケースが多々あります。法律的に正しい対応をするために弁護士によるアドバイスやサポートを受けましょう。
京都で相続人になった方がおられましたら、お気軽に益川総合法律事務所の弁護士までご相談ください。
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遺産分割、遺留分侵害額請求、遺言書作成など、遺産相続案件に強い法律事務所であると自負しております。
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借地権や借家権の相続
「親が土地や家を借りているのですが、このような借地権や借家権も相続の対象になるのでしょうか?」
といったご相談を受けるケースがよくあります。
借地権や借家権などの権利も相続対象になります。相続が発生したからといって退去を要求されることもありません。ただし、相続人は継続して賃料を払う義務を負います。
今回は、借地権や借家権の相続方法について、京都の弁護士が解説しますので、被相続人が賃貸物件を利用していた場合にはぜひ参考にしてみてください。
1.賃借人の地位は相続される
被相続人が土地や家を借りていた場合、死亡すると賃借人の地位は相続人に引き継がれます。
賃借権も一種の「財産権」と評価されるからです。賃借権は、被相続人に一身専属的な権利ではないので、相続対象となります。
相続人が1人であればその相続人が権利のすべてを相続しますが、相続人が複数いる場合には「準共有」となると考えられています。
つまり、相続人らは賃借権を全員で共有することになる、という意味です。
2.物件から退去する必要はない
賃貸借契約では、無断転貸や賃借権の無断譲渡が禁止されます。
こういった行為があると、大家や地主における賃借人への信頼が裏切られるので、大家や地主の方から賃貸借契約の解除が可能です。
相続が発生したときにも賃借人が入れ替わるので、大家や地主は退去請求できるのでしょうか?
結論的に、相続が発生しても大家や地主は退去請求できません。相続によって権利者が変わるのは法律上当然のことであり、無断譲渡や転貸が行われた場合とは事情を異にするためです。賃借人側が大家や地主を裏切る背信行為を行ったわけでもありません。
よって、大家や地主には賃貸借契約を解除する権利が認められず、退去請求も認められません。
承諾料も請求されない
同様の理由により、法律上、大家や地主は相続人へ「(相続の)承諾料」の請求もできません。賃借権の承継に大家や地主による承諾は不要だからです。
万一、大家や地主が退去請求や承諾料の支払い請求をしてきても、相続人の立場として応じる必要はありません。
3.地代や家賃の負担者、支払い方法について
賃借権の相続が発生しても、相続人が退去する必要はありません。
ただし、賃料をきちんと支払わないと、大家や地主から賃貸借契約を解除される可能性があります。賃料不払いは重大な背信行為となり、契約が解除されれば相続人らは物件を明け渡さなければなりません。
では、地代や家賃は誰がどのように支払えば良いのでしょうか?
3-1.相続人が1人の場合
相続人が1人の場合には、その相続人が賃料全額を支払う義務を負います。
支払いを3か月分程度滞納すると、賃貸人側から契約を解除されるリスクが高くなるので、そういったことのないようにきちんと支払いをしましょう。
3-2.相続人が複数の場合
相続人が複数の場合、それぞれが法定相続分に応じて賃借料を負担しなければなりません。
それぞれの相続人が、大家や地主へバラバラに賃借料を払う方法でも支払いとしては有効です。
ただ、それでは賃貸人としても回収や確認に手間がかかってしまうでしょう。そこで、相続人側が代表者を定めてまとめて賃借料を払うケースもよくあります。この場合には、後に相続人同士で賃料についての清算をしなければなりません。
また、3か月分程度賃料を滞納すると契約を解除される可能性があります。相続人が複数の場合、まとまって対応するのに手間がかかって支払い遅延が起こるケースもみられるので、くれぐれもきちんと支払いをしましょう。
4.賃貸借契約を解除したい場合の対処方法
被相続人が賃貸物件を借りていた場合でも、相続人が物件を使わないなら「契約を解除したい」と考えるでしょう。
相続人の方から、賃貸借契約の解除や解約を行うことも、もちろん可能です。
ただ、賃借人が契約を解除する際には、原状回復しなければなりません。原状回復義務も相続人全員が負うので、かかった費用は法定相続分に応じて清算する必要があります。敷金が返ってきた場合には、法定相続分に応じて分配しましょう。
5.遺産分割協議が済むと単独で対応できる
以上のように、賃借権が相続されたときには「法定相続分」によって賃料支払義務などの対応を行うのが原則です。
ただし、遺産分割協議が済んで単独の相続人が相続することに決まったら、その相続人が単独で賃料を支払います。契約解除の意思表示なども単独の相続人が1人でできるようになります。
遺産分割協議で賃借権を相続することになったら、早めに大家さんへ通知しましょう。
6.相続税が発生する可能性もある
賃借権を相続した場合、相続税がかかる可能性もあります。
賃借権も一種の財産権であり、遺産としての価値があるからです。
ただし、相続税が発生するのは、遺産全体の評価額が相続税の基礎控除を超える場合に限られます。
相続税の基礎控除額=3000万円+600万円×法定相続人数
まずは、遺産全体の評価を行い、基礎控除を超えるようであれば相続税の申告について税理士に相談してみるようおすすめします。
7.最後に
京都の益川総合法律事務所では遺産分割のサポートに力を入れています。
相続に詳しい税理士とも提携しており、相続税についてもワンストップで解決できます。
もし、相続に関してお困りであれば、お気軽にご相談ください。
当事務所は、1983年創業の老舗法律事務所です。
遺産分割、遺留分侵害額請求、遺言書作成など、遺産相続案件に強い法律事務所であると自負しております。
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