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結婚していない人や子どもがいない夫婦の相続について
結婚していない方や子どもがいないご夫婦の場合、特に相続対策をしておく必要性が高くなります。
例えば、子どものいないご夫婦の場合、一方が死亡すると配偶者と親や兄弟姉妹が遺産分割トラブルに巻き込まれるケースが少なくありません。
今回は結婚していない方、子どものいないご夫婦の相続対策方法について、京都の弁護士が解説します。ぜひ参考にしてみてください。
1.結婚していない人の相続
まずは、結婚しておらず子どもがいない方の相続についてみていきましょう。
1-1.結婚していない人の相続人
一度も結婚したことがなく子どものいない方の場合、以下の人が優先的に遺産を相続します。
①親や祖父母などの直系尊属
法律上、第1順位の相続人は子どもですが、子どもがいないので第2順位の親が相続人となります。親が死亡していて祖父母が存命の場合には祖父母が相続します。祖父母も死亡していて曽祖父母がいれば曽祖父母が相続人になります。
このように、親や祖父母などの「直接、上に遡っていく親族」を「直系尊属」と言います。
②兄弟姉妹または甥姪
親や祖父母などの直系尊属がいない場合、第3順位の兄弟姉妹が相続人になります。
兄弟姉妹が先に死亡していて、その子どもである甥姪がいる場合には、甥姪が代襲相続人として相続します。
なお、甥姪の子どもには相続権がありません。
③親も兄弟姉妹もいない場合には国庫に帰属
親も兄弟姉妹もおらず「相続人がいない」ケースでは、遺産は最終的に国のものとなります。
1-2.結婚していない人の相続対策
①遺言書を作成する
結婚していない方が相続に備えるには、遺言書が必須です。遺言書がないと、ほとんど交流のなかった甥姪などに相続されてしまうケースが少なくありません。
遺言書を作成すれば、自分の希望通りに遺産分割方法を指定できますし、相続権のない人にも遺贈できます。希望を叶えやすく遺産分割トラブルも防止できるメリットがあります。
②任意後見契約を利用する
子どものいない方の場合、老後に認知症になったときの財産管理も心配でしょう。
この点については、信頼できる専門家と任意後見契約を締結されるようおすすめします。
任意後見契約を締結しておけば、自分で財産管理できなくなったときに後見人が適切に管理してくれるので安心です。
当事務所の弁護士も任意後見人への就任を承っていますので、お気軽にご相談ください。
2.子どものいないご夫婦の相続
次に子どものいないご夫婦の場合の相続についてみていきましょう。
2-1.相続人になる人
①配偶者は常に相続人になる
配偶者は常に相続人になります。親族が配偶者しかいなければ、配偶者が全部の遺産を相続できます。
一方、親や兄弟姉妹が生きていれば、配偶者と親や兄弟姉妹の共同相続となります。この場合、遺産分割トラブルが起こりやすいので対応に注意が必要です。
②親などの直系尊属
死亡した人の親や祖父母などの直系尊属が生きていれば配偶者と親や祖父母などが共同相続人となります。この場合の法定相続分は、配偶者が3分の2、親や祖父母などが3分の1です。
③兄弟姉妹と甥姪
親や祖父母などの直系尊属はいないけれども兄弟姉妹や甥姪がいる場合、配偶者と兄弟姉妹(甥姪)が共同相続人となります。
この場合の法定相続分は、配偶者が4分の3、兄弟姉妹や甥姪が4分の1となります。
2-2.子どものいないご夫婦の相続では遺産分割トラブルが多い
子どものいないご夫婦の相続では、「配偶者と親」「配偶者と兄弟姉妹」が共同相続人となるケースが多々あります。
この場合、配偶者と親や兄弟姉妹が遺産分割協議を進めなければなりません。両者の仲が良くなければ意見が合わず、トラブルになる可能性があります。
子どもがいないご夫婦の場合にも、遺言書によって相続対策しておく必要性が極めて高いといえるでしょう。
たとえば、配偶者にすべての遺産を相続させる内容の遺言書があれば、配偶者は親や兄弟姉妹と遺産分割協議をする必要がありません。相続トラブルの防止に役立ちます。
ただし、親や祖父母などの直系尊属には「遺留分」が認められます。遺言や贈与によって遺留分を侵害すると遺留分侵害額請求が起こってかえってトラブルのもとになるケースが少なくありません。
親や祖父母のいる方の場合、そういった相続人へ遺留分相当額を相続させる内容の遺言書にしておくのが得策です。
なお、兄弟姉妹や甥姪には遺留分がありません。配偶者と兄弟姉妹が法定相続人になるケースでは、すべての遺産を配偶者へ遺しても大きな問題はないでしょう。
3.相続人の立場になったら弁護士までご相談を
結婚していないおひとりさまであっても法定相続人がいるケースが少なくありません。
子どものいないご夫婦の場合、パートナーが死亡して突然義理の親や義理の兄弟姉妹と遺産分割協議を行わねばならなくなってトラブルに巻き込まれるケースが多々あります。
相続人になって困ったときには、弁護士までご相談ください。親身になってアドバイスさせていただきますし、遺産分割協議の代理人なども努めさせていただきます。
京都の益川総合法律事務所では遺産相続に力を入れていますので、まずはお気軽にご相談ください。

当事務所は、1983年創業の老舗法律事務所です。
遺産分割、遺留分侵害額請求、遺言書作成など、遺産相続案件に強い法律事務所であると自負しております。
お悩みの方は、是非お気軽にお問い合わせ下さい。
無償で借りている不動産(使用借権)の相続について
被相続人が無償で不動産を借りていた場合、不動産を使用する権利は相続人へ引き継がれるのでしょうか?
不動産などの「物」を無償で借りる契約を「使用貸借」といいます。使用貸借の場合、賃貸借と違って借主の地位は基本的に相続対象になりません。
ただし、一定のケースでは使用貸借の権利も相続人が引き継げます。
今回は、無償で借りている不動産(使用借権)の相続について、京都の弁護士が解説します。
1.使用貸借とは
使用貸借とは、借主が無償で物を使用させてもらう契約です。
たとえば、不動産を無償で借りて居住している場合などが、典型的な使用貸借契約となります。
使用貸借契約の最大の特徴は「無償」となる点です。
貸主と借主の人間関係が重視されるため、借主の地位については「一身専属的」なものと考えられています。
2.使用貸借と賃貸借の違い
使用貸借も賃貸借も、どちらも「他人の物を利用させてもらう契約」です。
両者の違いはどういったところにあるのでしょうか?
最大の違いは有償か無償か
使用貸借と賃貸借の最大の違いは「有償契約」か「無償契約」かという点です。
無償であれば使用貸借契約となり、有償なら賃貸借契約になります。
また、使用貸借の場合、借主の地位は一身専属的となりますが、賃貸借契約の場合には一身専属的ではありません。
解約申入れについての制限も異なります。賃貸借契約の場合、賃借人は強く保護されるので、きちんと賃料を払うなどしていれば契約を解除されることはありません。また、契約期間が終了しても更新が原則となります。
使用貸借の場合、借主はさほど強く保護されず、期間や目的が定められていない場合には、貸主は任意のタイミングで解約を申し入れることができます。期間が満了したときの更新拒絶に正当事由も要りません。
3.使用貸借は相続の対象にならないのが原則
物件を無償で利用していた被相続人が死亡した場合、相続人は「使用貸借の借主の地位」を引き継げるのでしょうか?
法律上、原則として使用借権は相続対象になりません。
使用貸借の場合、貸主と借主との間に人間関係があるのが通常であり、借主の地位は一身専属的と考えられるからです。
よって、相続人は使用貸借の借主の地位を引き継げないのが原則です。
相続発生とともに契約が終了するので、貸主が借主の相続人へ退去を求めてきたら、相続人としては退去に応じざるを得ません。
4.例外的に使用貸借が相続の対象となるケース
ただし、以下のような場合、使用貸借の借主の地位が例外的に相続対象になり得ます。
4-1.当事者間の合理的な意思解釈
まずは「契約当事者間の合理的な意思解釈により、使用貸借契約を相続人へ引き継ぐべきケース」が考えられます。
たとえば、建物所有を目的とする土地の使用貸借契約の場合、借主が死亡したからといって建物を収去して明け渡さねばならないとすると経済的損失も大きくなるでしょう。一般的には、建物使用や収益の必要性がある限り、底地の使用貸借を認めるのが当事者の考え方に沿うと考えられます。
そこで「借主が死亡しても使用収益の必要性が失われない」として、借主の地位や権利の相続が認められると考えられています(東京地判昭和56年3月12日、東京高判平成13年4月18日、最判平成8年12月17日など)。
建物所有目的の使用貸借権の相続を認めた裁判例(東京地裁平成5年9月14日)
裁判例の一部を抜粋します。
「土地に関する使用貸借契約がその敷地上の建物を所有することを目的としている場合には、当事者間の個人的要素以上に敷地上の建物所有の目的が重視されるべきであって、特段の事情がない限り、建物所有の用途にしたがってその使用を終えたときに、その返還の時期が到来するものと解するのが相当であるから、借主が死亡したとしても、土地に関する使用貸借契約が当然に終了することにならないというべきである。」
このように、建物所有目的の土地の使用貸借については、基本的に借主の権利が相続人へ引き継がれると考えてよいでしょう。
4-2.当事者間に別段の定めがある場合
次に、当事者間で別途定めをした場合にも相続人は使用借権を引き継げます。
「借主の死亡によって使用貸借契約が終了する」という民法597条の規定は、任意規定だからです。
使用貸借契約書を作成して「借主の死亡時には相続人が借主の地位を引き継ぐ(相続する)」「借主の相続発生時には貸主は借主の相続人に引き続きの物件使用を認める」などと記載されていれば、相続人は引き続いて物件を利用できると考えましょう。
4-3.明示や黙示の承諾がある場合
借主が死亡したあとに相続人が引き続いて対象物を使用し続けており、貸主がはっきり使用を認めた場合には明示の承諾があったと捉えられます。
明示的に承諾しなくても、相続人によって使用されている事実を知りながら特段異議を述べなかった場合には黙示の承諾があったと捉えられる可能性があります。
こういった状況下においても、使用貸借契約が継続する余地があるでしょう。
5.最後に
使用貸借契約や賃貸借契約の相続が発生すると、当事者の方が対処方法に迷われるケースが多々あります。法律的に正しい対応をするために弁護士によるアドバイスやサポートを受けましょう。
京都で相続人になった方がおられましたら、お気軽に益川総合法律事務所の弁護士までご相談ください。

当事務所は、1983年創業の老舗法律事務所です。
遺産分割、遺留分侵害額請求、遺言書作成など、遺産相続案件に強い法律事務所であると自負しております。
お悩みの方は、是非お気軽にお問い合わせ下さい。
借地権や借家権の相続
「親が土地や家を借りているのですが、このような借地権や借家権も相続の対象になるのでしょうか?」
といったご相談を受けるケースがよくあります。
借地権や借家権などの権利も相続対象になります。相続が発生したからといって退去を要求されることもありません。ただし、相続人は継続して賃料を払う義務を負います。
今回は、借地権や借家権の相続方法について、京都の弁護士が解説しますので、被相続人が賃貸物件を利用していた場合にはぜひ参考にしてみてください。
1.賃借人の地位は相続される
被相続人が土地や家を借りていた場合、死亡すると賃借人の地位は相続人に引き継がれます。
賃借権も一種の「財産権」と評価されるからです。賃借権は、被相続人に一身専属的な権利ではないので、相続対象となります。
相続人が1人であればその相続人が権利のすべてを相続しますが、相続人が複数いる場合には「準共有」となると考えられています。
つまり、相続人らは賃借権を全員で共有することになる、という意味です。
2.物件から退去する必要はない
賃貸借契約では、無断転貸や賃借権の無断譲渡が禁止されます。
こういった行為があると、大家や地主における賃借人への信頼が裏切られるので、大家や地主の方から賃貸借契約の解除が可能です。
相続が発生したときにも賃借人が入れ替わるので、大家や地主は退去請求できるのでしょうか?
結論的に、相続が発生しても大家や地主は退去請求できません。相続によって権利者が変わるのは法律上当然のことであり、無断譲渡や転貸が行われた場合とは事情を異にするためです。賃借人側が大家や地主を裏切る背信行為を行ったわけでもありません。
よって、大家や地主には賃貸借契約を解除する権利が認められず、退去請求も認められません。
承諾料も請求されない
同様の理由により、法律上、大家や地主は相続人へ「(相続の)承諾料」の請求もできません。賃借権の承継に大家や地主による承諾は不要だからです。
万一、大家や地主が退去請求や承諾料の支払い請求をしてきても、相続人の立場として応じる必要はありません。
3.地代や家賃の負担者、支払い方法について
賃借権の相続が発生しても、相続人が退去する必要はありません。
ただし、賃料をきちんと支払わないと、大家や地主から賃貸借契約を解除される可能性があります。賃料不払いは重大な背信行為となり、契約が解除されれば相続人らは物件を明け渡さなければなりません。
では、地代や家賃は誰がどのように支払えば良いのでしょうか?
3-1.相続人が1人の場合
相続人が1人の場合には、その相続人が賃料全額を支払う義務を負います。
支払いを3か月分程度滞納すると、賃貸人側から契約を解除されるリスクが高くなるので、そういったことのないようにきちんと支払いをしましょう。
3-2.相続人が複数の場合
相続人が複数の場合、それぞれが法定相続分に応じて賃借料を負担しなければなりません。
それぞれの相続人が、大家や地主へバラバラに賃借料を払う方法でも支払いとしては有効です。
ただ、それでは賃貸人としても回収や確認に手間がかかってしまうでしょう。そこで、相続人側が代表者を定めてまとめて賃借料を払うケースもよくあります。この場合には、後に相続人同士で賃料についての清算をしなければなりません。
また、3か月分程度賃料を滞納すると契約を解除される可能性があります。相続人が複数の場合、まとまって対応するのに手間がかかって支払い遅延が起こるケースもみられるので、くれぐれもきちんと支払いをしましょう。
4.賃貸借契約を解除したい場合の対処方法
被相続人が賃貸物件を借りていた場合でも、相続人が物件を使わないなら「契約を解除したい」と考えるでしょう。
相続人の方から、賃貸借契約の解除や解約を行うことも、もちろん可能です。
ただ、賃借人が契約を解除する際には、原状回復しなければなりません。原状回復義務も相続人全員が負うので、かかった費用は法定相続分に応じて清算する必要があります。敷金が返ってきた場合には、法定相続分に応じて分配しましょう。
5.遺産分割協議が済むと単独で対応できる
以上のように、賃借権が相続されたときには「法定相続分」によって賃料支払義務などの対応を行うのが原則です。
ただし、遺産分割協議が済んで単独の相続人が相続することに決まったら、その相続人が単独で賃料を支払います。契約解除の意思表示なども単独の相続人が1人でできるようになります。
遺産分割協議で賃借権を相続することになったら、早めに大家さんへ通知しましょう。
6.相続税が発生する可能性もある
賃借権を相続した場合、相続税がかかる可能性もあります。
賃借権も一種の財産権であり、遺産としての価値があるからです。
ただし、相続税が発生するのは、遺産全体の評価額が相続税の基礎控除を超える場合に限られます。
相続税の基礎控除額=3000万円+600万円×法定相続人数
まずは、遺産全体の評価を行い、基礎控除を超えるようであれば相続税の申告について税理士に相談してみるようおすすめします。
7.最後に
京都の益川総合法律事務所では遺産分割のサポートに力を入れています。
相続に詳しい税理士とも提携しており、相続税についてもワンストップで解決できます。
もし、相続に関してお困りであれば、お気軽にご相談ください。

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遺産分割、遺留分侵害額請求、遺言書作成など、遺産相続案件に強い法律事務所であると自負しております。
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中小企業の経営を引き継がせる際に注意すべき7つのポイント
中小企業の経営を後継者へ引き継がせる際には、注意深く進めないと失敗する可能性が高くなります。
- 後継者へ必要な会社株式を承継させられず他の親族へ分散してしまった
- 後継者以外の相続人が遺留分侵害額請求をした
- 高額な相続税がかかって後継者の負担となった
- 経営の資質のない後継者を選んでしまった
- 事業承継が間に合わず、後継者が育つ前に先代が倒れてしまった
上記のような事態が発生しないため、正しい対処方法を知っておきましょう。
今回は事業承継を円滑に進めるためのポイントを7つ、京都の弁護士がお伝えします。
1.後継者へ必要な資産を承継させる
事業承継を成功させるには、後継者へ経営に必要な資産を確実に引き継がせなければなりません。
具体的には「会社株式」と「事業用の資産」が重要です。
会社株式が他の相続人に分散してしまうと、経営に口出しをされて後継者による事業運営が難しくなってしまうケースも多々あります。
後継者へ資産を集中させるには、生前贈与と遺言が効果的です。
贈与税の控除や減額制度を用いて資産を承継させるとともに、後継者へ必要な遺産を相続させる遺言書を作成しておきましょう。
2.公正証書遺言を作成する
事業承継対策で遺言書を作成する際には、公正証書遺言を利用しましょう。
自己判断で自筆証書遺言を作成すると、無効になったり発見されなかったりするリスクが高くなるためです。
法務局に預ける制度を利用しても、遺言書の要式不備があるかどうかまで確認してもらえるわけではありません。無効になるリスクが高いままです。
確実に遺言書の効果を発生させて後継者へ遺産を受け継がせるため、公正証書遺言を作成しましょう。弁護士に遺言書作成手続きを委任するとより安心です。
3.遺留分対策をする
事業経営者の相続では、遺留分対策も必須です。
遺留分とは、子どもなどの法定相続人に認められる最低限の遺産取得割合をいいます。
遺言や生前贈与で後継者以外の相続人の遺留分を侵害したら、権利者が後継者へ遺留分侵害額請求を行ってトラブルになる可能性があります。
遺留分対策としては、生前に推定相続人と合意することで請求を封じられるケースもありますし、遺言や生前贈与の際に遺留分を侵害しないよう配慮する方法も効果的です。
状況に応じた対策方法をとるため、弁護士までご相談ください。
4.相続税の節税対策
事業承継では、高額な相続税が発生するケースが多々あります。
特に中小企業の株式を評価すると、ご本人たちが考えている以上に高額になる事例が多いので注意しなければなりません。
先代の生前に現預金を不動産に替える、所有している不動産を賃貸に出す、孫養子をとる、後継者へ生前贈与するなどさまざまな節税方法があるので、状況に合った方法を利用しましょう。
5.納税資金の準備
後継者が相続税を払えるように、納税資金を準備する必要もあります。
特に株式や事業用財産など換金しにくい資産を引き継がせた場合、相続税は高額なのに現金がなくて相続税を払えない事態が生じるリスクが発生しやすく注意が必要です。
納税資金準備方法として役に立つのが生命保険です。相続発生時に後継者へ高額な保険金を受け取らせれば、納税資金に使えます。
生命保険は通常遺産の範囲に入らないので、後継者へ受け取らせても基本的に遺産分割や遺留分の問題を生じません。
相続税の課税対象にはなりますが、「500万円×法定相続人数分」の控除も適用されます。
6.民事信託を利用する
事業承継において、民事信託を活用する方法もあります。民事信託とは、信頼できる親族などへ財産を預けて管理してもらう信託契約です。
具体的には、後継者へ会社株式を信託し、委託者(先代経営者)のために管理してもらいましょう。民事信託では、先代に「指図権」を残せるので株式を信託しても議決権行使は先代が行えます。
また、後継者に経営の資質がない場合には、信託契約を解約して別の後継者を探すことも可能です。
事業承継に民事信託を導入するといわば「お試し」で事業承継できる点が大きなメリットとなるでしょう。
なお、民事信託を設定する際には複雑な契約書作成や信託用口座の開設、登記などが必要となるため、一般的に弁護士や司法書士などの専門家によるサポートが必要です。
関心がありましたらお気軽にご相談ください。
7.事業承継には早めに取り掛かる
事業承継に失敗するパターンとして、時間不足が挙げられます。
承継が完了するまでの間に先代が倒れてしまい、混乱が生じたり承継できなくなったりするのです。
一般的に、「経営経験のない子どもへ事業承継させるには10年程度かかる」ともいわれています。
スムーズに事業承継を行うため、「まだ元気だから自分でできる」と考えるのではなく早めに計画を立て、実現へ向けて進めましょう。
8.最後に
京都の益川総合法律事務所では、相続や事業承継対策に力を入れて取り組んでいます。これまで多くの業種、規模の中小企業経営者の方へ事業承継の助言やサポートを行ってきました。
京都、滋賀、大阪、兵庫で事業承継をご検討の経営者様がおられましたら、お気軽にご相談ください。

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多額の生前贈与を受けている相続人がいる場合の対処方法
高額な生前贈与を受けた相続人がいる場合、単純に法定相続分に従って遺産分割するだけでは不公平になってしまいます。
公平に分けるには、贈与を受けた相続人の相続分を減らすため、「特別受益持戻計算」をしなければなりません。
生前贈与によって遺産が減って十分な財産を受け取れない場合には、「遺留分侵害額請求」もできる可能性があります。
今回は、多額の生前贈与を受けた相続人がいる場合の対処方法を、遺産分割と遺留分侵害額請求の2パターンに分けて、京都の弁護士がお伝えします。
1.特別受益の持戻計算をする
相続人へ多額の生前贈与が行われると、受贈者には「特別受益」が発生する可能性があります。
特別受益とは、相続人が遺言や贈与によって受ける特別な利益です。
贈与の場合、以下のものが特別受益となります。
- 婚姻や養子縁組のための贈与
- 生計の資本としての贈与
1-1.特別受益となる生前贈与の具体例
よくある生前贈与による特別受益の例をみてみましょう。
- 結婚するときに親から持参金をもらった
- 結婚するときにパートナーと住む家の資金を出してもらった
- 養子縁組するときに居住用の不動産を用意してもらった
- 事業を起こすときに資金を出してもらった
- 留学費用などの高額な学費を出してもらった
- 親から高級車を買い与えてもらった
但し、上記がすべて特別受益になるとは限りません。
例えば、学費を出してもらったケースでは、ご家族の経済状況や他の相続人との取り扱いの差なども考慮して特別受益となるかどうかが決定されます。
特別受益に該当するかどうか判断に迷ったら弁護士へ相談しましょう。
1-2.特別受益の持戻計算とは
特別受益を受けた相続人がいる場合、特別受益の持戻計算を適用して遺産分割を公平に行うことができます。
特別受益の持戻計算とは、受益者の受けた特別受益の分、受益者の相続分を減らすための計算方法です。
持戻計算をすれば、受益者の受け取り分が減って他の相続人の受け取り分が増え、最終的に公平に遺産分割ができます。
1-3.特別受益の持戻計算の具体例
遺産の価額は4,300万円、子ども3人(長男、次男、長女)が相続人となり、長男へ2,000万円の生前贈与が行われていた。
この場合、遺産である4,300万円に長男へ贈与された2,000万円を足します。
すると全体は6,300万円となります。これを法定相続分(3分の1)に応じて割り付け、それぞれの取得分は2,100万円ずつとなります。
但し、長男はすでに2,000万円受け取っているので、100万円しか受け取れません。次男と長女はそれぞれ2,100万円ずつ相続できます。
1-4.特別受益の持戻計算は免除されている可能性も
被相続人は、自分の意思で特別受益の持戻計算を免除できます。
遺言書に「特別受益の持戻計算はしない」と書かれていたら、他の相続人の希望があっても持戻計算を適用できません。
また、20年以上連れ添った配偶者へ居住用不動産が贈与された場合には、被相続人による持戻計算免除意思が推定されます。
1-5.特別受益の持戻計算を適用する方法
特別受益の持戻計算を適用するには、遺産分割協議の場で他の相続人が特別受益を主張する必要があります。
何も言わなければ、法定相続分に応じて遺産分割される可能性が高いと考えましょう。
受贈者が特別受益の存在を否定すると、話し合い(協議)では解決するのは難しくなります。
その場合、家庭裁判所で遺産分割調停や審判を申し立てなければなりません。
審判になると、裁判所が特別受益の有無や金額を判断し、適切な遺産分割の方法を決定します。
2.遺留分侵害額請求をする
生前贈与の額が大きくなると、特別受益の持戻計算を行っても相続人が十分な遺産を受け取れない可能性があります。例えば、全財産を生前贈与されてしまったら、他の相続人は一切遺産を受け取れません。
そのような場合、相続人が「遺留分侵害額請求」により遺産に相当するお金を請求できる可能性があります。
2-1.遺留分の割合
子どもや配偶者が相続人に含まれる場合、遺留分割合は遺産全体の2分の1です。
親や祖父母などの直系尊属のみが相続人になる場合、遺留分割合は遺産全体の3分の1になります。
遺留分権利者が複数いる場合、上記の割合をそれぞれの相続人の法定相続分に応じて分配します。
2-2.遺留分侵害額請求の効果
遺留分侵害額請求をすると、侵害された遺留分を「お金」として取り戻せます。
例えば、3人の子どもが相続人になる場合で遺産額が600万円、亡くなる1年前に長男へ3,000万円の生前贈与が行われていたとしましょう。
この場合、次男と長女にはそれぞれ6分の1の遺留分が認められます(遺留分割合2分の1×各人の法定相続分3分の1)。
そこで長男に対し、3600万円×6分の1=600万円の遺留分侵害額請求権が認められ、次男と長女はそれぞれ長男に対し、600万円の支払いを求めることが可能です。
但し、遺産額の600万円を次男と長女で分割した場合には、次男と長女がそれぞれ300万円ずつ取得していることになるため、長男に対しては、300万円の支払いを求めることができるにとどまります。
2-3.遺留分侵害額請求の方法と期限
遺留分侵害額請求を行使したい場合、それぞれの遺留分権利者が侵害者に対し、任意の方法で請求すれば足ります。
口頭やメールなどでもかまいませんが、内容証明郵便を使うとより大きなプレッシャーをかけられるでしょう。
但し、相続開始と遺留分侵害を知ってから1年以内に請求しなければなりません。時効を確実に止めるには内容証明郵便が最適です。
弁護士を交渉代理に立てるとスムーズに支払いを受けられるケースが多いので、もめてしまいそうなケースではぜひご検討ください。
3.最後に
京都の益川総合法律事務所では、相続人の方々へのサポートに力を入れています。不公平な生前贈与に納得できない方は、お気軽にご相談ください。

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当事務所が遺産相続案件に注力する理由
こんにちは。
弁護士の益川教親です。
時々、ご相談者やご依頼者の方から、「なぜ熱心に遺産相続案件に取り組んでいるのですか?」といったご質問を頂くことがあります。
そこで、今回は、当事務所(私)が遺産相続案件に注力する3つの理由についてお話しさせて頂きます。
①目上の方と話すのが好き
これは私の出生とも関わってくるのですが、私の実家はお寺なので、昔から近所のおじいさんやおばあさんに可愛がって育ててもらいました。
なので、今も目上の方とお話しするのが好きで、60歳以上のご相談者の方からも話やすいと言って頂くことが多いです。
おそらく話しやすいと言っていただけるのも、私の実家がお寺で、目上の方とお話しする機会が多かったのが影響しているのだと思います。
余談ですが、実家のお寺は兄が継いでおり、私はあまりお寺の運営に関わっていないのですが、一応僧籍はもっているので、お経を読むこともできます。
過去にご事情があって、お葬式やお通夜ができていなかったご依頼者の御家族のために、お経を読ませていただいたこともあります。
気持ちを込めてお経を読ませて頂くのですが、お経を読むのはあまり得意ではないので、積極的にはお勧めできません(笑)
②これまでの人生を聞くことができる
相続案件が他の案件の大きな違うのは、ご依頼者の方の人生を聞くことができるところだと思います。
相続案件は、ご依頼者と親御さんやご兄弟との関係、過去のいきさつなどの、その方の人生の話になることもあり、壮大なドラマを見ている気持ちになります。
そして、私が関われるのは、そのご依頼者の人生のほんの一瞬かもしれませんが、その壮大なドラマの大きな1シーンになれると思うと、私もやる気がみなぎってきます。
往々にして、遺産相続案件で弁護士にご依頼頂く場合、そのご依頼者の方にとっては、人生の一大事であることがほとんどです。
そこでの後悔は一生の後悔になる可能性が高いですし、逆にそこでの満足は今後の人生に大きな意味を持つと考えています。
そういった意味でも、遺産相続案件はとてもやりがいがあると私は考えています。
③ご依頼者の感情が理解できる
遺産相続案件は、相手方がご依頼者の御家族やご親族であるという点でも、他の案件とは一線を画するものです。
例えば、普段冷静な方でも、御家族に対しては感情をぶつける方もいらっしゃいます。
これは私自身もそうです。私も家族(父と姉)で法律事務所を運営していますが、腹が立つ時はそれなりにあります(笑)
家族だからこそ腹が立つ時もありますし、ご依頼者の中にもそう仰る方がいらっしゃいます。
私はその感情が理解できるので、その感情が理解できない弁護士よりは、ご依頼者の感情に寄り添うことができると考えています。
以上の、①目上の方と話すのが好き、②これまでの人生を聞くことができる、③ご依頼者の感情が理解できるという3つの理由が、当事務所(私)が遺産相続案件に注力する理由です。
他の弁護士の中には、遺産相続案件はストレスが大きいので絶対にやりたくないと言う人もいますが、私は遺産相続案件こそあまりストレスがかかりません。
だからこそ、遺産相続案件に注力できているのかなと思います。
遺産相続案件は、他の案件以上にご依頼者と弁護士との相性が重要になってくると考えています。
もし、遺産相続案件でお困りの方がいらっしゃれば、是非相性が合う弁護士を見つけて下さい!

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「長男に全財産を相続させる」遺言書が作成されていた場合の対処法
子どもが複数いる場合でも、親が「長男へすべての財産を相続させる」と遺言書を遺すケースが少なくありません。
他の兄弟姉妹からすると、当然「納得できない」と感じるでしょう。
不公平な遺言書が遺された場合、他の相続人には長男へ「遺留分侵害額請求」を行ってお金を取り戻せる可能性があります。
今回は、「長男に全財産を相続させる」などの不公平な遺言書に納得できない場合の対処方法を、京都の弁護士がお伝えします。
1.遺言書が無効になると主張する
遺言書が遺されたとしても、必ず有効とは限りません。遺言書が無効になるケースも多々あります。
無効であれば遺言書による相続分の指定はできないので、長男には全財産の遺産相続権が認められません。民法の定めるとおり、法定相続人が法定相続分に応じて遺産を相続することになります。
遺言書に納得できないなら、まずは遺言書が無効にならないか検討しましょう。
1-1.遺言書が無効になるケースとは
遺言書が無効になる「よくあるケース」としては、以下のような場合があげられます。
①自筆証書遺言で自筆でない部分がある
遺産目録をのぞいて一部でも自筆でない部分があると、遺言書は無効になります。
②自筆証書遺言で、署名押印や日付が抜けている
署名押印や日付のない遺言書、それらの部分が自筆でない遺言書は無効です。
③遺言書が書かれた時点において、認知症が進行しており遺言能力がなかった
自筆証書遺言でも公正証書遺言でも、遺言書作成時に遺言者の認知症が進行していて判断能力が失われていた場合には遺言書が無効となります。
遺言書の無効を主張するには、長男との交渉、調停、訴訟などの手続きをふまねばなりません。自分たちで対応するとトラブルが拡大してしまうケースが多いので、早めに弁護士へご相談ください。
2.遺留分侵害額請求を行う
遺言書が有効だとしても、「遺留分侵害額請求」を行って最低限の遺産取得分を取り戻せる可能性があります。
遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に認められる、最低限度の遺産取得割合です。
配偶者や子どものみが法定相続人になる場合、遺留分の割合は2分の1となります。その割合を各法定相続人が法定相続分に応じて取得します。
遺留分侵害額請求権は「お金」で遺留分を取り戻す権利なので、行使する場合には長男へ金銭の請求を行いましょう。
たとえば5,000万円の遺産があって長女に4分の1の遺留分が認められる場合、長女は長男へ1,250万円の請求が可能です。
2-1.遺留分侵害額請求権の時効
遺留分侵害額請求権には時効があるので注意しましょう。
相続開始と遺留分侵害の両方を知ってから1年以内に請求しないと権利が失われてしまいます。
あとから「請求されていない」などといわれないようにするには、内容証明郵便を使って遺留分侵害額請求書を送付すると安心です。
2-2.遺留分侵害額請求の手順
遺留分侵害額請求を行う際には、以下の手順で進めましょう。
STEP1 請求する
まずは長男に遺留分侵害額を請求しなければ何も始まりません。
長男との関係が良好で、話し合って遺留分を払ってくれそうなら内容証明郵便を使わず、まずは口頭や普通郵便、メールなどで連絡するのも良いでしょう。
一方、長男の態度が強行で支払いを拒否するようなら内容証明郵便を用いましょう。時効が成立しそうな場合にも内容証明郵便を用いるべきです。
STEP2 交渉して合意する
遺留分侵害額の請求書を送ったら、長男側と話し合いを行います。
支払い額や支払い方法について合意ができたら、遺留分侵害額に関する合意書を作成しましょう。分割払いにする場合には、公正証書にしておくようおすすめします。
約束とおり支払いを受けられたら遺留分問題を解決できます。
STEP3 遺留分侵害額の調停を申し立てる
長男と話し合っても遺留分侵害額の支払いについて合意できない場合には、家庭裁判所で遺留分侵害額の調停を申し立てなければなりません。調停では、調停委員が間に入って調整を進めてくれます。
調停で長男を含めた全員が納得すれば、遺留分侵害額の支払いを受けられます。
長男が約束を守らない場合、長男の財産の差し押さえも可能です。
STEP4 遺留分侵害額請求訴訟を提起する
調停でも合意できない場合、訴訟を提起しなければなりません。
判決が出ると、裁判所が長男へ遺留分侵害額の支払い命令を下してくれます。長男が払わない場合でも、長男の資産を差し押さえて遺留分侵害額を回収できます。
3.遺言書があっても異なる方法で遺産分割できる
「長男へ全財産を相続させる」という遺言書があっても、相続人全員が納得すれば別の方法で遺産分割できます。
長男が譲ってくれるなら、他の兄弟も通常の遺産分割で遺産を受け取れるのです。
長男との関係性にもよりますが、場合によっては一度相続人全員でよく話し合ってみるとよいでしょう。
4.最後に
不公平な遺言書が遺されたときには、長男との関係性や遺言書の状態に応じていくつかの選択肢があります。
ベストな方法でスムーズに解決するために、お気軽に京都の益川総合法律事務所までご相談ください。

当事務所は、1983年創業の老舗法律事務所です。
遺産分割、遺留分侵害額請求、遺言書作成など、遺産相続案件に強い法律事務所であると自負しております。
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相続不動産の評価方法や基準時について
不動産を相続したら「評価」をしなければなりません。
現金や預金と異なり不動産の価値は日々変動するので、「いつの時点の価値」を基準とすべきかが問題になります。
また相続税を計算する際にも時価とは異なる特殊な計算方法が適用されるので、正しい評価方法を理解する必要があります。
今回は相続不動産の評価方法について、京都の弁護士が解説します。土地や建物、マンションなどの不動産を相続された方はぜひ参考にしてみてください。
1.不動産を評価する「タイミング(時点)」について
不動産の価値は日々変動するので、遺産分割や特別受益となる生前贈与があった場合などには「いつの時点の評価額を基準にすべきか」決めなければなりません。
法律実務では、以下の時点における評価額を採用すべきと考えられています。
- 遺産分割の場合は遺産分割時
- 特別受益の場合には相続開始時
- 遺留分侵害額請求の場合には相続開始時
また税制上、相続時精算課税制度が適用される場合には「贈与時」の評価額が適用されます。
それぞれについて、解説します。
2.遺産分割の場合は遺産分割時
遺産分割が行われる場合には、遺産分割時の「時価」を基準に不動産を評価します。
遺産分割時とは、相続人たちが実際に話し合いを行って遺産分割協議や調停をするタイミングです。そのときの「不動産の時価」を調べて不動産の価額とします。
時価は不動産会社へ無料の査定を申し込めば提示してもらえます。
また、法律実務では、固定資産評価額を基に不動産の時価を判断することも多いです。
具体的には、一般的に土地の固定資産評価額は時価の7割程度とされているため、土地については固定資産評価額に7分の10を掛けた金額を時価とします。対して、建物の時価は固定資産評価額を基準に判断することが多い印象です。
相続人間で意見が割れる場合には不動産鑑定士に依頼して鑑定をしなければならない可能性もあります。
3.特別受益の評価は相続開始時
特別受益がある場合にも不動産の評価が問題となります。
たとえば不動産が生前贈与された場合、贈与時なのか相続開始時なのか特別受益の持戻計算を適用する遺産分割時なのか、3パターンの評価時が考えられるでしょう。
法律実務では「相続開始時の時価」が採用されています。
つまり「被相続人が死亡した時点」における不動産の時価が特別受益で贈与された不動産の評価額となります。
遺産分割の対象となる他の不動産は「遺産分割時の時価」で評価されるので、贈与された財産とは評価時が異なります。
4.遺留分侵害額請求の評価時点は相続開始時
遺留分侵害額請求をするときにも不動産を評価しなければなりません。
遺留分侵害額請求とは、配偶者、子どもや親などの相続人が遺留分を侵害されたときに最低限の遺産保障分である遺留分を取り戻すための手続きです。
遺留分侵害額請求における遺産の評価基準時は「相続開始時」となります。
遺留分侵害額請求を行うタイミングではないので、混乱しないよう注意しましょう。
5.相続時精算課税制度における不動産評価基準時
相続時精算課税制度を適用する際にも不動産の評価方法が問題となります。
相続時精算課税制度とは、親や祖父母などの直系尊属が子どもや孫などの直系卑属へ資産を生前贈与するときに最大2500万円分が非課税となる制度です。
贈与された資産は相続発生時に相続財産に組み入れられてまとめて相続税の課税対象になります。そこで、贈与された不動産がいつのタイミングで評価されるのか、贈与時か相続発生時なのか定めなければなりません。
相続時精算課税制度を適用する場合、生前贈与された資産は「贈与時」のタイミングで評価するので、正しく把握しておきましょう。
6.相続税における不動産評価方法
相続税を計算する際には、時価とは異なる特殊な評価方法を適用します。
6-1.土地の場合
土地の場合には基本的に「相続税路線価」を使って評価します。相続時路線価とは、道路に面した宅地の1平方メートルあたりの単価をいいます。
路線価がわかれば、路線価に土地の面積を掛け算すると不動産の評価額を求められます。
相続税路線価の設定のない場所では、土地の固定資産評価額に一定の倍率を掛け算して評価額を求める「評価倍率」という方法を用います。
相続税路線価や評価倍率を適用すると、不動産の価額は時価の約80%程度になります。
各地の路線価や評価倍率は、下記の国税庁のサイトで公表されています。
https://www.rosenka.nta.go.jp/
6-2.建物の場合
建物の場合には「固定資産税評価額」を用いて評価します。
調べたいときには役所へ行って固定資産評価証明書を申請しましょう。
6-3.マンションの場合
マンションの場合にも土地や建物と基本的な考え方は同じです。
マンションの建物部分(専有部分)については「固定資産評価額」で評価し、敷地権の部分については「相続税路線価」で計算し、双方を合算します。
以上のとおり、現預金と不動産を比較すると、不動産の方が評価額は下がります。
この性質を利用し、生前に現預金を使って不動産を購入すると、遺産の評価額を下げて節税する方が多数おられます。
7.最後に
京都の益川総合法律事務所では遺産相続された方へのサポートに注力しています。
不動産の評価方法に迷われた方、遺産分割や遺留分侵害額請求を行う必要のある方はお気軽にご相談ください。

当事務所は、1983年創業の老舗法律事務所です。
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遺産である不動産の売却から遺産分割協議書の締結までを約4ヶ月で行った事例【相続解決事例⑥】
・キーワード
遺産分割協議、示談交渉、遺産分割協議書作成、不動産売却
・ご相談内容
ご依頼者は、相手方から遺産分割を求められた側です。
お母様が亡くなった後、ご依頼者の唯一の兄妹(相手方)が弁護士に依頼をして、遺産の調査中であること及び遺産分割協議を申し出てきました。
ご依頼者夫婦は、長年、お母様の自宅近隣に居住し、面倒を見てきたにもかかわらず、そのお礼が無く、弁護士を入れて権利主張する相手方の対応を悲しみ、当事務所にご依頼されました。
ご依頼者は、お身体の関係上、早期の解決を希望されていました。
・当事務所の対応及び結果
弁護士受任後、速やかに相手方代理人に遺産目録及びお母様の債務、ご依頼者の立替金を通知し、不動産についても売却の意思があること及びその目途をお知らせしました。
遺産分割協議書の締結に先んじて、受任から約二ヶ月で不動産を売却し、法定相続分で分配しました。
不動産以外の遺産について、相手方は被相続人の医療費等多額の負担をした事を主張しましたが、当該立替金について、こちらは一切認めませんでした。
その後、ご依頼者が負担していた葬儀費用のみを控除した遺産を法定相続分で分配する内容で遺産分割協議書の締結がなされました。
ご依頼者の希望に従い、受任からおよそ4ヶ月での早期解決となりました。
・コメント
当初より、早期解決を希望されていたこと、相手方との直接連絡を避けるための弁護士受任であったことから、ご依頼者の意向を第一優先に考え、通常であれば半年から1年かかる不動産の売却、交渉によっては調停にもなる可能性のあった遺産分割協議を早期に解決する事ができました。
当事務所においては、ご依頼者の希望を第一優先に交渉を進めますので、このような早期解決が図れたと考えております。
※特定できない程度に内容をぼかしています。

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甥や姪が相続人になる場合と遺産相続の注意点
相続が発生したとき、甥や姪が相続人になるケースがあります。
甥姪の父母である被相続得人の兄弟姉妹が、被相続人より先に死亡した場合です。
今回は、甥姪が相続人になる際の遺産相続における注意点を、京都の弁護士が解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
1.甥姪は第3順位の法定相続人
甥姪が相続人になるのはどういったケースなのでしょうか?
それは、甥姪の父や母である「被相続人の兄弟姉妹」が、被相続人より先に死亡しているケースです。
兄弟姉妹は第3順位の法定相続人になるので、被相続人に子どもや親がいない場合、兄弟姉妹が相続権を取得します。
ただ、親である兄弟姉妹が先に死亡しているケースもあるでしょう。その場合には、
「代襲相続人」として甥姪が遺産を相続するのです。
1-1.代襲相続とは
代襲相続とは、相続人が被相続人より先に死亡している場合において、相続人の子どもが相続することを言います。
例えば、子どもの子どもである「孫」や兄弟姉妹の子どもである「甥姪」が該当します。
被相続人より子どもが先に死亡していれば孫が代襲相続人になりますし、被相続人より兄弟姉妹が先に死亡していれば甥姪が代襲相続人になります。
代襲相続人は被代襲者の地位をそのまま引き継ぐので、親である兄弟姉妹が相続権を取得していれば、甥姪は兄弟姉妹と同じだけの法定相続分を引き継ぎます。
1-2.甥姪が複数いる場合
甥姪が複数いる場合には、兄弟姉妹の法定相続分を「甥姪の頭数」によって分配します。
例えば、被相続人の弟が3分の1の法定相続分を有しており、被相続人より先に死亡したとしましょう。弟には2人の子ども(被相続人の甥姪)があるとします。
この場合、2人の甥姪の法定相続分は、3分の1×2分の1=6分の1ずつとなります。
1-3.甥姪の子どもは代襲相続しない
甥姪も被相続人より先に死亡していた場合、甥姪の子どもは代襲相続できません。
兄弟姉妹などの本流ではない血族を「傍系血族」といいますが、傍系の場合には代襲相続は一代限りとされているからです。
甥姪が被相続人より先に死亡していた場合だけではなく、相続欠格者となった場合や相続人として廃除された場合にも甥姪の子どもは再代襲相続できません。
2.配偶者がいる場合の甥姪の法定相続分
相続人が甥姪だけであれば、それぞれの法定相続分は人数で等分になるだけです。
一方、配偶者があると法定相続分が異なってきます。
配偶者と甥姪が相続人になる場合、配偶者に4分の3、甥姪に4分の1の相続分が認められます。
法定相続分の求め方が分かりづらい場合、お気軽に弁護士までご相談ください。
3.甥姪には遺留分がない
甥姪が相続人になることが予想される場合、被相続人が遺言書を作成して「甥姪には相続させない」と書き残している事例もよくあります。この場合、甥名は遺産を相続できません。
また、甥姪には遺留分も認められないので注意が必要です。
遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人に認められる最低限の遺産取得割合です。
子どもや孫などの相続人であれば「遺留分」が認められるので、不公平な遺言があっても最低限「遺留分」の取り戻しを請求できます。
一方、甥姪には遺留分が認められないので、遺言で「遺産を相続させない」と書かれてしまったら何も請求できません。
4.他の相続人との間で遺産分割がまとまらない場合の対処方法
甥姪が代襲相続すると、他の相続人との間で遺産分割協議がまとまらないケースがよくあります。
甥姪と他の相続人(配偶者や叔父叔母)はふだんからあまり交流がないケースも多く、他の相続人からすると「甥姪に遺産を分けたくない」と考える傾向があるためです。
遺産分割協議でもめてしまったときには、家庭裁判所で遺産分割調停を申し立てることになります。
調停では、調停委員が間に入って話し合いを調整してくれます。
5.甥姪は借金に気づかないケースも多い
被相続人が借金を残している場合、甥姪が気づかないケースも多いので注意が必要です。
先順位者である子どもや親が相続放棄してしまったために債権者が甥姪へ借金の支払いを求めてくる事例が少なくありません。
借金を引き継ぎたくない場合には、相続放棄や限定承認を行う必要があります。
ただし、これらの手続きには「自分のために相続があったことを知ってから3か月以内」という期限があります。
債権者から連絡が来て借金を相続したことを知ったら、早めに家庭裁判所で相続放棄や限定承認の申述をしましょう。
6.最後に
京都の益川総合法律事務所は、相続案件に積極的に取り組んでいます。
相続問題でお困りの方は、お気軽にご相談ください。

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